きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
『Nursery Rhyme -ナーサリィ☆ライム-』というギャルゲーで使われており「きしめん」の愛称があるこの曲ですが、セサミの声優さんである赤崎千夏さんも歌っています。「セサミが歌っているワケではない」ので注意ですが。
鴛鴦は、夫婦になると常に行動を共にする習性があり、その仲の睦まじさから「仲の良い夫婦」のことを鴛鴦夫婦と呼ぶようになったという。聖典に書いてあった。
で、だ。なぜイキナリそんな話をしたのかというとなのだが………私の両親がまさに鴛鴦夫婦と呼ぶにふさわしい夫婦だからだ。
例えば……
「今日はママとデートだもんね!」
「そうですね、パパ。楽しみです♡」
……これは、私の所属する神殿主催の運動会での会話である。
言っておくけど、私の運動会はデートスポットでもなければ、聖典にあった「スポーツ選手」とやらの試合でもない。それなのに二人ときたら、父兄参加型の親子二人三脚レースで、
「ママー! お前に一位を捧げるから、ご褒美用意して待ってろよ!!」
「うふふ…頑張って、パパ。」
という会話のあと、お父さんは私を半分引きずりながらマジで一位をかっ攫い、お母さんのご褒美に預かっていた。
そのあまりのラブラブっぷりに見てるこっちが恥ずかしかったので、知らない人のフリをして立ち去ろうと思ったが、結局捕まった挙げ句、それからしばらく「お前の両親超ラブラブ!」と神殿のクラスメートからしこたま羞恥プレイを受けるハメになった。正直、この時ばかりは両親の人目の憚らなさを恨みに恨んだ。
たまにならともかく、お父さんとお母さんは毎日こんな感じなのだ。しかも、
ここまでくると、あの二人は喧嘩とは無縁だったんじゃないかとも思ってしまう。結婚前から仲良くないと絶対あそこまで人目を憚らずイチャイチャできない。少なくとも私には無理。
だから、私は面食らってしまったのだ。
「え? 結婚前? そこまで仲良くなかったぜ?」
「はっ???」
お父さんにさりげなく聞いて返ってきた答えに、とんでもなく素っ頓狂な声が出てしまった。
◇◇◇◇◇
あれから、仲良かった、良くなかったと不毛な押し問答をした後、変にノロケられるのも嫌だった私は家を飛び出した。
どうしても信じられなくて、お父さんとお母さんの事をよく知る人物に尋ねて、本当のことを知ろうとした。
本人たちに聞くのはなんか恥ずかしいし、絶対ノロケられると思ったから、とある人に聞いてみることにした。二人の事をよく知っているはずの人だ。
一時間くらい後、私は神殿の事務室に来ていた。
扉をあけると、机について作業をしていた、壮年の男性がこちらへ振り返って、笑顔を浮かべた。私を見とめると、トレードマークの眼鏡をくいっ、とあげる。
この事務員さんこそ―――私が神殿でお世話になっている大人のひとり―――コリアンダーさんだ。
「やあ、クミンちゃん。今日はどうしたんだい」
「こんにちは、コリアンダーさん。実は………」
「―――君のお父さんとお母さんの昔の話ィ?」
「はい。もしも知っているなら、その時期のことを教えていただけませんか?」
私が真っすぐ見つめて尋ねると、コリアンダーさんは頭をかきながら答える。
「……いいのか? 昔の君の両親は、その……刺激的だぞ?」
「だいじょーぶです! 私だって、もう14歳ですから!!」
「…………大丈夫かなぁ」
もう、コリアンダーさんももったいぶるなぁ。心配なんかしなくっても良いのに!
そう言っても納得いってなさそうなコリアンダーさんは、私に対して「聞いてから後悔するなよ」としつこく念を押しながら話してくれた。
「まず君のお父さん……ローリエだがね。
―――ひと昔前はとんだセクハラ大魔人だった」
「………………はい?」
耳を疑った。お父さんがセクハラ大魔人?
あの、お母さんが大好きで人目を憚らずイチャイチャしてるくらいには一途で一筋なあのお父さんが???
お、落ち着くんだ。そうだ、お父さんから落ち着く方法を聞いてたんだ。確か「そすう」を数えるんだよね?
1、2、3、5、7、9…………………ふぅ。
「……えっと、ジョークですか?」
「ジョークだったらどれだけ良かったか……」
そこから語られた事は想像を絶するエピソードだった。
通りすがりの女性に声をかけ、女湯を当たり前のように覗き、その為だけに魔道具を開発した、と。ヒドイ時には、隠し子が何人もいるとかいう噂も流れた程だって。
「―――という訳だったから、セサミと付き合ってから浮名を流さなくなったと知った時は全員が焦ったさ。『洗脳魔法でも使われたんじゃあないか』って。それでアイツに魔法の痕跡がないか調べて……まとめてセサミに張り倒されたのは良い思い出さ」
「………本当のことですか?」
「残念ながらな」
頭を超重量級のハンマーで殴られたかのような衝撃が、私に襲い掛かる。
コリアンダーさんの語るお父さんのエピソードが、ことごとく私の想像と正反対で、何があったのか知りたいくらいであった。
さっきコリアンダーさんが言っていた、「聞いてから後悔するな」と念を押してきた意味が、ここでようやく分かってしまった。
「へ、へぇ………」
「それで、君のお母さんだが……」
「ま……待ってください。お母さんは…マトモだったんですよね?」
コリアンダーさんからまた爆弾を落とされる前に、念を押しておく。
お父さんの意外すぎる姿が明らかになった以上、どんな情報が飛び出てくるかわかったものじゃあない。
でもお願いだからマトモであってくれ!
「そうだな……とりあえず、この写真を見てくれ。」
手渡された写真は集合写真のようだった。
ソラ様やアルシーヴ様や、賢者の皆さんが写っています。あ、お父さんもいた。
でも、この写真が一体なんだと…………?
「……!!? お、お母さん!?」
その写真に写っていたお母さんを見て、私は驚きの余り声をあげてしまった。
なぜなら……そこに写っていたのは、水着もかくやというレベルで露出度の高い服装?をしたお母さんだった。
「な、なに……この格好…?」
「ひと昔前の秘書の正装だったんだと。諸事情あって今の露出の激減した服装になったんだけどな」
「うそだ………」
え、どういうこと? これ、お母さん恥ずかしくなかったの?
こんなの痴女じゃん! 変態だよ!HENTAIさんだよ!! 大事なところは隠れてるけど……というか、大事なところしか隠れてないじゃん!!
よくこんなの着れたよね、お母さんを含めた今までの秘書さん!!?
私の知る秘書の正装は、胸元こそ開いているし、なんだか恥ずかしそうだなって思ってたけど、写真の中の水着……いや、下着にも等しいコレには及ばないよ!!
なに、どういうこと? 今までの情報を集めると……昔のお父さんはとんでもない女たらしかつセクハラ大魔人で、お母さんは行き過ぎたハレンチスタイルをなんとも思っていなかった痴女さんで……それってつまり。
「わ、私は……セクハラ大魔人とダイナミック痴女の間に生まれた、へんたいさんの子供だった……?」
「たぶんそれは違うと思うぞ。あと君、割と両親に容赦ないな…」
……正直、超ヘコんだ。取り乱したよ。最近おっぱいが大きくなってきて、ブラもおっきいのに交換したばっかりだという心当たりもあるし……。
知らぬ間に、男子のクラスメートに変な目を向けられてたんじゃないかって思ったほどだ。まぁ、そんなの今のお父さんとお母さんが許さないと思うけどさ。
うぅ、これから貞操観念しっかりしよう。明日からスカートの長さ伸ばそうかな………?
私の出自と日々の素行のマトモさについてコリアンダーさんが慰めてくれた後、私は冷静さを取り戻した頭で考えてみた。
もし…もしコリアンダーさんの言ってる事が本当だったとして。
その女好きだった当時のお父さんは、どうしてお母さんを好きになったのかな? まさか体目当てとか…?
「お父さんがお母さんと付き合ったきっかけとかって知りませんか?」
「えっ、付き合ったきっかけ? ちょっと待ってくれ………」
コリアンダーさんがこめかみを揉みだす。
どうにかして思い出そうとしているのが分かる。
「えっとな、一時期ローリエ…君のお父さんがナンパをやめた時期があってな。ほぼ同時期にそれなりに漫才みたいなやりとりをしてた筈のセサミと避けあってた気がしたんだが……すまない、詳しくは分からないな」
「そうですか……」
やっぱり、そう簡単には思い出せないんだろうか。
私でも「一週間前の晩御飯なんだった?」って聞かれると答えが出るのに時間かかったり、答えが出てこなかったりする。ましてやお父さんとお母さんが付き合いだしたのって、軽く見積もっても15年以上前でしょ? なかなか出てこないものなんだね……
「あ、そうだ。」
「!! 何か思い出しましたか!!?」
「いや、俺じゃなくって、アイツなら俺より詳しく知っているかもしれないって話だ」
「アイツ……?」
私は、両親の馴れ初めを知っているかもしれない人物に話を聞くべく、コリアンダーさんの言葉を聞き逃さないように耳をそばだてた。
◇◇◇◇◇
「お久しぶりです、ジンジャーさん」
「おぉ、クミン久しぶり!おっきくなったじゃねぇか! 今日はどーしたんだ?」
言ノ葉の都市、その市長官邸の客室。
メイド長さんに出された紅茶をちびちびと飲みながら、コリアンダーさんの言葉を手掛かりに訪ねた人物―――ジンジャーさんに話を切り出した。
お父さんとお母さんの、私の知らない過去の姿。
そこから想像できなかった二人の馴れ初めを、ジンジャーさんなら知ってるかもしれない、ってコリアンダーさんから聞いたこと。
「―――成る程な。まったく、あの二人ももうちょい娘と話しろってのに……」
「あ、あの、仕方ないと思います。お父さんもお母さんも、神殿では大事な役職なんでしょ?」
「そうだがよ、娘なら親にワガママ言うモンだろ? 今ならまだ許される年頃だぞ」
そう言われても……あんまりワガママ言いたいと思った事ないんだよね…
パッと思いつかないでいると、「で、二人の馴れ初めだったか」とジンジャーさんが話を戻す。
「詳しい事は私も知らん。
でも、一時期セサミがおかしかったのは知ってるぞ」
私の期待通りの情報が得られなかったことにガッカリしそうになった時、直後に聞こえてきた情報に顔を上げた。
「お母さんがおかしかった………? あの、それは服装ではなく…?」
「私からすりゃあ、今のファッションセンスに驚いてるんだがな……そうじゃあなくって」
ジンジャーさんは、話してくれた。
◆◇◆◇◆
アレは、ローリエとセサミが付き合うーってなる2か月くらい前のことだったか。
私は、セサミと街へ出かけた時の話なんだがな。
『せ、セサミ? どうしたその恰好?』
『秘書の正装なら洗濯中
最初は、あのきわどい正装以外の格好のセサミ以外を見たことのない私の気のせいかと思ったんだがな。
『それじゃ、早速
どうしても……どうしても普段と違う服装で普段と違う話し方をするセサミに違和感を拭えなくってな。そんで、どんどん違和感は膨らんでってな……
『ここのアイスクリーム屋
『……たまには抹茶にでもしてみっか』
『そう。それなら私は、この前迷ったベリーミックスに
『…おぉ…!うめぇ…!』
『ホント…! ねぇジンジャー、こっちも一口
それが限界だった。
『セサミ……お前、どうしたんだ? 何か、あったのか……?』
『え、あ、いや……ちょっとイメチェンといい…いうか………やっぱり変、ですよね。―――はい。
『いや…変じゃあねーけどよ………』
「ですます調」の丁寧語がデフォルトだったセサミが、イキナリくだけた口調になるなんて、何があったんだって思う方が自然だろ? イメチェン…にしても変え方が地味すぎて不自然だったしよ。
『なんで急に?』
『いえ、別に………』
セサミは溶けそうなアイスを気に留めることもなく空を仰いで、
『やっぱり、これが普通なんでしょうか…』
それは、誰に言ったわけでもない言葉だったんだろう。少なくとも私に言ったんじゃないと思うけど、どうなんだろうな。ただ、その時の私はそれに対して何も言う気になれずに、「アイス溶けるぞ」と話をそらす事しかできなかったのは、覚えてるよ。
◆◇◆◇◆
「そんなことが……」
コップの中の紅茶はとっくのとうに飲み干され、一緒に出されたお菓子も一つも残っていない。ここに来た時は高かった太陽も、今は次第に傾き始めている。
「あぁ。でも―――悪いな。結局、直接の理由はさっきも言ったように分からねぇ。」
「ありがとうございます。でも、お母さんにそんなことがあったのか知ることができました」
ジンジャーさんの言う通り、写真で見たきわどい格好したお母さんが、普通の格好をしてくだけた言葉遣いするのには理由があるんだと思う。
ここまで来たら、もうなりふり構っていられないのかもしれない。
「なぁ。…この話、娘のお前がセサミに聞けば教えてくれると思うぜ?」
「教えて…くれるでしょうか?」
「もちろんだ。なんせ……セサミだからな」
「ありがとうございました、ジンジャーさん!」
「おう。早く帰ってやれよ。今日はセサミの誕生日なんだからよ」
「―――え?」
時間が止まった。いや、私が固まった。
そうだ!!そうだったじゃんか!!! なんで…こんな大切なことを忘れてたんだ!?
お母さんに誕生日プレゼントを送るのには、意味がある。いつもは恥ずかしくて言えない「ありがとう」を伝えるためだ。
毎日美味しいご飯を作ってくれてありがとう。色んな家事をしてくれてありがとう。困った時、力になってくれてありがとう。そういう想いを伝えないといけないのに。
多分何も送らなくっても、お母さんは何も言わないのかもしれないけど、そんなの嫌だ。
ジンジャーさんにお礼を言いながら、私は官邸を飛び出して走り出した。
◇◇◇◇◇
必死に足を動かして、せっせと家に帰り、やっとの思いでっ玄関についたところで、私は一番大事な事に気がついた。
「あ………誕生日プレゼント……」
忘れてた。今日は大事な日だったのに、一刻も早く家に帰ることに気を取られてしまったんだ。
もう今日という日は半分以上終わっている。今から探したところで、間に合いっこない………!
「たっだい…クミン?」
「………お父さん」
どうしようと途方に暮れていた時、玄関のドアを開けて帰ってきたお父さんとバッタリ出会った。
私は、滲む視界と零れそうなものをこらえながら、お父さんに言うしかなかった。 どうしよう。今日、お母さんの誕生日なのに、プレゼント、買うの忘れてきちゃった。―――って。
すると、お父さんは優しい笑顔で頭を撫でながら、
「―――よく言ってくれたな。後は父さんに任せろ。クミン、お前に頼みたいのは時間稼ぎだ。できるね?」
「え…どうするの?」
「誕生日プレゼントをなんとかするのさ! いいか、何としてでも持ちこたえて欲しい!」
そう言うと、お父さんはそれ以上何も言わずに再び出て行ってしまった。
じ、時間稼ぎって言われても……!
「おかえり~…ってあら、クミン。いつの間に帰ってたの?」
マズい。お母さんがやってきた。
何でも良いから時間を稼げそうな話題を―――
―――あ。
「……お母さん、実は今日ね……」
咄嗟に良い話題を思いついた私は、今日何をやっていたのかを全部話した。
お父さんとお母さんが昔は仲がそこまで良くなかったって知ったこと。
昔の二人はどんなものだったのかを知る為に、コリアンダーさんとジンジャーさんの所に行っていたこと。
ジンジャーさんが様子が当時のお母さんの異変を覚えていたこと。
その全てを聞いたお母さんは、合点がいったという表情でほほ笑んだ。
「なるほど。どうりで、今日は何も言わずにどこかへ行っていたワケですか。」
「ごめんなさい…」
「謝らなくていいですよ。ただ、次は何処へ行くかちゃんと言ってください。
……ジンジャーが覚えているのは、あの時のことですね。そんなに面白い話じゃあないですよ?」
「それでも聞きたい」
「ほんとに?」
私は、僅かに頷いた。
「―――それでは、昔話をしましょうか。
その当時のパパはですね、意外にもスゴくモテたのです。並大抵の可愛い女の子が束になっても敵わないような綺麗な女子の数々に好意を向けられてたの」
「セクハラ大魔人だったのに!?」
「ええ。セクハラ大魔人だったのに。大体あの人卑怯なんです。いつもは最低なことしかしないのに、いざという時や落ち込んでる時は欲しい行動や言葉をぴったりくれるんです。口説いてるんだって分かってても……好きになるに決まってるじゃないですか」
口を尖らせて不満そうなことを言うお母さんは、どこか嬉し気だ。
「でも、あの人は誰かの好意に答えることはなかった。それでも私は、他の誰でもない…私に、振り向いて欲しかった。」
目を閉じた母さんのまぶたの裏には、何が映っているんだろう。
「そんなときね、お父さんの女の子の好みを聞く機会がありまして。
………お父さん、友達になんて言ったと思います? 好みのタイプ」
え、お父さんのタイプ? いったい何だろう?
「―――普通な人。そう言ったんです。」
そ。それは―――
「ここでクミンに質問。私って、普通に見えますか?」
うーん。どうなんだろう。
でも、今日の記憶を辿って、言葉を選びつつ絞り出した答えは……
「ちょっと独特、なのかも……?」
今思い返してみると、大胆な水着を恥ずかしがらずに着れちゃう(そして、そう言う時いつも慌てるのはお父さんの方だ)し、ですます調はウチでもなかなか崩れないし、おっぱいおっきいし……もっとも、私にはそんなの関係ないけど。
「ふふふ、ありがとう。でも、その時の言葉を聞いて思ったんです。『あ、それって、私じゃないのかもしれない』って」
「そう、だったんだ…」
「ですから、『普通』になるべく頑張りましたよ。最初は、そもそも普通というのが何かが分かってませんでしたから、ソラ様やフェンネルや……他にも色んな人の知恵を借りて、服とか話し方とかも調べていた時期もありまして。そうやって試行錯誤をしてた時期が……」
「…ジンジャーさんが覚えてたあの一件、なんだ」
お母さんが頷く。あの時言ってた、誰に言ったでもない言葉は、ひょっとしたらお母さん自身に言っていたのかもしれない。
「その時ですかね。お父さんが『お前どうしたんだ? 最近なんか変だぞ』って言ってきたのは。まったく、人の気も知らずに……」
あ~。知らなかったんだろうとはいえ、お父さんも言葉が悪かったような…。
「何も知らない筈のあの人についイラっとして、ひどいこと言って大喧嘩になりました。
そこからは、お互いがお互いを避ける日々が始まりましてね。
その時は辛かった。この世でこんなに苦しい事があるんだってくらいで、時間が物凄く長く感じたのですから」
「………」
「一週間か二週間か……無限にも思える時間が経った頃、お父さんの方から話しかけてきたんです。
いきなり頭を下げて『ごめん!俺が原因なら謝るよ。お願いだから機嫌を直してくれ。俺はお前といつまでもこんなに気まずいのは嫌だよ』って。」
うわぁ、お父さんストレートだなぁ。お母さんが声を低くしてモノマネのように話す。
コリアンダーさんのトコで見た写真の中のお父さんがこう言っているのをイメージすると、そうとう勇気のいることだったんじゃないかな?
「私は、そのお父さんに『じゃあ、どんな関係がお望みなのですか? 普通な子が好きな貴方は』って言いました」
い、イジワルだ。そんなことを言われちゃったら何にもできなくなりそう。お母さんもお母さんで素直じゃないよ。
「そしたら、私のそんなイジワルにこう言ったんです。
『あのな、それには続きがあんの。――俺が好きなのは、普通な子。普通に話して、普通に一緒にいて、普通に笑いあえる関係の楽しい子。こんな気まずくて、話もできないで、まともに顔も合わせられないんじゃあ、嫌な子だよ』って」
「……? !!! わ、わわわわわ、わわ!!」
そ、それって。つまり。
つまり……そういうこと!!?
「最初は、言われた事の意味が分からなくて……でもそれが分かった途端、ふふ、泣いちゃいましたね。もう大号泣でした。」
あれは嬉しかったなぁとしみじみと思い返す様子のお母さんに、お父さんのスゴさを見た。
「お父さん、すごい人だったんだ……」
「それからは、クミンの知る私とパパになったわけです。
………このこと、パパには内緒にしてくださいね?」
「言えないよ、恥ずかしくって…………」
でも、そんなことがあったんだ。
お父さんとお母さんが今も仲がいい理由が分かった気がするよ。
普通に一緒にいて楽しいんなら、付き合ってから一気に仲良くもなると思う。娘が恥ずかしいのを鑑みないのはどうかと思うけど。
「おーーーい、帰ったぞー!」
「!!」
ウインクするお母さんをリビングに置いて、私は声がした玄関へ駆け出した。
そこには、大荷物を抱えたお父さんがいた。「ミッションコンプリート!よく頑張ったな」とか褒めてもらった後、大荷物の中の1つを私に持たせた。その時に、お父さんの顔をマジマジと見てしまう。
…こんな顔のお父さんが、あんなことを………。まぁ顔立ちは良いけど、普段がね………
「…? どったのクミン」
「ううん。お父さんって、スゴイんだね」
「ようやく気づいたのか。ホレこれお前の分のアレね。ほら行った行った」
「ちょ、待ってっ、待ってってば!」
それなりのサイズの箱が入った袋を押し付けて私の背を押し、お母さんのいるリビングに戻る。そして。
「ママ、お誕生日おめでとう~!!」
「えっ、あ、お、おめでとう~~!!」
お母さんに押し付けられた袋を渡す。急に渡されたから中身を確認する暇もなかったから分からないけど、何が入ってたんだ?
「わぁ……! すごい!」
「ケーキだ!! お父さん、こんなのどこで…?」
「人気店のヤツだ。3か月前から予約殺到だったからな、間に合って良かったよ」
が、ガチすぎる……分かってたけど、お父さんのお母さんへの愛がスゴ過ぎる。
いろんなクリームやチョコレートのトッピングがあるんだけど、こんなのいくらかかったの…?
「あ、俺からはコレね」
「それは……!! 超有名ブランドの紅茶セットじゃありませんか!!! しかもこんなにたくさんの種類が!! い、いいの、パパ!!」
アレ。
なんか、お父さんが渡した紅茶の方が、喜んでない?
こっち誕生日ケーキだったはずなんですけど。
「もちろんだ」
「わあーーーーーっ!! ありがとうパパ!大好き!!」
「知ってる」
「…あのー」
お母さん、思いっきりはしゃぎながらお父さんに抱きつかないで。
お父さんもお父さんで、なんとか言ってよ。
あのーお父さんお母さん! ここに娘がいるんですけど。教育に悪いんですけどー?
文句の一つでも言おうかと思ったが、お母さんが私にちょいちょいと手招きをした。近づいてみると、そのままお父さんと一緒にお母さんに抱きしめられて。
「ありがとう、
あとがき
さーて皆さん一緒に、すなーおな気持ち――――――――――
はい。そんなこんなでセサミ編でした。こんな旦那にメロメロなセサミは違和感すごかったでしょうか? それとも可愛かった? 安心してください。私自身も違和感とそれを塗りつぶすレベルの可愛さにやられています←
セサミは女子力の高さ以外のプライベートが現時点で謎だったため、羞恥心が薄いとか紅茶が好きとかは完全に独自設定ですが、公式の設定を見て「こういうのありそうだな」ってものを設定しています。
それでは、次の特別編でお会いしましょう。
キャラ特別編人気投票:一番良かったストーリーは?
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アルシーヴ編:プライド革命
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ソラ編:君じゃなきゃダメみたい
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アリサ編:我ら思う、故に我ら在り
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ハッカ編:Lonely lullaby
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ジンジャー編:September
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きらら編:ふわふわ時間
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セサミ編:Ture my heart
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フェンネル編:フィクション
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ソルト編:ヒトリゴト
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カルダモン編:気まぐれロマンティック
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シュガー編:白金ディスコ
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ランプ編:恋するフォーチュンクッキー