きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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表題曲は放課後ティータイムから「ふわふわ時間」です。
きららちゃんの声優さんって作詞作曲もやってるみたいです。凄まじすぎる。
まぁそれは置いといて。始まるよー!


きらら編 ふわふわ時間

「歌のコンテスト?」

 

「はい。隣町で行われるらしくって…」

 

 

 きららちゃんが渡してきた紙を見つめる。

 それは大会のパンフレットだった。『隣町のデュエットの大会』らしく、一か月半後に行われるようだ。参加資格に制限はほとんどなく、『親子・友達・恋人…誰でも来い!!』って感じがビンビン伝わる。

 

 

「しっかし、なんで俺を誘ったんだ? きららちゃんなら他にも誘う相手の一人や二人いたでしょうに。ランプとか」

 

「ランプは神殿の宿題が終わってないみたいで…」

 

「あいつまだ宿題やってないのかよ……」

 

「それに、ランプ達じゃダメなんですよ」

 

「ダメ?」

 

「参加資格のとこ。見てください」

 

 

 参加資格? 再びパンフレットに視線を落とす。そして参加資格のところを目で追って探すと、そこには……

 

 

「参加資格は………『男女』…!?」

 

「女の子二人じゃ参加できないんですよ…このコンテスト」

 

「…成る程。道理で俺が誘われたワケだ」

 

 

 きららちゃんの知り合い…もとい友達は女の子しかいないもんな。

 こんな参加資格があっちゃあ、同性同士の友達が参加できないじゃあないか。

 というか、だ。

 

 

「きららちゃん、なんでこの大会に出ようと思った?」

 

「優勝賞品がですね……」

 

「優勝賞品?」

 

 

 再びパンフレットに目を落とす。すると、きららちゃんの言う『優勝賞品』が、デカデカと書かれていた。

 

 

「『優勝賞品:芸術の都特別ツアー他』……だと!?」

 

「どうも、この特別ツアーじゃないと行けない場所があるらしくって。

 皆さんと行ってみたいなぁ……と思いまして。」

 

「へぇ。きららちゃんが芸術に興味を持つとは意外だな」

 

「え、いえ……あ! あはは、まぁ、ソンナコトモアリマスヨー」

 

「………」

 

 

 俺は見逃さなかった。優勝賞品が芸術の都ツアーだけじゃあないことを。しっかりと『ツアー他』と書かれており、米とか肉とかも贈呈されることを。そして、その贈呈されるモノのなかに、ツンツーンがあったことを。

 だが、俺は嘘をつくことが苦手な彼女の名誉のために、芸術の都特別ツアーが目当てなんだという事にした。

 

 

「それで、誰に教わるつもりなんだ?

 一か月半後って書いてあるケド、割とあっという間だぞ」

 

「そうですね……放課後ティータイムの皆さんやフルーツタルトさんに頼むべきでしょうか。」

 

「フルーツタルトはやめといた方が良い気がする……まぁいいか。歌う曲とか決まってるのか?」

 

「えっと、待ってくださいね……………あれ?」

 

「…き、きららちゃん?」

 

「……の、載ってない…」

 

 

 それは…かなりマズいんじゃあないか?

 目を泳がせながら、顔色が青くなりつつあるきららちゃんを引っ張り、一刻も早く放課後ティータイムの助力を得ないといけないとこの時、俺は決心した。

 

 

 

「―――それで、私たちの所に来たわけか」

 

「そうなんだ。だから、『放課後ティータイム』の楽曲を歌う許可が欲しいと思ってきたんだ」

 

「申し訳ないです………」

 

 

 放課後ティータイムのライブハウスに行けば、やはり『けいおん!』の皆はそこにいた。

 例のごとく練習と称してお茶会してる彼女たちの中から、比較的常識人な澪ちゃんとあずにゃんを中心に話を切り出した。きららちゃんに優勝してもらいたいと彼女を立てながら。

 

 

「……そういうことなら楽曲を使ってもらっても構わない。CDもあるしな。ただ…」

 

「ただ?」

 

「その大会、去年私達も見に行ったんだがな……なかなかのハイレベルだった」

 

「「!!!」」

 

「特に優勝した組の歌唱力は圧巻だったんだ。それにすら勝つと考えると、生半可な練習では太刀打ちできないだろう」

 

「……そんなにスゲーの?」

 

「はい。今でも思い出せます」

 

 

 どうやら軽音部の皆はこのコンテストを見に行ったことがあるらしく、しかもその様子は思った以上のハイレベルだったんだそう。○OU○UBEみたいな便利なモノがないからすぐにその様子を見ることはできないが、去年の優勝ペアの歌が未だあずにゃんの耳に残ってるのなら相当だろ。

 

 

「……きららちゃん、どうする? やめる?」

 

「やめません! いきなり諦めたくありません!」

 

 

 俺が確認の意味でこう問うが、きららちゃんの闘志は十分のようで、俺は早速彼女たちに手伝ってもらうことにした。力を貸してくれるかという問いに『けいおん!』の皆が逞しく頷いてくれた。

 

 それから始まったのは、放課後ティータイムと俺達二人のセッションである。

 「いろんな曲歌ってみようよ!」という唯ちゃんの言葉に始まり、色々歌ってみた。

 『Don't say“lazy”』に始まり、放課後ティータイム名義の曲はほとんど歌った。『ふわふわ時間』とか『GO!GO!MANIAC』とか『U&I』、俺ときららちゃんをボーカルに大盛り上がりしたことは確かである。途中から楽しくなった唯ちゃんやそれに巻き込まれたあずにゃん、澪ちゃんまで歌うことになっていて、最終的には放課後ティータイムfeat.きらら&ローリエみたいになっていた。無論、抜け目なく録音しておいた。

 

 いやぁ~~、流石放課後ティータイムの豊崎さんと日笠さんは素晴らしいな。意外だったのが、俺ときららちゃんのデュエットが、オリジナルと雰囲気がだいぶガラリと変わった事である。録音して聞いてみて分かった事だが、男女の声が合わさったことで歌の違う一面が見れたような気分だ。きららちゃん自身も歌は地味に上手かったので、そこも印象の激変に繋がったのだろう。流石楠木さんだねぇ。俺の声と合わせてしまって大変申し訳ない気分になってくる。

 

 

「きららちゃん良い声だね」

 

「え!そ、そうですか? ローリエさんの声こそ、素敵だと思います!」

 

「でもなぁ………」

 

「でも、何ですか?」

 

「男女デュエットに合ってないというか……俺の声だけが浮いてるような気がしてるんだよ。気のせいだといいんだけど……」

 

「えっ? いま、なんて?」

 

 

 放課後ティータイムは、バンドメンバーが全員女性で構成されている。当たり前だが、歌詞が澪ちゃんと唯ちゃんが歌うことでベストマッチすると思っている。

 確かに俺ときららちゃんで歌った場合、新鮮さを味わうことができるだろう。でも、それを以てしても二番煎じのような気がしてしまうのだ。

 練習を重ねれば良いものにはなるだろう。でも、それで勝てるかと言われるとな……。

 

 

「…イヤ、何でもない。俺が足を引っ張らないように頑張らないとなって思っただけだ」

 

「……? そうですか。私も頑張りますね!」

 

 

 パートナーになったきららちゃんの良い笑顔と、練習に付き合ってくれた軽音部の皆の見送りに、ちょっと心が痛くなった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 『男女で出場する』という参加資格のあるデュエット大会に出るべく、ローリエさんをパートナーにして、軽音部の皆さんと練習が出来たところまでは良かったんです。

 私は……その。優勝賞品が欲しくって、参加資格を満たすことだけを考えていたので、何を歌うかとか全く考えてなかったから、そこをローリエさんがリードしてくれたんですが………

 

 

『…俺の声だけが浮いてるような気がしてるんだよ。気のせいだといいんだけど……』

 

 

 練習が終わった後で、思い詰めたような顔をしてそう呟いたのが聞こえてしまった。

 私は、ローリエさんのその言葉の意味がぜんぜん分からなかった。ローリエさんの声は歌っている時は擦れる事も音程がずれる事もないし、問題はなかったと思う。澪さんも紬さんも、誰もその辺りのことを指摘しなかった。

 だというのに、どうして自分の声だけ浮いている、なんて言うのかな?

 

 私は、ローリエさんについてあまりよく知りません。

 ソラ様がドリアーテの陰謀によって呪われた時の事件では、最初こそ戦ったけど、クリエメイトの命を守るために共闘したり、アルシーヴさんが『オーダー』に手を出したワケをこっそり教えてくれたりと密かに頼りになるような人でした。

 でも、プライベート的なことを何か知ってるのかと聞かれれば、そうでもありません。ランプの先生で、色んな発明を生み出す発明家でもあるってくらいで………あ、あとアルシーヴさんやソラ様とも親しかったはず。

 

 そこで私は、まずはアルシーヴさんにローリエさんの声のことをちょっと聞いてみました。

 

 

「……ローリエの声をどう思うか、だと? きらら、お前に一体何があったというのだ?」

 

「え!!? な、何もありませんよ! ちょっと隣町の大会にローリエさんと出場することになっただけです*1!!」

 

「…そうか。大体わかった」

 

 アルシーヴさんの追及をうまくかわした*2後、アルシーヴさんは少し考えるかのように頭に指を当て、そして答えました。

 

 

「答える前に…ローリエは自身の声についてなんと言っていた?」

 

「私とデュエットすると、自分が浮いている気がするって言ってました。私は、良い声だと思ったのですが……」

 

「私も同感だ。あいつの声は訓練生の頃から、音楽の教師に褒められていた」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ。だが…今は、その声であらゆる女に声をかけるから手を焼いているが……」

 

「あ、あははは………」

 

 ローリエさんのナンパに頭を悩ませるアルシーヴさんに笑う事しかできないと思った矢先、聞き逃せない事をアルシーヴさんが喋ったのです。

 

 

「ソラ様がしっかり話せる数少ない男の一人だというのに…」

 

「え? …それ、どういう意味ですか?」

 

「……あぁ…きららには話しても良いか。ただし、あまり口外するなよ?

 ソラ様はな…わけあって、男と会話するのが致命的に苦手なんだ」

 

「それ、って……」

 

 

 アルシーヴさんの言葉に、私は固まった。

 あのソラ様が、男の人と話せないって、どういうことですか、って思って。

 

 アルシーヴさんによると……ソラ様は子供の頃、ある男盗賊に攫われたことがあるらしい。

 その時は、ローリエさんが衛兵さんと一緒に助けに行ったから助かったみたいだけど、攫った相手は当時残虐さで名を轟かせていた盗賊で、放っておいたら何をされていたか分からなかったようだ。

 そんな事件があってからというもの、ソラ様は男の人と話すことが……特に距離をとらずに二人きりで話すのがダメになっちゃったみたいだそうです…。

 

 

「ソラ様にそんなことが………」

 

「今でこそマシになったが……問題は根深い。

 しかし、だ。ローリエと話す時だけは、違うようなんだ」

 

「どういうことですか?」

 

「封印される前から、ローリエとソラ様は交流があったみたいでな。発作も出ないと言っていた」

 

「そうだったんですね……」

 

「あら、何の話をしてるのかと思ったら…」

 

「ソラ様!!?」

「えっ!!?」

 

 

 ローリエさんだけはソラ様と話しても問題ない…そういう話を詳しく聞こうと思った矢先、ソラ様の声が聞こえたと思ったら、アルシーヴさんの部屋に入ってきたソラ様。

 

 

「聖典の編纂はどうなさったのです?」

 

「8割がた終わらせたわ。ちょっとここで話してっても支障はないわよ。

 ……それで、どうして私が攫われた事件の話をしてたの?」

 

「実は、ローリエさんが―――」

 

 

 私は、ローリエさんと港町のデュエット大会に出ることになった事に始まって、彼が自分自身の声について言っていた事までをソラ様とアルシーヴさんに話すことにしました。

 

 

「そういうこと、ね…」

 

「ローリエさんとならお話出来るって、本当ですか!?」

 

「えぇ。だってローリエは、あの日洞穴の中にまで私を助けに来てくれたもの。」

 

 ソラ様に確認すれば、やっぱりアルシーヴさんの言うとおり、ローリエさんが盗賊からソラ様を取り戻した事が本当のことだったんだと思い知ることになった。

 

「それなのに、どうしてローリエさんはあんな事を言ったのでしょう?」

 

「たぶん、だけど。

 彼、自信がないのかしら?」

 

「じ、自信がない???」

 

「ま…まさか、ソラ様。あの男ですよ? 自信がないという事態とは無縁そうなあのローリエですよ?」

 

 

 ソラ様の仮説に、アルシーヴさんはありえないという風にローリエさんの人物評を述べた。

 確かに、あの人は頼もしい一面もあるのかもしれませんし、アルシーヴさんがそう言うなら間違いないのかもしれませんが……

 

 

「いえ、分かりませんよ。もしかしたら、ソラ様の言う事もあり得るかもしれません。

 むしろ、そういう『悩み』みたいなものを隠しているのかもしれないです」

 

 ジンジャーさんが言っていました。ローリエさんは秘密主義者だって。

 そりゃ、人間ひとつやふたつ秘密があってもいいと思います。

 それでも、いざ困った時は、誰かに話した方がいいと思うんです。でも、きっとそれは簡単にできることじゃあありません。ローリエさんも、そういう事が起こってるんじゃないのかなって。

 

 

「誰にも言えない悩み、か……しかし、それが歌に合わせられない事と何の関係が?」

 

「きららちゃんと歌うことに自信をもてないんじゃないのかしら。それで、そのことをなかなか言えないんじゃない?」

 

「………ローリエさんに聞いてみてはどうでしょう?

 何に悩んでいるか…話してくれるとは限りませんが、なにか得られるのではないでしょうか?」

 

「…そうだな。それが一番建設的だ」

 

「そうね。その通りだわ」

 

 

 やっぱり、ローリエさんは自信がなくって悩んでいるのかもしれません。

 となると、どうしてローリエさんは自信がないんだろう。

 こうなったら、直接本人に訊くしかない。あれこれ悩むより、聞き出して力になってあげた方が良いな、と思ってそう伝えれば、二人とも頷いてくれました。

 

 ローリエさんを探すべく、神殿内を歩き回っていると、音楽倉庫から、軽快な演奏と歌声が聞こえてきました。

 覗いてみると……そこには、キーボードを弾きながら、素敵な歌を歌うローリエさんがいました。

 

 

「♪いつも頑張る 君の横顔 ずっと見てても 気づかないよね~」

 

「……これは」

「すごい…!」

「ローリエさん……」

 

 

 まさか、練習していたんでしょうか?

 その歌声は、私には絶対出せない低い声で、でも音程も合っていて素敵なものでした。放課後ティータイムの皆さんと一緒に練習した時と違ってソロですので、その良さが際立っている気がします。

 やがて歌が終わったタイミングで私達は、ローリエさんに声をかけるべく音楽倉庫に入っていきました。

 

 

「ローリエさん」

 

「いひぇぇぇぇえええええああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?」

 

「驚きすぎだろ」

 

 声をかけたらひっくり返ってしまいました。そ、そんなに脅かすように言ったつもりはないんだけど……

 

「あの、素敵な歌でしたよ!」

 

「え………………聞いたの?」

 

「え? はい」

「聞いた。こんなに上手かったと知らなかったよ」

「カッコ良かったわよ〜」

 

「そ、そうか? いや〜〜〜、それほどでも……あるけど

 

「いま『ある』って言ったわね」

 

 

 歌への感想を三人で言ったら、あからさまに照れた。ものすごく顔が赤いですよ。

 それほどでもあるの意味はちょっと分からないけど……

 

 

「…不安なんですか?」

 

「…っ」

 

「あの大会で優勝できるかどうか……ですか?」

 

「……それもある。」

 

「話してくれませんか?」

 

「…………バレちゃったならしょうがないか」

 

 

 ローリエさんは、ため息をついて観念したかのように話し始めます。

 

 

「そもそも、本番で歌うって決めた曲……『ふわふわ時間(タイム)』は、元を正せば放課後ティータイムの曲だ。彼女たちが歌うことで初めて傑作になるんだ。

 昨年優勝した組は、あずにゃんの記憶にも残るほどだ。カバー曲といえば聞こえはいいが……それで勝てるか…ましてや悔いなくできるか…分からないんだ」

 

 

 それは、大会での優勝への悩みだけじゃなかった。満足いく結果を出せるか……その不安を無くすために一人で練習していたってことなんでしょうか?

 

 

「……なぜ、こんな所でひとり練習を?」

 

「…努力するところは人に見せるモンじゃあないだろ?」

 

 私は、そう答えるローリエさんの目の前に近づき、そのほっぺを両手で軽く挟み込むように叩いた。

 

 

「いっ…たくはないが……何すんの?」

 

「ローリエさん。その不安………分かります。

 私もこういう大会に出るのは初めてなので……どこまで通じるか分かりません。」

 

「……そうだよね。だから、俺がきららちゃんを引っ張れるくらいに上手くならないと痛い!?」

 

 

 ローリエさんの言葉をさっきよりも力を込めた両平手打ちで止める。

 そうじゃない。そうじゃあないんですよ。ローリエさん。

 私の望みは………

 

 

「ひとりじゃ絶対に勝てません。悔いも残ると思います。

 私だって勝ちたいですし、たとえ優勝できなくっても、悔いのないようにしたいのは同じなんです。

 私と二人で、頑張りましょう………いえ。私と一緒に、力を合わせてくれませんか? お願いです」

 

「きららちゃん…………」

 

「きららの言う通りだ。二人で参加するのだろう? ならば二人で練習する方が理に適っている」

 

「一人じゃ限界があるわ。一緒に練習した方がいいわよ、きっと」

 

「アルシーヴちゃん、ソラちゃん…」

 

 

 ローリエさんは、私の両手をゆっくりと掴み取ると、そのまま包み込むように両手にとって、まっすぐこっちを見てほほ笑んだ。

 

 

「……そうだな。きららちゃん……いっしょに頑張ってくれるか?

 俺は…その。また背負いこもうとしてた。一人で出る大会じゃあないのにな」

 

「そ……そうです!! 私を頼ってください!

 ……あ、でも…私も頼りないかもしれないですけど……」

 

「分かった。これからはそうさせてもらう」

 

 

 ローリエさんの表情は、もう既にスッキリしていて、それが悩みを吹き飛ばしていた事を意味していた。

 

 そこから先は、二人一緒に練習を積むことになりました。

 彼は八賢者の同僚さんに聞かれるのを恥ずかしがったり、男女の歌合せでたくさん躓きましたけど、充実した時間になったと思います。

 そして―――

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「―――とうとう、ここまで来ましたね」

 

「あぁ。見ろ、人がいっぱいだ」

 

「恥ずかしくなりましたか?」

 

「冗談。きららちゃんこそ、本番中に噛むなよ?」

 

「大丈夫です。今までの練習を信じましょう」

 

 

 デュエット大会当日、隣町にて。

 舞台袖には、準備を整え切った私とローリエさんがいました。

 あとは、ここですべてをぶつけるだけです。

 

 

『エントリーナンバー35番! チーム「流星」!この大会のダークホースです!』

 

「! ローリエさん!」

 

「ああ…行こう!」

 

 

 司会者に呼ばれて、舞台に登場する。

 そして、マイクの前に立って………

 

 

『歌う楽曲は―――放課後ティータイムさんの、「ふわふわ時間(タイム)」!』

 

 

 

 

 

♬MUSIC:ふわふわ時間(タイム)/放課後ティータイム

 

 

 

 

 

 全てをぶつけた後、私とローリエさんは、息を切らしながら、拳を軽くこつん、と突き合わせた。

 そして、その結果は。

 

 

『いま、全てのエントリーナンバーの点数が出揃いました!

 入賞商品のある5位から発表しましょう!! まずは第5位―――』

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 大会後、私とローリエさんを中心に神殿で宴会が開かれました。

 みんながみんな、私達の健闘を讃えてくれて……まぁ途中から沢山のお酒が振る舞われたことでうやむやになっちゃったけど。

 

 クリエメイトの皆さんはお酒を飲むことに抵抗がありましたが、ローリエさんが「この世界に未成年飲酒禁止法はないッ!!!」とか「ここにあるのはぶどうジュースだッ!ちょっと酒の匂いがするだけでッ!!」と焚きつけてからは大変なことになってました。半ば無理矢理飲まされた澪さんが律さんに泣きながら甘える姿とか、梓さんが唯さんを振り回す姿とか、ちょっと言葉にできないくらいの事をして、他の皆さんに迷惑をかけてるイノさんや仁菜さん、それらを見ながら鼻血を垂れ流すランプやソラ様の姿など………いささか目も当てられないくらいの混沌ぶりです。

 ……ここまで大暴れしているクリエメイトの皆さんは、見たかったような、あまり見たくなかったような。

 

 

「よ~~し、これで40人くらいのキャラソン・カバーソングは集まったかな~?」

 

「ローリエさーん」

 

「お、きららちゃんじゃん」

 

 

 それで、みなさんを焚きつけた張本人はと言いますと、さっきまで歌を歌っていたようです。それも、酔った皆さんを巻き込んで。

 最初はローリエさんが聞いたこともない歌を歌い始めて、麻冬さんやねねさん、はじめさん辺りが「カッコイイ曲だ!」と反応して「歌ってみるかい?」って聞いたのが最初、そこからはクリエメイトのカラオケ大会みたいになっていました。

 ローリエさんの歌のレパートリーの多さにみんな目を向いていたと記憶してます。

 

 

「どれだけ歌知ってるんですか? いっぱい歌ってましたよね?」

 

「まーな。みんな乗り気で助かったぜ」

 

「あの耳に残るフレーズはどこで聞いたんですか? 『心ぴょんぴょん』とか『ぷとてぃら』とか『たじゃどる』とか…あと『ぎゃんぐすたあ』とか…」

 

「あー……聞いちゃったんだ、アレ」

 

「はい、聞いちゃいました。どこで知ったんですか?」

 

「……………なんか展開的に知ってた、じゃあダメ?」

 

「…ダメです。そんないい加減な理由で納得する人なんていませんよ」

 

 

 思いきり誤魔化そうとする彼を一刀両断する。ローリエさんは私の態度に降伏したのか、「後日二人きりの時に必ず話す」と言ってくれました。まぁ、ここだと人がいっぱいですしね。

 

 そんなローリエさんと今まで一緒に練習をしたことで分かったことがあります。

 慎重と大胆を使い分けることが上手い反面、地道な努力を人に見られる事が恥ずかしいっていう、ちょっとシャイなところ。

 そのくせ、普段は色んな女の人を口説いてしまうところ。

 それなのに、私との練習や大会準備のことで手を抜かないこと。

 真剣にするべき時は、しっかり自分の役割を果たすところ。

 

 彼は、彼なりに私との時間を……大会などについての事を、真面目に取り組んでくれたこと。

 瞳を閉じれば、ローリエさんの真剣な表情を思い出すくらいです。そして、そんな真剣なローリエさんを、私は―――。

 

 

「……みんな、良い人だね」

 

「ローリエさん?」

 

「きららちゃんは、頑張れて良かった?」

 

「―――はい。私に後悔はありません」

 

 これは、私の本音。ローリエさんと二人三脚で頑張れた証だと思います。

 

「―――準優勝だったのに?」

 

「はい。ツンツーン……じゃなかった、旅行は逃しちゃいましたが…ほんとに悔いはないんです。」

 

「そっか………」

 

 たとえそれが………本来の目的を達成できなかった結果だったとしてもです。

 

 

「奇遇だな。俺も、全然後悔してないんだ。

 きっとそれは、君と二人で………いや、それだけじゃないな。

 放課後ティータイムの皆や、お節介を焼いてくれたアルシーヴちゃんやソラちゃん……あとは、お節介を聞いてやってきたクリエメイトのみんな。

 全員で頑張ったからなんじゃないかな、ってうっすら思うワケよ」

 

「そうですね。皆さん、私達の為に、頑張ってくれましたもんね。」

 

 

 だから。

 この夢にでるような素敵な日々は、思い出に残ります。いや…残したい。

 そんな思いが、宴会が終わった切なさを上回ると信じながら。

 

 

「…ちょっと外に出よっか?」

 

「え?」

 

 

 キーボードを持ってさっさと神殿の外に出ると、綺麗な星空が私達を見下ろしていた。

 

 

「きららちゃん……歌を、歌ってくれないか?」

 

「どうして……急に?」

 

「聞きたくなったから、じゃダメ?」

 

「……いえ、良いですよ。リクエストはありますか?」

 

「そんなの決まってるだろ? ―――ふわふわ時間(タイム)だ!」

 

 

 

 その夜、どこまでも続く星空に、ローリエさんの演奏と私の歌声…ふたつの音楽が溶けていく感じがした。

 

*1
きらら特有の、隠し事ができない癖が発動

*2
本人は本気でそう思っている




あとがき
 きららちゃんの表題曲は超・迷いました。
 結果的に、大・大・大・大・大難産になりましたがゆるしてヒヤシンス。
 まぁ、きららちゃんは公式でも1部・2部ともに歌っていますので問題はなさそうではありますが……
 ちなみに、ローリエは今回の宴会でさまざまなキャラによるアニソン・特撮ソンのカバーの録音に成功しています。本人は「Daydream Cafe」「Power to tearer」「Time judge it all」「裏切り者のレクイエム」を確実に歌っています。酔ったクリエメイトによってまずこの4曲はカバーされました。その他のチョイスとカバーリングは読者の想像にお任せします。

 それと、あとがきアンケートへのご回答ありがとうございました。これからは「次のヒロインは?」ではなく「どの物語が良かった?」という質問にシフトチェンジするため、前質問のアンケートを締め切り、新アンケートは全キャラ結婚(?)ルートを書き終わってからのお楽しみにしたいと思います。連載後も変わらぬ声援をありがとうございます。もうちょっとだけ続くんじゃ。
 

キャラ特別編人気投票:一番良かったストーリーは?

  • アルシーヴ編:プライド革命
  • ソラ編:君じゃなきゃダメみたい
  • アリサ編:我ら思う、故に我ら在り
  • ハッカ編:Lonely lullaby
  • ジンジャー編:September
  • きらら編:ふわふわ時間
  • セサミ編:Ture my heart
  • フェンネル編:フィクション
  • ソルト編:ヒトリゴト
  • カルダモン編:気まぐれロマンティック
  • シュガー編:白金ディスコ
  • ランプ編:恋するフォーチュンクッキー
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