きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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中古で買ったドラクエ11が面白すぎて執筆する時間が奪われてる今日この頃。

“三人でローリエさんに蹴りを入れた時…何というか、安心したの。あぁ、この人たちも同じ女の子なんだって……他意はありませんよ?”
 …巽紺


第80話:5人のうらら

「……! 始まったか……」

 

「廊下の形状が変わって……!! これって!!」

 

「オーダーの影響也。」

 

 

 デトリアさんが去り、八賢者もそれぞれ行動を開始し始め、俺・アリサ・ハッカちゃんの最終打ち合わせが終わってから数十分。

 いつも見慣れた神殿の廊下に変化が現れた。上下左右に道が枝分かれするように増え始めた。『うらら迷路帖』のクリエメイト達を『オーダー』することで生まれた影響だ。さしずめ、神殿内が迷路帖と化した、と言っても差し支えない。

 俺はすぐさま、近くにあった俺の部屋の窓を開け、下から綱を垂らした。神殿にオーダーの影響が現れ迷宮化しだした以上、普通の方法では出口まで辿り着くのに時間がかかりすぎる。今回みたいに内部が迷路になっていても、窓を開けた先が普通に神殿の外に繋がるのは確認済だ。

 

 

「よし…あとは、打ち合わせた通りに行くぞ!」

 

「了解。」

 

「………」

 

 

 …む、アリサから返事が聞こえない。

 思い当たる節はあるから、ちゃんと言っておこう。

 

 

「アリサ。気持ちは分からんでもないが、一人で突っ走る真似だけはすんなよ。

 お兄さんの敵討ちも、その後の色々も、命あってこそ初めてできるんだからな」

 

「分かりました。」

 

 

 即答か。本当に分かっているのか、それとも納得いかないのか知らんが、もし暴走したら大変だ。医務室のコリアンダーを引きずり出してでも彼女をカバーする羽目になるだろう。今それをやられるのはかなりマズい。

 

 話を戻そう。今回の作戦についてだ。

 今回俺達は、アルシーヴちゃんから『遊撃隊』と称して敵の監視と各部隊への応援を任されているが―――ぶっちゃけ、俺は『敵の監視』以外の仕事はしない。というのも、他にやるべき作戦を遂行するからである。

 

 まず作戦の第一段階として、俺の部屋にあらかじめ書き記しておいた『今回の女神呪殺未遂事件の記録』を目立つように出しておく。こうすることで、きららちゃん達が部屋に入ってきた時に目につきやすくなるというものだ。

 

 で、第二段階だが―――

 

 

「せぇぇぇーーーーーい!よいしょっと」

 

 俺が自室から垂らしたロープを頼りに神殿の外へ降りると、すぐさま神殿の門に向かって走り出した。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 必要あるのか?と思う人もいるだろう。あんな伝言残しておいて、まだ必要なのか?とも。だが…向こうは俺の部屋に寄る()()()()()()()()()。ソラちゃん封印の真相なんて、最悪アルシーヴちゃんを下した後で彼女に訊けばいいのだ。マッチあたりは俺の親切心からの伝言を「罠だ」と言うかもしれないだろう。ランプときららちゃんは根が良い子だから分からないが、スルーされる可能性もある。そうなったら最悪だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 故に、俺は―――(たつみ)(こん)、彼女を誘拐する。

 

 何で彼女かというと、たった一つのシンプルな理由だ。それは……「『オーダー』によって呼び出される場所が分かること」だ。

 今回呼び出されるクリエメイトは、「うらら迷路帖」の見習いうらら4人。千矢(ちや)ちゃん・紺ちゃん・雪見小梅(ゆきみこうめ)ちゃん・(なつめ)ノノちゃんだ。この内小梅ちゃんとノノちゃんは神殿内に召喚され、それぞれシュガー&ソルトとカルダモンに捕らえられる。

 個人的にはノノちゃんが良かったが、神殿内に召喚されるクリエメイトは具体的に何処に呼び出されるかが分からない。こちらが迷路と化した神殿内をしらみつぶしに探し回っている内にクリエメイトが他の八賢者に見つかり捕まってしまったら意味が無くなってしまう。

 その反面残りの二人は『神殿の入口・門の前』に召喚される事が分かっている。だから、狙いは召喚される場所の分かっている千矢ちゃんか紺ちゃんの二人に絞られる。

 そこからは消去法だ。「どちらが攫いやすいか」………これを考えた時、カルダモン相手に鬼ごっこができるフィジカルと身軽さを持つ千矢ちゃんは些か厳しい。その反面、「こっくりさんを呼び出す手間がある」紺ちゃんは素の体力等は千矢ちゃんより低い。よって、残った紺ちゃんをターゲットにした訳だ。

 

 悪いが―――というよりひっっっっじょーーに申し訳ないが、ドリアーテを滅ぼす為だ。ピーチ姫のごとく攫われて貰うぜぇ………!

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 エトワリアの中心、神殿にて始まった、最後の『オーダー』と呼び出されたクリエメイト争奪戦。

 神殿へ進むきらら一行とそれを迎え撃つセサミ。一度勝利した相手ではあるが、港町のコテージで戦った時とは状況が違う。相手は本気が出せる状態であり、しかも回復薬まで持っていた。

 

 だが、きらら達の神殿進行は、まったくもって予想できない形で出鼻を挫かれる事となった。

 

 ―――その時のことを、のちに召喚士・きららはこう語る。

 

 

「神殿に突入する時、アルシーヴが『オーダー』をするであろう事と行く手をローリエさんを除いた八賢者が立ち塞がるだろうことは予想していました。神殿の入り口に陣取っていたセサミさんを見つけた時も、彼女がお出迎えするためじゃなく、私と戦うつもりなんだってことは、半ば確信していました。」

 

『……通してもらえますか、セサミさん。』

 

『残念ながら、そうはいきません。貴方にはアルシーヴ様のためにここで倒れてもらいます。なんとしても、オーダーは完遂されなければならないのです。』

 

 

 きららは、パスを感じることができる能力をもって、いまだ『オーダー』がされていない事をこの時点で分かっており、かつセサミもこちらを倒す気で来ることもまた分かっていた。

 ソラを救う為に先へ進みたいきららとアルシーヴの命に従い、為すべきを為さんとするセサミ。譲れないもの同士が相対すれば、あとは激突するのみである。

 

 

「セサミさんとの戦いは…激闘でした。でも、コテージで戦ったセサミさんとこの時のセサミさんの実力が違うように…私もまた、あの時とは違うんです。」

 

 

 きらら達の神殿までの旅路もまた、順風満帆とは言えず、道行く先で強敵に苦しめられることもあった。

 砂漠では、クリエメイトの命を狙う盗賊サルモネラや最速の賢者カルダモンと戦った。

 渓谷の村々では、計略の達人ソルトと戦ったし、発明王ローリエとの戦いで初めて敗北を喫した。

 イモルト・ドーロでは、狂暴化した魔物や醜悪な大男たるビブリオとも戦い。

 言ノ葉の都市でセレウス&ジンジャーと。言ノ葉の樹内でフェンネルと。夢幻世界でハッカと。

 あれから強敵との戦闘経験をこれでもかと積んできたのは事実。セサミが本来の力を出せるように、きららもこの短期間で逞しく成長していたのだ。

 

 そんなきららとセサミの戦いが、港町のコテージでのそれよりも激しくなっているのは、必然であった。

 

 

「あの時は必死で、セサミさんの魔法をかわして、『コール』したクリエメイトの皆さんと協力してセサミさんに近づいて攻撃する事だけに集中してたから………気が付いたら勝負がついてた、って感じなんですけど。それでも……私はセサミさんに勝ちました。」

 

『なるほど……私はまた見誤っていたというわけですか………………………。』

 

『……クリエを使い過ぎたか。気絶しているだけだ。しばらく休めば目を覚ますだろ。』

 

『…先を急ぎましょう。早く、ソラ様をお救いするために。』

 

 

 きららが『コール』したクリエメイトのとっておきとセサミのハイドロバーストが交差し……立っていたのはきららだった。セサミはクリエの消耗によって気を失い倒れる。

 その時だった。きらら達の真上が光り輝き、そこから人が現れたのは。

 

 

「一瞬、変な感覚がしたと思ったら、二人の女の子が落ちてきてね。この時に思ったんだ。『オーダー』、されちゃったんだって………」

 

 長い銀の髪を後ろにまとめた少女と、キツネの耳をつけた黒髪の少女が、神殿の門前に落ちてくる。きららが『コール』していない以上、『オーダー』である事に違いないだろう。

 二人の少女は、ランプが「千矢様」「紺様」と呼んだことによってクリエメイトだと、きららも確信することができた。二人と一匹は一安心した。『オーダー』で召喚されたクリエメイトのうち、二人を保護することができたのだから。

 ―――しかし、きらら達が「出鼻を挫かれた出来事」は、ここから始まった。

 

 

「結構高いところから着地した千矢さんとセサミさんの上に落ちてきた紺さんにランプ達が、これからエトワリアについて説明しようと……近づいた時に、私は気づいたんです。―――足元に転がっている、棒みたいな何かに。」

 

 

 それは、何故転がっているのか分からない―――そういった形状をしていた。

 木の棒にしては表面が滑らかすぎるし、何らかの金属だったとしても落ちている意味がわからない。そもそも、自然にあるような形状にはとても見えない……と。きららだけがその棒状のそれに気付いた途端、異変は起こった。

 

『きゃああああっ!!? なにこれ、眩し―――』

 

『うわぁっ!?何ですかこれ!!?』

 

 

「―――はい。目を開けていられない程に、それが一斉に光りだしたんです。そして……その直後、紺さんの悲鳴が聞こえまして……」

 

 

『きゃあっ!!! 一体なに―――』

 

『紺!!?』

 

『何が起こってるんだ…!!?』

 

『分かりません………め、目がぁっ……!』

 

 

「…光が治まって、眩んだ目が回復して見えるようになった時………千矢さんの隣にいたはずの紺さんがいなくなっていました。そして、急にいなくなった紺さんは……縛られたまま、ローリエさんに抱き上げられていて、ロープで神殿内の窓へ回収されていく最中でした。」

 

 

 光――ローリエの閃光手榴弾によるものだ――が治まり、全員の視界が回復した後、最初に忽然といなくなった紺を見つけたのはマッチだった。

 

『みんな、あそこだ! 紺が攫われた!』

 

『紺!!』

 

『紺様!!!』

 

 紺は、先ほどのどさくさに紛れて全身を縛られ、ローリエにお姫様抱っこをされていた。

 そのまま数階上の窓へロープに引っ張られて回収されるローリエと紺を目の当たりにして、千矢がじっとしていられる訳がない。

 

『待って!紺から手を放し―――うわぁっ!?』

 

 

「千矢さんがローリエさんを追いかけようとした時、千矢さんの足元に斧が振り下ろされたんです。

 その斧の持ち主を見て……ぎょっとしましたよ。なにせ―――私よりも大きなロボットが2、3体も立ち塞がったんですから」

 

 

『紺ちゃんは俺の部屋に置いておく!返してほしくばそこまで来ることだ!

 …プロトバトラー、命令だ。俺が神殿内に入るまで、彼女たちを近づけさせるな』

 

『リョウカイ』

 

 ローリエが命令を下すと、機械仕掛けの兵隊は光る目をきらら達に向け、石の斧と木製の棍棒を振り下ろさんと重厚な足音を響かせた。

 無機質な兵士の進撃に、きららは戸惑いながらも千矢やランプの前に立ち、『コール』を使用。襲いくる機械兵に太刀打ちしたのである。

 

 

「この時、一つだけ壊す事に成功して、他の数機はとある事情で止まったんですけど……ここで一番驚いたのは、壊れた機械の中から操縦者が出てこなかったことです。普通なら、クロモンなり何なりが出てくると思うかもしれませんけど……」

 

 きらら達を足止めした機械兵たちは、文字通り機械仕掛けのみで動くカラクリだった。

 当然、エトワリアにおいては完全にオーバーテクノロジーである。操縦者なしでどう動かせるかという段階すら知らない者たちからすれば、未知との遭遇といっても過言ではない。

 それでいて、『コール』で呼び出したゆずこや唯、縁の情報処理部のメンバー相手に一定の立ち回りを見せていたから尚更である。

 

「正直……怖かったです。こんな強力な機械兵が神殿内で待ち受けていたら……そう思いました。それに、紺さんを攫ってまでローリエさんが何を見せようとしているのか…それも、気になって仕方がなかったです。」

 

 

 

 ―――紺を返してほしければローリエの部屋に来い―――

 

 きらら達と千矢は、ローリエのその声を聞き、立ち尽くすだけだった。

 正確に言えば、彼女たちを足止めしようとした機械兵がいたが、きららと『コール』したクリエメイトが一機撃破したところで残りの機体も沈黙したのだ。……『任務完了――スリープモードニ入リマス』という電子音とともに。

 それは、きららとクリエメイト達が紺をすぐに取り戻すことに失敗した瞬間だった。

 

『そんな…紺様!』

 

『逃げられた……! ローリエのやつ、何が何でも部屋に来て欲しいみたいだったな…!』

 

『うん…………私も、気になることができたし。それに…ソラ様が待ってる。』

 

『絶対に紺を取り戻すんだから!』

 

『そう、ですね…! ここまで来て諦められません!』

 

 それでもきらら達が折れなかったのは、偏に女神ソラを助けたいという感情があるからである。千矢が考えるよりも行動する性格だったのも幸いした。

 出鼻を折られたとはいえ、本拠地は目の前だ。ここで諦めるという選択肢は彼女たちにはなかった。

 

『ところで、ちょっといい?』

 

『千矢様?』

 

『私達の事を知ってるの? わたしといい紺のことといい……』

 

『………あぁ、まだ説明してなかったね。といっても、いきなりあんなマネされたらそれどころじゃあないわけだけど…』

 

 千矢にエトワリアとオーダーの事情を説明しながらも、彼女は歩みを進めていった。

 

『えーっとオーダーで女神様でひっとーしんかんさんで……?』

 

『『『……………』』』

 

 なお、千矢がエトワリアの説明を完全にのみこみ切れず、協力を取り付けるのにちょっとだけ時間がかかったのはご愛嬌である。

 

「この時は、まだ思いもしませんでした………ソラ様の封印にあんな事情があったなんて。だから、当時の私達は神殿内に入り、先へ進むことにしたんです。これが……後にあの戦いに繋がるわけですが。」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ―――第二段階、クリア。

 

 俺の部屋に帰還する事に成功した俺は、すぐに紺ちゃんを縛る縄を解く。

 案の定彼女は逃げようとするも、入り口はアリサとハッカちゃんが守っているため、通ることができない。他の出口は窓だが、そもそも俺の部屋が2階にあるから飛び降りることになるだろう。

 

 

「まずは……いきなりあんなマネしてすみませんでしたー!」

 

「!!!?」

 

 

 腰を90度曲げて謝罪。しかるのちに紺ちゃんにエトワリアの事について説明を行う事にした。聖典を引っ張り出して丁寧に、彼女を尊重することを忘れないように説明していく。

 

 

「―――というわけなんだ」

 

「……つまり、さっきの召喚士?の人をここに招く為に私を攫ったってこと?」

 

「あぁ。正直に本当の事を教えるからここに来てって言っても信じるか怪しいからな」

 

「…私が貴方を信じるとも限らないのに?」

 

「でも、君がここにいる限り召喚士―――きららちゃんはここに来る」

 

 

 拉致という手段を取った以上、紺ちゃんから警戒される事も覚悟の上で、きららちゃん達に確実に来てもらうためにここに来てもらった事も説明した。紺ちゃんの表情からは不安そうな様子や雰囲気は消えたが、疑惑は払拭できない。仕方ないことだが、彼女の出口はこの部屋にはない。

 

 

「……その、きららさん達?をここにおびき寄せる目的は?」

 

「意外と頭が回るね。実はここには読んで欲しいものが―――」

 

「ろ、ローリエ! 寝床に誰かいる!」

 

「「!!!?」」

 

 

 話の核心に迫った時、ハッカちゃんの声が聞こえた。

 すぐさま俺のベッドに近づき、他の女子三人には距離を取るようにハンドサインを出す。

 ……このタイミングで俺のベッドに誰かいるだって? 実にアヤシイ。どうして俺のベッドにいるのか知らんが、俺の策に気づいたヤツが誰かいるのなら、手を打たなければいけなくなる。

 

 俺はいつでも攻撃できるように用意しながらも、紺ちゃんを攫う時にはなかった掛け布団の膨らみに手をかける。

 そして―――そいつを引っぺがすッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すー…すー………zzzZZZ」

 

「「「「……………。」」」」

 

 

 そこにいたのは、気持ちよさそうに眠っている女の子だった。

 紺ちゃんと同年代と思われるが、比較的小柄な体型で、紫がかった髪を両サイドでおだんごにまとめている。

 

 

「…………(おみ)?」

 

 信じられないといった声色が紺ちゃんから漏れた。俺も信じられないと叫びたかったが、良い寝顔の彼女の為に必死でその言葉を飲み込んだ。

 ……バカな。ここにきて、クリエメイトの追加召喚だと!!? いや、『スティーレ』の面子みたいなイレギュラーがあったが、『きんいろモザイク』の時も『ステラのまほう』の時も、『ゆゆ式』の時も原作通りのメンバーだったから、この土壇場で追加召喚はたまげた。

 

 で、この眠れる美少女だが、ちゃんと聖典のクリエメイトだ。

 

 二条(にじょう)(おみ)

 聖典(漫画)『うらら迷路帖』に登場し、九番占昇級試験を最速で突破した貴族の才女であり、「夢占い」という最高難易度の占いをマスターした少女だ。中身はどこかの警察官ばりに富と名声と権力を欲しており、YOKUBOUに忠実なお方なのだが……俺の知る『きららファンタジア』には、彼女は『オーダー』で召喚されていなかったはずだ。

 

 

「んぅ………」

 

 

 紺ちゃんの声で、臣ちゃんが目を覚まし、のそのそと動き出す。そして。

 

「……ここどこ?」

 

「………紺ちゃん、手伝ってくれ。臣ちゃんに説明する」

 

「え、えーっと……はい…」

 

 俺は紺ちゃんにした説明をもう一回する必要があると判断した。

 まさかの事態に内心冷汗をかくが、その動揺が表に出ない程度には説明が出来たと思う。特に自己紹介の時に「八賢者ってのは、まぁなかなかに偉い人だ」とか「技術開発を担当してるから、特許関係で儲かっててね」とか言ったのが功を奏した。奏しすぎて話し終わる頃には臣ちゃんの瞳から眠気は綺麗に消し飛んでてキラキラに光っていた。富だけに。

 

 

「…………貴方、占い師に困ってないかしら?」

 

「臣!!?」

 

 

 ただ、エトワリアの金貨を増えるコインマジックの要領でポンポン見せたのは彼女には劇薬過ぎたかもしれない。俺の自己紹介が終わった後の第一声で俺に雇われようとしているのだから相当だ。でも俺に懐きすぎて、元の世界に帰る時「神殿の方がお給料いいから帰らない」とか駄々捏ねられても困るぞ。

 

 

「臣ちゃん…モノは相談なんだが…」

 

「何でしょうか」

 

「近い近い! …夢占いは、精度を上げるために裸で同衾すると聞いたことがある」

 

「確かにその方が詳しく結果が見れるわよ。それで?」

 

「まず最初に、俺をその同衾タイプの夢占いで占ってホメ゛ロス!!!?

 

 

 仕方ないので急遽最初の仕事を振ろうと思ったら、視界が揺れて俺の身体が棚に叩きつけられた。胸の苦しみ(物理)を咳で我慢し、痛みの元を探るべく顔を上げると、アリサとハッカちゃんと紺ちゃんがこう、ゴミムシを見るような表情で何かを蹴った後のように片足を上げていた。

 三人による連携同時キックかよ………

 

 

「ただセクハラしたいだけじゃないですか!」

「占いに乗じて乙女を脱がす所業、まさに鬼畜」

「は、はれんちです、ローリエさん!」

 

「ち、違う!! 俺はただ単に仕事を―――」

 

「言い訳無用」

 

 

 夢のようなまっとうな仕事の依頼を言い訳にされた。チクショウ。

 その後、ハッカちゃんの「今は作戦を遂行するべく、一刻を争う時。占う猶予はなし」という至極まっとうな正論によって、俺と臣ちゃんの夢占い(意味深)はお流れになってしまった。ドチクショウ。

 

 そんな訳で凹んでしまった俺は、泣く泣く臣ちゃんに夢占い以外で最初の仕事を改めて与える羽目になった。

 

 

「……この部屋にいるだけでいいの?楽すぎて裏を疑っちゃうわ」

 

「コレ前金ね」

 

「やります」

 

「臣はもうちょっと疑いなさい!!?」

 

 

 それは、ただシンプルに『この部屋できららちゃん達待っててよ☆』というものだ。前金に金貨を与えれば即断してくれた臣ちゃんについては、いつか金に釣られてロクでもない目に遭わない様に祈るばかりである。

 そして俺は、早速舟を漕ぎだした臣ちゃんを紺ちゃんに、部屋の入口をアリサに任せて、ハッカちゃんと一緒に作戦を次の段階に進めるべく部屋を後にした。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ―――寝落ちする。

 

 ―――夢を見る。

 

 不思議な光景が見えてきた。

 

 そこには一貫して同じ男の人が出てきた。明るい緑の髪の、両目の色がそれぞれ違う人。さっき私を破格の金貨で雇ってくれた、ローリエさんだ。

 

 彼がたくさんの女の子と談笑している光景もある。色んな女の子を口説いている。青い髪の水着の人、桃色の髪の凛々しい人、白黒の長髪に髑髏を乗っけてる人………口説かれている方は、みんながみんなまんざらでもなさそうだ。

 

 場面が切り替わる。彼が何らかの絡繰りを作っている光景だ。それは、金属質のボディをしていて、物々しい雰囲気を漂わせている。そんな自分の背並みにある機械を、なにか呟きながらいじっていて………この口の動きは…「こんなの作っていいのか」かな…?

 

 そして、また場面が切り替わる。

 それは……赤髪の少女を庇い、血を流したローリエさんの―――

 

 

「―――ッ!!!?」

「臣、大丈夫…!?」

「……ん、大丈夫よ。また寝落ちしちゃっただけ」

「そうだけど…飛び起きる臣は初めて見たわ」

「そう…なの?」

「えぇ…」

 

 

 飛び上がりたくもなる。あんな場面を見せられたら、誰だって動揺するだろう。

 私はらしくもなく、いま部屋を出ていった気前の良い雇い主の身を案じた。

 

 

 

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 紺を拉致した後だというのに、偶然呼び出された臣にセクハラをかましたブレない拙作主人公。臣の富・名声・権力のスタンスは知っていたのでそこをアピールしたが、我ながらやりすぎたと思っている。

きらら&ランプ&マッチ
 神殿前でセサミを撃破した直後、ローリエと機械兵の急襲に見舞われた原作主人公一行。きららには『バキ』的な語り部を担当してもらった。紺がおらず、クリエメイトが千矢のみのスタートになったが、クリエメイトの捜索に支障はなく、きららやランプは特に紺を取り戻さねばという使命感にいっそう燃えることとなった。

巽紺
 わけもわからぬままローリエに縛られ、お姫様抱っこで攫われた見習いうらら。CV本○楓。ローリエの部屋に軟禁され、窓からも出入り口からも脱出が難しく、こっくりさんを憑依させて打開しようかしらと思った矢先に臣と出会い、緊張がほぐれる。ローリエに雇われた(笑)臣に付き添う形で部屋に残ったが、これで良いのかとも思っている。

千矢
 神殿の門前に召喚されたクリエメイトのうち、攫われなかった方の子。山育ちということもあって、原作でカルダモンと鬼ごっこができるくらいにフィジカルに富んでいるのが幸いした。また、紺が攫われてもすぐに取り返そうとし、失敗した程度でへこたれない強メンタルもまた、きらら達に影響している。CV原田○楓。

二条臣
 原作きらファンどころかうらら迷路帖一期でさえ影も形も登場していなかった5人目のメインキャラクター。「夢占い」を得意とし、どこかの葛飾区亀有公園前の警察官のように「富・名声・権力」が大好きという少女。割と欲望に忠実で手段を選ばない様子。拙作ではその性格を逆手にローリエに魅了(金銭的な意味で)されたり同衾(意味深)を求められたりした。きらファンのみを見ていると、貞操観念は人並みにはあるが、同性相手ではガードが甘くなる印象。また、今回の最後にさらっと重要そうな夢を出したのも、今章での夢占いの出番はほぼないだろうと思った故の、筆者による精一杯のアピールである。




プロトバトラー
 ローリエが開発した、自律思考する機械の兵隊…の、試作機。攻撃面は装備している兵装が石斧と棍棒とお粗末だったためにイマイチだが、金属ボディの防御はかなりの頑丈さを誇る。イメージは『ドラゴンクエスト』シリーズの『プロトキラー』。というか、まんまソレ。



△▼△▼△▼
きらら「『紺さんを返してほしくば部屋に来い』……そう言われた私達は、小梅さんやノノさんを助けながら、ついにローリエさんの部屋に辿り着きました。部屋の前に現れたアリサさんは待っていましたと言い………部屋には臣さんと紺さん……そして、鍵のかかった日誌がありました。ろ、ローリエさんが言っていた真相って、まさかここに……!?」

次回『臣と真実と鍵のかかった本』
きらら「次回もお楽しみに!」
▲▽▲▽▲▽

コレで最後DA!きらファン登場作品の中で、最も好きな作品は次のうちどれ?

  • きんいろモザイク
  • 夢喰いメリー
  • ゆるキャン△
  • まちカドまぞく
  • ご注文はうさぎですか?
  • その他(コメントにて!)
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