きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

112 / 131
ブライダル・オア・ヘルのイベントでランプが自分自身の欲望と戦う展開を見て思いつきました。

~~~~~~~~
欲望『君は僕には勝てない。だって僕は…君の欲望なんだから。さぁ……証明しようか! 君に茨の道など歩けないことをね―――変身!』

【プテラ!トリケラ!ティラノ!(CV.高野麻○佳)】
【♪プ・ト・ティラーノ・ザウルゥース!!】

らんぷ「あなたには負けません!!負けるわけにはいかない!!」

そら「……ローリエ?」
ろーりえ「何で秒で俺を疑うの?」
そら「貴方なら知ってるかなって」
ろーりえ「知らないよ。アレがオーズっていう欲望の王の力を継いだ仮面ライダーだとか、3枚のメダルを組み合わせて変身するとか、プトティラコンボっていう超強力だけど危険なコンボの詳細とか、俺が知るワケないでしょ」
るっきー「めっちゃ博識じゃないの」
全員「「「「「「……………」」」」」」
ラジオ『聞いてください「POWER to TEARER」』

~~~~~~~~



 ―――はい。というわけでついにきらら達がアルシーヴちゃんの元へ辿り着きます。今回の推奨BGMはコレです『Dirty&Beauty』……クイン・セクトニアのように美しくもおぞましく汚れた本性を持つドリアーテの正体とは一体………!?

“ソラ様の部屋で、私の目的を言い当てられた時。体が芯から冷えていく感じがしたんだ。後になって裏切られたなかと思ったんだぞ!”
 …アルシーヴ
  ローリエに対して


第85話:燃える魂と燃えない魂 その②

 きらら達は、女神ソラ封印の経緯を話し、ドリアーテを止める事をジンジャーに話した結果、彼女の援護を取り付ける事に成功した。

 

 クリエケージを破壊し、千矢達迷路町のうららを元の世界へ戻した後、きらら達は先へ進もうとする……のだが。

 

 

「なに、これ………」

 

「通路がメチャクチャだ…ここで何があったというんだ……?」

 

「これは………炎、か?ところどころが焼けていやがる……!?」

 

 

 大広間から女神ソラの部屋へ向かう通路。

 それが、めちゃめちゃになっていた。

 石畳が高熱により融解・ガラス化しており、壁や天井もほぼ全壊で外の光景が丸見えだ。他の部屋はどうにか無事なようだが、元がどこにでもある神殿の廊下だというのが信じられない程に変わり果てていた。まだ庭のガラス通路と言った方がそれっぽくなっていた。………もっとも、瓦礫や地面の抉れでそれどころではないが。

 

 

「…ドリアーテだ」

 

「なんだって?」

 

「これ程の規模の破壊の痕……きっとドリアーテがやったんです! 八賢者の皆さんやアルシーヴはこんなことする理由がない。ドリアーテが戦ったんだと思います…!」

 

「これをドリアーテがやっただって……!? なんて奴だ…!」

 

 

 きららは、すぐにこの惨状を引き起こした張本人を推測した。神殿側には、ここまで本拠地を破壊する理由がない。よって、ここに来ているであろうドリアーテの仕業だと言った。マッチも、神殿のいち廊下をここまで様変わりするほど暴れられるドリアーテの実力に恐怖が漏れる。

 

 しかし、ここで二の足を踏む時間もない。

 ジンジャーは、ここに通路の番のフェンネルと先へ進んだローリエ、ハッカがいない事を懸念していた。つまり、ドリアーテと戦ったのはその3人であって。最悪の可能性を頭に入れながらも、アルシーヴの身の危険を察知して先に進まなければならないという使命感に駆られていた。

 きららもまた、ドリアーテを放っておく理由はなかった。アリサを盾にソウマを、エイダを盾にナットを脅迫した他、数々の刺客を送り自分たちの命を狙ってきた。このままドリアーテを放置していたら良くない事が起こるのは明白だ。故に、一時は敵対していたとはいえアルシーヴを狙われる事を良しとしていない。ましてや、真実を知った今なら尚更である。

 

 

「ジンジャーさん、行きましょう」

 

「…あぁ。行こうぜ」

 

 なお、ジンジャーは最悪な可能性をきらら達に伝えていない。戦意喪失の危険性があったし、決定的な証拠がない以上どこかで生きてると信じたかったからだ。

 

 

 

 神殿深部、女神ソラの部屋。

 ……ついに、とうとう、ここまで来た。

 

 きららは村にいた頃、こうなるなんて思ってもみなかった。

 でも、ランプとマッチと出会った日から、全てが変わった。

 自分に、伝説の召喚魔法『コール』の使い手である召喚士の力があったこと。

 そこから始まった、神殿への旅。その道中で『オーダー』されてしまい……それでも、出会うことのできた、クリエメイトの皆との交流。

 決して楽な事はなかった、八賢者達や、ドリアーテとの刺客との戦い。

 色んな事が、頭の中をよぎる。

 そして―――今。

 

 

「……この扉の奥に、アルシーヴがいるんですね」

 

「あぁ。間違いねぇ。きらら……分かってるな?」

 

「はい。アルシーヴさんの事は、私達だけでやります。

 もしドリアーテが出てきたら、お願いします」

 

「おう。……行ってこい」

 

 

 ジンジャーに肩をたたいてもらい、背中を押してもらう。

 隣では、不安そうにランプがきららのローブを掴んでいる。言いたいことは書いてきてあるけど、それを見てもらえるかは分からない。声の調子が戻っていない以上、喋れないことは分かっているが、言いたいことを言えないもどかしさが伝わってくる。

 

 

「…大丈夫だよ。ランプのぶんまで、私が話すから」

 

「―――!、―――」

 

 小さな相棒の声の出ない唇が、「ありがとうございます」と動いたのを確認して。

 召喚士一行は、扉を開いた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 八賢者は倒れ、オーダーも打ち破られた。

 先ほどの爆音が鳴りやんでしばらく、沈黙が続いていた。

 

「…ソラ。ローリエはよくやっているよ」

 

「…………」

 

 当然、この手で封じた親友が答える訳がない。でも、止まる事は無い。

 

「ユニ様の死の真相をも暴き、ドリアーテの配下を次々と下し、そして今は、ドリアーテ本人の正体に迫っているんだ…」

 

 ユニ様が本当にドリアーテに殺されたと知った時は衝撃だった。そして、その事実をローリエが見つけてきたことにも。八賢者達の前で平静を装うのに精一杯だったんだぞこっちは。まったく人の気も知らないで……だが、あいつが成果を上げているのは事実だ。

 

 対して、私はどうだろう?

 ソラを封印する事しか出来ず、決死で行ってきた『オーダー』も、すべて打ち破られてしまった。

 ソラを救うために行ってきた事全てが徒労に終わり、私の命も尽きかけてきている。

 これでは……これでは、二人に…合わせる顔がないじゃあないか!

 

 

「せめてこれだけはやり遂げるよ……私は、為すべきを為す」

 

 

 何も為せなかった私でも、たった一つでも為し遂げることができれば、二人に誇れる友になれるだろうか? それなら、この身がどうなろうとも………

 

 

 

 バァァン!!!

 

「!」

 

 

 突然、ドアが乱暴に開かれた。見ると、そこには案の定というべきか、召喚士きららとランプ、そしてマッチが立っていた。………あと一人、誰かの気配がするが、どうも入ってくる様子はない。

 

 

「…………来たか。」

 

 

 ランプなら「ソラ様から離れなさい!」とキーキー騒ぎそうなものだが、不思議なくらいに静かだ。

 そしてきらら……召喚士は、良い目をしている。山道であった時とも、フェンネルを迎えに行った時とも違う。

 

 もはや、衝突は不可避だろうな。ならば……

 

 

「アルシーヴ、貴方に聞きたいことがあります」

 

「……何?」

 

「私達は、最初はただあなたを倒してソラ様を救う事だけを考えていました。

 でも……クリエメイトの皆さんや、他のさまざまな人たちと出会って…思ったんです。

 どうして…ランプの先生であるあなたはこんな事をしたんだろうって。

 貴方の口から教えてください。―――どうして、ソラ様を手にかけたんですか? 禁忌である『オーダー』に手を出してしまったんですか?」

 

 

 ……ふむ。

 どうやら、何も考えていないわけではないみたいだな。流石、八賢者全員を退けただけはある。

 だが私は、ドリアーテを倒して、ソラ様を呪いから解放しなければならないのだ。その為に為すべきことを今までやってきたつもりだ。その「為すべき事」の中には、この騒動で起こった事の責任をすべて背負う事も含まれている。

 

 

「………答える必要など無い。」

 

 

 だから、こう言うだけだ。

 私の答えに、ランプは地団駄を踏み、召喚士は息を吐く。話し合うことなど不可能だ。

 

「…やっぱり、答えてくれないんですね。」

 

「当然だ。お前達には関係のないことだからな。」

 

 女神ソラ様が呪われたなど、エトワリアを揺るがす大事件だ。たかが『コール』に目覚めたばかりの村娘や、私の生徒に教えるには……この真実は重過ぎる。

 私はクリエを手に入れ、ソラを救う。それが達成されるまで、私は倒れる訳にはいかない。

 お前たちがそれを阻むというのなら、全力をもって―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()聞きたかったですが……仕方ありません。

 ―――()()()()()()()()()()()()()()

 

「――――――は?」

 

 

 ま、待て…………ッ! 今、こいつは何と言った…!?

 

 

「クリエが減っていく呪いを受けたから……呪いの進行を止めるために、封印したんですよね? …ソラ様の命を繋ぎとめるために。

 そして……呪いを解く方法が、『大量のクリエを使う事』。ソラ様の聖典が機能しない以上、クリエの調達は必要だった……」

 

 なぜそれを知っている。いつ、どこで、どうやって―――そんな事を知ることができた!!?

 知っているはずのない人物から、知っているはずのない事実が………次々と述べられていく。

 私の…「それ以上話すな」という、恐怖と焦りとが入り混じった混乱した思いとは裏腹に。

 

「私達は……ついさっき、この真実を知りました。

 信じられなくって、受け入れがたいコトだったけれど……それでも、ここまで来ました」

 

「なぜだ…」

 

「私達の進む理由が、目的が、変わらなかったからです。

 それは……たった一つのシンプルな願い。

 『目の前で困ってたり苦しんでたりしている人達を救いたい』

 それだけの為に動いていたからです」

 

「――――――」

 

 

 堂々と、そんなことを言ってのける召喚士に。

 私は………とうとう、というべきか。堰が切れた。

 

 

「そんなものは私だって同じだ!!!」

 

「「「!!」」」

 

「ソラが呪われてから……様々な手を尽くした!!

 辺境の秘宝も、地下の財宝も…全部ダメだった!!

 呪いを解くには…もうこれしかなかった!!

 世界を乱すのは分かっている!だから私は……この責任を、全て背負うつもりだったのに…!!」

 

 

 …………気が付けば、洗いざらいぶちまけていた。

 筆頭神官として、エトワリアを治める長として、あるまじき行為だというのは分かっている。

 だが……そうせずにはいられなかった。

 

 知らなかったとはいえ、私の『オーダー』を全て無に帰したのだ。…いや、ここまでは私のみに非があるからまだ良い。私を止めようとしたことは、クリエメイトの身の危険を思えば当然のことだ。

 だが、事情はどうあれ真実を知ってもなお、私の前に立ちはだかるのは分からない。

 同じソラ様を救うためならば……どうして引かない!? 私の命が潰え、ソラ様がいま崩御なされたら……その先に未来がないのは分かっているだろうが……!!!

 

 

「お前たちがどうしてソラ様の呪いを知ることが出来たか………今はどうでも良い。

 だが……だったら分かるはずだ! 私は為すべきことを為す!! その為には倒れる訳にはいかないんだ!!!」

 

「『オーダー』をしてクリエメイトを集めたのは……ソラ様の呪いを解くクリエを集める為だった…」

「アルシーヴは、とても危険なギャンブルをしていたわけだね。」

 

「………そうだ。そして、私にはもう何度も『オーダー』を使う力は残されていない……できてあと一回分…それも、この命と引き換えに、だ…!」

 

「……『コール』じゃあ、いけないんですか?」

 

 

 召喚士が、そんなことをのたまう。

 無知だからか何かは知らんが、その提案は無意味だ。なぜなら。

 

 

「『コール』はクリエメイトの()()()()()を呼び出す魔法だ。

 『オーダー』のように、()()()()()()()()()を呼び出すわけではないから、そこからクリエを引き出すことは出来ない………!!!」

 

「そんな………!!」

 

 

 ようやく、事の重大さが分かったようだな。

 召喚士もマッチも、絶望が表情に見え隠れしている。

 だが、状況はもはや手遅れだ。

 

 

「再び呪いごとソラ様を封印することが出来るものはもはや誰もいない。

 私も、たび重なる『オーダー』の代償でクリエが削られている。今も、ソラ様の封印を保つことで精一杯だ。

 もはや……他に道はない。この私が最期の『オーダー』を行い…呼び出したクリエメイトからクリエを引き出す以外にはな」

 

「「「……………」」」

 

 

 下手に事情を知っていることを逆手に取り、私を止める気力を削ぐ。

 ドリアーテのような後顧の憂いを残す事は非常に不本意だし、二人の友人を悲しませるだろうが……もはや、これしか方法がない。

 それより前に成功していれば他にやりようもあったが……ここまで来てしまっては、この選択肢を選ばざるを得ないだろう。

 エトワリアの生ける命全てか、私一人か。

 天秤にかけるまでもない。私本人だとしても即決できる比較だ。

 

 

「分かったか? これまでの全ての責は私にあるのだ。責任を取るのは当然だろう?」

 

「………………」

 

 

 召喚士たちにそう呼びかけた時だった。

 さっきまで静かにしていたランプが、てくてくと私の元に歩いてきて、一枚の紙を差し出してきたのだ。

 

 

「これは………?」

 

『ソラ様に、お話したいことがあるんです。封印を解いてくださいませんか?』

 

 

 紙に書かれていたことを見て、私はため息をつく。

 まったく、話を聞いていたのか? ランプには、もう少し話をまとめる事を教えるべきだったか。

 どうしてわざわざ筆談なんて手段を取ったか詳しくは分からないが、厳しくさせてもらう。

 

 

「ランプ。お前は人の話をよく聞くことを覚えるべきだったな。

 今、ソラ様を失うわけにはいかない。その為の手段は、ひとつしかない。

 わかっている筈―――」

 

「いいえ………。そうとも限りません」

 

 

 だが、召喚士がその言葉を遮った。

 

 

「聖典が『女神が書いたクリエメイトの日々』ならば……まだ可能性はあるはずです。

 ……例えば、ランプがクリエメイトとの日々を書いた日記帳とかに!!」

 

「!!?」

 

 

 召喚士の提案に、私は目を見開いてたまげるしかなかった。

 ランプといえば、まだ女神候補生…修行の身だ。聖典など書ける訳がない。

 無茶にもほどがある、そのような馬鹿げた策でソラ様を危険に晒すわけにはいかない―――と言おうとした時だ。

 

 

「そうねぇ。可能性は捨ててはいけないわね」

 

「「「「!!!?」」」」

 

 

 私達以外の声が聞こえた。

 振り向くと、そこにはしわがれた老婆―――デトリア様がいた。

 腹に赤い宝石を埋め込んだ鳥を模した杖で身体を支えて、今にも倒れそうな足取りでこちらに歩いてくる。

 

 

「デトリア様!」

 

「マッチ? こ…この人は一体…?」

 

「アルシーヴが筆頭神官になる前の筆頭神官………つまり前任の筆頭神官だ。3年前に辞めるまで実に70年近くも筆頭神官だった人だよ」

 

「そ…そうなんですか!? え、えと……」

 

「かしこまらなくていいわよ。今は…ちょっとアルシーヴちゃんと関係があるばばあでしかないのだから」

 

「あ、はい! きららといいます!」

 

「デトリアです。よろしくね、きららちゃん」

 

 

 このタイミングでのデトリア様の登場に、頭が追い付いていない。

 体がぴしりと悲鳴を上げたような気がして、片膝がついた。

 そんな私の元に、デトリア様が近づく。

 

 

「大変でしたねぇ、アルシーヴちゃん。失礼ですが、話は聞かせていただきました。」

 

「も、申し訳ございません……ソラ様を救うためとはいえ、禁忌に手を出してしまいました…」

 

「ビックリしたわよ。でも、貴女は自分の為にルールを破る子じゃあなかったからねぇ」

 

 

 デトリア様は、私の師といってもいい。

 彼女がいなかったら、私は筆頭神官にまで上り詰めることなどできなかっただろう。

 だが、今は御年のことも考えて神殿に入らないようにしたはずだが………まったく、現役時代から、過保護なくらいに私達に気を配りすぎだ。

 

 

「貴方ほどではありません。私は為すべきを為し遂げることができませんでした」

 

「諦めるのはまだ早いわ。きららちゃんも言ってたでしょう? 『ランプの日記帳に可能性がある』って」

 

「ですが……」

 

「それにね、貴方が命を懸ける必要なんてないわ。ダメだったら、いちばん年寄りな私が『オーダー』をすればいいのよ」

 

「「「デトリア様!!!?」」」

 

 

 そ、それはダメだ!

 私は…最初に『オーダー』を使う時から決めていた! 「全ての責は私にある」と!

 それを……最期の最後で、デトリア様に押し付けるみたいな真似など……

 そんなことをしてしまったら、自分で自分を許せなくなる!!

 

 

「なりません!! 全ての責は私にあるのです!!

 お考えを改めて―――」

 

「それこそ、なりませんよ。アルシーヴ」

 

「っ!」

 

「貴方は、許されざる罪を犯しました。その償いをしていかなければなりません………私がいなくなった後、残りの一生を使って。間違っても、ここで死んでそれらから逃げるようなマネなど、私が見過ごすはずがないでしょう」

 

「…………!!」

 

 

 デトリア様の厳かな反論に、私は何も言えなかった。

 確かに…言われてみれば、ここで命を賭して『オーダー』をする事に、満足しようとしていた自分がいた、のだろうか………? 今すぐには、答えが出ない。考えがバラバラで、簡単にまとまる気がしない。

 

 

「………とはいえ、今のエトワリアにソラちゃんが必要なのは事実。

 まずは、ランプちゃんの日記帳が聖典に値するか確かめましょう。

 ソラちゃんに読ませるのは、それからでもいいですか?」

 

「は…はい。私に異存はありません。」

 

「あ、私もそれでいいと思います!」

 

 

 デトリア様がランプに近づいて行って、そして尋ねた。

 

 

「さ、ランプちゃん。その日記帳を私に見せてくれないかしら?」

 

 

 デトリア様が手を差し出しながら問う。

 ランプは……それに、どうも迷っているようだった。

 その間、やはり何も話す様子がない。どうしたんだ?ソラ様を助けるつもりではないのか?

 

 

「…ランプ。どうしたんだ? 早くデトリア様に日記帳を」

 

「―――っ…――――――」

 

「………? おい、どうしたんだ?」

 

「あ、あの、アルシーヴさん、デトリア様。ランプは…色々事情がありまして、今、声が出せないんです」

 

「…あぁ、成る程。道理で、いつも騒がしいランプが今日は静かだったのか…」

「おやまぁ……ランプちゃん、辛い思いをしたんだねぇ…それほど、苦しい旅だったのかい?」

 

「―――――――――」

 

 

 召喚士の言葉に納得した。デトリア様も同情して、ランプの頭をしわだらけの手で撫でる……が、ランプの警戒している様子が変わらない。まるで、何かを思い出したかのようで。

 そして………ランプは、自分の日記帳を、身体で庇うように隠した。それは、「日記帳を渡してちょうだい」というデトリア様のお願いに―――「イヤです」と拒んでいるようであった。

 

 

「お願いよ、ランプちゃん。ちょっとでいいの。その間に、聖典の確認作業は終わるわ」

 

「……ランプ。ソラ様を助けたいんじゃないのか? それとも、何か問題があるのか?」

 

 

 私も一緒に問いかけるが、ランプは首を振るばかり。

 何が言いたいのか分かりかねた私は、更にランプを問い詰める。

 

 

「おい、いい加減にしろ。ソラ様をその日記帳で救えるか確かめるんじゃあないのか?」

 

 ランプが首を縦に振る。

 

「なら、デトリア様に渡すんだ」

 

 ランプが首を横に振る。

 

「…………?? どういう事だ? その日記帳なんだろう?クリエメイトとの日々を書いたのは」

 

 ランプが首を縦に振る。

 

「………恥ずかしいのか?」

 

 ランプが再び首を縦に振った。

 どうやら、声が出せないのは本当らしい。お陰で、どうしてデトリア様に渡さないか聞くのも一苦労だな。「はい」か「いいえ」で答えられる質問を続けていくしかないか………

 

 

「ランプちゃん。ホントの本当にお願いよ。このばばあのお願いを聞いてほしいわ。貴女は、女神様になるんでしょう?」

 

 

 ランプに近づくデトリア様に、デトリア様から離れようとするランプ。一体なぜ、そこまでランプはデトリア様に日記帳を見せるのを嫌がるんだ―――と、そう思った時だった。

 

 

 

 

 

 

 ―――デトリア様の頭に複数の風穴があいたのは

 

「えっ―――!!?」

「なッ―――!!?」

「デト………ッ!!?」

 

 

 ……始めは、人の頭に風穴が開いたこと自体への驚きだった。

 どのような飛び道具であれ、頭部を貫通する傷など致命傷だ。それが瞬間的に複数も現れた事に呆気にとられる。

 そして………ボッ、と音がしたかと思えば。

 

 

「傷が………!!?」

「そんな………!!」

 

 

 頭の穴から()が吹き出す。そして…何という事だ。

 頭に開いた傷が…穴が、()()()()()()()()()()()()ではないか!

 そして、頭の炎が鎮火した頃には……傷など受けていないかのように()()な頭があらわになった。

 

 

「………………………」

 

 

 傷を受けたデトリア様はというと、何事もなかったかのように入り口の方へ顔を向ける。

 この時に、たまたま顔つきが見えたのだが……私は己の目を疑った。

 何故なら、私の知るデトリア様なら絶対に誰にも向けないような、怒りや憎悪、不快の感情がこれでもかというほどに宿っていたからだ。

 そうして、デトリア様は入り口に立っていた人物―――ローリエを睨みつけて言った。

 

 

「…足を引っ張るなと言ったはずだぞ、ゴミクズが」

 

「ご立腹だな。マトモな人間の顔じゃあないぜ。そんなカッカしてっとただでさえ少ない寿命が縮むぞ?

 まぁ……生ゴミ以下の本性が暴かれちゃあ無理もないか、デトリアさん………いや、()()()()()

 

 

 目を疑うと言えば……さっきの傷の炎…いや、()()

 頭を貫通した傷を、()()()()()()!!! そんな条件に当てはまる魔法はひとつしかない!!

 

 

「不燃の魂術……!! 貴様がドリアーテだったのか…!!?」

 

 

 ソラを呪い、幾度もクリエメイトや賢者の命を狙い、エトワリアの崩壊を目論んだ黒幕。

 その正体が……そんな、神殿の皆から愛されたデトリア様だったとは……!!

 信じられないが、目の前で起きた再生は疑いようもない…!!!

 

 

「ここまで私を邪魔しおって……

 だが、ここまでくればもう関係ない。

 貴様ら全員、ひとり残さず焼き殺せば済むだけだ。

 楽には殺してやらないからな……覚悟しろ、カス共が…!」

 

 

 私の言葉の返事は、デトリア様―――否、ドリアーテの独白と吹き上がる熱風だった。




キャラクター紹介&解説

アルシーヴ
 いきなりきららに『オーダー』の目的を言い当てられ、動揺を隠せない筆頭神官。最期の最後までソラを救う事を諦めておらず、命すら賭そうとしたが、デトリアに説教される。だが、その直後、信じられない事実を決定的な証拠と共に叩きつけられて、ソラの仇と対面することになる。

きらら&ランプ&マッチ
 アルシーヴの目的を知っていた原作主人公一行。アルシーヴの目的を言い当て、『コール』で力になれないか尋ねるも、クリエを引き出せないと知る。その後、ジンジャーの言葉をもとにランプの日記帳に可能性を提示して、ソラを救おうとするも、ただでは上手くいかないようだ―――。
 ランプは今回も終始喋れなかったが、臣の占い内容は覚えており、迷った時は日記帳を渡してはいけないことをしっかり覚えていた。だが、尊敬する前筆頭神官デトリア相手にそんな迷いが出てくるとは思わず、臣を信じる一心で占いに従った結果、ローリエが辿り着くまでに最後の希望を死守することに成功した。

ローリエ
 『ティタノマキア』で吹っ飛ばされたメンバーのうち、真っ先にソラの部屋に辿り着いた男。ハッカやフェンネルと比べて吹っ飛ばされた距離が長かったのに早かったのは、最短ルートを通ってきたことと、単独行動だったことが関係している。本人達は知るよしもないが。

デトリア→ドリアーテ
 拙作のラスボス。表向きは長年筆頭神官をやっておきながら、エトワリアを滅ぼすために暗躍していた。今回もランプの拒絶とローリエの頭部発砲がなければターゲットには殺す直前まで(もしくは死ぬまで)正体を隠しているつもりだった。だが致命傷を炎と共に回復するという決定的な証拠を見られ、全てを焼き尽くす方向にシフトしたようだ。これにより、全面戦闘が始まる。
 きららのパス探知に引っかからなかったのは、パスを探知されないように微量な魔力をまとわせ、きららが誤認するように仕向けたからである。
 名前の由来は、フランス語かなんかで「削除」の意味だった気がする。詳しくは忘れた(オイ)。ただ、アルシーヴがアーカイブのフランス語読みであったことは覚えているので、その反対語で名前を考えようとした記憶はある。まずデトリアを作り、そこからローマ字に直してアナグラムしたのがドリアーテである。



△▼△▼△▼
アルシーヴ「まさか、デトリア様がドリアーテだったとは……」

ローリエ「俺はわりと前から分かってたけどな。さて、次からは本格的な戦いだ。アルシーヴちゃん、準備しとけよ~?」

アルシーヴ「…一応、私が上司だからな……?」

次回『燃える魂と燃えない魂 その③』
ジンジャー「私も出るぞ!次回、待ってろよな!!」
▲▽▲▽▲▽

一番印象に残ったオリジナルキャラは誰ですか?(ローリエは主人公なので除く)

  • コリアンダー
  • アリサ
  • ローズ&リリィ
  • サルモネラ
  • ソウマ
  • ビブリオ
  • セレウス
  • ナット
  • エイダ
  • 01型57号
  • ドリアーテ(デトリア)
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。