きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
これからも、より面白い執筆を心掛けていきたいと思います!
今回の特別編は、リリスの親密度イベントを元に作りました。
それでは、どうぞ。
余の名はリリス。
偉大なる闇の一族の始祖である。
現在、余はエトワリアなる異世界にシャミ子と宿敵の魔法少女二人と共に召喚され、実体を得ていつもより力が使える状態だ。
ならば……始めようか。
―――『エトワリア征服計画』を!
だが、桃やミカンにバレてしまっては上手くいく気がしないので、夢の中に入りこむ力を使って情報収集から始めるとしよう。
ターゲットは決めている。
―――ローリエ・ベルベット。この男だ。
最初は次期女神候補生という優秀な肩書を持ち、クリエメイトの知識量に長けたランプの夢に入ろうと思ったのだが、有力な情報が手に入ったのだ。
この男、ランプの教師らしい。それでもって、奴の作る聖典学とやらの問題に、ランプが頭を悩ませているのを目撃した、との情報を手に入れた。クリエメイトの知識は、ランプよりあると見た。
更にこの男、筆頭神官アルシーヴや女神ソラ、そして他の賢者達からも信頼を得ているようなのだ。
つまり、奴から情報を集め、崩せば、エトワリアは簡単に我が物になるやもしれない……!
ちょうど、奴は眠っているしな。そうと決まれば、早速奴の夢へ潜入だ!!
◇◇◇◇◇
そこは、シャミ子の住んでいたマンションの片隅の、居間のような場所だった。
ただでさえ狭い部屋の整理整頓は行き届いておらず、本が散乱している。表紙の絵柄から察するに、マンガ、だろうな。しかし、多いな。こやつ、どれだけ集めておるのだ?
部屋の奥から音がする。ローリエだろうなと思いながら待ち構えていると、やってきたのは違う男だった。
緑とは世辞にもいえない、真っ黒なはねっ毛の頭髪と、両方とも黒い目をした、冴えない男だったのだ。ここはローリエの夢のはずなのに………誰だこやつは?
「……??? あれ、お客さん、ですか?」
目の前の男は、きょとんとした不思議そうな顔で尋ねてくる。
どういう事だ……夢の中なのに、余のことを認識しているだと!? 相当の強い意志があるか、こちらから話しかけでもしない限り気づかれないと思ったのだが……まぁいい。こやつも、余について完全にバレた訳ではなさそうだ。
「そうだ。事前に連絡したであろう?」
「あれ、そう……でしたっけ?」
「今日がその日だろうが」
「そうか……もうそんな日か……ちょっとそこらの本でも読んで待っててください。お茶を用意しますんで」
そう言って黒髪の男はキッチンへ引っ込んでしまった。
存在を認識されたとしても、余がリリスであると認識されなければ、まったく違う人物として忍び込む事ができる。これなら問題ない。
さて、情報収集を再開しようか。
奴のお言葉に甘える形で、近くのマンガを手に取る。
表紙には、「ひだまりスケッチ」と書かれていた。
私立高校の美術科に通う学生、ゆのと宮子、ヒロに沙英の小アパート・ひだまり荘での日常を描いたマンガ作品か……
マンガを読み進めていくと、気になる事ができた。
「余の出会った人物に酷似してないか……?」
例えば、このマンガに描かれているヒロと沙英。余の邪神像騒動で出会った二人とよく似ている。
特に―――このヒロの常に体重を気にしている所など、余の知っている、体重が増えなくなる像に心が揺れていた彼女そのものだ。
何故、こんなものがあるのだ?
不思議に思い、マンガから目を離すと、偶然目に入ったものに度肝を抜かれた。
「……
そう。散らばる本の中に、シャミ子と変身した桃が描かれている本を見つけたのだ。タイトルには「まちカドまぞく」と書かれている。
何のためらいもなくそのマンガを手に取ると、すぐに開いて中を確認する。
そこに書かれていたことは、余を更に混迷の道へと誘い込んだ。
「封印された魔族……15歳で魔族に目覚めた吉田優子……魔法少女の千代田桃……なんだ、なんだコレは……!!?」
そこに描かれていたシャミ子や桃の容姿や性格から、出会いの過程、地名、そして、余やシャミ子、桃やミカンの
聖典なるものがあり、確かにエトワリアではこちらの様子を知ることができるとはいえ、これは異常だ。
それに……夢というのは、記憶の整理であるとされるほど、記憶と密接な関係を持つ。
つまりこの男は―――
「―――ええい! 偉大なる魔族の余がこの程度で恐れてたまるかっ!」
そこまで考えて、マンガを投げ捨てる。そして、嫌な可能性を己を奮い立たせることで怖い想像を振り払う。
そうして、マンガから再び目を離すことで気づいた。先ほどまで汚く散らかっていた、埋め尽くすほどのマンガの山が綺麗さっぱり、なくなってしまっていたのだ。
いや、違う。一冊だけある。そこの表紙には、こう書かれていた。
『□ららフⅹン◉ジア ■要■密』
「要……密…………? 重要機密か!!」
ところどころファミコンのバグのように文字化けしてて読めないが、おそらく、ローリエの記憶のうち、重要なものと奴が判断しているヤツに違いない!
さ、さっき、ちょっと恐ろしい目に遭ったのだ。コレの内容くらい記憶して帰らないと割に合わん!!
「せめてこの情報だけでも持ち帰ってやる!」
ページをめくる。
『【
「……フン! 余がそんな注意書きに従うと思うたか!」
ご丁寧に注意してきたそれを無視して、再びページをめくる。一体、何が書かれているのか……
ランプの秘密か?
仲間たちの弱点か?
はたまた、神殿の
余がスリルと期待に胸を膨らませながら、
『エトワリアに生まれて最高の気分だ』
―――と、たったその一文だけが書かれていた。
「………………………………は?」
意味が分からなかった。
なぜだ、この男はエトワリアの重要人物であるはずだぞ!?
そんな人物の最重要機密がコレだと!? そんなバカな!
記憶はウソをつけぬ! 口先だけでは誤魔化す事ができたとしても、嘘をついた者の記憶が書き変わるなんてあり得ない! 記憶の勘違いはあったとしても、意図的に記憶を
だとすればこの一文は本当にローリエが思っている事だし、奴が周りに隠すべきと判断している事なのだ………
………が、だとするとより意味が分からん! 何だこれは!?
そう思いながらページをめくる。
『アルシーヴちゃんも、ソラちゃんも、賢者の皆も、きららちゃんも、ランプも、クリエメイト達も――
……みんながいる。それだけで俺は救われているんだ』
「な……何だこれは…何だこれはッ!!?」
『俺は皆の力になろう。かつてみんなが、俺の力になってくれたように』
「クリエメイトの情報は……神殿の秘密はどこだっ!?」
『俺の記憶は、墓まで持っていこう』
「くそぅ! こんな情報では、エトワリア征服など出来るはずがない!」
『彼女達が知っても、弊害を生むだけだ。俺のこの―――』
「こんなことなら、ランプの夢に入っておけば………おや?」
そこまで来て、さらっと入った情報が余の意識に引っかかった。
今、重要な事が書かれていた気がするぞ。
ページを先ほどとは逆方向にめくって、なんと書いてあったか確かめようとする。
えー………っと、確か、これのひとつ前のページだったはず……
『 夢 魔 リ リ ス は シ バ か れ た 』
「………………へっ??」
『 変 身 し た 千 代 田 桃 に シ バ か れ た 』
背筋が凍った。
シバかれたってなんだ!? 何故ここで今、あの魔法少女が出てくるのだ!? こんな事が書かれていたなら、余は見逃しはしなかった! 一体いつ―――
「―――この覗き魔め」
「ひっ!!?」
聞き覚えのあり、かつ底冷えした声が響いた。
ゆっくりと、錆びた人形のように振り向くと。
そこには、変身を終えイメージカラーが合ってない桃色魔法少女な桃がいた。目は黒の絵の具で塗り潰した以上に暗い。
しかも、そんな桃の後ろには見たこともない程に筋肉隆々な男が二人もいるではないか。意味不明過ぎて逆に恐ろしい。
「裁いてやるッ! まな板の上でナマス切りにされるのを待つだけのサバのようにッ!!」
「くたばりやがれベネット……」
「はいッ、サイドチェスト!!!」
「うわあああああーーーーーーーーーッ!!!!?
知らない筋肉が二人もついてるぅーーーーッ!!」
余は、あっという間に襲いかかってきた桃と見たこともない筋肉モリモリ・マッチョマン二人に捕まって。
「まぞく裁きじゃあァァァァァアアアアアァァァァァーーーーーーーーーーーーーッ!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーッ!!?」
「地獄に落ちろベネットおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
「ベネットって誰ぇぇぇぇぇ
「はいッッッッ‼‼ サイドチェストーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
「ひぎゃあああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーー!!!?」
関節やら投げ技やら……余は、これまでないほどにボコボコにされた。
―――覚えてろ、ローリエ・ベルベット!!
これで勝ったと思うなよぉぉぉーーーッ!!!
◇◆◇◆◇
―――今日という朝ほど、心臓が凍るという言葉が相応しい朝はない。
ベッドから飛び起き、ある事実を―――『シャミ子のごせんぞ・リリスに夢の中に入られた』という事実を認識した俺は、既に細かい部分がおぼろげになっている夢を思い出していた。
完全に油断していた。
前世の夢を見ている最中にごせんぞがやって来て、前世の頃の俺の姿を見られた上に、かつて愛読していた
危うく
あらかじめごせんぞに侵入された時の対策用セコムを考えておいて本当に助かった。だが、念には念を入れなければ。
身支度を済ませた俺は、きららちゃん達の里に転移して、シャミ子を探した。
「お、いたいた。シャミ子ー!」
「あれ? ローリエさん、でしたよね?」
「あぁ、そうだ。実は、君のご先祖様にお話があるんだけど……ちょっと像を貸してくれないかな? 話したいことが出来たんだ」
「話したいこと?」
「ちょっとプライベートな相談事でな……二人きりにしてくれると助かる」
「そういう事なら……でも、その像は大事に扱ってくださいね?」
「りょーかい」
そうしてシャミ子から距離を取り、周りに誰もいないことを確認すると、ごせん像に話しかける。
「おいごせんぞ」
「誰が貴様のご先祖だ」
「昨晩、俺の夢に入りましたか?」
「…………入ってない」
「…………………『魔法少女千代田桃・サイドチェスト~ベネットを地獄へ落とせ~』」
「うわあああああああああああああ! 筋肉はヤメロオオオオォォォォォォッ!!」
「バッチリ入ってんじゃねーか」
俺が夢の中で編み出したセコムの名前を出すと、トラウマレベルで反応した。下手にすっとぼけても無駄だと分からせた所で、本題に入る。
「―――あの夢の内容、誰にも話すなよ?」
「話すかァッ!! 思い出したくもないわあんな夢ッ!!! 何だったのだアレは!!? あんなに意味不明で屈辱的な目に遭ったのは初めてだぞ!!?」
あらら。予想以上に俺のセコムがごせんぞに効いてるな。宿敵として知っている桃と、初見の筋肉モリモリ・マッチョマン二人が、ベストマッチに融合していたお陰かもな。
「もし誰かに話したら、夢に入られた事を桃ちゃんとミカンちゃんに伝えて、現実世界でも折檻して貰うからな」
「なんで脅すの!? 追い打ちの脅迫がエグ過ぎない!!?」
「言っとくけど拒否権はないぞ。何ならここでお前の像を粉々にしてもいいまである」
「怖い! この男怖い! シャミ子や、助けてくれーー!!! ローリエ貴様ァ、これで勝ったと思うなよぉぉーーーー!!」
「もう勝負ついてるから」
像を粉々にする下りは流石にシャミ子に泣かれるから嘘だが、この様子なら、別に釘を刺す必要はなかったかもな。
おそらくもう二度と俺の夢に入ってくる事はないだろう。仮に入ってきたとしても、もう一度筋肉モリモリなジェットストリームアタックで再び
俺の秘密―――前世の記憶は、きっと今の仲間達には教えない方がいい。もう過ぎた事だし、慎重に伝えなければ幻滅されるだけだ。仮に秘密を話してもいいと思える程に信頼出来る仲に発展したとしても、話すかどうか、何を話すかは俺次第だ。
「ご、ごせんぞ!? 何があったんですかごせんぞぉ〜!!」
そう改めて認識すると、自分のご先祖の声を聞いて慌てて助けに来たシャミ子の声が遠くから聞こえるのを確認し、どうやってシャミ子に言い訳しようかなと思いながら、秘密が守られたことに安堵のため息を一つついた。
キャラクター紹介&解説
リリス
「まちカドまぞく」に登場する、主人公シャミ子のご先祖様。ランプより豊富な情報を求めローリエの夢に忍び込んだ結果、ローリエのドリームセコムに返り討ちにされるという、原作のランプの夢侵入イベントよりも酷い目に遭った哀れなまぞく。ローリエの前世の記憶に一番近づいた人物でもあるのだが、エトワリア征服のための情報収集に執心していたため、気づく事はなかった。
ローリエ
リリスの夢侵入の標的にされた八賢者。一応、リリスの能力自体は知っていたので対策してはいたが、タイミングを誤ったため、リリスにあと一歩の所まで情報収集をされた。目覚めた後、リリスとの会話でセコムが有能だった事を知り安心する。
千代田桃
ローリエの前世の記憶に『まちカドまぞく』の記憶がバッチリあった為に、ローリエの夢のセコムに採用された脳筋魔法少女。「桃はこんな事言わない」という台詞があったのも、全てはローリエの夢補正である。ちなみにローリエは「シャミ子が悪いんだよ」発言については「原作とアニメで言ってないだけ」派である。
ジョン・メイトリックス
ローリエのセコムに採用された、筋肉の人その1。
アメリカ映画『コマンドー』に登場する、元コマンドー部隊隊長にして大佐。娘の為に軍を退役するなど家族(娘)想いな性格で、拉致された娘を助ける為に敵一派をほぼ一人で壊滅させるという筋肉モリモリマッチョマンの変態っぷりを発揮する。シュワルツェネッガー氏が演じ、日本語版でのCVは屋良氏と玄田氏が担当した。
ちなみにベネットとは、メイトリックスの元部下にして宿敵である。
街雄鳴造
ローリエのセコムに採用された、筋肉の人その2。
漫画『ダンベル何キロ持てる?』に登場する、シルバーマンジムのトレーナーを務める好青年。絵に描いたような人格者であり、服を着ていれば普通に無敵のイケメン。普通のイケメンフェイスに超絶筋肉モリモリなボディという合成写真を疑うレベルの体が特徴。「はいッ‼ サイドチェスト!」の元祖でもある。
ローリエのセコムの街雄さんの場合、彼の本家に対する情報不足のせいで「はいッ‼ サイドチェスト!」しか言わない超強い警備兵となってしまった。
ジェットストリームアタック
『機動戦士ガンダム』に登場する、黒い三連星が使用した攻撃フォーメーションの名前であり、もともとは宇宙での対艦船戦闘用に考案されたものである。 三者三様に異なる彼らのパイロット特性を、最大限に生かすかたちでフォーメーションが構成されている。
ふたば「葉子様! 葉山ちゃん! ジェットストリームアタックを仕掛けるよ!」
よーこさま「わかりましたわ!」
はやま「二人に何吹き込んでるの!?」
ろーりえ「いやだって、三人で“三者三葉”だったから、つい………」
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