きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
…ハッカ・ペパーミン
「―――かかってこい、ドリアーテの操り人形!!
無機物みたいな目した奴に、八賢者が倒せると思うなよ!!」
ローリエが啖呵を切る。
両手に握られた二丁拳銃から弾丸が発射され、ルーンドローンからも砲撃が来る。
初見で躱すことはほぼ不可能な一撃。ドリアーテの腹心・01型57号と呼ばれた少年とて何が起こったのかさえ分からなかった。
ローリエの攻撃で見たものといえば、最初の奇襲に失敗した時の破裂音と周囲の遮蔽物一帯を薙ぎ払った砲撃のみ。判断材料がなさすぎるのだ。
だが、それでも57号は回避を試みる。
「………!」
ローリエの拳銃の弾丸は57号の右脇腹に命中した。もう一発は左の頬をかする。
初めての痛みを自身の身を以って味わう57号は…しかし、表情ひとつ変えることはない。
動きもまったく変わらず、細く見えにくい針を投げ返して反撃する。
まるで、「今、なにかしたのか?」とでも言うように。
「チッ……!」
決して浅くない被弾にノーリアクションの57号の攻撃を、ローリエは外套を翻して防ぎ、叩き落す。
この少年は、さっきハッカの寝込みを襲おうとした子供なのだ。
しかも、気配を消すことに関してはトップクラスといってもいい。
おそらく、この少年の最も得意とするのは―――『暗殺』だ。
針一つといえども、直接食らうべきではないとローリエは判断していた。
……刺さった針の先に、何が塗られていても不思議ではないからだ。
「はっ!」
「………」
57号は近距離~中距離を自在に行き来し、短剣と暗器で追い詰める。
対してローリエは、中距離を保ち、不可視の弾丸とルーンドローンの攻撃で動きを制限していく。
ローリエは、57号をここで仕留めるつもりでいた。もし、ここで暗殺に特化した無感情な敵に逃げられててしまったら、この後…神殿での最終決戦の大きな不安要素になると確信しているからである。
もっとも―――57号は、逃げる算段など立てておらず、ただ機械的にローリエを葬ることに決めているようだが。
続けて、第二の攻防。
今度は57号の方が早い!
57号の急接近に、ローリエは『アイリス』に散弾を込めて、構える。
57号は再びあの砲撃に備える、が。
ショットガンから放たれたのは弾がバラバラに散る射撃だ。
「……!?」
「…へっ」
爆撃読みで距離を離し回避姿勢をとっていた57号。その隙をローリエは見逃さない。
すぐさまアイリスを手放し、パイソン&イーグルの二丁拳銃を57号に向けた。
パァンパァンと、発砲音が響く。
すんでのところで再びの被弾を防いだ57号は、AIのルーチンのようにローリエに接近していく。
そんな少年の様子に、ローリエは気味悪さを覚えた。
(ここまで無反応にできるとは……効いていない、わけじゃないよな?
ノーリアクションも度が過ぎてやがる……不気味すぎるぜ)
実際、57号がやっているような、表情を封じて敵に手の内を悟られにくくするという戦術はある。ポーカーフェイスとも呼ばれるそれは、実に理に適う戦法ではある。
とはいえ、致命傷ではなくとも銃弾1発食らって尚声一つあげない、眉一つ動かさないというのは異常すぎるが。
(―――対象、戦闘継続可能。
攻撃パターンより、遠距離攻撃が得意と分析。
周囲の状況より、身を隠す事は不可能。)
そんな異常性に手を焼いているローリエの心情もまた、57号に読み取られる事はない。
彼は、ただ主の命令に従う人形である。余計な思考は、人形には不要なのだ。
(戦況は硬直。援軍が来る確率75%以上。時間が経てばこちらが不利。
逃走……成功確率は30%未満。なれば―――
―――暗殺プランをDに変更)
57号は、腰に下げていた薬品の一つを、躊躇なく自身に打ち込む。
ローリエは身構える。
57号が自身に刺したのは注射器のような形だ。そこから、何らかの液体が注入していくのが見えた。十中八九、ロクでもないものだろうと考える。
そして……その考えは、正しかった。
「―――――っ!!」
「な!!?」
さっきまでは目に追えていた57号の動きがブレだし、見えなくなっていたのだ。注射器を打つ前と後では雲泥の差、というレベルだ。
「ぐっ!?」
「―――」
「こ、ンのやろ!!」
ローリエは苦し紛れに発砲。
しかし、当たらない。57号はそのまま強烈なインファイトを仕掛け、ローリエは両手が拳銃で塞がったまま、接近戦を強いられる。
そもそも、ローリエは近づいての殴り合いはあまり得意ではない。
スピードではカルダモンに及ばず、パワーではジンジャーに敵わない。防御力もまた、フェンネルに比べると心許ないと言わざるを得ない。
三人にしごかれたこともあって一流ではあった。これなら、かつて『ひだまりスケッチ』のクリエメイト達を攫おうとした盗賊程度造作もないのだが、超一流には届かない。
目の前の少年・57号は、残念なことに…近接戦闘においては超一流であった。特に、暗殺用に拵えた武器を使った短剣術においては。
「うっ……せいっ! でりゃあ!!」
「……………」
57号の無尽に襲い掛かる斬撃に、なすがままのローリエではない。
咄嗟にイーグルを手放し、空いた手で腰に差していた銅剣・サイレンサーを引き抜いて迎撃する。
だが、それでも形勢は不利のままで。
ローリエの外套がククリナイフの斬撃で少しずつ破れていく。このままではすぐにローリエ自身に切り傷がついてしまうだろう、というところで。
ドドジュウッ、と。
「―――!?」
57号の両肩に、レーザーが直撃する。
それを放ったのは、ローリエのルーンドローンだ。
ローリエとて、命懸けの戦いにおいて不利になる接近戦に付き合う理由はない。
ルーンドローンが自動で動き、無防備な57号の背中を攻撃することは、予め命令されていたのだ。
そのレーザー攻撃により、肩甲骨付近に、浅くない火傷ができる。
だが57号は眉一つ動かさなかった。
レーザーが2本着弾しても、動きがちょっと止まっただけだった。
そしてすぐにローリエへの攻撃を中止し、己を攻撃した物の正体を目で追う。
「―――フッ!!」
「!!?」
57号は空高く飛んでいくルーンドローン2機に向かって、ククリナイフを投げた。
薬品の効果で強化された腕力で投げられたそれは、寸分違わずにルーンドローンに命中し、その機能を止めた。
重力に従い落ちていくルーンドローンが地面に不時着すると、57号はその残骸からククリナイフを引き抜いた。その間、ローリエが『パイソン』で妨害するも、ククリナイフが手に戻る時間がほんの少しだけ長くなるだけだった。
「チッ…………来やがれ」
冷汗が顎へと伝う。
ローリエは援護射撃の当てが無くなっても尚、目の前の人形のような少年を逃がさないように挑発する。57号はそれに対して口では答えない。
(接近戦の不利は味わった筈。学習能力の欠如か)
57号は、機械のような感情の籠っていない目でローリエを見据え、再び距離を詰める。
薬剤でブーストされている脚力が、いきなり目の前に現れるかのような瞬間移動を可能にする。
57号のククリナイフがローリエに襲い掛かる。ナイフの斬撃だけではない。蹴りや肘、あらゆる手段をもって目の前の敵を葬らんと全力を出している。
ローリエも全力を尽くして57号の攻撃をいなして反撃しようと食い下がる。だが、薬のブースト前ならまだしも、ブースト後の今となると、どうしても一歩遅れてしまう。
「この……」
「……………」
「なっ―――ぐおおおおおお!!?」
ローリエの頬に拳がめり込み、大きく吹っ飛ばした。
空中で錐揉み回転しながら宙を舞い、地面に叩きつけられるローリエ。
意識を手放してたまるかと顔を上げれば、57号の異変に気付いた。
(こ、コイツ………
さっきの薬の副作用か何かか!!?)
そう。57号の急激なパワーアップのきっかけになったあの薬品。
あらゆる力が増強する―――というだけの美味しい薬なハズがなかった。
ローリエには知る由もない話だが…………実は先程57号が自身に投与した薬品は、ドリアーテ特製の、『滅殺の狂剤』と呼ばれる薬だ。
投与した者の力・瞬発力が爆発的に高まる…という効果があるが、内臓を中心とした全身に信じられないほどの負担がかかり、寿命が縮まるという割に合わない副作用があるのだ。
現在、57号の状態は充血した目から血涙が流れ、負荷がかかりすぎて破れた皮膚からも血が出ている有様だ。ローリエを追い詰めているはずなのに、自身が血塗れになっていた。
それでも、自身の身体の異変を全く気にも留めず、少年の意識はローリエが戦闘継続可能か否かを見定める事に割かれていた。
自身の血にまみれ、感情が消えたような無表情で敵を見据える、年端もいかない少年。誰が見ても背筋が凍る光景だ。
「………対象、戦闘継続可能と判断」
「……!!」
呟いた57号が持っていた物を見たローリエは、目を見開いた。
―――それは、自身が使っていたハズの自動拳銃・イーグルだった。
(ひ、拾われたのか………!)
57号は、相対したローリエの武器の脅威性を認めていた。そして、評価もしていた。
敵に向けるだけで、ダメージを与えられる。魔法や弓矢とも違って攻撃の軌跡が読めない。
ローリエを始末した後でコレを主に届ければ、この上なくお喜びになるだろう、と。
相手は虫の息。だが、この期に及んでどんな手を使ってくるかわからない。
―――ならば、奴自身が開発した遠距離攻撃が可能なこの魔道具でトドメを刺そう。
57号の合理的な思考回路はこう答えを弾き出した。
ゆっくりとイーグルを向ける57号。
ローリエは、さっきのクリーンヒットが効いたのか、立ち上がれずにいる。
だが、目だけは諦めていなかった。
(勝敗は明確。無駄な可能性に縋るとは非合理的で愚かな)
脳裏でそう言いながら、57号は引き金を引いた。
「―――がッ………!!?」
次の瞬間、
首に重いものが直撃する感覚がして。
こみ上がってきたものを吐き出せば、それは真っ赤な液体だった。
それも……数多くの命を奪ってきた57号には見慣れたものだった。
(な、何が起こって……!?)
想定外の事態に驚きを隠せない(といっても表情の変化は微々たるものだが)57号は、震える手でもう一度イーグルの引き金を引く。
―――が、
途中で何かに引っかかったように止まるのだ。
(このタイミングで故障!? 都合が良すぎる………)
「―――残念だったな」
「!!」
ローリエが立ち上がる。
口元の血を拭うと、指を立てて「来い」のジェスチャーをする。
と、57号の手にあったイーグルが、ひとりでに手元を離れ、ローリエの左手に収まった。
57号はわけが分からなかった。
なぜ故障したハズの魔道具がまだ動くのか? なぜローリエは笑っているのか?
……そもそも、首に撃ち込まれたと思しき激痛の元は一体なにか??
痛みでマトモに動かない首に鞭打って周りを見る。そして、そこにあったものに57号は目を疑った。
何故なら……ローリエが手放したハズの
「そのイーグルはな……お人形さんのオモチャじゃあないのさ」
ローリエが言い放つ。
瞬間、ショットガンが
増殖していくショットガンの全ての銃口、そして、ローリエの両手の二丁拳銃の銃口が。
一斉に、57号へ向いた。
「
ローリエの号令と同時に、あらゆる銃器が銃声を響かせた。
57号の肉体に、全方位から鉛玉が撃ち込まれた瞬間だった。
◇◆◇◆◇
―――勝った。
かなり危ない戦いだった。思いっきり重い一撃は貰ったが、毒の類は受けていない。
奴の戦い方はおぞましく恐ろしいものだったが、俺の魔道具を奪ってトドメを刺そうとしたのが間違いだったな。
俺の武器は俺以外には使えない。指紋認証のトリックを見破らない限り、奪っても意味がないのだ。
引き金を引き、不発した隙に『アイリス』の新機能・浮遊&分身を使った一斉射撃のとっておき『メタルジャケット・フルファイア』でジ・エンドだ。
奴の得意分野を考えると、被害は軽微とも言えなくもない。
だが、課題も見えたな。接近戦がまだ甘い。ジンジャーを中心にしごかれたつもりだったが、まだまだ詰めが甘いようだ。
この後にドリアーテが待っていると考えると気が重いが、ひとまずはこの少年からだ。
「…おい。お前、ドリアーテの部下なんだろ?」
「………………」
ボロボロになって仰向けに倒れたっきりの少年は、即死こそしていないものの、命が尽きるのも時間の問題だ。
だのに、というべきかだから、というべきか……全てを諦めたかのように終始目と口を閉ざしたままだ。
はぁ……やっぱり喋らねぇか。このまま死ぬつもりかよ。仕方ないけどさ。
「ローリエ!!」
「え? ……ハッカちゃん? なんでここに!? てか、目覚めて……」
「…召喚士の排除は失敗。面目ない。
目覚めてすぐに、アリサから事情を聞いた。
ローリエが刺客と戦闘中と聞き、助太刀に参った。」
「……ありがと、ハッカちゃん。でも、ご覧の通りもう終わったんだ。」
「………その少年は?」
「ドリアーテの部下……だと思うんだけど、まったく口を割らなくてな。
まったく…とんだ忠誠心だ。最期の最期まで主に忠実とは見上げた野郎だぜ」
「忠…実………?
それは、違い…ますよ」
「「!!?」」
戦闘後にやってきたハッカちゃんとの会話に割り込んできた少年。
何か話すと思わなかったから驚いた。
「使い手の、目的を果たせないモノに……何の価値がありましょう?
私は………忠実たりえませんよ」
初めて自分から発した言葉。
それで、コイツは自らを無価値と語る。
そこに自虐とか自嘲とか、そんなニュアンスは含まれていない。
どこまでも平坦で……自暴自棄になったというより、心の底から自分が無価値だと思っているかのようだ。
「………私が借りた宿の女主人を殺めたと聞いた。
汝は、何ゆえに彼女を殺めた? 八賢者が目的なら、私とローリエを狙えば良い話。なのに―――」
「………………? 貴方が私をとがめる理由は何ですか?
ドリアーテ様の行動は全て正しい。貴方が憤る理由が分かりません。」
「―――ッ!!?」
感情的になったのか、やや口数が増えたハッカちゃんの質問を平坦に切り捨てる少年。
俺には、なんとなく分かってしまった。
「―――成る程。生まれてすぐに外の情報を遮断して己の主を絶対的な存在と刷り込めば、世の倫理なんざ通用しない化け物の出来上がりと。
これが、ドリアーテとビブリオが絡んでた『改造兵士』の正体か。」
俺の予想が、嫌な形で当たってしまった。
きっと、ビブリオが赤子を
本当に―――クソみてぇな連中だな。
「…ハッカちゃん。コイツに人道を説いても無駄だよ。
なにせコイツには、
「肯定。となると、彼の者も哀れなり。
……同情など栓無き事なのやもしれぬが」
「……そうだな」
この歪んだ純真に驚かされてる間にも、少年の色のない瞳から更に光が失われていく。
「……無駄かもしれねぇけど。言い残す事があったら、聞いてやる」
「そう…ですね。花の、面倒を、見ることができないのが………ざん、ねん―――」
その言葉を最後に……少年の目が完全に光を失い、指先さえ動かなくなった。
遺留品を検分してみるも、見つかったのは俺を散々苦しめたククリナイフと無数の暗器……それから、花のスケッチが描かれた革の手帳だけだった。
キャラクター紹介&解説
ローリエ
ドリアーテが仕向けた改造兵士を下した八賢者。ドリアーテの命じられるままに人の命を奪い続けたであろう57号に容赦はしなかったものの、一定の同情はしている。
01型57号
戦闘中も殆ど喋らない人形のような刺客の少年。今回の戦闘描写が難産だったのは間違いなくコイツのせいである。超合理的な思考回路ゆえに『敵と会話すること』『技名を口にすること(若しくは技に名前をつけること)』をしない。故に、楽しめる描写にするどころか描写そのものをすることにかなり苦労した。
そんな彼も―――
イメージCVは蒼○翔太。この名で本人の顔や時間をさかのぼる云々を連想した方は、間違いなくポ○テピ○ックに毒されているので、大人しく「はめふら」を見るか彼ボーカルの楽曲を探そう。
ハッカ
原作通り(失礼)、きらら達の排除には失敗した八賢者。アリサから事情を聞き、すぐにローリエの助太刀に行った。そこで、57号の歪んだ純真さを目の当たりにする。詳しくは次回にて。
メタルジャケット・フルファイア
ローリエのとっておき。分身した『アイリス』、『パイソン』『イーグル』で一斉掃射を放つ。ローリエが敵として出たときのチャージMAX時の必殺技でもあり、プレイアブル時のとっておきでもある。
△▼△▼△▼
ハッカ「ローリエは激戦の末、刺客を下した模様。」
アリサ「ハッカさんの方は……どうだったんですか?」
ハッカ「…………申し訳なし。」
アリサ「えっ……? それって、つまり……」
次回『夢から醒めて』
アリサ「………あっ!次回もお楽しみに〜!!」
▲▽▲▽▲▽
あとがき
自分と同じきらファンプレイヤーで『もしもきららちゃんがスマブラに出たらこんなアクションになるのかな』と想像している方がいて、なかなか面白かったので自分もローリエ参戦の妄想とかしています。
多分ですけど、自分の武器だけでなく他の八賢者とアルシーヴの武器を使って戦うファイターかなーと。
シュガーの大剣→横&上強攻撃。汎用性に富む。
セサミのオーブ→横スマでアクアスプレッド。上Bでディープレイン
カルダモンの短剣→弱攻撃&空N&空前。出が早い。
ソルトのハンマー→下スマ、下強、空下。出は遅いがダメージ高めでメテオも狙える。
ジンジャーのバット→横Bでシュートバースト➡メガバーストMk.2➡アンブッシュスライダー。超吹っ飛ぶ。
フェンネルの盾→シールド。ダッシュ攻撃でシールドバッシュ。
ハッカの魔法札→上スマ&空後。吹っ飛ばしと攻撃範囲が強い。
ローリエの銃器→NBでジョーカー風射撃。貯めでアヴェンジャー・アイリス発動。下Bでルーンドローン起動
アルシーヴの杖→最後の切り札。初撃に当たった敵にアルシーヴ達とルナティック・ミーティアを放つ
……みたいな。
コレで最後DA!きらファン登場作品の中で、最も好きな作品は次のうちどれ?
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きんいろモザイク
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夢喰いメリー
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ゆるキャン△
-
まちカドまぞく
-
ご注文はうさぎですか?
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その他(コメントにて!)