きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
音楽の方はEarth,Wind&Fireの「September」のご用意を御願いいたします。「ナイトミュージアム」の主題歌、と言えば伝わりますか?誰もが一度は聞いたことがある、音楽史に残る名曲ですよ。
街の街路樹が色づき始め、残暑が落ち着き始めたこの頃。
夏の暑さで削がれていた役人達のやる気やら意欲やらが復活し始めるこの季節がまたやってきた。
あのことがあってから、初めての秋である。
ちょうど一年ほど前に、私はアイツからのプロポーズを受けて、夫婦になった。同棲しているアイツから、「ちょっとコレ書いておいてくれ」と婚姻届を手渡される、というちょっとムードに欠けた始まり方したプロポーズだったが、何だかんだで指輪もくれたし、皆も祝ってくれたしで不満はない。
夫婦生活も不満はなかった。あたしは言ノ葉の都市の市長、アイツは最近できた技術開発局局長兼魔法工学教師という、お互い仕事に追われるだけあって、家にいる時間は大切にしてきた。その甲斐あって、ご近所でも仲がいいと評判だ。
……そう、
深刻な問題じゃないと思いたいんだけどね。結婚前のアイツの性格とかを考えると、イヤなことを思いついてしまう。
………ローリエの野郎、最近帰りが遅いんだ。
ローリエといえば、神殿一の変態で、無類の女好き。美しい女性を見れば、口説かないなんてことはない。そして、自慢の魔法工学の技術を使ってでも、女性の体を拝もうとする………ここまで挙げると完全に女性の敵である。なんでこんなのと結婚したんだか。
私と結婚してからは、そんな許せない要素たる節操の無さは鳴りを潜めてきたと思っていたんだが……
―――まさかあの野郎、他の女に手を出してるんじゃあないだろうな?
アイツが見目麗しい女性を言葉巧みに口説いている姿がありありと思い浮かぶ。間違いなく結婚する前からセサミやカルダモン、ハッカやアルシーヴ、果てはソラ様にまで言い寄っている姿を見てきたからだな。
もしそういうことを今でもやろうってんなら、ぶん殴ってやる。
そのためにも、アイツが何をやっているのか、調べる必要があるな。
◇◇◇◇◇
ローリエの日常は忙しい。
私よりも早く目覚め、朝食を用意する。そうしてできた朝食のいい匂いが香り出す頃に私を起こしに来る。
そして私よりも早く出勤したあいつは、神殿の教壇に立ち、教鞭を執る。
アイツは、今や神殿の学生たちに人気の先生である。教科は魔法工学。授業がある日は、殆どの時間を授業や生徒からの質疑応答に費やす。
授業が終わったら、いつもならまっすぐ神殿内の書斎に向かっていくはずなのだが―――
―――追跡開始だ。
今日の私の執務は、あらかじめ前日に片付けておいて、頼もしい部下たちに任せてきた。もし今日私への用で誰か来たとしても「今日は見回りだ」と言うように伝えてある。抜かりはねぇ。
あとは、尾行するだけだ。今日のローリエの予定は、授業こそあれ、そこまで遅くまで働く日じゃあないからな。
現在私は、神殿内の教室…その死角になっている角に隠れている。ローリエが出てきたら始めよう。
「……! 来た……」
教室から出てきたローリエは、曲がり角に隠れた私に気付くことなく、まっすぐ大広間へ向かった。
まだ日も落ちていないこの時間帯、大広間にいる人物といえば……ソラ様とアルシーヴだったか。
女神であるソラ様と筆頭神官であるアルシーヴ。二人は、ローリエの幼馴染なのだという。結婚式の披露宴にて、新郎のくせにワイン一杯で口調が怪しくなっていたローリエが言っていたっけ。
でも、一体何の用であそこへ行ったんだ?
扉に近づいて聞き耳を立てると、声が漏れてくる。
『じゃ……頼んだぜ』
『あぁ……ジンジャーには?』
『内緒に決まってるでしょ、ンなの。あ、あと、きららちゃんにも黙っててな』
『どうして?』
『あの子隠し事超ヘタクソだからな』
なんだなんだ? 私に隠れて何を企んでる?
くそ、気になるな………!
そう思っていると、扉が動き出す。慌てて離れて身を隠すと、ローリエが大広間から出てきた。
「…よし、あとは街の人たちと……リリアンちゃんが鬼門だな。どう言いくるめるか」
―――そんなことを言いながら、街へと繰り出していくローリエ。
きららに話さねぇ理由は分からねえけど、リリアンまで味方にしようだと?
リリアン―――メイド長は私が絡むと面倒なのはローリエが一番よく知っているはずだ。付き合うってなった時はリリアンが発狂して襲いかかったし、結婚式を挙げるってなった時は泣きながら発狂して式を乱入してぶち壊した上に襲いかかった筈だ。まぁ余裕で生き延びたアイツもアイツだけどな。最終的に泣き散らすメイド長を慰めるのどんだけ苦労したと思ってんだか。
とにかく、だ。ソラ様やアルシーヴに話して、リリアンにまで話す予定なのに、私やきららには話さない……という事は分かった。もうちょい情報を集めてみっか。
ローリエを追跡していくと、アイツは言ノ葉の頂上の街の中央通りに出てきていた。
そこに行くと、街の人々と会話をしているように見えた。最初はまたナンパかと思い、すぐにブッ飛ばしてやろうかと思ったが、よくよく見てると、男の人とも会話している。
「…………!」
「…! …………」
くそ、なんの話してるか分かんねーな。人通りが多いから、行き交う人たちの足音や会話に紛れて全然聞き取れねぇ。もうちょい近づきたいが、これ以上近づくと、ローリエに尾行を気づかれるかもしれない。
後で通りかかった時にそれとなく聞いておくために、誰に話しかけたか覚えとくか。つーか、今できることがそれしかねぇ。ローリエが去った後すぐに話しかけないのは、相手に「じ、ジンジャー様!? 先ほどのお話、聞かれていたのですか!!?」ってなって警戒されないためだ。
さっきの話の相手は噴水の業者だったなとか、今話しかけてるのは都市のレストランのシェフかとか、ローリエが声をかけてる相手を一人ずつ覚えながらアイツの跡をつけていく。相手に共通点がなかなか見つからねぇなと思っていると、ローリエの歩みが見覚えのある建物に続いていることに気付いた。
……というか市長官邸か! 私の事はちゃんと伝えてあるから大丈夫だが……見回りだと言いながら市長官邸にいるのを見られたら一瞬でウソがバレる。
今度こそ見つからないように……より気を引き締めて尾行を続けることにする。
すると、私は付いていった官邸内で耳を疑うことになる。
「リリアンちゃん、ジンジャーいる?」
「本日は市中見回りですのでいらっしゃいませんが……お呼びしましょうか?」
「いや、いないなら好都合だ」
「……?」
なんだって? 私がいないなら好都合……だと?
私に隠して、何を企んでいるんだ?
「………内緒……パーティー………呼び………協力……?」
「成程…………ー様………」
「…………ぜ!」
「…ジンジャー様…………」
さっきの人々の喧騒でよく聞こえなかった街中とは違って屋内だからちょっと聞きやすくなっている。そのお陰で、会話の端々で気になるワードを聞き取ることが出来たぜ。「パーティー」とか「協力」とか……読めたぜ。
ローリエのヤツ……私に内緒で何らかのパーティーに参加するつもりだな!! どうして私をのけ者にするのかは知らんが、そうは行かねぇぜ!
「ただいま~!!」
「!」
「ジンジャー様!?」
物陰から、あたかもたった今帰ってきたみたいに登場して、二人に声をかける。
案の定こっちを向いたが、リリアンがちょっとビクッてなったな。やはり、話の内容がやましい系の何かなんだろうな。だが、いきなり聞くんじゃあなくて……
「お、メイド長とローリエじゃねえか。
いつもは会う度にケンカばっかしてるのに、珍しいな?」
「ケンカっつーか、俺が一方的に命狙われてるんだけどな?」
「それは、この男がジンジャー様に不敬なことを……」
「不敬ってお前な…こんなんでもいちおう旦那なんだぞ? 多少は大目に見てくれな?」
「そもそもジンジャー様、本日は見回りに一日使うのでは?」
「早めに終わったから帰ってきた!
で……そしたら二人の話してる場面に出くわしてな。珍しいなと思ったんだ」
私からすれば、「何の話してたんだ?」って聞いた方が性に合っているんだが、私やきららに内緒にしている可能性がある以上、そう聞いても答えてくれないかもしれないからな。「見回りから帰ってきたら、たまたま聞いちゃったー」って体にした方が話すかもしれねぇ。
さぁ……どう出る、ローリエ!?
「そっか。まぁでも、リリアンちゃんでも世間話くらいするものさ。なぁ?」
「! は、はい。先日のテンペスト出現とその討伐時のお話をしていましたの」
「あー……アレか」
アレは厄介だったな。
アルシーヴへの逆恨みで都市でテンペストをけしかけて大暴れさせようとしたいち魔導士の事件だったか。
魔導士本人はショボかったが、呼び出したテンペストが厄介で、ローリエとの連携や、たまたま合流したフェンネルにまで力を借りて倒したんだったな。ぶっ倒れて意識のない魔導士に「許‶さ‶ん‶ッ!!」と言いながら蹴りを加えるローリエやフェンネルはどうかと思ったが。追い打ちじゃなくて死人蹴りだったろアレ。当然犯人は生きて服役中だけどもさ、あの八賢者の姿は誰にも見られなくて良かったと思う。マジで。
でも、それは本命じゃあない。私に何を隠している?
「へぇー。それだけか?」
「あぁ。それだけだ」
「なんだよ、つれない事言うなよな! まだ何か違う話題でもあったんじゃあないのか~?」
「イヤ、そんなのないが?」
「私とお前の仲だろ? 隠し事はナシでいこうぜ?な?」
「だから、隠し事ナシで話してるんじゃあないか。信じられないか?」
「………」
「じ、ジンジャー様。ローリエと話してた事は先程の話題だけですわ」
「………………」
頑なに話そうとしないローリエに、どういうわけかローリエに味方するリリアン。
ここまで話さないと、本当に何かやましい事でも隠しているんじゃあないかと思ってしまう。
仕方ない。今回は、引くしかないな。なんでリリアンまでローリエに加担するなんて……
ちなみに、この後二人で家に帰ってから寝るまで……ローリエが日中に何をしていたのか、何を目的として都市中を回っていたのか……それを、語ることはなかった。
◇◇◇◇◇
「―――ってことがあってよー……モヤモヤすんだ。何か心当たりとかねーか?」
次の日も、その次の日も、ローリエがあの件について話す事は無く……とうとう誰かに相談したくなった…というより話す機会ができちまったのでつい話してしまったワケだ。
市長官邸の庭先でテーブルを囲んでティータイムとなったこの昼下がり、三人の参加者にこのことを話して相談してみたんだ。
「ローリエさんが……珍し…くはないのでしょうか?」
相談者その1、きららが言う。
きららとは、都市で激闘してから良きライバルになっている。こういう時に話すことになるとは思ってなかったな。
「先生が………浮気!?」
相談者その2、ランプの一番考えたくない可能性を私は否定しきれなかった。
確実に結婚前のアイツを知っているからだな。こればっかりはアイツの自業自得と言わざるを得ないな、オイ。
「しかしそうなると、都市の人々に男女問わず話しかけるのはおかしいのでは?」
ランプの熱弁に、相談者その3のアリサが反論する。
確かに、都市でのアイツを尾行した時は女性を手当たり次第に、というより一軒一軒を回るように、といった方がぴったり合う感じだったし、その際に声をかけた中には男も夫婦もいて、老若関係ない感じだったな。
「そ、そうですよ! 奥さんを貰ってまでそんなことをするでしょうか?
ローリエさんは今やもう市長の旦那さんですよ! 浮気と断定するにはあまりに…」
「ありえない話じゃありません! むしろ…ジンジャーと結婚してから今まで、先生は良く耐えた方なのでは!?」
「ランプ、お前……アレでも私の旦那なんだぞ? 決定的な証拠でもねぇ限り疑いたくはねーよ。マジにやってたらぶん殴るけどな」
「メイド長さんともお話していらしたとの事でしたが……ローリエ先生とメイド長の仲ってどうなんですか?」
「式に参加したお前らなら知ってるだろ? 乱入したリリアンの乱心具合を。ぶっちゃけ、あの時のままだ。今も目の敵にしてる…この前理性的に話してたのが奇跡的なくらいだ」
「「「…………」」」
結婚式が血痕式になりかけた惨状を思い出して、三人は押し黙ってしまう。
うーむ、こうなるとリリアンに声をかけた理由がマジでわからん。少なくともメイド長相手に浮気しようものならバレる前に(物理的に)襲われるからその線だけはないか。
「あの、ちょっと質問を変えてもいいですか?」
「ん、きらら?」
「あの…ローリエさんとの結婚生活は……その。どうでしたか?」
きららが頬を染めながらしてきた質問に、私はどう答えたもんかと今までの生活を振り返る。
今までの生活に不満なんてなかったからなぁ……
「仕事が忙しい分、家での時間は大切にしてるぜ? いつも一緒で…その日あったことを飯食いながら話したり…あ、あと風呂まで一緒したいって言ってきてな。一回許したら大変だったんだぜ?」
「お、お風呂も一緒なんですか!?」
「お、大人だぁ…!」
「せ、先生……ジンジャーと一緒に…」
「……わ、悪かった…私が悪かったからそのリアクションやめろ。恥ずかしいだろ…!」
新婚生活を語った私に対する三人の初々しいリアクションは、私まで恥ずかしくさせた。
それと同時に、風呂のくだりをこの三人に話したことをひどく後悔した。こいつら、ここまでピュアだったのか…………私の相談相手は、ちと荷が重かったかもしれないな。
「あー……話を戻すぞ。要するに、最近ローリエが何か隠し事をしてるかもしれないんだ。
結婚生活では不満げにしてなかったみたいだし、私にはサッパリだ、って事だな」
「きららさんに話していない辺り、先生は本気で何かを隠しているのは確かですね」
「ええええっ!? どうして私に話してないことが、本気で隠し事をしてることになるの?」
「だってきららさん、隠し事全部言っちゃうじゃないですか。
ランプがすっかり忘れてた宿題を前日ギリギリに人のレポート内容書き写したことも全部言ったし、私が内緒で買おうとしたランプの誕生日プレゼントも、同行した時にコルクさんに包み隠さず言った事、今も覚えていますからね」
「え、えぇ……」
「(誕生日プレゼント、か……)」
きららが隠し事を全然できないエピソードに花を咲かせたものの、肝心の「ローリエは一体何をかくしているのか」については、コレといった答えが出せないまま、ティータイムが終わった。
◇◇◇◇◇
きらら・ランプ・アリサとお茶したその日の夜は、都市の長の仕事にしては珍しく仕事がめっちゃ溜まっていた日だった。最後の書類にサインをした時には、ゆっくりめだったはずの陽はもう沈んでいて、窓から見る都市も街灯や建物の窓から見える明かりが光の大半を占めていた。
腹も減ったし、帰ろうかと思った時、一人の人物がドアを開け入ってくる音がした。
メイド長かとも思ったが、たしか今日は早めに上がったっけと思って、顔を上げると。
「よっ、ジンジャー。遅くまでお疲れ様」
そこにいたのは、最近私を悩ませる旦那だった。
ローリエは私の苦悩など分かっていないかのように――実際分かってないんだろうが――私の荷物を集め始めた。
「なんで、ここに来たんだ? いつもみてーに、ここに来ねーでゆっくり帰ってくりゃいいじゃねーか」
「……おいジンジャー、なんでそんな不機嫌なんだ? 俺が何かしたか?」
「さーてな。お前の胸に聞いてみろ」
そんなコイツを、あえて見ないまま、そう突き放す。
冷たいかもしれないが、アレ以降隠し事を一切吐かないんだ。これくらい妥当だろ。
コイツが何をしているのかを話すまで、私はこういう態度を取ることにした。頼んでも絶対に一緒に風呂にも入ってやらねぇからな。
「―――参ったなぁ。今日は特別な日なのに」
「……特別? 今日、なんかあったか?」
「え? マジでわからない? ジンジャーなら知ってるかと思ったんだが」
ローリエの様子が一変し困った表情をしてから聞き逃せないことを言った。
特別な日?今日が? 何だったかな……?
ローリエの誕生日……はまだだし、私の誕生日、でもないな。私やローリエの親族の誕生日…も違ったはず。じゃあなんだ?
「…分からないって顔してるな。答えはベランダに出て見りゃ分かると思うぜ」
「………」
ローリエの言葉のまま、モヤモヤした今日という日の正体に迫る為、ベランダへ出る戸を開ける。そると、そこには。
「「「「「「「ジンジャー様、結婚一周年おめでとうございます!!!」」」」」」」
「……え?」
市長官邸の中庭から上がる花火と、クラッカーやら何やらを盛っている都市の人達が、そこにはいた。
「ローリエ様から聞いたよ! 内緒でお祝いしたいって!」
「あぁ~、ワシはのぅ、あいつから依頼受けてたんじゃよ。『花火が欲しい』って」
「みんな、結婚記念日を祝うために、ローリエ様のお声がけの元集まったんです!」
「………なんだって!?」
確かに、よく見てみれば……最近尾行した時、
つまり…なんだ? ローリエは、この日の為に、皆に声をかけていたというのか!?
「おめでとう、ジンジャー」
「ソラ様!?」
「私達も今回の件に一枚噛ませて貰った。路上整理中心の裏方だったがな」
「アルシーヴ様!!?」
「やぁ、ソラちゃんアルシーヴちゃん、色々ありがとね」
「…良かったのか? ジンジャーに話さないで。呆けてるぞ」
「良いんだよ。これぞ『サプライズ』ってやつだ」
ソラ様とアルシーヴもこの場に来ていて、たまげるかと思った時……思い出した。あぁ、確かにこの二人にも声をかけてたっけ、と。
だがこうなるとは思わんだろ!! 何が起こってるのか状況の理解が追い付けなくて、動けないわ!
「ジンジャーさん」
「きらら!? ランプにアリサも!」
「やっぱり、ローリエさんは貴方を大切にしていたんですよ」
「そうですね。誕生日ならともかく、結婚記念日にここまで人を巻き込むなんて」
「私も、初めて聞いた時は正気を疑いましたが……ジンジャー様の結婚記念日にここまでの人に祝われるのを見ていると、満更でもありませんわね…」
「メイド長まで……!」
私だって予想外だ。お互いの誕生日ならともかく、結婚記念日は当人でも忘れがちな日じゃなかったのか?
現に私だって思い出せなかった。でもローリエは何か知ってる風だった。つまり……
「ジンジャー」
「!! な、なに!!?」
突然声をかけられ、咄嗟に返事をした…がそのせいで変な声が出た気がする。
ローリエは、そんな私を笑う事なく、今までに数回しか見たことのないレベルのマジメな顔で、何かを差し出した。
―――それは、大きな宝石がついたブローチだった。
楕円形であるが、蝶番で開くようになっていて……開くと、その中には、いつだったかツーショットで撮った写真が入っていた。
「ローリエ………これ…!」
「まだ1年目だけど……ジンジャー。これからも、宜しく頼む」
「最近、帰りが遅かったのは……!」
「この日の為の仕込みやら準備やらだ。サプライズにしたかったから黙ってたんだけど……」
そこで言葉を切り、こちらを覗き込むように見つめるローリエ。
こっちは何も悟られないように表情を抑えるが……目頭が、どうしても熱くなってしまった。
「……いらない不安をさせたみたいだ。ごめんね」
全身が暖かくなった。ローリエの両手を背中に感じる。
それと同時に、参加者たちの黄色い声が上がった。
…こ、公衆の面前で…恥ずかしいだろ、と言ってやりたかったが、ンなこと言ったら確実に調子に乗るのがローリエだ。
それに……私の為に色々、ここまでやってくれたのに、私は浮気まで疑っちまったからな……そこは申し訳ないと思っている。
だからここは、ゆっくりと腕をほどいて、目頭を拭う。そして―――
「ワッハッハ! いやーそうだったのか!!
私としたことが、らしくもないことしちゃったな!!
ローリエ! 私の方こそ、末永くよろしく頼むよ!!」
思いきり、笑ってみせた。
そして、締めにハグし返してやると、辺りは歓声と拍手に包まれた。
「さぁ、ローリエ! この後はどうするんだ?」
「乾杯の音頭だ。一緒にやるか?」
「もちろんだ! ……あ、そうだ」
飲み物の準備が終わるまでの短い間に、ちょっと気になったことをコッソリ聞いてみる。
「ローリエは、誰かに現を抜かすとか、これからもないよな?」
「はは…あぁ。勿論だ。俺は生涯、ジンジャー一筋だぜ」
答えは、最高のものだった。
あとがき
ジンジャーのテーマ曲は割と早い段階で決まったんですよね。夜っぽくお祭り感もあり、しかも「September」は歌詞がラブソングなんですよね。和訳してみると案外深く面白いものだったりします。
今回の話は結婚した後のローリエ・ジンジャーの話でしたので、メイド長を筆頭としたジンジャーファンへのダメージは覚悟の上です。その為のメイド長大暴走でした。
さぁ、次のヒロインの座に就くのは…
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シュガー
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セサミ
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カルダモン
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ソルト
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ジンジャー
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フェンネル
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きらら
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ランプ
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ライネ
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コルク
-
クレア(CV和氣あず未)
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ポルカ
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カンナ