レミリア様がネギま世界へ行かれたようです   作:メル

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魔法少女レミま!  閑1 吸血鬼

「おはよう、よく眠れたかい?」

 

 ん……? ここは、どこ?

 

「おはよう、ございます。……えっと?」

 

 私はベットに寝転がったまま、軽く頭を上げ周りを見渡す。どこかの民家みたいだ。

 

「あんた、外で倒れてたんだよ。随分弱ってるみたいだけど、大丈夫かい? 痛い所は無いかい?」

「たおれてた……?」

 

 とりあえず、ベットから降りよう。

 

「あ、だめだよ! スープとパンを持って来てあげるから、まだ寝てな。いいね!」

 

 コクンと、小母さんを見ながら頷くと、小母さんは笑顔を浮かべて部屋を出て行った。

 微かに塩の匂いと、ライ麦のパンが焼けた匂いが、部屋の中へ流れ込んできた。

 ここは、何処だろう? 私は、倒れてた?

 私は、どうして、倒れてた?

 私、私、わたし、は……。

 

「はい、おまたせ。ちゃんと寝てるね、偉い子だよ。」

 

 小母さんはトレイにパンとスープを乗せて部屋に帰ってきた。

 トレイをベット脇のテーブルに載せると、パンを小さく千切り、スープに半分ほど浸す。

 そして、私にむけて、突き出した。

 

「ほら、寝たままでいいから、ゆっくり食べな。」

 

 呆然として口をあけていると、ちょっと無理矢理にパンを押し付けられた。

 

「ちゃんと食べないとダメだよ。うちなんかのパンで悪いけど、食べないより良いさ。」

 

 久しぶりに食べたパンは、美味しくはなかったけど。

 

「何があったかは知らないけど、ここは大丈夫だから。安心おし?」

 

 そう言いながら頭を撫でてくれる手は、暖かくて、大きくて。

 久しぶりの食べ物は、とても美味しかった。

 

「ぅ、ひっく……、ふぇぇん……。」

 

 そして、わたしは。思い出してしまった。

 血と。血と、血と、血と。……男と。人間。ニンゲンを。

 体からさーっと血の気が引いていくのがわかる。けど、口の中には鉄分が広がり。スープはワインよりもなお赤黒く。浸したパンは、血の滴る、肉。ニンゲンの、ニク、に、みえて。

 

「ゃ……ぃ、ゃ……」

「ん? どうかしたかい?」

 

 目の前の小母さんが、いや、ニンゲンが。血の詰まった、皮袋、に、みえて。

 わたしは……ワタシハ、バ、バケ、モ……ノ?

 

「ぃゃ……いや、イヤ、イヤーーーーー!!」

 

 

 

 ……叫んで、気を失って。それから1日、わたしはベットから出て歩ける程度には回復した。

 私は、全てを思い出した。男の肉を突き破る感触も、追っ手から逃げた道筋も。そして、私が人間では無いと、いうことも。

 私がこのままここにいたら、小母さんに迷惑が掛かっちゃうから、本当なら直ぐにでも逃げないといけない。だけど……

 

「ところで。私はヘルヴィ、あんたの名前は?」

 

 私の、名前。本当の、名前は……。

 

「……ライヤ」

 

 ……うん。もうすこし、ここにいたい。

 ちょっとなら、大丈夫だよね?

 

「そっか。ライヤ、いっしょにパンを焼かないかい? 寝たきりじゃ気も滅入っちまうよ。」

 

 そう言って、小母さん、いや、ヘルヴィさんは私を無理やり台所へと連れてきた。

 私なんかの手でパンを触っていいのかな? って思ったけど、ヘルヴィさんの迫力に押されるがままに手伝った。

 いっしょに焼いたパンは、とても美味しかった。

 

「ヘルヴィ、さん。」

「ん? なんだい?」

「えっと、その……。あ、ありがとう。」

 

 こんな私を助けてくれて。ありがとう。

 

「はっ、子供は大人に迷惑かけるのが仕事なんだ。私だって昔は無茶したもんさ!」

 

 ぎゅっっと抱きしめてくれたヘルヴィさんの温もりは、忘れない。

 けど、甘えてばっかりいると、逃げれなくなるから。だから、話そう。そうすれば、きっと追い出してくれるはずだから。こんないい人のところに、私がいちゃダメだと思うから。

 嫌われれば、きっと私は、もっと遠くへ逃げられるから。だから……

 

「ヘルヴィさん、お話があります。私は、---です。」

 

 ……だから、私は、全てを話した。

 うん。話したんだけど。

 

「で? あんたは私を殺すのかい?」

「……え? い、いや、殺さないです!」

「なら、もう少しゆっくりしていきな。あんたが逃げなきゃいけない理由はわかったけど、2~3日くらいは休んでも大丈夫さ。」

 

 なんで? なんで、追い出してくれないの?

 

「なんで、嫌ってくれないの!?」

「そんな、迷子の子猫みたいな顔してる子をほっぽりだすほど、堕ちちゃいないつもりだよ。」

 

 そう言うと、ヘルヴィさんは再度私を抱きしめ、頭を撫でてくれた。

 

「あんたが危険な子じゃないことくらいわかるさ。頑張って逃げたんだ、ちょっとくらい休んでも天罰は当たらないよ。」

 

 それに聖女様の中にも3度死ななかったお方が居るんだ。アンタなんて大したことないさ! そう続けるヘルヴィさん。

 ……こんなこと言われて、逃げれるわけ、ない。

 その晩、私はヘルヴィさんと抱き合って、久々にゆっくり寝ることが出来た。

 けど、運命という奴は、私を散々に痛みつけるつもりらしい。私はやっぱり逃げればよかったんだと、後悔しつづけることになる。

 

「ここに---がいるのはわかっている! さっさと出せ!」

「はっ、賊が出た時はなにもしないくせに、こんな時は素早い対応で! で、どこに---が居るってんだい!?」

 

 翌朝、私はヘルヴィさんと誰かが言い争う声で目を覚ます。

 

「---は眷属を増やす! 潜在的な危険は賊なんぞと比べ物にならん!」

「なら眷属にされた奴を連れてきな! ありもしない---や眷属なんかの危険より、賊のほうがよっぽど厄介さ!」

 

 追っ手が来たんだ! ヘルヴィさん、大丈夫かな……?

 部屋の扉を少しだけ開け、玄関の方を盗み見る。そこにはヘルヴィさんと、槍を持った兵士が言い合っていて。

 次の瞬間、兵士と、目が合ってしまい――

 

「! やはりいたか!」

「いけない! 逃げな、ライヤ!」

 

 え、嘘!? 見つかっちゃった!? に、逃げ……どこから!?

 

「ええい、やはりお前は既に眷属だな!? 死ねぇ!」

 

 ずぶり、と。肉を貫く音がした。

 途端に部屋に充満する、血の匂い。

 

「いけ、ない、逃げ、るんだ! ライヤ……!」

「逃がすか! 吸血鬼、エヴァンジェリンめ!」

 

 

 

「ヘルヴィ、さん……?」

「オ、起キタカ御主人」

 

 ん……夢か。随分と古い夢を見たな。

 

「ふん。これのせい、か。」

 

 テーブルの上には昨日買ったメセンブリーナ新聞がある。表に出ているのは、第1面だ。

 見出しには、こう書かれている。

『吸血鬼、レミリア・スカーレット 超弩級戦艦2隻撃墜!』

 

「吸血鬼、か。」

「真祖ナノカ?」

「いや、恐らく違うだろう。夜の戦闘でしか戦果を上げていないようだしな。」

 

 真祖ではない吸血鬼。真祖が弱点を克服した吸血鬼、と言われることから解るように、それはつまり。

 

「所詮真祖の基となった存在だ。吸血鬼がいなければ、真祖も生まれなかったんだろうが、な。」

 

 そして、吸血鬼が残忍だからこそ、真祖である私も否応無しに追われる存在となったわけだ。

 

「ケケケ。ソノワリニコッチハ英雄様ジャネーカ。」

「……くだらん。」

 

 もし吸血鬼に不死性が無ければ。眷属を作ることが出来なければ。人を襲うことが無ければ。

 真祖だって畏怖されることは無かった。いや、そもそも私が真祖になる事もなく、ヘルヴィさんも……

 

「ハッ。本当に……くだらん話だ。」

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