きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
今回から、とうとうドリアーテ戦が始まります。まずは――『戦場 戦慄』このbgmと共にどうぞ。
“因縁の対決…第一戦は、防戦だった。なにせ、仲間を守るために突発的に起こったものだったから。”
…ローリエ・ベルベット著 自伝『月、空、太陽』
第9章より抜粋
突然だが、人が「青鬼」―――ゲームに出てくるあの青鬼だ―――を恐れる理由が何か聞かれた時、さっと答えられるだろうか?
大きいから?デザインが気持ち悪いから?足が速いから?表情を変えずに一定の速さで襲ってくるから? ……それらの意見も間違ってないだろう。だが、その答えに「全身が青いから」というものもある……と言われたなら、納得できるだろうか?
そもそも、自然界に『青色』が存在しない―――といっては言い過ぎだが、珍しい部類なのだ。「そんな訳ないだろう、青い蝶や鳥やクラゲもいるじゃあないか」と思う人もいるだろう。だが、それは鱗粉や羽、水が光の中の青だけを反射させているだけなのだ。茹でると殻が真っ赤になるエビやカニもその最たる例だろう。『純粋に青い色素を持っている存在』が滅多にいないからこそ、全身が青い異形に『コイツは何かが違う』と感じるのである。
―――さて、初っ端から盛大に脱線してまで何が言いたかったのかと言うと。
人は、本来ありえないものを見ると多かれ少なかれ本能的に恐怖する、ということだ。
「させるか、ハッカちゃん!」
「無論! ドリアーテ、覚悟!!」
…それは、例えるなら、船を漕ぎだしたフェンネルに歪んだ笑みを浮かべて炎を放とうとしている幼女、とかだ。まだこの世の常識を分かり切っていないような年齢の幼女が、無邪気さの一切ない、悪意100%で人に炎をブチ込もうとしている様子を目の当たりにして、異常を察知しない方がおかしい。
だが、俺は流石にその異常事態に心当たりがあったため、すぐにハッカちゃんに合図を送り、すぐさま行動に移ることができたし、ハッカちゃんもすぐに動かなければマズいと察してくれたから同様に対応できた。
魔法符から放たれた魔法と拳銃から放たれた弾丸がそれぞれ幼女に直撃し、爆炎を上げた。
煙が晴れた時、そこにいたのは幼女ではなく、炎に身を包んで再生を完了したらしきドリアーテの姿だった。
「チイィッ!間の悪い虫ケラ共があッ!!」
『不燃の魂術』の特性は知っていたが、まさか自分の肉体年齢を5歳まで巻き戻してここまで忍び込んでくるとはな。
俺達はアルシーヴちゃんへの道を進みながらドリアーテを探していたが、まさかビンゴが出るとはな。ここで会ったが百年目というやつだ。ここで食い止めてみせる!
「―――っ!!? 貴様、一体どこから…」
「フェンネル、油断大敵」
「は、はい!!」
ドリアーテへの攻撃が当たると同時に、フェンネルが目を覚ましたのか、ドリアーテから距離をとる。だが、まだ何かを探している様子だ。
「どうした?」
「…先程までいた幼い女の子が見当たりません! 一体どこに―――」
「目の前にいんだろーが」
「え?」
「構えろ。ボケっとしてたら死ぬぞ!!」
呆気にとられ、棒立ちになっているフェンネルに喝を入れた直後、真っ黒な炎が飛んでくる。
フェンネルを突き飛ばして、俺も回避したことでかろうじて直撃は免れたが、アイツはまだ目の前で起こっている事が信じられない様子だ。
「まさか……さっきの女の子は、ドリアーテだったというのですか……!?」
「そうだ。見たぜ? 5歳児らしからぬ殺意でお前を燃やそうとしてたの」
「まさかとは思ったが……57号は死んだのか…………本当に使えない子供だ。あれだけ手塩にかけて育てたのに、誰一人殺せずに死ぬとは。
無能の屑がこの世で一番嫌いだと言って聞かせたのに…これだから役立たずは嫌いなのだ……」
おいおい、何を言いだしてんだ、ドリアーテは?
57号……ってのは多分、話の脈絡からして、俺達が頂上の街で戦った無表情の少年のことだよな?
この女、本当にあの子供を道具扱いしてやがったのか。
「お陰で―――私の手間が増えるではないか」
心底腹立たしげに、かつ呆れ果てたようにそう呟く。
この世の全てを呪うかのような緑色の瞳がこちらを射抜くやいなや、今度は真っ赤な炎の弾丸――いや、ネズミの形をした炎の群れが、ところ狭しと地を這いながらこちらに迫ってくるではないか!
「『ブレイズ・ラッツ』……前座に付き合っている暇はないのだ。まとめて死にたまえ」
「お前はここでコンティニュー出来なくなるけどな!!」
「然り。死ぬのは貴様のみ」
「アルシーヴ様の命です。ここから失せなさい、ドリアーテ」
しかし、それらに臆しはしない。俺とハッカちゃんは覚悟を決めていたが故に、フェンネルは一度ドリアーテと戦っているが故に、迫りくる炎に対処する。
魔封剣『サイレンサー』とレイピアで襲いくるネズミを切り裂き、月の魔法がネズミ達を弾き飛ばす。
だが、炎のネズミをおおかた処理し終わった頃には、ドリアーテが次の攻撃の準備を終えていた。
「ギガントフレア!!」
オッサンと一緒に戦った時に見た巨大な火の玉だ。
俺は、水の魔力が籠った弾をパイソンに装填し、火の玉に照準を向ける。
「
ハッカちゃんが水属性にチェンジして魔法符から水属性の魔法を放ち、炎の玉を相殺する。
炎が消滅し、ドリアーテを目視できるようになって、そこで引き金を引いた。
バァン! と鳴った音と共に、弾丸はドリアーテの右肩に寸分違わずに命中した。
でも、アイツに怯む気配がまったくない。
「
「ラーヴァ…!」
続けた攻撃は、ハッカちゃんが室内に魔力の雨を降らせる。夕立のような、白く見える雨に対して、ドリアーテがその手から放ってきたのは………
「…溶岩だと!?」
すぐさま水属性弾を放つも、真っ赤になったドロドロに吸い込まれただけ。効果が薄い……!
その時、異変を察知して属性変化をしたのはハッカちゃんだった。
「
風属性の暴風に、さっきまで勢いよく迫ってきていた溶岩の色がくすんで、真っ赤から黒くなっていく。どうやら、溶岩は固まったようだ。
そうか。溶岩は溶けた岩と書く。土属性の魔力で生み出せてもおかしくない。だが、今のハッカちゃんはマズい。風属性の炎属性への耐性は最悪だ。今ドリアーテの攻撃が来たら……!!
「ハッカちゃん! 今すぐ水属性に―――」
「甘いわ! 死ねェ!!」
「―――ッ!! アイスバラージ!!!」
咄嗟にハッカちゃんの前に躍り出て、すぐに両手拳銃で水属性弾を一斉掃射。
氷の刃となった弾丸は、襲い掛かる黒い炎をかき消していき、ドリアーテにまた傷をつける。
だがこれは防御技じゃない。撃ち漏らしが二人に迫ってきて………
「―――はっ!!!」
「……!」
フェンネルの魔力の盾に弾かれた。
「…ローリエ。コレで貸し借りナシですわ」
「何言ってやがる……さっき寝落ちから救っただろーが」
「口答えしない!前を見る!!」
フェンネルに助けられた実感がわかないまま、フェンネルの月の魔力を纏った突きがドリアーテを抉った。
俺はすぐさまドリアーテに一発ブチ込むと、ハッカちゃんを見る。
………よし、怪我とかはないな。
「いけるか?」
「肯定。先程は助かった、ローリエ」
「相手は不死身のバケモンだ。ペース配分は慎重に、なっ!!」
「了解! 水纏ノ降魔―――水幻符【白雨】!」
再び夕立が降り始める。ドリア―テは鬱陶しげに俺達を見つめ、再び溶岩を生み出そうとする。
だが、同じ手が二度も通じないのはお互い様だ。すぐさま、イーグルに一発、弾丸を込めて放った。
「ぐっ!? …小癪なマネを―――」
「隙だらけです!」
「があっ!!?」
放った弾は、ドリアーテの手に当たり、溶岩の発生を阻止した。その時に生まれた隙にフェンネルが斬りこむ。
さっき撃ったのは風属性弾だ。ドリアーテ本体に対するダメージはほぼないが、土属性魔法の溶岩攻撃の発生を防ぐことくらいはできる。さっきハッカちゃんが溶岩を風属性魔法で固めたのとほぼ同じ原理だ。
「ローリエ。今後の戦況、如何するか?」
「そうだな…………」
―――イイ感じに戦えている、ように見えるだろうか?
だが答えは否だ。相手は不死身で体力も無尽蔵。HP∞の敵と戦ってるようなモンだ。クソゲーもいいところである。というかクソゲー以下だ。
このままでは全員力尽きるのは目に見えている。だから、きららちゃん達を待ちながら、コイツをアルシーヴちゃんが待つ部屋に押し込んでアルシーヴちゃんにも参戦してもらいたい。彼女は消耗しているから、きらら一行の合流とアルシーヴちゃんの合流をほぼ同時にするのがベストなんだが。
「……今は時間稼ぎしかない。きららちゃん一行が来るのを待つか、戦いながらアイツをアルシーヴちゃんの元へ移動させるか…」
「アルシーヴ様は疲弊中。危険な彼の者を相手にすることに懸念あり。」
「俺の
アイツの倒し方は今んところ一つしかない。それがヤツに悟られたら終わりだ」
「……………。」
…実は、オッサン・フェンネル・きららちゃんと一緒に初めて戦った時、不死身を倒す方法を色々試したと言ったが、あの時には試せなかった方法はある。そしてそれは、不燃の魂術のメカニズムをある程度予想できる今なら、確実に使えるだろう方法でもある。
今それをやらないのは、できないからだ。この作戦の要は………まず、ランプ。そして、ソラちゃん。後は、俺。俺しかいない今の状況では、この手は使えない。
である以上、俺達にできるのは時間稼ぎしかないんだけど………
「『ヒートウィンド』……『ブレイズ・ラッツ』」
「同時発動……っ!! そんなんアリかっ!?」
「
それがめちゃくちゃキツい。
この前は本気を出したオッサンがいたからなんとかなったんだろうが………今回は防戦一方だ。
どれだけあのオッサンが規格外だったかが伺える。
「……オッサンが来てくれりゃあな…!」
「オッサン…?」
「ナットという、大地の神兵のことですわ。今は引退済ですが!」
「…無い物ねだりの余裕なし。」
「知ってるよ!!」
「ふざけた真似を……前座ごときがこの私の足を引っ張るな!!!」
心が折れないように軽口を叩きあう。
それすらも気に入らないのかドリアーテの魔力が増していく。
「どこまでも…どこまでも私の邪魔ばかり…!
足を引っ張る事しかできないゴミクズが、いい加減にこの世から消えろ!!
この私を苛立たせた罪は…その命で償ってもらうぞ! 消え失せろカス共が!!!」
言ってる事も集まる魔力も滅茶苦茶だ。
というか、コイツこんな力を隠し持っていたのか!!?
咄嗟に魔法弾を二丁拳銃で撃ちこむ―――が、全く止まる気配がない!!
「やっべェ……!」
「ッ…!! ガーディアン―――」
「
リフレクタービットにフェンネルとハッカちゃんのバリアが多重展開され。
―――次の瞬間、すさまじい轟音と共に目の前が真っ白になった。
◇◇◇◇◇
「―――はっ!!!!」
気が付くと俺は、空を見上げていた。
起き上がって辺りを見回してみる。
「身体は無事か……で、ここは一体…?」
下は神殿の床ではなく、切りそろえられた草で。背中側に石でできた壁があり。
正面には……見慣れた神殿が。だが、それだけじゃあない。
「…あの技、ティタノマキアだったか……で、ここまで飛ばされた、ってか…?」
俺が目覚めたのは、神殿の入り口だった。さっきの爆発?で、ここまで吹っ飛ばされたのだ。
バリアがあってよかったぜ。なかったらと思うとゾッとする。多重展開したバリアの数々があってなおこれだからな。
よく見ると、神殿は全体の3、4割くらい天井や壁が吹き飛んでいた。
あの威力でこれくらいで済んだ、と思うべきか。それともここまで被害が出た、と考えるべきか。
いや、それよりも、だ。
「……フェンネルもハッカちゃんもいない……俺同様吹っ飛ばされたか?
G型は……だめだ、半分くらい映らねぇ…さっきのでダメになったか」
残った半分にも、探している人は映っていない。
……してやられた。まさか、あんな手札を持っていたとは。エクスプロウドだけに注意が向いてて、他の超強力な魔法の可能性が抜けていた。……厳密にはそれなりに対策を練っていたが、こうなったら言い訳にしかならん。
一本取られた俺は、すぐさま次の手を打つ。
通信機を手に取り、とある人物を呼び出す。
『ローリエさん!無事だったんですね! ところで、あの、さっきの爆発は……?』
「ドリアーテが隠し持ってた手札だ。アイツ、神殿の奥まで潜んでいる」
『そ、それなら急がないと……!』
「アリサ、状況はどうだ?」
『セサミさんとソルトさんの
「あぁ。余裕があればフェンネルとハッカちゃんも探してほしい。きっと生きているはずだ」
はい、とアリサの元気な返事を確認して通信を切る。
あの二人も、どこかに吹き飛ばされている筈だ。というか、彼女達を重点的にリフレクタービットで防御した。俺が五体満足で神殿の外まで飛ばされた事を考えると、神殿内のどこかで生きている可能性は高い。
……俺も急がないと。ドリアーテとアルシーヴちゃんが出会ったらどうなるか分からない。
「最短ルートは………っと!!!」
最短ルートを検索しながら、ダッシュでアルシーヴちゃんの部屋まで向かう。
◇◆◇◆◇
「「「「「「「「うわあああああああっ!!?」」」」」」」」
ドリアーテが『ティタノマキア』を放ったのと同じ頃。
きらら達一行はアリサと別れ(曰く「戦力を調達してきます!」とのことだった)、クリエケージのある大広間へ辿り着いたその時、未曽有の暴風圧に襲われたのだ。
マッチやノノのマツコは、吹き飛ばされないように近くの人にしがみつくだけで精一杯だ。もちろん他の少女たちもただでは済んでいない。
「な、なに今の!?」
「前から突風が……あっ…」
「扉が壊れてるじゃない!?」
きらら達は気付く。さっきまで目の前にあったはずの大広間への扉が壊れ、中が丸見えになっていることに。そして、奥にクリエケージがあることに気付き、更に……
「あの檻って……!?」
「だれ、あの人?」
「……なんだ今のは? とんでもねぇ暴風だったが…あ~あ、ドアが壊れちまってら。後で直さなきゃ………お?」
八賢者・ジンジャーとも目が合った。
きららは、すぐさま戦闘態勢――きららが前に一歩踏み出すだけだが――をとるも、ジンジャーに声をかけられた。
「…成る程。良い覚悟の目だ。アルシーヴやローリエに及ばねぇがな。」
「あ、あれ…まさか、獅子を憑依しているの?」
「これは生まれつきだよ。さて……きらら。初めて会った時よりも強くなったな。私にはわかるぞ。」
「……ありがとうございます。」
「あの時はクリエメイトを守るために戦っていたな。今はどうなんだ? 何のために戦っているんだ?
私に挑まれたからか? やっぱり、クリエメイトを守るためか? ……それとも、何か違う理由でもできたか?」
「……ソラ様の呪いを解き、ドリアーテを止めるためです。」
「―――は?」
何故戦うのか、というジンジャーの問いに、ローリエの部屋で知った真実を元に定めた心の内を正直に話すきらら。
だが、ジンジャーは「ソラが呪われていること」を知らない。
理解できなかったと思ったきららは続けた。
「ソラ様を呪ったのは、ソウマさんという人だったそうです。ですが、彼は妹さん…アリサさんを人質にとられ、やむなくソラ様を呪いました。そして………ソウマさんを脅して呪いをかけさせたのがドリアーテです。
そしてアルシーヴさんは、ソラ様の呪いの進行を止めるためにソラ様を封印しました」
「…………」
「ソラ様を封印して、エトワリアを滅ぼそうとするドリアーテを許すわけにはいきません。私が戦う理由は……ソラ様と、この世界を救いたいからです!!」
ジンジャーは絶句するしかなかった。
ソラの体調不良が、実は呪いにあって、しかも呪いの進行を止めるために封印をしたなど、信じられるわけがない。……証拠がないなら、尚更だ。
「………ソラ様が呪われたって、証拠はあんのか?」
「ローリエさんの部屋にありました。ソラ様が呪われた事、ソウマさんが罪を告白する動画、ビブリオやセレウスとドリアーテとの繋がり………それら全部が、あそこに」
「あの野郎………」
ジンジャーは、事が終わったらローリエをタコ殴りにしてやろうと心に誓った。
あいつ、全部分かって、黙ったまま自分に『きららと戦うな』と頼んだな、と思ったからだ。
また、クリエケージの番を頼まれた理由も理解してしまった。ソラの呪いを解くために大量のクリエを必要としていたのならば、納得がいった。
自由すぎる同僚に呆れ果てたジンジャーは、話題を逸らすため、今度はランプに話しかける。
「……ランプ。お前はどうして、アルシーヴを止め――いや、違うな。
こう聞いた方が良いな。ランプ―――お前は一体、どうしたいんだ?」
ここで「わからない」などと答えようものなら、ローリエとの約束を破る、という勢いでランプに問う。
ジンジャーの問いを受けたランプは、いくばくか動きを止めてから、手元の紙にペンを走らせていく。
「………筆談? なんで…」
「ついさっきね、ランプはショックで声が出なくなったんだ」
「そ、そうか…悪い。…で、答えはなんだ?」
ランプは、書き終わった答えをジンジャーに見せる。
『わたしは、ソラ様を助けたい。
確かに、アルシーヴ先生がソラ様のために封印したと知った時は、ショックで声が出なくなりました。
でも、呪われているのは事実です。だったら、わたしがどうなってでもソラ様を助けてさしあげたいんです!!』
「……………わかった。」
「………!」
ランプの赤裸々な想いが書かれた紙を懐にしまうジンジャー。
深呼吸をひとつして、彼女が下した意志を告げた。
「どうりであいつ、本気の覚悟を持っていたわけだ…」
「本気の覚悟……?」
「あぁ。私の背負っているものよりも大きいものを背負っていることは薄々分かっちゃいたが……ソラ様、ひいてはエトワリアの未来を背負っていたとなったら納得がいく。
女神は聖典を生み出せる唯一の存在だ。そんな人が殺されたとあっちゃあ、聖典も世界の情勢もメチャクチャだ。
筆頭神官として、それだけは避けたかったんだろうな」
「「「…………」」」
「いざとなったら……いや、十中八九お前らはそんな覚悟を背負うことになる。
……できるのか? あいつの覚悟を背負うことが。」
アルシーヴの覚悟の源を理解したジンジャーは告げる。
彼女もまた、違う形でとはいえ、女神ソラとエトワリアを訪れた危機から救うために動いていたのだ。
きららの考えている事は、『コール』でクリエメイトを呼ぶことだが、それでもアルシーヴとぶつかる可能性は高いだろう。
だが、ジンジャーは既に決めていた。ローリエとハッカが提案した『賭け』に乗ることを。
「出来ねぇんなら今すぐクリエメイトを渡して帰れ―――と言いたいトコだけど。」
「「「「「「「「……???」」」」」」」」
「ランプ、お前、日記帳書いてるか?」
「…?」
ランプは、質問の意図が分からぬまま、ジンジャーの質問に首肯する。
「いやな、とんでもねぇーバカがよ、お前の日記が聖典になるなんて言い出すから、期待しちゃってな」
「「「「「「「!!!?」」」」」」」
「私も落ちたモンだよ。なにせ、ハッカも賭けてるからって理由だけで、私もその賭けに乗っちまったんだから」
「じ、じゃあ………!!」
「援護してやるよ。流石にアルシーヴ相手の説得は無理だが、ドリアーテには何発も拳ブチ込みてぇ気分なんだ」
ジンジャーが、人の良い、爽やかな笑みを浮かべた。
それを向ける事は、今ここできららとジンジャーが戦い合う必要がなくなったことを意味していた。
「ジンジャーさん……ありがとうございます!!」
「お礼なんか言うんじゃねぇ。私が今からやるのは『サボり』だ。怒られこそすれ、感謝されるような事じゃあねえよ」
ジンジャーは大広間の隅に寝転がり、眠るフリをした。ローリエのお願いを最大限汲み取った形だ。
後はクリエケージを破壊するのみ……となった時、きららはぽつりと口にする。
「でも……どうして、ドリアーテはエトワリアを滅ぼそうとするんだろう…?」
「きらら……気になるんなら、今ハッキリさせといた方が良いぞ」
意外と耳のいいジンジャーがきららの呟きを拾い、千矢もなるほどという顔をする。
「そっか、それできららは悩んでたんだね」
「千矢さん、気づいていたんですか?」
「なんとなく、だけどね。
さっききららが一瞬、うーんってなってたから。」
とてつもなくふわっとした理由。だが、それでいて千矢らしい『野生の勘』だった。
きららは、そんな千矢の野生の勘を聞いて、一人で悩んでいた事を明かす事にした。
「ランプ、あと…皆さんも。少し聞いてほしいんだ。
確かに、『オーダー』は止めなくちゃいけないし、クリエメイトの命を狙うのも許せないよ。でも、ドリアーテもアルシーヴみたいに理由があるのかなって思うんだ」
「そ、そうかしら……?」
「私は、アルシーヴがあんな理由で『オーダー』をしているなんて知らなかった。
ドリアーテについては、目的どころか正体も分かってないし、やってる事も許せない……けど。
またアルシーヴみたいに大切な理由があったらどうしようって思うと……どんな気持ちで戦えばいいか、わからなくなりそう―――」
「―――それなら、そのドリアーテさんに聞けばいいんじゃないかな?」
「千矢さん……」
「ドリアーテさんに会った後で、どうしてこんなことしたんだーって聞けばいいんだよ。」
きららの、再び迷いそうな悩みに千矢が答える。
それは実に千矢らしい、正直な答えだった。……だが、今回はだいぶ相手が悪い。
「…本気で言ってるのかい、千矢? クリエメイトや僕らを亡き者にしようとした人物だぞ?」
「大丈夫。話してくれるまで粘ればいいんだから。」
「は、話してくれるまで……?」
「悪いことをしてきたら、それを止めながら粘るの。
それで、マッチの言うように悪い理由だったらめーってすればいいんだよ。
なんだったら私も一緒に聞いてあげる!!」
マッチはこれまでのドリアーテの行動を指摘するが、千矢は明るくそう続ける。
確かに、ドリアーテの所業は許せる範疇をとうに超えている。しかし、きららはアルシーヴのように重大な事情を抱えている可能性を捨てなかったし、千矢は眩しいくらいに相手を信じている。
『そんな可能性は、考えてませんでした。
ドリアーテがソラ様を害した理由…確かに、それも知りたいです。
きららさん、その為に一緒に戦ってくれますか?』
千矢の言葉を受け、ランプもこう書いた紙をきららに見せている。
ランプの言葉に「もちろん!」と答えるきららを見て、これにはマッチも折れるしかなかった。
「やれやれ……わかった。でも、相手が危険なのも事実だ。命は大切にしようね。」
もう迷わない―――そう決めたきらら達一行。
この先に待つのは、果たしてまだ見ぬ真実か、それとも底なしの悪意か。
それが分かるまで………もう、あとすこし。
キャラクター紹介&解説
ローリエ&ハッカ&フェンネル
ドリアーテとの戦い―第一陣―に参戦したメンバー。ただ、今回は決定打に欠け、ドリアーテの『ティタノマキア』によって各員バラバラに吹き飛ばされ撃退されてしまい、神殿の最終決戦(予定)地から距離を離されてしまう。だが、その程度で諦める八賢者は誰もいない。
ドリアーテ
幼女に化けていた不燃の魂術の使い手。前回あんなに泣きわめいていたのは演技で、フェンネルを眠らせて始末しようとしていた。そこにローリエとハッカの邪魔が入り、きらら達の健在も知って57号がしくじった事を察して怒りを爆発(文字通り)させた。
ジンジャー
原作とは違い、きらら達と戦わなかった八賢者。ローリエからドリアーテの事情とお願いを聞き、偶然とはいえきららから女神ソラの封印事情を聞いてローリエ側につくと心に決めた。それはそれとして、今回のゴタゴタが全部片付いたらローリエをしばき倒そうと考えている。
じんじゃー「てかきららからソラ様封印の事聞かせるのも全部計画のうちだったろ!?」
ろーりえ「計画通り……!(そ、そんなことないよー)」
じんじゃー「よし覚悟しとけこの野郎」
ろーりえ「建前と本音間違えた…」
きらら&ランプ&千矢
ジンジャーと戦わずに済んだことで、体力を温存できた召喚士とそのご一行のうち、「ドリアーテがどうして今までの凶行に及んだか」を考え出しているメンツ。ドリア―テのやってる事はどす黒いくらいにクロ100%だが、彼女たち視点では知らない事も多く、特に千矢はお人好しも度を超すレベルで人を信じている。その様相は某欲望の王ライダーを彷彿とさせるが、きらら漫画のメインキャラはほぼ全員お人よしなため、多かれ少なかれ適性はあると思われる。
ちや「えーっと、
鳥系グリード「………………」
△▼△▼△▼
きらら「アルシーヴさん…ソラ様が呪われたって本当ですか?」
アルシーヴ「ッッ!!!? な、なぜそれを知っている!?」
きらら「私は、もう迷いません。ソラ様を救うため、ドリアーテを止めるため、アルシーヴにそう問いかけました。」
アルシーヴ「…だが私にも矜持はある。今までの努力を無駄にするわけにはいかん。そう答えようとした時、意外な人物が現れる……!」
次回『燃える魂と燃えない魂 その②』
アルシーヴ「次回もお楽しみに。」
▲▽▲▽▲▽
一番印象に残ったオリジナルキャラは誰ですか?(ローリエは主人公なので除く)
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コリアンダー
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アリサ
-
ローズ&リリィ
-
サルモネラ
-
ソウマ
-
ビブリオ
-
セレウス
-
ナット
-
エイダ
-
01型57号
-
ドリアーテ(デトリア)
-
その他