レミリア様がネギま世界へ行かれたようです   作:メル

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魔法少女レミま!  閑イ レミま!?

「毎度お馴染み射命丸です。今日はご好評頂いている紅魔館潜入捜査シリーズ第3回を慣行致します。」

「駄目」

「第1の障碍ですね!」

 

 幻想郷、湖の傍らに立つ紅魔館の玄関ホ-ルにて。

 そこには背中から黒い烏の翼を生やし、黒髪ショートで紅い瞳の、赤い頭襟を被った少女が、一歯下駄を履き堂々と立っていた。

 彼女、自称射命丸に対するは青を基調としたメイド服を着る銀髪の少女。お盆を持った左手をダラリと下げ、右手で頭を抑えている。その顔は呆れたような、疲れたような表情だ。

 メイドはレミリアから咲夜と呼ばれていた少女である。

 射命丸はポケットから手帳とペンを取り出しつつ、爛々と目を輝かせ咲夜へと言葉を投げる。

 

「それでは、本日は紅魔館のメイド長、十六夜咲夜さんの生態を観察しようと思います。さ、何時も通り仕事を続けて下さい。」

「今の仕事は目の前の天狗を排除することかしら。」

 

 そう言葉を返しながら、お盆を何処かへ消し両手にナイフを構える咲夜。目つき鋭く射命丸を睨みつける。

 射命丸も腰にぶら下げていた葉団扇を取り出し、腰を下げ戦闘態勢を整えた。

 射命丸の周りには風が吹き荒れゴウゴウと音を立てるが、不思議なことにその風は紅魔館の備品へと打ち付ける前にその威力を無くす。

 更には咲夜の周りから後ろは一切の無風であり、両者が既に何かをしていることは明白だった。

 

「あやや。新聞記者は常に客観的でないといけないのですが。」

「常に主観的、の言い間違いかしらね。それか風が起こした空耳か。」

 

 言い合いながらも両者の間に緊張が高まっていく。

 そして、先に仕掛けたのは咲夜だった。

 咲夜が少し動いた次の瞬間、その場から掻き消え射命丸の後ろへ現れる。そしてナイフを一閃しようして――

 

「……っか、は……」

 

 振り向きざまに繰り出された射命丸の蹴りにより、一本歯を腹へめりこませ、その場へと崩れ落ちた。

 

「ふふ。止めるなら重心を動かす前にしないと意味が無い、後ろへ回り込もうというのがバレバレです。大体たかが人間ごときが私に勝てる訳が無いのですよ。」

 

 細い手足で華奢な体を持つ射命丸だが、見た目とは裏腹にその実とんでもない凶器である。

 咲夜を一撃であしらった事でご機嫌になり、饒舌に咲夜へと語りかける射命丸。その顔は晴れ晴れとしていて得意げで、正しく天狗のように鼻高々だ。

 咲夜は苦悶の表情を浮かべたまま取り落としたナイフを掴みなおし、何とか立ち上がろうとするものの、手足が痺れまだそれには至らない。

 だが、弱弱しくもしっかりと口角を上げると、視線を射命丸へと向けた。

 

「たかが烏ごときが随分とご高説を垂れ流すわね。切られていることにも気付かずに。」

「……え?」

 

 そして、咲夜が床に手を付き立ち上がったと同時に。射命丸が持つ葉団扇の、小葉の一つがヒラヒラと舞い落ちた。

 射命丸は小葉が1枚欠けた葉団扇と床に落ちている葉を見比べ唖然とし、咲夜は依然手足の震えが残るものの再度ナイフを構え油断無く相手を見つめる。

 だが射命丸は体をプルプルと小刻みに震わせ、何時までたっても立ち直らず。そして遂に……

 

「ぅ……ふぇ……」

「え、ちょ、ちょっと?」

「ふぇぇぇぇん、私の大事な葉団扇が~~~~! 咲夜さんのバカ~~~~!」

 

 射命丸は乙女座りで床に座り込むと、そう声を上げ泣き始めた。

 

 

 

 

「う……ひっく……。」

「……はぁ。」

 

 紅魔館のキッチンに場所を移した二人。射命丸は椅子に座りテーブルに突っ伏したまま、依然肩を震わせ時折啜り声を上げている。

 咲夜は居心地が悪そうに顔を顰めながら、コンロに薬缶をかけ紅茶を入れる準備をしていた。

 命は取らないというルールが有るとはいえ、あの場は間違いなく敵同士。たかが葉団扇の小葉を一枚切った程度でこの様な状態になる等、誰が想像出来るだろうか。

 咲夜は痛そうに頭を抑えながらお腹をさするも、湯が沸いていたことに気付き再度溜息一つ。暫し沸騰する薬缶を見つめるが、首を2度左右に振った後別の薬缶を火にかけた。

 

「粉は入れる?」

「ひっく……砂糖ですか? 2杯お願いします。」

「はいはい。」

 

 碌な会話も無く重い空気のまま時は流れ、そうするうちに1杯の紅茶が入れ終わる。

 咲夜は最後にスプーン片手に左手をウロウロと棚の前を彷徨わせるが、どうやら目的の物が見つからないようだ。

 

「まぁ、お嬢様用ので良いかしら。」

 

 結局諦めたのかそう一人ごつと、数あるポッドの中から真紅のポッドを取り出し、そこから2杯白い粉を紅茶の中へ。

 そうして軽くかき混ぜた後、ソーサーと共にカップを射命丸の前へと置いた。

 

「どうぞ。」

「……どうも。」

 

 紅茶の匂いに吊られ顔を上げた射命丸の目には、既に自分へ背を向けキッチンを片付けている咲夜の姿が映った。

 射命丸はポケットからハンカチを取り出し目元を拭いた後、目の前の紅茶へと手を伸ばす。

 カップの中の紅茶は少々青みがかった黄金色に輝き、湯気と共に花開いたような芳しい香りが鼻を擽る。全うな緑茶派である射命丸だが、それでも咲夜の入れた紅茶はとても美味しそうに思えた。

 いただきます、そう心の中で唱えたかは定かではないが、暫し香りを楽しんだ後に一口含む。

 その味はさぞかし美味しいのだろう――そう期待した射命丸をあざ笑うかのように、何故か強烈な苦味がした。

 

「ん……咲夜さん、なんかこれ苦いんですけど?」

 

 シンクの前で洗い物をしている咲夜の背に、そう話しかける射命丸。

 まさかあの咲夜さんが紅茶をいれるのを失敗したのか、そんな事を呟きつつ、その苦味の正体を確かめるためか再度口元へと持っていく。

 だが、その正体は咲夜の口からもたらされた。

 

「ああ、トリカブトとベラドンナが入っているから。苦いのかもしれないわ。」

「ブーーー!! な……な……!」

 

 全身を震わせ顔中から汗をかき硬直する射命丸。その手に持っていたカップは既に無く、既にシンクの咲夜の手に。中身は床に置かれた雑巾へと吸収されている。

 射命丸は何とか動こうとするも上手くいかず、そのまま椅子から崩れ落ち、床へと倒れ伏すことになった。

 

「折角御二方とも居ないのだから、掃除を進めないと。ああ、動けるようになったら帰っていいわよ?」

 

 咲夜は射命丸に向かいそんな言葉を残すと、床に倒れた射命丸を一瞥すらせずキッチンを後にした。

 

 

 

 

「……ふむ。トリカブトとベラドンナが入った紅茶は苦い? いや人々が求める物じゃない。紅魔館のメイド長は咽び泣く少女に毒を盛るドSメイド……一部の方は喜びそうですが、ここはもう一つ奇を衒って……」

 

 咲夜が居なくなったキッチン。床に倒れていた射命丸だが、咲夜が間違いなく遠ざかったことを確信すると、そうブツブツと独り言を喋り始めた。

 その顔には涙も青さも存在せず、まるで健やかな朝を迎えたかのように晴れやかだ。

 射命丸はこのネタをどう料理すれば読者が喜ぶか、それを一生懸命に考える余りニヤニヤと口元を緩めていた。

 

「よし、こうしましょう! 『紅魔館の主レミリア・スカーレットはメイドに毒入り紅茶を作らせて飲むドMだった!?』」

 

 いやー明日の見出しが決まりました! そう晴れやかな声と共に起き上がる。ちなみに葉団扇はいつの間にか元の状態へと復元されていた。

 

「さて! 何やら御二方とも居ない……つまり恐らくレミリアさんもフランさんも居ないような事を言っていましたね。このチャンス、逃す訳には参りません!」

 

 さぁ張り切って潜入捜査を続けましょう!

 その掛け声と共に、キッチンを後にする射命丸だった。

 

 

「さてさて、ここはサンルームですか。なぜ吸血鬼の館にサンルームが有るのでしょう?」

 

 紅魔館の中をあっちへフラフラ、こっちへフラフラと、奇跡的に咲夜に見つからずにたどり着いたサンルーム。

 そこではサンルームなのに北向きに拵えられた窓と、窓から離れた位置に置かれたテーブルがあった。

 

「んー、あまり面白みが無いですね。人間の死体でも転がっているかと思ったのですが。」

 

 いまいちシャッターチャンスが有りません。そう文句を垂れ流しながらも、取りあえずと首からぶら下げていたカメラのファインダーを覗き込む射命丸。

 あっちこっちとパシャパシャ撮るが、その期待外れなのか詰まらなさそうな表情をしている。

 だが、ふとカメラをテーブルへ向けたとき。その上に置かれた一冊の本に気付く。

 

「お? 何でしょうか?」

 

 レミリアさんの愛読書? せめて咲夜さんの秘密日記くらいのインパクトが欲しいです。

 そう言いながら足取り軽くテーブルへと近づく。

 だが、その本を手に取った途端。

 

「こ、これは……! 特ダネですーーー!!」

 

 射命丸は両手で本を抱き、窓を突き破って紅魔館を後にした。

 

 

 

 

「号外ー! 号外ー! 文々。新聞の新連載だよー! 第1巻は出血特別大サービス! 無料配布中ですよー!」

 

 射命丸は空を翔る。大量に複製した本をその身に纏い、烏も鷹も追い抜いて。

 

「号外ー! 新連載だよ、乞うご期待だよー!」

「……何やってるのかしら、あいつ。」

 

 赤い巫女は顔を顰める。断る間も無く置いていかれた1冊の本を見ながら。

 

「号外ー! 天狗の新連載! 新しい魔法理論も乗ってるよー!」

「おぉ? なんか楽しそうな事してるな。」

 

 森の魔法使いは嬉々として読み始める。この魔法ってパチュリーのか? そんなことを呟きながら。

 

「号外ー! お子様が読んでも安心だよー!」

「……不安しか呼び起こさないわね。」

「ああ、全くだな。」

 

 人里に居た人形遣いは、寺子屋の教師と共に溜息を吐く。また何かやり始めた、そんな感想を交わしながら。

 

「号外ー! なんと主人公は誰もが知ってるあのお方!」

「あはは! 見て見て永琳、なにこれ凄い!」

「真似するとか言わないでね?」

 

 竹林の姫は大喜び。薬剤師と共に、目をキラキラと輝かせ、子供のように夢中になった。

 そして……

 

「号ー外ーでーすよー!!」

「おや。」

「あれ? これって……」

「え……な……な……!?」

 

 山の神社は号外が放り込まれた途端、奇妙な静寂に包まれる。

 大きな神は眉を顰めて、小さな神は面白そうな顔で緑の巫女へと視線を投げた。

 それにも気付かず、緑の巫女はガクガクと震える手で、どうにかその本を掴み上げる。

 表紙を見、裏表紙を見、パラパラとページを捲る。

 だが、開始から僅か数ページでそれは止まり、ある一人の登場人物へと目が釘付けになった。

 そして、遂に。

 

「何ですかこれはぁーーーーー!!?」

 

 背表紙には、こう書かれていた。

 『魔法少女レミま! 第1巻 原作 赤松健 編纂 八雲紫』

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