吸血鬼で魔法使いの少女は遊びたい   作: 夕凪

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紅霧異変【前】

 紅魔館内部へと正門から堂々と入った霊夢は、内装に対して悪趣味だと感じていた。

 

 赤を基調とした壁に赤を少し暗めな感じにした柱、黒のミラータイルが敷き詰められている。

 よく分からない絵画などが飾られており、時々中の絵が動くやつもあった。

 

「これは目に悪いわ、さっさと帰りたい」

 

 袖から無造作にお札を取り出し、後ろと左右に放つ。

 放たれたお札は真っ直ぐ飛び、武装していた妖精メイド達に命中した。

 妖精たちはそのまま一回休みになる。

 

「妖精にメイド服……妖精なんて碌に使えないでしょうに」

 

 あんな雑魚共に何か出来る訳がない。

 遊ぶ事が仕事みたいなやつらに、メイドとしての仕事が果たして務まるのだろうか?

 

「ええ、だから私が出る事になるのよね」

 

 霊夢の言葉に何者かが返答する。

 霊夢は特に驚くこともなく、声がした方に顔を向けた。

 

 中央にある大きな階段の上に、銀髪を揺らし、足が見えるほどの短いスカートを着たメイドが立っていた。

 足や背中などに複数のナイフを所持しており、手元には銀の懐中時計を所持している。

 

「一応聞いておくわ、何者?」

 

 霊夢は右手で弄んでいたお祓い棒をメイドへと向ける。

 

「申し遅れました。私はこの館のメイド長、十六夜咲夜と申します。随分早く着いたのですね?博麗の巫女?」

 

 メイド、十六夜咲夜は相手から視線をはずさず、無駄な動きが一切なくお辞儀の動作を行なった。

 

「ええ、面倒なのは放置かすぐに片付けるのが手っ取り早いから。それに門番が居なかったし」

「……ああ、そういえば」

 

 咲夜は思い出す。

 レミリアが、美鈴をフランの同行者として指示されていたことを。

 

「はぁ……」

 

 咲夜は小さく溜息を漏らす。

 門番がいなければ内部に入ることなど簡単にできる。

 美鈴はあれでも結構強い部類に入るのだ。

 昨夜本人の口から褒めることはないだろうが、内心では高評価を頂けている事を美鈴は知らない。

 

「私を前にして溜息とは、いい度胸ね」

 

 咲夜のそのため息に、舐められているのかと、霊夢が少しだけイラついた態度を見せる。

 

「……ええ、これから行う掃除のことを考えれば尚更ね」

 

 侵入者に対して気を回すほどお人好しではない咲夜。

 

 彼女の言う掃除とはこれから散らかるであろう館の掃除。

 だが、霊夢にとっては自分のことを倒すと言われているに等しく、実際にそう感じ取っていた。

 

「言ってくれるわね」

 

 霊夢は霊力を込めたお札を三枚、昨夜の方へと飛ばす。

 咲夜はそれを軽々と避け、階段を飛び越えて一階の床へと降り立つ。

 

「へぇ、結構身体は軽いのね」

「ええ、ここではこれぐらい普通ですからね」

 

 そう言って咲夜はナイフを取り出し、霊夢へと投げた。

 なんの力も込められていないナイフは、霊夢の手によって簡単に掴まれ懐へと収められた。

 

「お土産として頂いておくわ」

 

 さっさとナイフを胸にしまい込んだ霊夢は、二枚のカードを取り出す。

 咲夜はそれを見て、なるほどと言葉を零した。

 

「幻想郷なら幻想郷なりのルールでって事ですね」

「らしいわ、私にとって妖怪なんて有象無象と大して変わらないのだけれどね」

 

 霊夢が取り出したカード、又の名をスペルカード。

 幻想郷の管理者が作り出したルールで、相手を殺すことを禁じた遊び。

 弱い人間でも妖怪と渡り合える様に作られた遊戯。

 製作者曰く、人と妖怪の数を合わせるための方法──だと。

 

「さて、それでは私も」

 

 咲夜も二枚のスペルカードを取り出し、無造作に持っていたナイフを宙へと放り投げた。

 綺麗な放物線を描き、重力に従って地面へと刺さる。

 

 そのナイフが突き刺さる瞬間、メイドと巫女は同時に動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妹様、咲夜さんは霊夢さんに勝てますか?」

「うーん、どうだろう。いい勝負じゃない?」

 

 スクリーンを見て戦闘を行う二人に対して呟いた美鈴に、私は返答する。

 既に画面上では凄まじい数のナイフとお札が飛び交っていた。

 どちらも殺傷能力があり、常人なら当たれば致命傷になるだろう。

 たが、二人はそれぞれの弾幕を綺麗に躱し、一発の被弾もなく戦っている。

 

 互角と言っても過言ではないかもしれない。

 たが、美鈴は当たり前のように口を開いた。

 

「ですが、咲夜さんの方が有利ですよね?」

「どうしてそう思うの?」

 

 フランは尋ねる。

 美鈴は少し興奮して答える。

 

「フラン様はあまり分からないでしょうが、咲夜さんには〈時を操る程度の能力〉があります。これは文字通り、自分以外の全ての時間をストップしてしまうものです。咲夜さんが放ったナイフは先程から回収されて使い回されています。手数が多く、武器が尽きることが無い、咲夜さんの方が有利ではないですか?」

「時を操る……ねぇ」

 

 そう言えばやけに私がまだ外にいた時よりも紅魔館が広いと思ったら、咲夜の能力で広げていたのか。

 〝時とは時間のことであり、時間とは空間のことである。〟そんな言葉が書かれた魔法の書が図書館の何処かにあったような気がする。

 時間は空間やそこにある物や人が元々持つもので、それが無くなれば壊れることも動くこともできずに死ぬことも許されない。

 

 一時期、壊れることもないとの懐かしい言葉があったので調べてみたのだ。

 たが、動くことも死ぬこともできないと書かれていたのでそれでは面白く無いと思い、時間に関して触れるのをやめた。

 こんなにも身近なところに時間を操る者が居るとは思わなかったが、今からでも研究してみようか?

 

 いや、今更あのメイドに何を聞けば良いのだろうか。

 お姉様のメイドだからと適当にあしらってきたのに、私に対して絶対良からぬことを思っているはずなのに。

 まあ時間に関しては齧った程度でも、進めたり遅くしたりは出来るので、それだけでも良いような気はするが。

 

 ああ!なんで興味を持たなかったんだ、過去の私!

 

「……あの、妹様?」

「あー、だからあの時……いや、でもそれだと―――」

 

 時間を加えれば、もっと良い方法が思いつけただろうに。

 だけど、それだと私に対するリスクもあるなぁ。

 回避できないことも無いけど、それだと少しずつ遠回りになる。

 

「妹様!」

「んあ?ああ……美鈴、どうしたの?」

 

 おっと、少し考えこんでしまっていたようだ。

 興味があるものに集中してしまう私の悪い癖が出てしまった。

 一度、それで実験をミスってしまったことがあるので気を付けていたはずだったのだが……。

 

「何か考え事でも?」

「少し咲夜の能力について気になってね。体に負担かかりそうだし」

 

 美鈴に適当に考えた言葉を返す。

 私がやろうとしてる事には感づいていないが、バレれば止められるだろう。

 だからはぐらかすのだ。

 

「妹様もそう思いますか……私も少しは役に立ちたいのですが、咲夜さんはなんでも一人でこなしてしまいますからね……」

「……ふーん、そうなんだね」

 

 いや、知らないし。

 お姉様のメイドとしか思っていなかったから、別に負担がかかっているとか知らないし。

 

 メイドをやっている時点で忙しいのは明白であり、ろくに使えない妖精をメイドなんかにしている事で仕事が増えるのは当たり前だろう。

 今更それでどうにかならないかと考えるのはおかしい。それなら仕事量を減らすために最もまともなメイドを雇えばいいだけの話だ。

 咲夜以外にもメイドをする人間なんて、探せばいくらでもいるだろう。

 

 それをしないのは、お姉様の勝手な考えか、若しくは本人がこの忙しさを楽しんでいるかの二通り。

 他にもあるかもしれないが、本人に聞かないとわからない時点で、答えは出ない。

 

「妹様!咲夜さんに異変が!」

「ん?どうしたの?」

 

 私はスクリーンを覗く。

 そこに写っていたのは、得意げな顔の霊夢と傷だらけで壁に打ち付けられ座り込んでいる咲夜の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

「はああアァァ!!」

 

 咲夜はありったけのナイフを霊夢に向かって投げる。

 単純な攻撃ではなく、いろいろ小手先と技術を含めたやり方を使用し、暗殺に特化させた技。

 

 だが霊夢はその全てを躱し、札を投げ返す。

 咲夜はそれを難なく避けるのだが、先程から何故かお札が届いて来なかったりするのだった。

 

「……貴方、私のことナメてるの?」

「さあ?どうでしょうね?」

 

 霊夢は口元を笑わせながら言う。

 いつもの咲夜なら冷静な対応をするのだろうが、今の咲夜は冷静さを失っている。

 霊夢のその行動は効果抜群で、咲夜はナイフを手に持ちお得意の接近戦へと持っていく。

 

「流石は博麗の巫女、ね!」

 

 咲夜のナイフの斬撃を全て避け、平然と立っている霊夢。先ほどとは違い、お札などは投げたりしていなかった。

 その態度は更に咲夜から冷静さを失わせ、単調な攻撃が増えていく。

 

「でもこれは避けられないでしょう!!」

 

 咲夜は手に懐中時計を取り出した。

 霊夢はそれを見てもその場から動かなかった。

 

「『時よ、止まれ!』」

 

 瞬間、全ての色がモノクロへと変わり、咲夜だけの世界へと変わった。

 霊夢はその場で動かず立っていた状態で止まっている。その姿に咲夜は笑いながらナイフを首元に近づけた。

 

 その時の霊夢の表情はひどく無表情だった。

 

「────え?」

 

 咲夜は理解ができなかった。

 目の前に広がっていたはずのモノクロの世界が、咲夜だけの世界が鏡が割れるようにヒビが入り、時間が止まっていた世界が戻ったことに。

 しかも、咲夜の手足が何かに拘束され、力も使えなくなっていた。

 

「何よこれ!」

 

 咲夜は必死に解こうとするが、どう動いても手足の拘束は解けない。逆に締め付けが酷くなった気がした。

 

「そのままハマってくれるとは、意外な結末だったわ」

 

 霊夢は咲夜の目の前に立つとそんなことを呟く。

 そして一枚のカードを取り出した。

 

 咲夜は何をしたと聞きたかった。だが、体から力が抜けていき、口を開くことができなかった。

 

「──霊話『とある昔話』」

 

 霊夢のスペルカードが発動する。

 咲夜の目の前にいくつもの光線式の弾幕が生成され、それらが次々と重なる。

 次第に重なりが増えたところが真っ白になり、視認することができなくなってきた。

 

「じゃあね、また会いましょう?」

 

 霊夢はそう言って紅魔館の奥へと進む。

 

 次の瞬間には、咲夜の全身に鋭い痛みが走った。

 

「がああアァァッ!!」

 

 拘束された状態からの攻撃。

 そんなモノから逃げられる術は無く、咲夜はもろに食らった。

 全身が焼かれているように痛い、実際には焼けてないのだが痛い。

 

 霊夢が使ったスペルカードはたまたま思い付きで作ったものであり、特に意味は込められていない。

 だが、無意識のうちにカードには力が宿っていたのだ。

 

 巫女になんの対策もせず、戦いを望んだメイド長はなす術も無く、無様にやられたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「やはりこうなるよね」

 

 フランは一人になった和室でスクリーンを見ながらお茶を啜る。美鈴が咲夜がやられた時に走って何処かに行ってしまい、独りぼっちとなったのだ。

 

「まあ、まだ戦えた方なんじゃない?」

 

 フランはそう言ってスクリーンを解除する。スクリーンの役目を果たしたモノは、ポリゴンが消えるように粉になって、空中へと消え去る。

 

 それを確認したフランは羽を目一杯広げ、飛び立つ準備をする。

 目標は紅魔館の屋上、多分お姉様ならそこで霊夢と戦うと考えたからだ。

 

「さぁて、行こうか」

 

 フランは紅魔館に向けて飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔理沙は紅魔館の入り口で霊夢と別れた後、大図書館へと訪れていた。

 何故と問われると、魔法使いとしての直感と興味本位と答えるだろう。

 魔法使いにとって、本当は魔法の知識の元であり、それが魔法に直接関係なくとも、何かしらのアイデアをくれる。

 魔理沙が服の中にこっそり忍ばしている薬瓶の中身は、実は魔力に感知して光線を放つという代物だ。

 

「ここから魔力の反応がするから来てみたが……これはまた凄い量の本だな……」

 

 数百ともあろう本棚が全て埋まっており、その光景は圧巻だった。

 

 魔理沙はいま魔法の研究に勤しんでいる。

 だが、最近はその研究も滞りを見せており、自身の知識だけでは先に進めないと悩んでいた。

 そんな時にこの場所を見つけたのだ。期待するのは当たり前だった。

 

「あら、いつの間にやらネズミが入り込んだようね」

「パチュリー様、私が掃除しておきます」

「そう。よろしく」

 

 入口にて感動していた魔理沙だが、直線状に大図書館の主を見つける。

 紫色の長髪の少女と赤色の短髪の悪魔みたいな尻尾を付けた少女だ。

 彼女たちは何か会話をしたようだが、魔理沙は聞き取れずにいた。

 

 瞬間、悪魔みたいな少女が黒色の光線を魔理沙に向けて放った。

 

「うお!?」

 

 魔理沙は持ち前の動体視力と身体能力を生かして、間一髪でその攻撃を避ける。

 

「おい!突然何をするんだよ!!」

「あら、今のを躱しましたか。ですが、次はありませんよ?」

 

 悪魔少女は魔理沙に次々と光線を放つ。

 最初の一、二本は避けたが、三本目に直撃し爆発を起こした。

 

「掃除完了ですかね」

 

 そう言った悪魔少女は主の元へと戻ろうとする。

 

「ゴホ、けほ……。いやぁ、まさかまともに喰らってしまうとは……まだまだ私も精進が足りないようだな。霊夢に見られてたらどやされたところだぜ」

「!?……まさか私の攻撃を防いだ?」

 

 爆発による煙が霧散すると、魔理沙は無傷で立ち上がろうとしていた。

 彼女の傍には、いくつかのお札が落ちている。

 そのお札は、霊夢が作った結界の御札であり、その防御力は一級品である。

 魔理沙の相手を見ずに突撃することを心配に思い、霊夢が密かに魔理沙の服に仕込んでいたのだ。

 

「……そこそこやるようですね」

「おいおい、私は突然攻撃される覚えはないんだが?」

「私はここの管理を任されているのです。侵入者を発見したら、排除するのが当然では?」

「ここは一見様はお断りってか。確かのこの量の本を解放したら、監視が大変そうだな」

「減らず口を叩ける余裕をお持ちのようですね。貴方、名前は?」

 

 悪魔少女はそう言って、妖力を練り上げる。

 雑魚だと魔理沙は思っていたが、どう見ても大妖怪に匹敵しそうな妖力だった。

 

「……人に名前を尋ねる時は、まず自分からってのは知らないのか?」

「良く回る口ですね。私の名前は……そうですね、小悪魔とでも言っておきましょうか」

「あくまでも教える気は無いってか……私の名前は霧雨(きりさめ) 魔理沙(まりさ)だぜ!」

 

 そう言い放ち、魔理沙は薬瓶に魔力を通し、宙に放り投げる。

 薬瓶は空中で崩壊すると、小悪魔をターゲットとして白や黄色、緑色の光線を放った。

 

「魔道具ですか!やりますね!」

 

 悪魔少女、小悪魔はその攻撃を見て、喜びの声を上げる。

 どうやら彼女は主以外の魔法使いを見るのが初めてであり、新鮮だったのだ。

 

「しかし、私には通用しませんよ?」

 

 だが、すぐさま戦闘態勢に移ると、その光線を素手で弾く。

 弾かれた光線は本棚に当たるが、防御魔法でも貼ってあるのか、傷は一切付いていなかった。

 

「これを簡単に凌ぐのか……なら次はこれだ!」

 

 魔理沙は魔力を練り、弾幕を張る。

 小悪魔の動きから、近接戦闘になるのは避けようとした策だ。

 

 実際に、小悪魔はその弾幕を避けることに集中しており、近づいてくることは無かった。

 

「次!」

 

 別の薬瓶を取り出し七本ほど放り投げる。

 すると、魔理沙を中心に、七色の光線が小悪魔を襲った。

 

「いつまでも攻撃できると思わないことですね!」

 

 小悪魔はその光線を避けると、黒色の光線を二本放つ。

 魔理沙はその二本を相殺すると、箒に跨り、凄いスピードで小悪魔へと突っ込む。

 その後ろからは、星型の弾幕が大量に放たれていた。

 

「な!?」

「油断大敵だぜ!」

 

 小悪魔はまさか突っ込んでくると思っておらず、回避行動が間に合わない。

 すぐさま防御魔法を展開した。

 

「それを待ってた!スペルカード発動―――彗星〈ブレイジングスター〉」

 

 魔理沙は直ぐにスペルカードを取り出し発動する。

 その攻撃は真っ直ぐ突っ込むのだが、魔力を前方に展開し、破壊力を持たせることで、彗星のごとき高速攻撃なのだ。

 その速度はマッハを超えることもあるので、小悪魔には一瞬で目の前にきたように見えた。

 

「やば!?」

「逃がさねぇからな?」

 

 小悪魔は防御魔法の硬度をあげるが、時すでに遅し。

 魔理沙のブレイジングスターのほうが早く、防御魔法に魔力を展開する前に、小悪魔はやられてしまう。

 

「へぇ……」

 

 すると、静観を続けていた紫髪の少女が徐に立ち上がる。

 

「貴方、魔理沙だっけ?それだけの技量と技術には感動したわ」

「パチュリーって呼ばれてたな。褒めても何も出てこないぜ?」

「……だけど、まだまだ魔法使いと呼ぶには幼稚すぎる。本当の魔法ってのを見せてあげるわ」

 

 紫髪の少女、魔女のパチュリー・ノーレッジは本に魔力を通すと、大量の魔法陣と弾幕を展開する。

 その量は、さっきの魔理沙が出した弾幕量とは比べ物ならないほど多く、避けることだけで精いっぱいだった。

 

「なんだこの弾幕量は!?」

「これだけで驚いていては、命がいくつあっても足りないわよ?」

 

 パチュリーは次に火玉や水玉を弾幕に混ぜて発射し、土の壁を生成することで視界を遮りつつ、風魔法で弾幕を曲げて追尾させる。

 常時、七つ以上の魔法陣が展開されており、その全てを完璧な制御下に置いていることが分かる。

 

 魔法使いが同時に魔法を展開できるのは、上位技術とされており、才能があっても三つほどが限界である。

 理由は単純明快で、魔法の演算を行う脳が焼き切れるからだ。

 

 魔法の使用には魔力とイメージが必要となる。

 イメージが持てない魔法は魔力が霧散するか、暴走するかの二択であり、発動にかかる威力や制御などは全て術者が無意識のうちに計算して行う。

 それらの計算を行う演算領域を脳に持っており、それが限界を超えると神経が焼けて植物状態となるか、最悪死に至る。

 

 それをいとも簡単に七つ扱えるという事は、人間を辞めていることの証明だった。

 

「人間に扱える代物じゃないぞ!?」

「あら、私がいつ人間だと説明したかしら?」

「……人外でこの魔力か。魔法使いじゃないな。魔女か」

「魔女を知ってるのね。説明が省けて助かるわ」

 

 魔女は魔法使いを表す言葉として使われることが多い。

 だが、実際の魔女は種族であり、人間からでも進化して成ることができる種族でもある。

 魔法を使い、その深淵を辿る者のみが鳴ることができる魔法使いの境地だ。

 

「どうやって成ったのか、教えてもらいたいものだな」

「……魔女になっても、良いことなんて無いわ。長生きできる分、暇なだけよ」

 

 

 パチュリーは、雑談はこれで終わりと言わんばかりに、攻撃を強めた。

 

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