吸血鬼で魔法使いの少女は遊びたい   作: 夕凪

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紅霧異変 【宴会】

 一人の吸血鬼の思いつきから始まった異変

 

 ──【紅霧異変】が終わってから2日後。

 

 博麗神社の境内に沢山の人や妖怪、異変の首謀者などが集まり、何本か育っている桜の下にシートを引いたり食べ物や酒を用意したりしていた。

 

 あの霧雨とか言う白黒の魔法使いの話によると、異変や大規模なイベントが終わった後は宴会が絶対行われるらしい。

 霊夢本人はあまり乗り気では無いようで、終わった後の片付けについて愚痴を言っていた。後でお姉様に言って咲夜でも向かわせることにするか。咲夜なら時止めで、すぐに手早く終わらせるから大丈夫だろう。

 

 宴会には何やら強そうな力を持つ者も多数出席しており、始まる前の前哨戦とでも言うのだろうか?

 勝手に戦っていたり飲み合いが始まっていた。時々青空に花火が打ちあがるという不思議な光景が見れる。

 

 私も参戦しようかと思ったが、多分お姉様と霊夢あたりがうるさいので、飲めないことはないワインを先程から二瓶ほど開けている。

 

「フランー、私にもぉ、ヒック、構ってヨォォぉぉ...」

「はいはい、あっちに咲夜がいるでしょ?構ってきてもらいなさい」

 

 たったワインを二樽飲んだだけで泥酔してしまったお姉様。それから受けるダル絡みに適当に相手をして、私は一人昼間の飲みを楽しんでいる。

 お姉様は咲夜に「フランが冷たいぃぃぃィィ」と言いながら泣き付いており、咲夜はそれに苦笑いをしながらも丁寧に対応していた。

 霊夢はあんな奴が異変の主犯だったのかと、こめかみを抑えてため息を吐いている。

 その気持ちは分からなくない。

 正直、私の姉なのかと疑いたくなる。

 

 だが、やはりこの世界は良い。

 外に出るだけで化物だ怪物だなどと騒がれていたあの頃とは違い、今はこうして外に出ることが出来る。

 私は地下生活だったが、ここに来ただけでも紅魔館のメンバーにしては生き生きとして良くなったように思えるのだ。

 人は一日の何処かで日の光を浴びなければならないと誰かが言っていたと思うが、それは人だけではなく妖怪や神などの、人外も当てはまるのだろう。

 

「霊夢ぅぅー、私に構ってくれヨォー」

「何あんたも勝手に酒を飲んでるの!!」

 

 たださえ忙しい準備に、こっそりと酒を飲み余計な邪魔を入れた魔理沙は、霊夢の鉄拳制裁によって強制的に目を覚まされた後、宴会の準備と片付けを手伝わされる羽目になったのだった。

 自業自得である。

 

 忘れさられた者たちが集う幻想郷、名前を聞いた時には胡散臭いと思っていた。だが、こうして自由にのんびりと生きれる事は良いのかもしれない。

 別に私達は忘れられたわけではないが、妖怪と人間の数の調整のために外から連れて来られる事もある。所謂神隠しというやつだ。

 

 今回のは神隠しではなく、意図的に行った事なので調整はすでに終わっている。

 いやぁ、初めて空間が裂けた時はびっくりしたよ。

 まさか向こうの方から迎えにきてくれるとは思ってなかったし。

 呼んだのは私なんだけど、呼ぶために送った手紙が数年前で、すっかり忘れてたし。

 

「……ねぇ」

「ん?どうしたの霊夢」

 

 一人で何にも咲いていない木の下で空を眺めていた私に、霊夢が話しかけてきた。

 表情から真剣な内容だとわかる。だからだろうか、私はしっかりと霊夢の目のその奥まで見る。

 

「貴方……なにを考えてるの?」

「突然どうしたの?」

 

 霊夢は胸元から八枚のお札を取り出すと、それを周りに投げる。

 霊夢と霊力の糸で繋がっているそのお札は、霊夢の力を感じ取るとすぐさま結界が完成した。

 性質から見て遮音の類らしい。私のために遠慮でもしたのだろうか。

 

「今回の異変で、貴方は躊躇なく姉の命を揺るがした。貴方のためにやっていたはずの姉は、虚を突かれて抵抗できなかった。貴方が太陽の光が効かないことを伝えればいい、それで終わるはずだった。どうしてそうしなかったの?」

 

 霊夢は私から視線を外す事なく、逃れることは許さないとばかりに、眼力が強かった。

 

 確かに霊夢の言う通りだろう。

 私がお姉様に、弱点が克服できたので空を覆う必要は無いと伝えれば、辞めてくれたのだろうから。

 だが、自分が克服できていない以上、そのままプライドが邪魔をして、逆に引っ込めない可能性の零では無かった。

 

「……貴方って言うの辞めてくれない?名前があるから名前を呼んで」

 

 私は軽く溜息を吐いて立ち上がる。

 こういう時は勘が鋭いのは嫌だなぁ。

 

「……私は―――いや紅魔館の住人は、幻想郷に来て良かったと思ってる」

「……」

 

 私は語り出す。

 

 別に言わなくても良かったのだ。

 

 だが、何故か口が勝手に動いてしまう。

 

「外の世界で私達は吸血鬼という種族だけで命を狙われ、それを返り討ちにして排除すればするほどその地位と名誉、畏怖の対象としての象徴と特徴は増えた。私が生まれて数十年した時に、家族の隙を突いて外に出た。近くにあったちっぽけな村に行ったら、どんな顔をされたと思う?」

 

 霊夢は展開が予想できたのか、少し表情を暗くする。

 

 ──―化け物でも見る目で、私に関わりたくないと隠れたのさ。

 

「いやぁ、あれは流石に悲しいよね。何にもやっていないのに、最初から避けられる感覚。あなたは味わったことがある?無いだろうね、自分から避けようとしてもこれだけの人脈があるんだし」

「私だって別に欲しくて広がったわけじゃ……」

 

 そこまで口を開いて、霊夢は口を止める。

 

 気づいたのだ、私が言いたいことに。

 

「そう、霊夢は別に欲しがったわけじゃない。だけど、私は欲しかった。友達と呼べるような関係が」

 

 私は顔を伏せてしまい、霊夢から表情を読み取ることができない。

 だが、どう感じているかは分かっていた。

 

「まあ、そこから先は分かるよね。私が悪魔の妹って呼ばれる理由」

 

 悪魔とは多分レミリアのことだろう。

 

 だが、それとはまた別の意味で悪魔の妹だと思う。

 村人たちから逃げられた時、その時に感じた気持ちは、まるで悪魔と契約してしまった時のように、黒く悲しい気持ちだった。

 

「まあ、その後はわかるよね?その村がどうなったか」

 

 霊夢は神妙な顔をする。

 

「……村を地図から消し飛ばした」

「正解ー!すごいね!流石は博麗の巫女!」

 

 そう、私はその村を消し炭にした。

 跡形も一切残さず、地図から消し去った。

 後からその衝撃に気づいた父親が飛んできたが、そのころには村の痕跡さえ残っていなかった。

 

 悪魔の妹が誕生した瞬間だった。

 

「……馬鹿にして喧嘩を売ってるのなら、買うわよ?」

 

 私は薄ら笑いをしながら、ワインを飲む。

 霊夢は私を睨み、そして目を瞑って、ため息を吐いた。

 

「だからね、私は私たちを除け者にしないこの場所が良いのさ」

 

 

 そう言って、ワインを一口飲む。

 

 

「……フラン。貴方、酔ってるの?」

 

 酔う?この私が?

 

 そんなことがあるはず無い。

 私はどんな事にも耐性があるし、ワイン如きの度数じゃ酔わない。

 

 私を酔わせるのなら、外の世界にあるスピリタスぐらい持ってこないとね。

 まあ、多分飲んだら、酔うんじゃなくて吐くんだろうけど。

 

「酔うわけないじゃん。こんなワインで」

 

 霊夢は私の言葉を聞き、私の方をじっと見ながら、待っている。

 どうやら私の反応を見ているようだ。

 

 早く続きを話せと。

 

 せっかちな巫女である。

 

「……今回、お姉様を半殺しにしたのにはもっと明確な理由があるよ」

「なにかしら?」

 

 霊夢は一向に視線を外さない。

 

 あー、これは正直に話した方がいいな…。

 

 ふざけるつもりだったのに。

 

「……ただの嫌がらせ」

 

 ま、だからって話す訳が無いけど。

 

 わざわざ他の人に教えるようなことでも無いし、これは私の問題だからね。

 

「そう……素直に答える気は無いのね」

 

 霊夢はため息を吐いて、指を軽く弾き、結界を解く。

 

「あれ?力尽くにでも聞かないの?弾幕勝負なら、いつでもやるよ?」

 

 話が通じなければ弾幕勝負、この世界に広まった当たり前。

 私ははぐらかしただけで、話さないとは言ってないし、聞きたかったら勝負すればいい。

 

 この世界のルールだ。

 

「別にいい、今の私が貴方に挑んでも勝てる見込みが無い」

「天下の博麗の巫女が、そんな弱気でいいの?」

 

 異変解決の専門家、幻想郷屈指の強者で調和を保つ者。

 そこらの雑魚妖怪なら片手でも屠る強さを持つ彼女が、私に勝てないはずがない。

 

「……貴方と最初に神社で出会った時、私は直感で感じたわ。貴方にはどう頑張っても勝てない絶対的な強者だとね」

「そんな事はないよ。私なんかより咲夜とかパチュリーの方が強いよ、多分」

 

 私なんて、そこらにいる雑魚妖怪にも本気で行かなければ負ける。やった事ないけども。

 

 約五百年も引きこもっていた吸血鬼に、そんな強大な力などある訳がない。

 まだ美鈴や咲夜の方が毎日努力している分、強いのだろう。

 

「貴方、自分に対する評価は随分と低いのね。一回、第三者目線で自分を観察して見るといいわ」

「……アドバイスありがとう。今度そうして見るよ」

 

 私は自分の事は、正当な評価をしているつもりなんだけどなぁ。

 霊夢から見てそうじゃないと言うのなら、また別の人にでも聞いてみるか。

 

 

 まあ、その者の中身を見れば、評価は結構変わると思うけど。

 

 

 私が、私でないことに気づかれる前に、どうにかしないとなぁ。

 

 

 

「霊夢〜、勘弁してくれよぉ……」

 

 魔理沙が酒樽を運びながら、根を上げていた。

 どうやらだいぶ苦労している感じだった。

 

「うるさいわね、貴方が勝手にお酒を飲むからでしょう?早く準備する!」

「へいへーい……」

 

 霊夢は魔理沙の情けない姿を見て苦笑するも、喝を入れて準備へと戻る。

 

 私も何か手伝おうかと思ったけども、さっきまであんな話をしてた訳で、ワインも飲んでいる。

 酔っ払いが作業に加わっても邪魔になるだけだろう。

 

 先ほど追いやったお姉さまの方を見る。

 お酒が回って気分がいいのか、昨夜にがっつり甘えており、カリスマのカの字もなかった。

 

 

「……この平和は、絶対に崩させない」

 

 私は、水平線から徐々に顔を出してきた月に向かって手を伸ばす。

 

 その日の月は、綺麗な満月だった。

 

 




展開が早いです……
すいません

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