きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
さぁ、皆さんもご一緒に。―――命、燃やすぜ!(アウト)
2021/08/19:本文に脱字があったため、修正しました。
最初は、私がなぜここにいるのか分からなかった。
周りを見渡しても、自然に満ちた美しくも、変わらない景色しかない。
だが――いや、だからこそ、気づいてしまった。
自然とはマッチしつつも、目立っていたログハウスがなく、代わりに燃えカスの群れが転がっていたことに。
「さて、どうしたものか」
きっと魔法も使えないだろう。心配なのは家族の事だ。
たった一人の、誰よりも大切な人。
「アリサ……生きていると嬉しいんだけど…」
情報を集める為、人がいっぱいいろだろうという雑な理由で、言ノ葉の樹が見える方角はどっちだったかなと考えだしながら歩きだした。転移魔法の偉大さを噛みしめながら、やがて仕事で何度か来た言ノ葉の樹に辿り着いた。
◇◆◇◆◇
神殿に来てから、規則正しい生活が身についたせいというか、お陰というか……平日なら遅刻しない早めの時間に起きてしまった今日という休日。
「………」
私、アリサ・ジャグランテは、基本的に休日にやることがない。
宿題はもう終わらせちゃったし、今日は誰かと出かける約束もしていない。
誰かと出かけるってなら話は別だけど、そうでない日―――ひとりで過ごす日は、どうしてもやることがなくなってしまうのだ。呪術を使って改造したりしてみたいけど、下手に暴走させて先生たちに迷惑かけちゃうのもなぁ。
「……行かなきゃ」
でも―――今日は違う。
どんな手を使ってでも休みたかったこの日。
今年は奇跡的にも、『この日』と休日が被ったから良かったけど、もし授業日だったとしたら、聖典に語られる“不良”のごとく、授業をフケてでも休む所存だ。
……あの先生たちの事だから、気遣ってはくれるんだろうけど。
突き動かされるように辿り着いた場所は、集団埋葬地。
神殿に仕えた神官さんや、頂上の街に住んでいる人達などが埋葬されるこの地は、どこからか線香のにおいがする。真新しい花や綺麗になった墓石が並んでいて、家族が最近参りに来たんだろうなって感じがする。逆に、何年も手入れのされていないような、雑草だらけで土埃の被ったお墓もあり、誰にも参られてないんだなって思うと、物悲しくなる。
久しぶりのような、何とも言えない感覚で水を汲み、迷わずに数多く並ぶ墓のうちの一つの前に立つ。
『Amanda Jagrante
Souma Jagrante』
「来たよ―――母さん、兄さん」
そう、今日は―――兄さんの命日だ。
忘れもしないあの日………兄さんは、ドリアーテに利用されて、あげくに殺された。
私は……ドリアーテが憎かった。奴を討つためなら、命すら惜しくなかった。でも、兄さんを失ったその時にローリエ先生とアルシーヴ様に出会い、苺香さん達に会い、綾さんと陽子さんに会い、ユニ様に会い、きららさんたちに会い………彼女たちを守っていくうちに、命懸けで、でも命を捨てることなく動くようになって、遂にドリアーテを倒すことができた。
その後の私の身の振り方は悩んだものだ。
あの森に帰るか、神殿にいるか。
そして―――お墓を移すか、移さないか。
天涯孤独になってしまった私に、相談する家族などいるはずもなかったので、すべて自分自身で決めなきゃいけなかったから、そこは辛かったけど、最終的に私は神殿に移り住むことになり、お墓は神殿の近くの埋葬地に移ることにした。
正直、生まれ育った場所を引っ越すのは悩んだ。でも、私一人で何かできるなんて想像できなかった。だから私が神殿に移り住む事を告げると、ローリエ先生から私の兄の話が出てきて、ソラ様がお墓を移すことを提案し、あっという間に遺留品を山奥から言ノ葉の樹へ持って来ることになった。まぁ、ソラ様が「ここから山奥なんて遠いわ!」と私を気遣う善意で提案してきたから、断りにくかったのは確かだけど………
ま、いいか。とりあえず報告を済ませなくっちゃ。
周囲の草をむしって、持ってきていた袋に入れる。目立つ場所の草をおおかた抜いたら、墓石に水をかけて、タオルで拭き取る。無言で暫く作業に没頭し、草取りと掃除が終わってから、線香を焚き始めた。
「兄さん。私ね…女神候補生の勉強、頑張ってるよ。ランプやセレナーデや…他の友達もいっぱいできたんだ。将来どうするかまではまだ分からないんだけど……
呪術師のことはまだ隠してるけど……もう、差別とかは昔の話になってるんだって」
この前、ちょっと話題を振ったらそんな事を言っていた。
歴史としてそういう事を習うには習うし、呪術の概要も習うけど、使い方を間違えなければ怖くない、と。
そしてそれは、私の持論とほぼ同じだった。
「私、皆と出かけたりしてるんだよ?
セレナなんかは、しょっちゅう私を誘ってくれるんだから」
語り掛けても、返事は返ってこない。
ただ、冷たい風が肌を撫でるだけ。それ以外の音はなく、静寂という言葉がぴったり来る。
「私…私……兄さんに見て欲しかったんだよ……今の、私の姿を」
言ってはいけない、でも心の底から思っている事を口にしてしまった。
分かっているつもりだった。割り切ったつもりだった。ドリアーテを倒して、ケリを付けたつもりだった。
「私、言ったよね?『言ノ葉の都市』に行きたいって。皆で仲良く暮らしたいって……」
でも、どうしてなんだろう。
「なのに………」
どうして―――涙が止まらないんだろう。
「どうして………?」
確かに、都市に行けるようになった。呪術に頼ることなく、神殿で友達と切磋琢磨する生活が手に入った。でも……兄さんがいないと、意味ないよ。
私は、ひとりで街で暮らしたかったんじゃない!
いくら皆がいても、友達がたくさんできても………それでも…!!
―――兄さんと一緒に、生きたかった。
「兄さん……えっぐ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
そこから先は、止まらなかった。
悲しみ。寂しさ。辛さ。その他の、言葉に表しがたい感情。
ここは、静かだ。だからこそ、止められなかった。私の声以外は、ここに響かない。それに、ここに来る人間なんて、まずいない。
まるで、世界中に自分だけが生きているかのような感覚を覚えたことも、泣くのを止めなかった理由なんだろう。人前でこんな情けない姿を見せたくないから、ありのままを曝け出せたのかもしれない。でも…今はそんな色々考える余裕などなかったから、ただ声をあげることだけしかできなかった。
「…………ふぅ。」
しばらく泣き続け、自然に泣き止んだ私は、ポケットからハンカチを取り出す。幸いにも、ここには誰も来なかったからさっきの姿を見られた、なんてことはないはず。見られてたら恥ずかしすぎる。
涙を拭いた私は、もう一度手を合わせる。
「俺も、祈っても良いか?」
全身がビクリと固まった。
自分以外の誰かが来ると思っていなかったから、完全に意識の外からの声だ。
ワンテンポ遅れて振り返ったら、声から連想される、思った通りの人が立っていた。
「せ、先生……!」
見たことのない黒い礼服に身を包み、花束を抱えて立っていたのは、ローリエさんだった。
彼は最初は、兄さんの仇として出会い。
その後、兄さんを利用したドリアーテを倒すため『八賢者』の助手として共に行動し。
そして戦いが終わった今……私はこの人から、魔法工学を教わっている。
ひとことでは言い表せないくらいに奇妙な間柄になっているけど、彼がいなかったら今の私はいない―――という事は、間違いない。
私が墓前からどき、それを許可の合図にすると、先生は静かに花束を置き、懐から線香とライターを取り出し、火をつけて香炉に入れ、手を合わせた。
墓地特有の静寂の時間が流れる。暫く私も先生も、沈黙を保ったまま、手を合わせた。
「……どうして、兄さんの墓参りに…?」
「…君のお兄さん――ソウマは、ドリアーテに殺された。だが……そのきっかけを作ったのは俺だ。
俺がソラちゃんを守るための行動が、ソウマを追い詰めることになってしまったのも、事実だ」
「そ、れは………兄さんの事を『ソラ様を呪いに来た刺客』だと思ったからじゃ…」
「そうだな。でも、そんなの言い訳にしかならない」
ドリアーテ撃破後、先生やソラ様、アルシーヴ様からは兄さんの凶行は聞いている。知らぬ間に私が人質にされてたとはいえ、兄さんはソラ様を呪いに行ったのだ。何も知らなければ、反撃しても当然だった。でも、先生の攻撃が兄さんを大きく傷つけたのは事実で……当時の私からすれば、兄さんを傷つけた人が許せなかったのもまた…事実で。
「アリサ……本来なら、君は俺を許さなくってもおかしくないはずだ」
「なら、なんで墓参りに来たんですか…?」
「『俺自身がそうしたいから』だ。誰に許しを乞うでもない。例え許されまいが何を言われようが、俺は俺の決めたことの責任を取る。それだけだ」
「……………」
兄さんを見るかのように、まっすぐ墓石を見つめる先生に、私はそっとデコピンの形を作り、私の方を全く見ないのをいいことに、押さえていた中指を、一気に解放した。
「いって!!? あ、アリサ!?」
「…これでチャラです。兄さんの事を想うのはありがたいですけど、罪悪感を背負い過ぎるのはなしですから」
確かに、兄さんの怪我に思うところはあるけれど。さっき思いきり泣いたこともあって、すっきりしていたからか、それで話を終わらせたかった気がした。
「兄さんはそんなことで怒る人じゃありません。兄さんの方が悪いことをしていたから、なおさらです」
「…そうなのか?」
「はい。兄さんは……呪術を人の為に使おうとしていた人でしたから」
だから私は…先生を許すことにした。
兄さんなら、きっとそうするから。
誰かを憎み続けるのは、とても疲れるから。
「……やっぱ、あの言葉は金言だな」
「え? 何のことですか?」
「とある医者の言葉にな―――『人が死ぬのは、人に忘れられた時さ』って言葉があってな。アリサの言葉を聞いて思い出したんだ。」
「人に、忘れられた時…?」
「逆に言えば、例え命が無くなっても、覚えている人がいる限りその人は死なないみたいだ。現に、君の兄さんのことを、ほんのちょっと知れたしな」
先生の言葉に、私ははっとした。
覚えている人がいる限り、人は死なない?
つまり……兄さんも?
『俺の魂はいつも、アリサの心と共にある―――っ!!』
先生の魔道具に録音されていた、兄さんの言葉が蘇る。
もしかして、兄さんは……このことを知っていた?
まったくの偶然かもしれないけど。でも、もし知っていたら……!
「………ふふっ」
「? どうした?」
なんだ。何も、悲しむ必要なんてなかったんだ。
兄さんはずっと、私の心と一緒に、生きていたんだ。
「いえ。兄さんも、同じことを言っていたので、つい…。
離れ離れになっちゃったけど……きっと、まだ兄さんは“生きて”いますよね?」
私は、独りじゃあなかったんだから。
うっかり、忘れちゃうところだったよ。
「そうだな……あ、そうだ」
「?」
「ソウマの事を教えてくれないか?
俺も、彼の事を
「良いですよ! 兄さんはですね―――」
先生に、私の兄さんの事を話しだす。
兄さんの魂が私の心の中に生きていることを強く意識しながら。
人間である以上、先生もランプもセレナも…私も。いつか、死んでしまいます。
だからせめて、生きている間は一緒にいて、思い出を増やしていって……絶対に忘れないようにしよう。
そう、決意しました。
◇◇◇◇◇
墓地から出た私が、最初に見たのは…
「「………………」」
女神候補生の友達の、ランプとセレナだった。どういうわけか二人とも、ちょっと目元が赤い。
しかも私を見つけた途端、露骨に目を逸らした。だんだん嫌な予感が膨れ上がり。そして………
「ランプ?セレナ? …どうしてここに?」
「え? いえ、たまたま通りかかっただけです! ね、セレナーデ?」
「う、うん! そうよ!」
「……ひょっとして、見ちゃった?」
「見てませんよ!あの、辛くなったらちゃんと言ってくださいね?」
「見てないわよ!今度は、花とか持って行った方が良いかしら?」
「………~~~~~~ッ!!」
―――的中した。
「見てたじゃあないですか!!!バカーーーーーーーーーー!!!!!!」
「「わああああああああああああああああああっ!!!」」
即座に逃げ出した二人を追いかける。
後で先生に聞いたところによると。この時の私は……笑っていたようです。
◇◆◇◆◇
セレナーデとランプがアリサの号泣シーンを見てしまった事がバレ、アリサに追い掛け回される。
まぁ俺もソウマ氏の墓参りついでに二人から「アリサの様子を見てくれ」って相談受けたけどさ、自分らで来てたんじゃあ意味ないでしょうに。
笑いながら追いかけっこを続ける三人に向かって走ろうとして、
「―――妹を、アリサを、よろしくお願いします」
「!!!?」
…そんな声が聞こえた気がして。
「――分かってますよ、当然ッ!!!」
「…先生、いま誰に向かって言ったんですか?」
「いや、別に。ただの―――約束だよ。男同士のな!」
思いきり返事をした後で、動きが止まったアリサのほうへ駆けていった。
あとがき
はい、というわけでアリサ編でしたー!ロリ系はこんな感じに恋愛要素なしor薄めでやっていこうね。ガッツリ恋人と認知しちゃうと色々アカンから。
アリサ編をやる上で出したかったのは、やはりソウマ氏の存在です。アリサの唯一の家族でありながら、ドリアーテの秘密に気付いた人ですから、あのままフェードアウトは少々勿体ない気がしてきてですね……そういう意味でも、墓参りのお話にしました。
それと、外伝アンケートのご協力ありがとうございます。また更新しておきますので、再投票よろしくお願いいたします。
次に来たらいいな~ってヒロインは…
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シュガー
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セサミ
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カルダモン
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ソルト
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ジンジャー
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フェンネル
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ハッカ
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クレア(召喚の館の子)
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