吸血鬼で魔法使いの少女は遊びたい   作: 夕凪

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時間指定であげるのを忘れていました・・・



紅霧異変と巫女

「能力の暴走ねぇ……」

「お姉様の勘違いなんだけどね」

 

 私が幽閉されていた理由を、いろいろと飛ばしながら説明した。

 その間、霊夢は一切口を入れず。

 美鈴は縁側でお茶を静かに飲んでいた。

 

 霊夢の目は既に鋭く、光があった。

 

「で、そのお姉さんは未だに罪悪感で悩んでいると。私のところに来た時は、そんな感じは無かったけど?」

「お姉様は要領がいいからね、いや容量がいいと言った方が正しいかも。昔は公私がはっきりと別れていたんだけど、今ではそれをする余裕がない感じ。余裕が無くなったと言っても良いね」

「今はまだなんとか保ってる、という訳ね」

 

 流石は博麗の巫女。

 頭の回転率と記憶力がずば抜けて高い。

 私の言いたいことをしっかりと分かってくれている。

 

 想像以上の人物だ。

 

「それで、今はそのお姉さんを脅して外に出てきたと」

「脅したなんてとんでもない、丁寧にお願いしたらだけだよ」

 

 脅すなんてことは、お姉様には通用しない。

 もしそんな事をしようものなら、圧倒的な力の差で抑えられてしまうだろう。

 力は強大なのだ。

 

 だから、私は自分の罪悪感を利用し、説得しただけ。

 脅すなんてことは出来ないのだ。

 

「ふーん、それで?。そこの妖怪は何のために貴方に付いてきているの?」

「私が外に出る条件として、誰かをお供に連れて行くことだったから、連れてきただけ」

「連れてきた、ねぇ・・・」

 

 霊夢は美鈴のことを、じっと観察する。

 衣服などで表面的には隠しても、その重圧感で分かる鍛えられた肉体。

 精神力を養えたのか、何事にも動じず、尚且つ周りに気を使う事ができるその本質。

 

 更に凄いのは、霊夢がこちらの方を見ている事に気付いている、という点だ。

 

 美鈴は、自分に向けられた意識を感じ取っている。

 武術を極める上で、必要な事だったので習得したのだ。

 だが、これが意識しなくても使えるようになるまでまでには、大変だったと聞いている。

 

「ねぇ、貴方、強いでしょ?」

「……どうしてそう思うのですか?」

 

 霊夢は美鈴へと質問をぶつけた。

 

「貴方のその佇まいからして、相当な手練れ。少なくとも何かしらの武術の心得がある」

「それだけでは、強いとは言えないのでは?」

「長い間、いろんな奴と戦ってきたから分かるのよ。貴方の普段は見せていないであろう強さが」

「……」

 

 霊夢はいつのまにかお祓い棒を手にしていた。

 美鈴はお茶を飲むだけで、動こうともしない。

 

「私と戦わない?」

「お断りします。私はあくまでも妹様の付き添い、戦いに来たのではありません」

 

 私は面白くなると思った。

 美鈴は普段からサボっているイメージが定着し、昨夜からはいつも怒られている。

 この幻想郷に、わざわざ吸血鬼の館に攻め込もうとする輩も居ないので、美鈴の戦いは殆ど見たことがない。

 

 これは見られるのではないか?

 

「美鈴、戦ってあげたら?」

「……妹様、戦う理由がありません」

「うーん、じゃあ―――『美鈴より霊夢の方が強いし、私が霊夢に殺されるかもしれない』って言ったらどうする?」

 

 私はここで挑発をする。

 美鈴は少し遠慮気味なところがあるのだ。

 

 お姉様の部下になったからか、お姉様の言ったことは基本的に全て必ず守る。

 だから、門番という仕事に対して自分なりにしっかりとやっているし、サボることはあっても辞めることはない。

 

 自由に暴れていた時とは大違いだ。

 

 だからだ。

 だからこそ、その全盛期とも言える姿を見たいと思った。

 

「お姉様との約束をすべて守る必要は無いんだよ。結局は自分は自分、他人の力ではどうにもならない時だってある」

「……私より、強い」

 

 もう少し、もう少しでいける。

 

「美鈴、どうしてもというのなら理由を作ってあげる」

「戦う理由……」

「『私は美鈴が戦っているところを見たい。そして楽しませろ』、これでいいでしょ?」

「……」

 

 美鈴は再び沈黙する。

 彼女の中では悩んでいるのだろう。

 

 戦うか、戦わないかを。

 

 本人は理由がないからと言っているが、実は理由など関係なしに戦いたいのだ。

 自分より強いと言われて、黙っていられるはずがない。

 

 だが、私は同時に紅魔館の門番でもある。

 今はこうして妹様の護衛を任されているが、それらが無ければ戦いに応じているだろう。

 

「美鈴、決めるなら直ぐに。迷っている時間なんて無いよ」

 

 その時、紅美鈴はフランがこう言っているように感じた。

 

 ―――自分の一番大事な選択の時も、こうやって迷うのか?

 

 美鈴は深く息を吐き、目を瞑る。

 そして、数十秒だった後に目を見開いた。

 

「紅魔館門番、紅美鈴、参ります!」

「博麗の巫女、博麗霊夢、いつでもどうぞ?」

 

 両者が境内で向かい合う。

 何か合図があれば、すぐにでも始まるだろう。

 

「ルールは相手を殺さないこと、それに反するような攻撃は禁止、それ以外は基本的に使っても問題ないってことでいい?」

「はい!」

「ええ」

「じゃあ、それでは……」

 

 私は結構お世話になってる錬金術で、小さな道端に落ちている石を模倣し、錬成する。

 そして、軽く真上に放り投げた。

 石は最初は高く跳び上がり、その後重力に反することなく、地へと帰ってくる。

 

 緊張の空気が張り詰めたところに、石が落ちる。

 境内の石道に打つかり、軽るそうな音を出した。

 

「―――始め!!!」

 

 その言葉に反応して、二人は瞬間に一撃を繰り出す。

 だが、どちらも小手調べの程度なので、ぶつかり合うだけで止まった。

 

「結構やるわね」

「そちらこそ」

 

 さあ、始まるぞ。

 私が知っている中で、強いと思った二人の戦いが。

 

 美鈴が構えを取り、一歩踏み出して突きを繰り出す。

 霊夢はそれを目視して、叩き躱しながら手刀を食らわせようとする。

 だが、それもまた身を躱し、別の攻撃へと繋がる。

 突き、手刀、殴り、蹴り、膝蹴り、鞭、叩き、そのどれもが繰り出され、交互に躱していく。

 

 その間、僅か5秒。

 

 終わった時には、二人ともが額から汗が吹き出ていた。

 

「やるわね、思った通りだわ」

「そちらこそ、流石は幻想郷一の強さ。認めないわけにはいきませんね」

 

 境内の彼方此方に傷やひび割れが入り、空な浮かんでいた雲は二人の気迫によって、二つに裂かれていた。

 

「まだ、続ける?」

「いえ、私の負けです。これ以上やっても勝てるイメージが湧かない」

「そう、私も久々に楽しめたわ」

 

 そう言って、互いに握手を交わす。

 そこで我慢していた笑いが抑えられなくなり、笑い過ぎたのか目尻に涙を浮かべていた。

 

「い、妹様?どうしたのですか?」

「いやぁ、ここまで白熱した戦いは久々に見たからね。つい興奮しちゃった」

 

 数秒間だけの戦闘だったけど。

 

「そ、そうなのですか?」

「うん。それに、そこの草むらの中で隠れてる子がバレバレでね。いつ出てくるのか待ってたけど、待てなかった」

 

 霊夢は私が指をさした方向を見る。

 そこには微妙に隠しきれていない、黒色の三角帽子が見えていた。

 

「……魔理沙、貴方はいつまでそこにいるつもり?」

「気づいてたのなら、もっと早く言ってくれよ…」

 

 魔理沙と呼ばれた金髪の少女は、苦笑いをしながら草むらから出てきた。

 魔法の粒子を感じることから、魔法をある程度納めていることが分かる。

 魔力の色から結構なんでも使える、オールラウンダーのようだ。

 

「やっぱり、霊夢の戦いは凄いな」

「当たり前よ、これでも幻想郷の異変を解決してるんだから。他より強くないなんてあり得ないわ」

 

 そう言い放つ霊夢だが、短い時間の戦いの中で何回か危ういところもあった。

 美鈴も、自身の弱さを分かったようで、なにかを必死に唱えている。

 

「なあ、霊夢。彼女らは誰なんだぜ?」

「私と戦っていたのが紅美鈴、そっちの宝石みたいな羽があるのがフランドール・スカーレット。私につい先ほど宣戦布告して来た姉の妹よ」

「私はフランドール・スカーレット。吸血鬼だよ、よろしくね」

「宣戦布告って……じゃあ、あいつらは敵じゃねえか!?」

 

 魔理沙はすぐさま、八角形の物体をこちらに向ける。

 見た感じは魔力で動く補助のような道具なのだが、見た目からして一点集中型の攻撃に用いるのだろう。

 

 瞬時に魔力が高まり、攻撃を開始しようとする魔理沙。

 だが、横から白い紙が先についた棒で射線を遮られる。

 そのお祓い棒で邪魔をしたのは、もちろん霊夢だ。

 

「霊夢、目の前に敵がいるんだぜ?」

「馬鹿ね、彼女たちは敵ではないわ。あくまでも姉がふっかけて来ただけで、関係ないのよ」

「だけどよ……」

「それに、私と戦った彼女はその宣戦布告して来た奴の住んでいる門番なの」

 

 おいおい……お姉様をやつ呼ばわりとは.

 本人がいたら泣き叫びながら、怒って飛び出して来そうだなぁ。

 

 ま、わたしには関係ないけど。

 

 なんの相談もなく、勝手に進めるお姉様なんて知らない。

 さっさと克服すれば良いのに、いつまでも家に引きこもるから悪い。

 今回の騒動が良い方に向かう事を祈るだけ。

 

「私たちは今回の事には一切関わってないよ」

「……その根拠は?」

「向こうのほうを見て」

 

 私が指を指した方向。

 そこは紅魔館がある方角。

 

 青空を徐々に赤く染めていく。

 既に赤い雲に覆われた部分は、太陽の光が通らず、暗くなっていた。

 

「……あれが今回の異変か?」

「多分ね。で、私たちがこっちにいるのにも関わらずお姉様は行動を開始した。つまりは私たちは関わりがない事、これで納得できた?」

「……」

「まあ、いいじゃない。そんな事。異変解決を邪魔するものは容赦なくぶっ飛ばせばいいだけでしょ。今までとなにも変わらないわ」

 

 霊夢は仕事モードに入ったようで、いつのまにか二つの陰陽玉を左右に展開して、空へと飛び立つ。

 魔理沙は私たちの方を数秒睨むように見つめていたが、霊夢の後を追うように箒に跨り飛んで行った。

 

「妹様、行かせてよろしかったのですか?」

「良いのよ。だって、楽しそうな事を仲間外れにするようなお姉様の味方なんて、嫌だもん」

「……お嬢様、私は門番として与えられた任務をどうすれば.」

「そんなの放棄すれば?お嬢様も美鈴を私のお供にしたことぐらい知ってるでしょうし。それにさっきの闘いで少し痛むんじゃない?」

「……流石は妹様です。実はさっきから左腕に上手く力が入らないんですよ。どうやら骨をやってしまったみたいで」

「なら、ここで少し休んで行こうか。霊夢達が戻ってくるまで」

 

 そう言って私と美鈴は、博麗神社の本堂の奥にある縁側へと腰を下ろした。

 

 

 

 金髪の少女、魔理沙は後にこのような話をする。

 

 霊夢とあの格闘家の試合はなにをやったのか、全然分からなかった。

 

 ―――あれが分かるとすれば、2人と同等かそれ以上の力を持つ者だけだろう。

 

 と。

 




遅くなり申し訳ございません。
いろいろと忙しくなってきたので、次の投稿がさらに遅くなる可能性があることをご了承ください。

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