仮面ライダー ~影を裂く刃~   作:チョコレー党

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第一話 -怪人という存在-

『...次のニュースです。 昨日、新橋駅付近に怪人3体が出現。付近の店舗を襲撃する事件が発生しました。

 対して仮面ライダーレイズ、新庄 光貴(しんじょう こうき)氏と

仮面ライダーデルタMk-Ⅲ 木城 優馬(きじょう ゆうま)氏がこれを撃退。

 軽傷者2名、周囲の建物にも被害が及びました。』

 

朝食を食べながら見ていたTVでは装甲を身に着けた人間とおぞましい姿をした怪人が戦闘している。

 

「また、怪人がでたのね...勇気も気を付けなさいよ」

 

「あー...うん....」

 

本間 勇気(ほんま ゆうき)は母親からの言葉に曖昧な返事を返す。

 

50年程前にショッカーという組織が世界征服の為に作り出した"怪人"。

怪人の一人として生み出されたが、ショッカーから離反し世界を守るために戦った"仮面ライダー"。

結果的にショッカーを壊滅させ、世界を守った三人の仮面ライダーは英雄となった。

 

仮面ライダー一号・本郷 剛(ほんごう たけし)

 

仮面ライダー二号・一文字 隼人(いちもんじ はやと)

 

そして...仮面ライダー0号・黒城 勇吾(こくじょう ゆうご)

 

世界を救った英雄はその後世界に反旗を翻し、各国の政府機関を襲撃。

 

仮面ライダーを共通の敵とした世界は連合軍を結成し、一年近くに及ぶ戦いの末、仮面ライダーを抹殺した。

 

...と、ここまでは世界史の教科書に載っており授業でも何度も習う項目だ。

 

すべては終わったこと。怪人も仮面ライダーも教科書や本の中にしかいない存在だった。

 

15年前までは...

 

突如として再び現れた怪人は世界各地に出現しては暴れまわった。

 

多くの場所が破壊され、多数の死者もでた。

 

世界各国はこの危機に再び力を合わせ、禁忌となっていた仮面ライダーという存在を復活させる

ことを決定。

各国の技術を総結集した末にようやく完成させた。

 

現在では怪人が出現すれば登録された仮面ライダーが現場に急行し撃退できるようになった。

しかしなぜ怪人が急にまた現れ始めたのかはな謎のままだ。

 

倒しても倒しても怪人は出現し、今だって死者が出ることもある。

 

だが直に怪人を見たことがなかった勇気にとってはなんだか遠い世界の出来事のようで、

注意するといってもどうにも他人ごとに感じてしまう。

 

『....先日、ZECT(ゼクト)社が保有する研究施設が襲撃された件について、政府はテロ組織"影の刃"

が関与している可能性があると発表。今後も調査を進めていく方針です。...』

 

「そろそろ時間じゃないの?」

 

ぼんやりとTVを見ていた勇気に母親はそう声を掛ける。

 

「じゃあ、行ってきます。」

 

朝食を食べ終わった勇気は学校へ向かうためそう言って家を出る。

 

「っはよー! 勇気!」

 

玄関を開けたところで元気な女性の声が聞こえてくる。

彼女は三島 香澄(みしま かすみ)。小学校の頃からの幼馴染で、家が近くなのもあり、

朝の登校時はいつも勇気の家の玄関前で待っている。

 

「おはよう。香澄。 家の前にいないで入って待っててもいいのに...」

 

「今来たばっかりだから。ほら、早く行こ!」

 

そう言って勇気を促す香澄。二人は並んで学校へと歩きだす。

 

「そういえば今朝の怪人のニュース見た? 結構近くだし気を付けなよ。勇気ってばときどき

抜けてるんだから。」

 

「いや..自販機でお釣りだけとってジュース取り忘れるような香澄に言われたくない」

 

「ちょっ! それは忘れるって約束でしょ!」

 

仲良く会話を交わす2人。いつも通りの日常だったが不意に香澄の表情に影が差したように見えた。

 

「ねぇ...勇気はさ...怪人が嫌い?...怖いって思う?」

 

「えっ...急にどうしたのさ...」

 

そう問いかける香澄に勇気は答えに詰まる。

 

「んーん 何となく聞いておきたいなって思って。」

 

「まぁ。ニュースとかではたくさんの人を襲ってるし怖いっていう気持ちはあるかも...」

 

「そっか...」

 

なんとなく気まずい雰囲気になる二人。

 

「よう! 相変わらず仲良いな!」

 

二人に声をかけてくる勇気と同じ制服を着た男子生徒。

 

彼は一条 宗(いちじょう そう)。香澄と同じように小学校からの付き合いで、

よく3人で登校する仲だった。

 

「おはよう宗。」 「おはよう宗君。」

 

「おはよう勇気、香澄。デートの約束でもしてたのか?」

 

「いやいや 全然違うよ!ちょっとした世間話だって!」

 

「そうそう! 私と勇気は全然そんなんじゃないから!」

 

宗の言葉に必死に否定する2人。

 

「はいはい。わーったよ。(もう早く付き合えばいいのに)」

 

もう数十回は繰り返されたやり取りに宗はあきれながら言葉を返す。

 

さっきの香澄との気まずい雰囲気は消えて、いつも通りの空気が戻ってきたことに勇気はほっとする。

 

(ありがとう宗.....でも香澄は何が言いたかったんだろう?)

 

一株の不安を残したままいつの間にか自分の通う高校に到着した勇気は思考をそこで打ち切った。

 

 

~放課後~

 

「ほら勇気早くっ! 置いてっちゃうよー」

 

「ちょっと待って..そんなに焦らなくてもクレープは逃げないでしょ。」

 

授業を終えた後、勇気の席にやってきた香澄はクレープを食べに行こうと提案してきた。

 

目的のクレープ屋は近くのデパートの2階にあり、こうして学校帰りなどに香澄や宗と立ち寄っていた。

 

残念ながら宗はバイトのため今日は遥と二人だが。

 

そして現在、香澄の提案を承諾した勇気は香澄に引っ張られるようにしながらデパートまできていた。

 

「ふぅ..まったく香澄は。」

 

「ごめんごめん さぁ!早く選んで食べようよ!」

 

待ち切れない様子で香澄はクレープのサンプルを眺めて選び始める。

 

「いや迷わなくてもいつものバナナチョコクレープのホイップ増量でしょ?」

 

遥の後ろからそう声をかける勇気。いつも迷いに迷って結局香澄は同じものを注文するのだ。

 

「解ってないなぁ こーゆうのはきちんと毎回吟味しないとダメなの!」

 

「そのセリフもう聞き飽き ..「きゃあぁぁぁぁぁぁー!」 っ!!」

 

呆れたような勇気の言葉をさえぎって響きわたる女性の悲鳴。

 

一瞬で周囲に緊迫した空気が流れる。

 

勇気が悲鳴が聞こえた方向に目を向けると叫びながら逃げ惑う人々が見えた。

 

「逃げろっ! 早く出口にっ!」 「怪人だぁ!」「嘘だろっ! 何処から!?」

 

"怪人"という単語を聞いて勇気の背筋に冷たい感触が走る。

 

「香澄っ! 早く逃げようっ!」

 

「..うっうん!」

 

突然の事態に唖然としていた香澄は勇気の言葉に気を取り戻し、勇気に手を引かれ

一階へ続く階段へと急ぐ。

 

だが...

 

「グァァァァァッ!」

 

「っ!?....怪人がっ!」

 

階段へと続く通路には怪人が待ち構えていた。

 

昆虫を思わせる真っ黒な体と背中に羽があり、顔には赤く光る大きく丸い目。

そして頭には蟻のような触覚が生えている

 

同じ見た目をした怪人が3体も目の前を彷徨うように歩いている。

 

「こっちはだめだっ! 非常階段の方に行こう!」

 

すぐさま方向転換し、香澄の手を握りしめ非常階段を目指そうとする勇気。

 

ガシャーン!

 

次の瞬間すぐそばにあったマネキンが薙ぎ倒され、飛び出してきた黒い影に勇気は突き飛ばされる。

そしてその衝撃で香澄の手を離してしまう。

 

「うっ....ぐっ...!」

 

そのまま壁に激突し、痛みが勇気の体を駆け巡る。

 

「勇気ぃっ!」

 

遥の声がやけに遠くに聞こえる。飛びそうな意識を何とか繋ぎ止めて目の前を見るとそこには

先程の怪人と同じ姿の怪人がいた。

 

(ここにも....4体もいたのか....)

 

怪人はあまり早く移動できるタイプではなさそうだった。その足取りは酔っ払いのようにふらふらしたもの

で散らばった商品の衣服に足を取られながらも確実に勇気の方に近づいてくる。

 

「くそっ....香澄!....ここから..逃げるんだっ...!」

 

「勇気! 馬鹿な事言わないで早く立ってぇ!」

 

必死に勇気を持ち上げて立たせようとする香澄、その背後からゆっくりと怪人が近づいてくる。

 

「僕はいいからっ! 香澄だけでも....お願いだ!逃げてくれ!」

 

「......ごめんね.....勇気......」

 

覚悟を決めたように立ち上げる香澄はそのまま勇気から離れていく。

 

(良かった.....香澄が逃げ切ってくれれば...)

 

「グルァァァア」

 

両腕を振り上げながら近づいてくる怪人。

勇気は目を閉じて最期の時を待つ。

 

だがいつまで待ってもその時はやってこない。

 

恐る恐る目を開けた勇気の目に映ったのは...

 

「こんのぉぉぉぉお 勇気からっ...離れろぉっ!」

 

自分の前に立ちふさがる香澄の姿だった。信じられないことに香澄は怪人の腕を受け止めていた。

 

先程まで普通の人間のものだった香澄の両腕は黒く変色し、手先にはナイフのように鋭い爪が付いていた。

 

「か...香澄...それって...」

 

「ごめん勇気...ずっと言えなかった。私......怪人なの...」

 

ずっと一緒にいた幼馴染が世間で恐れられている怪人だった。

 

その事実を急には受け入れられず茫然とする勇気。

 

「くっ...いい加減に...してっ!」

 

両腕に力を込めて怪人を一気に押し返す香澄。

怪人はよろめいて後退りする。

 

「さぁ勇気! 今のうちにっ!」

 

「香澄っ!? まだきてるよ!」

 

騒ぎを聞きつけたのか周囲に怪人が集まってきていた。

十体近くの同じ姿をした怪人に囲まれる2人。

 

「....っ!? 大丈夫...勇気には絶対手を出させないから!」

 

「香澄っ! もういいから逃げるんだっ!」

 

理解し難いことに連続で襲われながらも勇気は香澄だけでも逃がさなければと叫ぶ。

立ち上がろうとするが壁にぶつかった時の痛みで体が思うように動かない。

 

「はぁぁぁぁぁ! 道をぉ...あけなさいっ!」

 

勇気の言葉を無視して怪人に突っ込んでいく香澄は一体の怪人を爪で弾き飛ばしたものの、

横にいた怪人に薙ぎ払うように殴られ、床を転がる。

 

「うっ..グゥ...」

 

「香澄っ! 大丈夫!?」

 

何とか立ち上がった勇気はおぼつかない足取りで香澄の傍に駆け寄る。

 

「やっぱり優しいね...勇気は...私、怪人なんだよ?」

 

「そんなの今関係ないだろっ! 香澄は大事な友達でっ!....ずっと好きだったんだっ!」

 

勇気の突然の告白に目を見開く香澄。

 

「....ぷふっ 普通この場面で告白する?」

 

「いやっ..今のは...あぁそうだよっ! ずっと好きだったんだ! 怪人だったからって今更変わるもんか!」

 

思わず笑ってしまう香澄に顔を真っ赤にして言葉を返す勇気。

 

「グルルルルル! ウガァァァァ!」

 

2人の会話を引き裂くように怪人の鳴き声が響く。

 

怪人は香澄の反撃に驚いたのか動きは先程よりもさらにゆっくりと慎重になっていた。

 

香澄の攻撃を受けた怪人も腹部から緑色の血液を流しながらも立ち上がる。

 

そしてゆっくりと包囲の輪を縮めてくる怪人。

 

「ごめん...香澄...守れなくて...」

 

「謝るのはこっちだよ...守ってあげられなくてごめんね....あたしも勇気のこと大好きだよ。」

 

2人は固く抱き締めあい、今度こそ訪れるであろう最期の時を待つしかなかった。

 

ズシャャャァッ!

 

「グッ!ギャアァァァァァァァァ!」

 

今度こそ覚悟を決めた瞬間、青い閃光が駆け抜け怪人を吹き飛ばす。

 

<< CLOCK OVER >>

 

状況がつかめない勇気と香澄の耳に機械的な音声が聞こる。

 

数秒前まで影も形もなかったそれは目の前に突如現れた。

 

青色のボディ、両手首には鎌のような形状の刃が体の外側に向かって伸びている。

 

腰に巻いたベルトのバックル部にはカマキリを模した小さなロボットのようなものがついており。

 

顔には黄色く輝く丸く大きな目。その顔の形状もカマキリを思わせる。

 

「...仮面ライダー....」

 

教科書やTVでしか見たことがなかった仮面ライダーが目の前にいた。

 

「仮面ライダーマティス。現場に到着したぜ。これより敵の殲滅を開始する! 」

 

 

「仮面ライダーマティス。現場に到着したぜ。これより敵の殲滅を開始する!」

 

突如目の前に現れた仮面ライダーはそう言い放つ。

 

彼の目線の先には先程マティスに吹き飛ばせれた後、ノロノロと立ち上がろうとしていた。

 

「...といってもザコだけかよ...こっちは外れだったな...」

 

マスクで表情は見えないが、残念がっている様子を隠そうともしない。

 

「まぁいいや...ささっと終わらせるか...ライダースライス!」

 

そういったマティスはバックルについているカマキリロボットの背中のボタンを押し込む。

 

<<Rider Slice>>

 

機械音声が鳴り響き、バックルから発生した稲妻がバチバチと音を立て、両手首の鎌に集まっていく。

 

「一瞬で決めるっ! クロックアップ!」

 

<<CLOCK UP>>

 

ベルトの右側面のボタンをたたきつける様に押した瞬間、マティスの姿は勇気と香澄の視界から消え失せる。

 

そして再び青い閃光 - 今度はさっきよりも激しく目に焼き付くような閃光が怪人の前を走り抜ける。

 

一瞬で上半身と下半身が真っ二つになった怪人は受けたエネルギーに耐え切れないように爆発四散した。

 

状況についていけず茫然とする勇気と香澄。

 

「よし...怪人11体を撃破。任務かんりょ....いや、もう一体いたか...」

 

マティスの視線は怪人のものとなった香澄の両腕に注がれていた。

 

「まっまって下さい!...香澄は...違うんです!」

 

慌てて香澄とマティスの間に入る勇気。

 

「違う? 何が? そいつは怪人だ...今回の一件の犯人かもしれない..そこをどけ!」

 

「嫌ですっ! 香澄は僕を助けようとしてくれました! こんなことも絶対にしません!」

 

凄むように怒鳴りつけるマティスに一歩も引かない勇気。

 

「はぁ...ったく!めんどくせぇ!」

 

マティスは勇気の肩をつかむと、ぬいぐるみを扱うかのように軽々と勇気を投げ飛ばす。

 

「うわっ! いっっつぅ!」

 

「勇気ぃー! 止めて! 勇気に乱暴なことしないでよ!」

 

投げ飛ばされ床に叩きつけられた勇気は再び襲い掛かる全身の痛みに苦悶の声を上げる。

 

勇気の苦しそうな表情に、悲鳴を上げマティスに抗議する香澄。

 

「はんっ! 怪人のくせに人間を庇うとはな...いい加減に善良な人間の振りなど止めたらどうだ?」

 

「私はどうなっても構いません。勇気は無事にここから出してあげてください!」

 

まっすぐにマティスと目を合わせそう言い放つ香澄。

 

「か...か..す...みぃ......に..げ...」

 

痛みに苦しむ中、必死に香澄に呼びかける勇気。

 

「お願いします! 勇気だけはっ...」

 

「化け物のお願いを聞いてやる義理はねぇんだよっ!」

 

大きく右腕の鎌を振り上げるマティス。同時に左腕はバックルへと向かう。

 

「香澄ぃっ! にげろぉぉ!」

 

<<Rider Slice>>

 

稲妻が走る。 鎌が振り下ろされる様子がスローモーションのように見える。

 

(立つんだ! 行かないとっ! 香澄の元に!)

 

力を振り絞り立ち上がった勢いのまま走る。

 

「香澄ぃーーー!!!」

 

スローモーションの世界で香澄と目が合ったような気がした。

ゆっくりと香澄の唇が動く。

 

  「あ・・と・」

 

閃光を纏った鎌は香澄の右肩から左わき腹にかけてを切り裂いた。

 

「...やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

伸ばした手は遠く届かない。

真っ赤な鮮血が香澄の体から噴き出し、目の前にいたマティスの青いボディをも真っ赤に染める。

 

「あぁぁぁぁぁ!!!」

 

勢いのまま勇気はマティスを突飛ばそうとするが

 

「ちっ! スーツが汚れちまったぜっっと!」

 

マティスが軽く突き出した拳が顔面に当たり、再度地面を転がる勇気。

 

「感謝しろよ。本気で殴ってりゃ首が吹っ飛んでたんだからなぁ。」

 

「がっ!ぐぅ...あぁぁ!」

 

鼻血を出し、痛みに耐えながらもさらに立ち上がろうとする勇気。

 

「はいはい。もうお開きだって、この血まみれのカッコじゃ司令に問い詰められそうだ...

適当に言い訳考え...」

 

「....ィダァァァァァァ!キィィィィック!」

 

バキィッ!

 

突如として天井が突き破られたかと思うと一人の男が飛び蹴りの恰好のまま凄まじい勢いで降ってきた。

 

男の蹴りはマティスに直撃するとそのまま10m程吹き飛ばし、マティスはショーウィンドウに頭から突っ込む。

 

またも現れた乱入者、その男は赤い仮面ライダーのお面をかぶっていた。

 

そう、ただのお面。祭りの夜店で売っているようなプラスチックで作られたお面を被り、顔を隠している。

 

首から下は白いシャツに黒のズボン、羽織っている黒いコートには"EoS"の文字とナイフの刃のような

マークが描かれていた。

 

だが、勇気にはそんなことを気にしている余裕はなかった。

 

マティスが吹っ飛んだのを幸いとばかりに勇気は真っ直ぐ香澄へと駆け寄り、そして抱き寄せる。

 

「香澄!! 大丈夫だから!すぐ病院にっ!」

 

「ゆう...き....これ.....」

 

香澄は首元から何かを引っ張り出すと勇気に手渡す。

 

「これ...去年の誕生日の..」

 

それは去年の香澄の誕生日に勇気がプレゼントしたネックレスだった。

 

香澄はそれをとても気に入り、本当は校則違反だがいつも制服の下に隠して身に着けていることは勇気も

 

知っていた。

 

香澄はそれを勇気に手渡すと安心したように何かを囁く

 

「..し......ったよ...」

 

「えっ? 何? 香澄? よく聞こえないよ..」

 

しかし香澄はカクンと首を落とたかと思うとそれっきり何の反応も返さない。

 

「ねぇってば...香澄? 香澄っ!」

 

勇気は香澄の体を揺さぶるが首が力なく揺れるだけで香澄がもう一度言葉を発することはない。

 

「香澄....お願いだ...香澄っ! 香澄ぃぃぃ!.......あぁ.....あぁぁぁぁぁぁ!!」

 

勇気の慟哭がデパートに響く。

 

仮面を被った男は何も言わなかったがその雰囲気からは静かな怒りが感じられる。

 

「くそがぁっ! やってくれたな! そのコートのマークは"影の刃"とか名乗ってるやつらだろ...

何が目的だ!」

 

吹っ飛ばされていたマティスが立ち上がり、足に絡まった商品のアクセサリーを振り払いながら

 

仮面の男の前に立ちふさがる。

 

「知る必要があるのか?」

 

「不意打ちとは卑怯な真似してくれるじゃねえか...さてはその女怪人の仲間だな! お前がこの事件の

真犯人ってわけだ」

 

マティスは臨戦態勢を取り、じりじりと仮面の男との距離を詰める。

 

「無抵抗の相手を痛めつけることしか能がない奴が卑怯とはな....それから今回の襲撃のボスは屋上にいたんで

倒しておいたよ。」

 

「はっ! 適当なこと言ってんじゃねぇ! それになぁ! 怪人の存在を隠蔽したり守ったりすることは犯罪

なんだよ!」

 

「...人々を守る仮面ライダーが子供に一方的に手を出すとはな...」

 

マティスに対し心底失望したように言葉を返す仮面の男。

 

「怪人の仲間に言われたくねぇんだよ! いい加減その胡散臭い仮面取りやがれ!」

 

仮面の男にダッシュで向かっていくマティス。

 

男が被っている仮面に手を伸ばすが、男はその手をするりと躱すとマティスの腹部に膝蹴りを叩き込む。

 

「うっっっ!? ぐっ! 手加減してたら調子に乗りやがってぇ!」

 

「手加減してくれてたのか? それはどうも」

 

マティスは数歩後ろに下がるとベルト右側面のスイッチへと右手を動かす。

 

「クロックアップ!」

 

<<CLOCK UP>>

 

機械音声が鳴り響いた次の瞬間には青い閃光は仮面の男の背後にいた。

 

全力のパンチを叩き込もうと突き出した右腕の拳が仮面の男の後頭部に迫る。

 

(もらった!)

 

マティスは勝利を確信する。

 

だが仮面の男は素早く頭を低くするとマティスの拳を躱し、そのまま前方に突き出た右腕を掴むと、

背負い投げの要領でマティスを床に叩きつけた。

 

「かはっっ!?」

 

肺の空気をすべてたたき出されるような衝撃を背中に受けるマティス。

意識が飛びそうになるがギリギリのところで繫ぎ止める

 

「あっ...がぁっ.....」

 

息が詰まり、立ち上がることもできずに床で呻き声を漏らすしかない。

 

「馬鹿正直に全力ダッシュで真後ろに回り込み、突っ込む..そのあと躱されることを考えてもいない。

それに、今投げられた時だってそれなりに基礎を学んだ奴なら受け身をとれたはずだ。

そうすればそんな風に床でのたうちまわる羽目にもならなかった....」

 

仮面の男はただ静かに諭すようにマティスに告げる。

 

「うる..っせぇ....うぐぅ...」

 

「お前は人として、戦士として....そしてヒーローとしても...三流以下だな」

 

そういうと仮面の男はをゆっくりと右腕を振り上げる。

 

「っ!?」

 

マティスは顔を庇うように両腕を顔の前で交差して防御の構えをとる。

 

バキンッ!

 

だが頭に攻撃は来ず、仮面の男はバックルを掴み引きちぎるようにして奪い取る。

バックルを取られたことでマティスのライダーアーマーは空気中に溶けるように消え去り、装着していた

二十歳前半くらいの見た目の男の姿が現れる。

 

「おいっ! それを....返せっ....」

 

必死に手を伸ばしバックルを取り返そうとするマティス。

 

「.......」

 

仮面の男はマティスの言葉を無視してそのまま右手に力を籠める。

 

バキィッ!

 

バックルはあっけなく破壊され、破片が床に散らばる。

 

「なっ!.....あぁ......」

 

ばらばらになって転がるバックルの破片を茫然と見つめるマティス。

 

仮面の男は興味を失くしたように勇気の方を振り返る。

 

勇気は今だ香澄を強く抱き締め茫然としていた。。

 

「大丈夫...じゃあないな。だがここから出た方がいいぞ。」

 

「香澄....どうして....」

 

勇気には仮面の男の言葉は届いていないようだった。

 

「おい、坊主。 辛いだろうが....」

 

「お面野郎っ! てめぇぇぇぇ!」

 

仮面の男の後ろでフラフラと立ち上がったマティスは仮面の男に殴りかかる。

 

「ふんっ!」

 

しかしマティスの渾身の攻撃はまたしても躱され、代わりに仮面の男の右拳がマティスの右頬にめり込む。

 

「ぐべぇっ!」

 

仮面の男の拳をもろに喰らったマティスは大きく吹っ飛び今度こそ気を失った。

 

「....感謝しろよ...本気で殴ってれば首が吹っ飛んでたぞ....」

 

マティスが勇気に向かってゆったセリフをなぜか仮面の男がマティスへと返す。

 

気を失っているマティスには当然届かないが。

 

「こちらオリジン。任務は完了だ。 フリーズ、迎えに来てくれ」

 

耳に着けていたインカムに指を当て、誰かに話しかける仮面の男 -オリジン- はそう言うと

 

もう一度勇気の方をちらりと振り返る。

 

「えっ? もう来てる?....あぁ~じゃあ飛び込むからドア開けといて...あぁ..もう開けてる...

りっ了解...今から飛ぶ...飛びます..ハイ。」

 

目に見えて勢いが落ちるオリジンだったが、自分が開けた天井の穴の下に移動して膝を曲げジャンプの

姿勢をとる。

 

「...僕を連れて行ってください...」

 

勇気の言葉にピタリと動きを止めるオリジン。

 

「...どういう意味で言いっている?」

 

「そのままの意味です。僕も一緒に連れて行ってください!」

 

「....普通の生活には戻れなくなるぞ。」

 

「覚悟はしてます。」

 

しばし、無言で目を合わせる2人だったが....

 

「来い..」

 

オリジンはそう言って右手を差し出す。

 

「はいっ!」

 

香澄をゆっくりと床に寝かせ、オリジンの元へと歩き出す。

 

数歩歩いたところで香澄の方を振り返る。

 

「香澄..ごめん...でも」

(やらなきゃいけないことが...知らなきゃいけないことが、ある気がするんだ..)

 

心の中でそう呟きオリジンの元へと急ぎ、その手を取る。

 

 

 

「よし..しっかり摑まっていろよ!」

 

「あの...これはさすがに...」

 

勇気はいわゆるお姫様抱っこの恰好でオリジンに抱きかかえられていた。

 

「これが一番飛びやすいんだよ! 一瞬だから気にするな!」

 

「はっ..はい!」

 

勇気は覚悟を決め、しっかりとオリジンに摑まる。

 

「口閉じて、息も止めておけ...行くぞっ!」

 

バンッッ!

 

そう言った瞬間にオリジンは強く地面を蹴って飛び上がる。

大きな衝撃に床にヒビが入る。

 

そのままものすごいスピードで床と天井をすり抜けていく二人。

 

(どうなるかはわからない...けど、香澄に救われた命..のうのうと生きていくだけの道を選んでしまえば

一生自分を許せない!)

 

勇気が選んだ道がどのような結末に向かうのか、まだ誰にもわからない。

 

 

 

 

 




長くなりそうだったので、第2話に続ける形式で分けて書きました。

名前だけ出てきたライダーは今後、本編か時間があれば番外編で深堀りしていきたいです。
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