きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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本番外編は、きらファン1部のストーリーを大体把握し、オーイシマサヨシさんの「君じゃなきゃダメみたい」を用意してからスタンバることをお勧めします。


ソラ編 君じゃなきゃダメみたい

「被写体になってくれないか」

 

 いきなりローリエからそんなことを言われたときは、ただただ混乱するしかなかった。

 

「ごめんねローリエ、もう一回言って?」

 

「被写体になってくれないか?」

 

「ちょっと何言ってるのか分からない」

 

「……あぁ、『被写体』の意味が分からないか」

 

「いや、発言の意図がわからないの」

 

 

 彼の発明によって小型化されたカメラを片手に、聖典の編集中の私にローリエは、清々しい笑顔でそんな事を言ってきた。

 どうして私を撮りたいのか聞けば、意外な答えが帰ってきた。なんでも……

 

 

「私達の写真集!!?」

 

「うん。今度、神殿の神官や女神の仕事ぶりを収めたいんだと。ほら、この前星咲高校の新聞部が召喚されたでしょ? それでな」

 

「伊部さんと宇佐美さんのこと?」

 

「そう!! それで、ちょっと取材を手伝う名目として、写真を撮ることになってな。

 仕事をしているソラちゃんとか色々撮りたいわけよ」

 

「そんなことだったら、いいわよ?」

 

 

 特にお仕事の邪魔をするわけでもないみたいだし、写真撮るくらいならと快諾すると、「仕事続けてよ」と言われた。でももうそろそろ終わりなのよね…。

 聖典の編纂作業は楽しいから、すぐに終わらせてお忍びで街に行っちゃったりするからね、普段は。今日もいつもみたいに聖典をさっさと書き上げて、街へ行きたいわ。

 だからこの後、めちゃくちゃ聖典を書きまくりました。パシャパシャなるカメラのシャッター音をBGMにしながら。

 

 

「よ〜し、終わった!」

 

「え、もう? 随分仕事早いんだぁ」

 

「いつもこんな感じよ。私、聖典が好きだから……すぐに書き終えられるのかしらね」

 

「まぁ〜確かに。凄まじい集中力だったけど…」

 

「ローリエはどうなの? 新聞部のお手伝いなんかする位だから、今日の仕事は終わったのかしら?」

 

「あぁ。問題ない」

 

「じゃあ、少し街に出ましょ?」

 

「え、俺も!?」

 

 

 いつもなら誰にも言わずに神殿を抜け出ているけど、目の前にローリエがいる以上、このまま勝手に抜け出たらすぐにアルシーヴやセサミに気付かれる。それなら、ローリエも護衛という名目で付けたほうがいいから、ローリエも誘うことにした。

 それに、彼はこういうの……嫌わないって確信してる。だって、小さい頃は…ローリエが考えついたイタズラを3人でやったものだったから、ね?

 

「……ま、この後の俺ヒマだし、いいぜ。どこ行く予定なんだ?」

 

「きららの住む里まで行きましょ!」

 

「オーケーソラちゃん。今日は日帰りにするか?」

 

「うん。皆に心配をかけすぎるのも良くないしね」

 

 

 ちなみに、ローリエは監視カメラを使って、誰にも見つからずに神殿の外に出るルートを弾き出してくれた。どうすればアルシーヴ達に見られずに抜け出すか………普段地味に悩んでいた事がこんなに簡単に解決した事に驚きつつ、感謝してもしきれないと言いました。

 ………今月のお給料、ちょっと色つけようかしら?

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 今日目指すのは、きらら達が住む里。

 ……の、つもりだったんだけど、ローリエは最初に言ノ葉の都市の服飾店に寄ろうと言った。

 

 

「ある程度の変装は必要だ。あそこはきららちゃん達の知り合いが山ほどいるから尚更な。即女神バレして、アルシーヴちゃんに知られるのも面白くないだろう?」

 

「サングラスとマスクじゃ駄目?」

 

「駄目だ。アレはどっからどう見ても不審者以外の何者でもない」

 

 

 ……自信満々の変装を不審者扱いされたのはちょっと悲しかったけど、「たまにはオシャレしような」という、ローリエにしては必死なフォローに免じて許す事にした。

 

 

「ローリエ、顔を隠さないと私やローリエだってバレちゃうんじゃないかしら?」

 

「顔を隠すのは変装の常套だけど、やり過ぎると不審感しか湧かなくなる。髪型、服装、香水……他の要素も使えばあっという間に別人になれるのさ。顔なんか隠さなくてもな」

 

 

 うーん、そういうものなのかしら。女神の服以外の、店頭に並んでいるような、可愛い服を着ている自分がちょっと想像できない私は、顔を隠さなければ変装にならないような気がしている。

 

「ねぇ、ローリ―――」

 

 エ、と続ける前に、私は言葉を失った。何故なら振り向いた先には、全く別の姿をしたローリエがいたから。

 いつもの黒マントとカジュアルシャツはどこへやら……限りなく黒に近い緑色のYシャツに鮮やかなオレンジ色のネクタイをしめ、上から青いジャケットを着ている。ズボンは上に合わせたデザインみたいで、色は明るいネズミ色。髪型も前髪を上げたそれに変化していた。

 

 

「…………!?」

 

「どうだ? 惚れ直したか?」

 

 

 …正直、驚いている。

 完全にイメチェンに成功した姿だ。いつもの軽い調子で「惚れた?」って聞かなければ……正直街角でちょっっとすれ違っただけじゃあローリエだと気づけたか分からない。

 

 

「凄い……」

 

「これくらいやれれば、別人だと思うだろうな。

 まぁ、それ抜きにしても、ソラちゃんはたまにイメチェンしてもバチは当たらないと思うぜ」

 

「そ、そんなこと……」

 

「ある。絶対ある。そもそも、こんな美人がオシャレしないなんて勿体なさ過ぎだ」

 

「!!」

 

 

 真っ直ぐこっちを見ながらの言葉。

 それは、ローリエが本心で語っていることを教えてくれた。

 わ、私を、美人だなんて……!

 

「そういう事を大真面目に言わないの!」

 

「えっ…なんで?」

 

「………ばか!」

 

「??????」

 

 と、取りあえず私も、イメチェンするために、ローリエと着る服を選んだり髪型を変えたりしたんだけど。

 

 

「………ローリエ…これでいいのかしら? ちょっと、下が涼しいわ……」

 

 

 私が着た服は、黒一色のワンピース。首にサンゴ石を磨いて作った真珠のネックレスをつけ、帽子にアストラハンハットを被った姿。長い髪は、ハーフアップでまとめたものだ。そして、変装用眼鏡にはいつもの大きくて濃い色のサングラスの代わりに、赤縁でフレームがまん丸の、色なしの伊達メガネ(ローリエに勧められた)をかけた。

 

 

「ソラちゃんは髪色が良いからな……ソレを活かすコーディネートにするべく服装は黒に寄せたんだ。いつも真っ白な服着てるしね。どうかな?」

 

「確かにコレも可愛いけど……ローリエはこれで良いの?」

 

「当然だ。アルティメットでシャイニングな風格と、エクストリームでジーニアスでハイパームテキな雰囲気を醸し出す金髪を目立たせない手はない」

 

「………」

 

 

 …………うん。どうアルティメットで、エクストリームで、はいぱー無敵なのかは分からないけど、気に入ってくれるならソレでいっか。

 そうして、服装を新調してきらら達の里へやって来た私達。いつもの変装じゃないからか…それともここはクリエメイトの皆が多いからか分からないけど、何だか視線が気になってしまう。人通りも多いような……

 

 

「気になるか?」

 

「ちょ、ちょっとね…」

 

「いつもと違う服装してるんだ。良いところのお嬢様にでも見えてんだろ。

 それでも不安なら………ほら」

 

「!」

 

 

 ローリエから手が出される。その行動の言わんとしていることは……つまり、そういう事なのねと思って。

 

 

「…エスコート、お願いできる?」

 

「勿論だ」

 

 

 全く嫌な感じもしなかったから、ローリエのお言葉に甘える事にした。

 

 

「そういえば、人多いな」

 

「そうね……あ、アレじゃない?」

 

 いつもより賑わっている事を実感していると、目に入ってきたのは『新作発表』って書かれた遊具屋の看板。そして、そこに群がる人達だ。

 

「『EAGLE JUMP』……イーグルジャンプ!? 新作って、ゲームのことか!」

 

「青葉ちゃんのところね!!」

 

 なんて素晴らしい偶然。青葉ちゃん達の働く、あのイーグルジャンプの新作が、まさかプレイできるの!!?これは見逃す手はない! 是非、プレイしないと!!

 

 

「ローリエ!」

 

「勿論、並ぼうぜ。でも、少し落ち着いてくれ。女神様だとバレるぞ」

 

「うっ!?」

 

 

 取りあえずは、ゲームの行列に並ぶ事に成功した。

 やがて列が進み、前が見えてくると、行列の要因になったゲームが見えてきた。それは、大きな台に見える。プレイしてる人を見る限り、持ち運ぶゲームじゃないみたいだけど………

 

 

「なっ…!」

 

「ローリエ?」

 

「あれ、アーケードゲームの筐体だ。イーグルジャンプはこんなのも作っていたのか……!!?」

 

「…知ってるのね。あのゲームのこと。

 ひょっとして、『前世』で遊んだ事あるの?」

 

「あっ!? いや、えーと…」

 

「もー、隠さなくて良いのに。もう知ってるんだから」

 

「…あー、そうか。そうだったわ」

 

 

 日本人の生まれ変わりだというローリエは、その正体を知ってたみたい。

 というか、ローリエに前世の記憶がある事は前にアルシーヴと聞いたんだから、誤魔化そうとしなくていいのに。彼としては「ずっと秘密にしたかった」って言ってたし、突拍子もなさ過ぎて信じてもらえないだろうと思って隠してたみたいだけど。

 

 でも、私にはそんなの関係ないのにな。

 例えローリエ……貴方が前世、とても悪い人だったとしても、幼い頃の私を助けてくれた事は事実なんだから。

 

 

「ソラちゃん、次俺らだぞ」

 

「…ええ。わかったわ」

 

 

 ローリエの呼ばれた声に返事をして、私はゲームの筐体の前に立って、ローリエの隣のボタンとレバーを握った。

 

 

「ちょっ…待っ、強くない!?」

「容赦なし、フルスロットルだ」

「酷い!! あーっ、やめ、ハメるのダメぇ!!」

「おー、コマンドあの時のままだ」

「やめて!やめ…あーーーっ!!!死んだ!この人でなし!手加減してくれてもいいじゃない!!」

「何言ってんの。手加減は侮辱行為そのものだ。本気でやりあってこそ、礼儀になる」

「そーいう礼儀なんていいから!!もう一回!もう一回やるわよ!!」

「分かった分かった。手加減な」

 

 ……割とボコボコにされました。

 1回戦目とかパーフェクトされて泣きそうだった。

 ローリエのばかー!

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「ごめんて」

 

「つーんだ」

 

「マジでごめんってば。2回戦目は手加減したでしょ? 最弱キャラで目を瞑りながらやったんだぜ?」

 

「それでも体力半分以上削られたんですけど!?

 もー、どうせ私は格闘ゲームのセンスなんてありませんよーだ!」

 

 

 あまりにも大人気ないゲームが終わり。私はご機嫌斜めです。

 ……いや、言う程怒ってないけどさ。でも1回戦目のパーフェクトは流石に無いと思う。アレは本気で嫌いになるかと思った。2回戦目は悪いと思ったのか、手加減という手加減をしてくれたお陰で辛勝だったけど。だから、もうちょっとだけ怒ってるフリです。

 

 

「ごめんよホントに。さっきは俺が大人気なかったってば。だから機嫌直して………あ、この後のスティーレ、奢るからさ」

 

「……分かった」

 

 

 うぅ〜ん。流石にそこまでしてくれると悪い気がするけど……まぁ、良いかな。意地悪して機嫌損ねたフリしたし。

 

 「いらっしゃいませ。人間のお店に来るなんて恥知らずな豚共ですね」という、苺香ちゃんの最高のナチュラルドS接客を受け、席に案内される。

 その間に麻冬ちゃんや美雨さんとすれ違うけど、私の事には気づかない様子。……それとも、お仕事中だから気にしないようにしてるのかしら?

 

 

「お嬢ちゃーん、注文いい?」

 

「気やすく呼ばないでよね!…それで、なに?」

 

「この限定パフェ2つね」

 

「ちょっと待ってなさい!」

 

 

 ローリエが夏帆ちゃんに注文した時も(後でメニュー表見たら一番ゴージャスで高かった。これを奢る気?)、夏帆ちゃんはツンデレキャラを維持したまま、キッチンの方へ向かっていくだけだった。

 

 

「……気づかれなかった」

 

「そうだろう? 顔隠さなくっても、変装できるモンなんだよ」

 

「みんなお仕事に一生懸命で気づかなかっただけじゃない?」

 

「夏帆ちゃんは兎も角、苺香ちゃんは出迎えた人だぜ? 何らかのリアクションくらいするだろう。つまり……気付かれてない証拠さ」

 

「ほんとかなぁ?」

 

 

 夏帆ちゃんに出されたお水をすする。

 そして目の前の、完全に見た目が変わった幼馴染その2をじっと見つめる。

 ジャケットもネクタイも、前髪を上げた髪型も普段はやらないだけに、見れば見るほど新鮮に見える。一体何処で、ここまでのファッションセンスを身につけてるのかしら……前世とか?

 

 

「ねぇ、ローリエ」

 

「なに?」

 

「貴方、前世で誰かと付き合った事とかある?」

 

 気になったことを尋ねると、ローリエはきょとんとした顔つきになり。そして困ったような顔をして、口を開く。

 

「……それ、今聞くことか?」

 

「うん。今気になったこと。教えてくれる?」

 

 渋々としたローリエの質問に即答。すると、「仕方ない」と言わんばかりの表情で、質問に答えた。

 

「前世では…彼女、のような存在がいた」

 

「ような、って何よ?」

 

「お互いの家に行くのは当たり前。でも男女の仲というより、気の置けない親友みたいな感じだったな、ソイツとは」

 

「親友、ね」

 

「お互いの好きな漫画を紹介しあったり、ゲームで対戦したりしてな。惚れた何だって感じかといえば、違う気がするよ」

 

「…ふーん」

 

「……ソラちゃん、そろそろ勘弁してくれないか?

 今は君とのデート中だ。他の女の話はしたくない」

 

「……良いわよ、許してあげる。この話はまた今度ね」

 

 

 ローリエもこの話題は苦しかったのか、早々に切り上げてしまった。話す様子も楽しそうというより、とうの昔に過ぎ去った過去をほんの少し懐かしむような感じで、「私と元カノさんとどっちが好き?」とからかおうと思ったのに、そんな気も失せてしまった。元カノの有無の話題を振った時点で私もちょっと意地悪だったかな?

 

 

「あぁ。そもそも、傍から見たらカップルの俺らが属性喫茶(スティーレ)でしていい話題じゃあない」

 

「チッ、リア充め…祝ってやる」

「祝われろ…!」

「絶対に祝ってやるぞ…!」

 

「ほら、周りのお客さんにも悪いしさ」

 

「………祝うって聞こえた気が…」

 

 

 呪いのような祝いの言葉に、居心地の悪さを実感しながら、限定パフェをひたすら待ち続けていた。

 パフェの味は、良かったけど、空気の悪さ…気まずさは自業自得のような気がして、ちょっとだけ苦しかった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 スティーレの会計は、本当にローリエが奢ろうとしていた。

 あの後で割り勘っていうのも違うけど、なんだか、悪いことしちゃった気分。

 ホントに良いのか一言聞いたけど、結局お言葉に甘えて奢ってもらっちゃった。

 

 

「今日はごめんね、ローリエ」

 

「……それは何に対しての『ゴメン』だ?」

 

 

 険しくなったローリエの言葉に、なんて返していいか迷ってしまう。

 

 

「だって……元カノさんの話、振っちゃったから」

 

「それについては『気にするな』。俺もちょっと話し過ぎた。そもそも、女の子と二人っきりのデートの最中に他の女の話をするなんてご法度だ。元カノの話なら尚更。分かっていた上で話しちゃったんだから、今回は俺が全面的に悪い」

 

「で、でも………」

 

 

 ローリエは頑なに「気にするな」って言うけど、本当にそれでいいの?

 話すきっかけを作ったのは私だよ? 確かに、ローリエの言う事は間違ってないけど……

 私はただ、昔のローリエの事が知りたいから訊いただけなんだけどな…

 

 

「すみません。少し、宜しいですか?」

 

 

 突然、声をかけられた。

 ローリエとは違う、ちょっと高めの声に振り向けば、そこには如何にもな格好の紳士が立っていた。

 人の良さそうな笑みで、問いかけてくる。

 

 

「建築ショップに行きたいのですが、どちらにいけばよろしいでしょうか?」

 

 

 その紳士さんは、きっとここに来るのが初めてで、道案内して欲しかったと思う。

 だから、たまたま通りかかった私に声をかけたんだって。

 

『そこのお嬢ちゃん、俺と来て貰うぜぇ……!』

 

 だけど―――思い出してしまう。

 かつて、見知らぬ盗賊に攫われたあの日を。

 アルシーヴが目の前で傷ついて……震えたまま攫われた。自分を背負う、二度と思い出したくないあの感触。真っ暗な闇の中、無理矢理連れ出され、埃っぽい牢に投げ込まれて………まぁ、そこでハッカと出会ったわけだけど。

 助けに来た衛兵さんが死んじゃって、ローリエが私たちを引っ張ってくれたのに、私は走れなくって。それで……もう一人の親友の手を、血で染めて。

 

 それからだったかしら。私が……男の人と、普通に話せなくなったのは。

 二人きりはもちろん駄目で、お父さんとも距離がないと目を合わして話せない。今までの女神の業務で男のお客さんと出会った事はあったけど、アルシーヴのフォローのお陰で何とかなったようなもの。

 正直に言えば、重症だ。だって………あの日から十何年も立っているのに、目の前の紳士さんに、道を教えることも、できないんだから。

 

 

………ぅ、ぐっ……!

 

「あの、お嬢さん? 大丈夫ですか??」

 

 

 い、いけない! 大丈夫って言わなくっちゃ!

 この人は何も悪くない。ただ、私に道を聞いただけなのに…このままじゃあ、この人を悪者にしちゃう……! それだけは、絶対に避けないと!

 でも、声が出せない。紳士さんとの距離が少し近いせいか、喉がきゅう、ってなって、声が出てこない。足も根っこが生えてしまったかのように動かないから、距離を取ることもできない………!!

 

 

「すみません、ウチの連れにどのような御用で?」

 

 

 ローリエの声が、した。

 すぐに抱きしめられる感覚がして、喉の感覚も溶けるように消えていった。足も根付いていた何かから解放されたかのように自由になった。

 

 

「おや…貴方のお連れでしたか。申し訳ない」

 

「お気になさらず。それで…建築ショップなら2番目の右を曲がって行けば見つけられますよ」

 

「あぁ、ありがとうございます!」

 

 

 紳士さんは去っていった。

 私は、息を落ち着かせながら、ローリエの腕の中になされるがままにしがみついた。

 

 

「ローリエ……」

 

「ソラ、ちゃん………

 ………少し、街から離れよっか」

 

「うん……」

 

 

 彼に付いていくがままに、小高い丘まで登ると、さっきまでの苦しさは、殆どなくなっていた。

 

 

「落ち着いたか?」

 

「ありがとう。もう大丈夫よ」

 

「……今日はごめんな」

 

「…どうして謝るの?」

 

「いやー……今日のお出かけ、楽しませてあげられなかったかなって。

 ゲームは一方的にボコしちゃったし、スティーレでは元カノの話なんかしちゃって。

 それに…さっきのさ。ヤなこと思い出しちゃったんだろ?」

 

「……」

 

 

 本当に申し訳なさそうなローリエに対して、「気にしないで」と言おうとして………さっきのやりとりを思い出す。

 ローリエに元カノの話振っちゃってゴメンって謝った時、「気にするな」って言われてもそんなことできなかったように、ここで「気にしないで」なんて言ったら、ローリエはますます気に病んじゃうんじゃないかと思ってしまう。

 そう考えると、軽く「気にするな」って言えなくなるなぁ。それが本音なのは確かだけど、ローリエにあまり心配をかけたくないのも本音。

 

 じゃあ何を言うかといえば……さっきの出来事。

 ローリエが手を引いてくれた時、苦しみがあっという間に引いたのを知っている。それはまるで、私が盗賊に攫われたあの時、助けに来てくれた時のようで。

 

 

「ローリエ。さっきあなたが来てくれた時、私、心の底から安心したのよ?」

 

「……?」

 

「今も男の人とは普通に話できないけど……あなたなら、大丈夫なの」

 

「そ、それって……」

 

「だから……また行きましょ? 今日みたいに、ガラっとおめかしして。」

 

「……良いのか?」

 

「もちろん」

 

 

 私は、自分自身の意志で、ローリエに近づき、背中に手を回して抱きしめる。

 ドキドキするけど、さっきみたいな苦しさは一向にやってこなかった。

 むしろ、ほんのりとした温もりが心地いい。

 

 

「……好きよ、ローリエ。貴方が大好きなの。だから…」

 

「―――本当に俺で良いのか?」

 

「―――貴方じゃなきゃダメなの。他の人じゃない、貴方が良いの」

 

 

 そう…こんなに私を許せるのは、ローリエしかいないんだから。だから……他の色んな事、私に教えてね? と、近くなった彼の顔を見上げるように見つめる。

 

 ローリエの金色とオレンジのオッドアイと目が合う。

 しっかり5秒、見つめあってから、彼が満面の笑みを浮かべた。

 

 

「……分かった。そういうことなら、俺も心を決める。絶対離さないからな」

 

「うん……お願いね」

 

 

 夕陽に照らされた二人の影が、一つに重なった。

 

 

 

 

 

 

 

♬MUSIC:君じゃなきゃダメみたい/オーイシマサヨシ

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、二つ約束して。ひとつ、ゲームは絶対手加減すること。ふたつ、私以外の子へのセクハラをやめること」

「え…………あ、わかった」

「『え』って何よ。あと今の間はなに?」

「いや、前者はムズいし……二つ目に『私以外の』って言わなかったか?」

「言ってない。あと手加減はこれから学べばいいでしょ」

「……そうだな」




あとがき
 はい、ソラ様とのデートでした。ちょっと拙作でのソラ様の設定を盛り込みましたので、公式ソラ様とはほんのちょっと違うけども。
 ちなみに、このルートと前回のルートは別々の世界線です。違うからね? あっ、卵投げないで!魔法撃たないで!
 テーマ曲については、大体歌詞から取っています。元々ソラ様のテーマ曲は別の曲だったんですけど、諸事情により今のに収まりました。序盤の展開はその名残です。

二人に続く特別編のヒロインなら…

  • シュガー
  • セサミ
  • カルダモン
  • ソルト
  • ジンジャー
  • フェンネル
  • ハッカ
  • きらら
  • ランプ
  • ライネ
  • コルク
  • アリサ(オリキャラ)
  • クレア(召喚の館の子)
  • ポルカ
  • カンナ
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