きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
エ□漫画先生?そんな名前の人は知らないですね。
「なぁソルト、ここの計算が間違っているぞ?」
「え?」
いつも通りの仕事の計算をアルシーヴ様に報告した時に、書類を見返したアルシーヴ様にそう言われて思わず固まってしまいました。
大慌てで指摘された箇所を見直してみると、確かに間違えてしまっています。それも、普段のソルトなら絶対に間違えないような、簡単なところを。我ながらケアレスミスもいいところです。
「も、申し訳ございません…!」
「今気づけたのだから問題ない。しかし……ソルト、体調でも悪いのか?」
「い、いえ、そのようなことは決して……」
これは本当です。
ハロウィンを過ぎ、冷え込んだ日が続く中、ソルトは体調管理はしっかりしています。気温の把握と室温・湿度もまた、計算のうち。ソルトが間違えるなんてありえません。
「…そうか、まぁ良い。少し自分を大事にすることだ、ソルト」
「………わかりました。」
釈然としませんが、アルシーヴ様はおそらくソルトを労っているだけ。それに反論するなんて、非合理的です。
アルシーヴ様のいる筆頭神官の書斎から出て、シュガーとソルトの部屋に戻る途中、そこにある教室から声が聞こえてきました。
「さぁーて、ここで問題です。この幻惑魔法が付与されてる魔道具の回路、どっかで見たことがあるはずだ。それは何でしょう? この部分を見ればわかるはずだぜ」
「はい!」「はい!」「はーい!」「ハイ!」
「おお、結構上がってるね。分からない人は、教科書の46ページにヒントが書かれていますよ」
ローリエの魔法工学の授業です。
彼はこうして見れば、普通に良い教師なんですけどね。ソルトとシュガー以外の賢者やアルシーヴ様、ソラ様にセクハラをしでかす時点で総評価はゼロを通り越してマイナスに突入しています。
今授業を受けている女神候補生の方々だって、今はローリエの標的にされてはいませんが、成長したら分かりません。まったく、こんな危険因子をどうしてアルシーヴ様は………
「ソルト!」
「わひゃあぁっ!!?」
う、後ろから声が!! い、一体誰の―――
「―――ってシュガーでしたか……まったく、そんな大声出さなくっても聞こえますというのに…」
「聞こえてなかったよ? 何度も何度も呼んだのにさ。どうしたのさソルト?」
「え………」
「……あ! ローリエおにーちゃんを見てたから分かんなくてもしょーがないかー」
「…何を言っているのです、シュガー」
「だってソルト、おにーちゃんの事が大好きだもんね!」
「……は?」
一瞬、シュガーの言っていることが分かりませんでした。
ソルトが…ローリエの事を? 大好き?
……いやいや。言うに事欠いて何を言っているんでしょうか、この妹は??? いくら冗談でも、度を越しています。
だいたいこんな浮気男、どう好きになれというのですか? この前なんて、都市で3人グループの女性をまとめてナンパしてたダメっぷりですよ?
しかし…落ち着きなさい。慌てて反論してもシュガーを面白がらせるだけ。ならば……冷静に答えるのみ!
「……シュガー。いい加減なことを言うのはやめてください。よりによってローリエだけはありません」
「へぇ〜〜。じゃあおにーちゃん以外にいるの?好きな人」
「そ、それは………」
言葉に詰まる。その様子を見たシュガーがにやりと笑う。これはよくない流れです。
「ほぉ~~ら! やっぱりソルト、おにーちゃんのこと好きなんじゃん!!」
「違います!違うと言っているでしょう!!」
「えぇ〜?顔真っ赤だよ? 説得力ないよ?」
「っ!!?」
「あ、今顔確認した! 自覚あるんじゃん、もう〜!」
…!? しまった!
ハメられた!ソルトとした事が、油断した!!
「なっ……! い、今のは誰でも確認するでしょう?」
「ふ〜ん、まぁ…そういうことにしておくよ!」
「…………」
慌てて弁解するも、ニヤついたシュガーはその表情を緩めぬまま、軽やかに走り去っていきました。
その様子がソルトを煽っているようで不快でしたが、手を出せば今度こそシュガーにからかいのタネを与えてしまうと分かっていたため、手を出せませんでした。
「まったく……シュガーは、軽率で単純で短絡的なんですから…」
少し異性を見ていただけで好きだと思うなど、単純すぎます。
何でもかんでも恋愛に繋げる恋愛脳になるのは勝手ですが、それをソルトに押し付けるのは迷惑以外の何物でもありません。
さて、アルシーヴ様から指摘をいただいた、書類のミスを修正せねば……
「……?」
部屋への廊下を歩いている最中、倉庫の奥で何かが見えました。
気のせいかとも思いましたが、確かめた方が合理的ですので、倉庫の方へ歩を向けて進みました。
「……こんなところに扉なんてありましたっけ?」
倉庫の入り口なら兎も角、倉庫の奥に更に扉なんて、普通つけません。そのような建物の構造は不自然だからです。ですから、慎重に……扉を開けました。すると、地下へと続くと思われる急な階段があって。
そこを降りていくと、広がっていたのは一室の研究室でした。地下とは思えないくらいに清潔感があり、壁・床ともに機械的です。
「こんな部屋が……!」
誰が何を目的にこんな部屋を作ったかはわかりませんが、最悪神殿に潜り込んでいる反対勢力が集まる秘密基地かもしれません。徹底的に、かつ迅速に調べ上げなければなりません。
最初に目についたのは、真ん中に置かれているテーブル。そして、その上にあるのはこれまた機械的なデザインのブレスレットとメダルの数々。
「なんでしょう、これ…?」
ブレスレットにはメダルをはめると思われる空洞がありますけど、これは……?
それを手に取ってあらゆる角度からそれを見てみます。やはり気になるのはメダルの数々と腕輪のくぼみですね。メダルを合わせると、くぼみと合わさりました―――
「うわああああああっ!!?」
び、ビックリした!! 急に腕輪が喋り出すなんて聞いていませんよ!!
しかも結構おっきい音で……しかも、驚いた拍子に腕輪を落として、ガシャンと結構な音を鳴らしてしまった……! い、今の誰かに聞かれたかもしれません……!!
「……ソルト?」
「わああーーーーーーッ!?!?!?」
声をかけられた事に驚いて、振り向きざまに声がした反対側の壁まで距離を取る。
「だ、誰ですか―――」
「……お、俺…そんなに嫌われるような事したかな? 言ってくれよ、嫌だと思ったら……もうしないから………」
「…………ローリエ?」
そこには、傷ついて明らかにヘコんでいるローリエがいました。
ワケが分からないですが、分からないなりにローリエを慰めつつ(少々めんどくさかったですが)、さっきの腕輪とこの地下のラボの正体を尋ねました。
「それで……ここは何なんですか?」
「…良く聞いてくれた。ここは―――魔法少女ラボ!!!」
「魔法少女ラボ??」
「ほら、エトワリアにテレビ最近生まれたろ? それを使って娯楽としての番組を作ろうってなってな。」
「娯楽の番組、ですか?」
成る程。確かにエトワリアはテレビが普及し、どの家庭もテレビが置かれるようにはなりましたが…そういえば先日、子供の層や若い世代の視聴率に伸び悩んでいるというデータを拝見しましたっけ。
「若年層の視聴率獲得のためですか?」
「あぁ。それに、クリエメイトや彼女たちから話を聞いた人々から魔法少女への憧れも増えてな。
生み出すことにしたんだ。エトワリア産の、新たな魔法少女をな」
成る程。流行に乗っかり、魔法少女の番組を作って色々な利を得ようとしているわけですね。
「どういう魔法少女にする予定なのですか?」
「エトワリアにちなんだ、世界を渡れる魔法少女にした」
「世界を…渡る?」
「簡単に言っちゃえば、別世界を移動することができる、ってことだ。例えば、ここから聖典の世界へ移動する、みたいな」
「さらっと凄まじい事考えますね……ソラ様でもできないのに」
「いーんだよ。テレビ番組なんだし、『大体わかった』で済ませられる」
「雑ですね……それで、ここがその魔法少女の番組を作る本部みたいなところですか?」
「違うよ? 言ったでしょ、ここはラボだって。本部は里にある。ついて来な」
そう言うと、ローリエさんはラボを出て倉庫外の廊下へ歩き出す。
慌てて後を追ったソルトは、ローリエさんと一緒に転移魔法で里にあるという本部まで向かうことにしました。
◇◇◇◇◇
「ようこそ、我らが本部へ」
案内されたのは、里のあるビルのような建築物の会議室でした。入口の看板に『イーグルジャンプ』ってありましたけど、あそこってゲーム会社じゃありませんでしたっけ………?
会議室にいたのは、クリエメイトの皆さんでした。篠田はじめに桜ねね、星川麻冬に日暮香奈…それとスティーレの秋月紅葉もいますね。他にもそれなりの数のクリエメイトがいました。あと、なんでここにランプがいるんですか?
「待ってましたよローリエさん……って、その子は?」
「あれ、ソルト!?」
「……ローリエさん。なんでランプがいるんですか?」
「ランプも立派な製作スタッフだ」
「なぜ言わなかったのです…!?」
「聞かなかったじゃん」
いや、確かに聞いてませんでしたけど………これは予想外です!!
何をされるのか不安なままローリエさんについていると、ローリエさんからあのラボで見た腕輪を渡されました。
「せっかくだ。仕事を見ていくついでに頼みたいことがある。コレをつけて変身してくれ」
「………………えッッ!?!?!?!?」
な……何故!? というか、もう変身できるんですか!?
こ、この男……私の知らぬ間になんてものを………というか、ソルトが変身するんですか? この状況で!?
「……驚いてるトコ悪いが、コレはマジの仕事だ。今回の番組を作るにあたり、魔法少女番組のプロを揃えている。そう言った方々から意見を聞くために、必要なことなんだよ。」
いやいやいや…そうかもしれませんけど……それをソルトがやる意味はあるんですか!?
「しかし、そういうのは他の方がやった方が…」
「バックルは今1個しかない。交換しながら変身してたら時間がかかる。だから頼む。」
「……………」
ローリエのお願いだけではなく、他のクリエメイトの方々からも『お願いします』って視線がすごいです…! ものすごく気まずい…!
結局、ソルトはその場の人々に押し切られて変身アイテムを使うハメになりました。
「で…では、行きます…………変身」
「おぉ…なんかカッコイイですね!」
「そうね……でも、彩りがちょっと…」
「そうですよ! もっとカラフルな方がいいと思います!」
「了解。もっとカラフル…集まる人影に色つけてみるか?」
「それがいいと思います!」
ローリエが作ったと思われる道具を起動すると、人影が現れてソルトに集まるという、目を疑う演出が現れました。
しかも演出が終わった後で自身をちょっと見ると、花やリボンが増えて、聖典に書かれた「魔法少女」みたいです。は、恥ずかしい…!
「えっと…では、次、行きます…」
「違います!ぷりずむはもっとこう、ピカーって感じの変身なんです!」
「ほう。具体的に何が足りない?」
「頭から下…いえ、顔以外の全てが光ります!そして、そこからコスチュームが生まれるんです!」
「あー成る程。プリ○ュアによくあるヤツか」
「そうです! あ、光の色は虹色で!」
「虹色ね。ちなみに、似たタイプの変身シーンの魔法少女でーすって人いる?」
「は、はい!『ラブリーショコラ』もこんな感じです!」
「『ムーンレンジャー』も同じ感じでーす!」
しかし、クリエメイト達は、私の変身を見て、本気で議論しています。
香奈さんはソルトがいま変身した「まじょっ子ぷりずむ」とやらを熱弁し、ローリエはそれを分析して取り入れつつ、他のクリエメイトの意見も掬い上げています。
なんというか、そのような様子を見ていると、不思議な気分になります。
「…………」
「わぁ…ラパンの変身シーンも作ったの!?」
「おう。こんなんでいい?」
「もっちろん! すごくカッコ良かったよ! 本編じゃ変身シーンなかったから尚更!」
「青山さんも異議はありませんね?」
「はい! このようなデザインをしてくださって、ありがとうございます!」
他にも、フリルやらムーンレンジャーやら、色んな姿に変身させられましたが、変身するたびにクリエメイトとローリエが大真面目に議論するさまを見て、さっきまで恥ずかしがってたソルト自身が恥ずかしくなってきました。
彼らは娯楽のテレビ番組を作るために、このような事を日々続けていたのですね………
「―――それで、その肝心の主人公は、誰が演じるのですか?」
「そうだったな。他の役は順々に決まっていっているんだけどな……」
「あのー……本人さえ良ければ、ソルトちゃんに頼んでみませんか?」
「お! いいね、そうしようか!」
―――は?
え、なんか今、ソルトが主演やるって聞こえたような気がしますけど……
「なぁ、ソルト!」
「ちょ、ちょっと待ってください! いきなり主演なんて……!!」
「うーん、やっぱイキナリは無理があんじゃねーのか?」
「そっか。じゃあ時間はあげるよ。あと台本も読ませよう。」
「イヤ、そういう問題ではなくですね―――」
「まぁ、受けるか断るかはそっちに任せるけど…演技力を上げるには丁度いいかなって思ってさ。
変身魔法あっても、中身の演技力がなかったらすぐにバレちゃうからなぁ。」
「…………」
急な出演依頼に断りを出そうかとも思いましたが、ローリエのひとことに考えが止まりました。
確かに……かつてソルトが一井透に百木るんの変身を見破られたのは事実です。
そう考えると……参加してみるのも、悪くない…のかもしれませんね……?
そんな事を考えながら…ソルトは、あっという間に新番組『魔法少女ルーラー』の主役を買って出ることになったのでした。
◇◇◇◇◇
それからというもの、ソルトは魔法少女番組作成チームと共に撮影への練習が始まりました。
ソルトが行う役は主役でありながら傲岸不遜で我が道を行くタイプの少女。ソルトとはまったくの正反対の役です。シュガーにでもやらせた方が上手くいくんじゃないですかね?…と思いましたし、ローリエさんにもそう言ったんですが、ローリエは「よく演技できている」と好評価をいただきました。褒められることは悪くないんですけど……
それに、番組監督としてのローリエの仕事ぶりには目を向きました。何がすごいって、周囲を美人で囲まれているにも関わらず、撮影中……否、仕事中はナンパやセクハラの類を一切行わないのです。何があったのか問いただしたことがありましたが、「やって欲しいのか、ソルト?だが残念、キミはあと7年経ってから出直してこい」と冗談半分にからかわれてはぐらかされるだけでした。ちなみに、その際は拳で返事をしてやりましたとも。えぇ。
……ですが、撮影は常に順風満帆とはいきませんでした。問題が発生したのです。
それは……魔法少女フリル役の人に土壇場で出演を断られてしまったということでした。
「監督!どうしますか?」
「う…む………急な話で、こっちも整理できないが……代役を今から探すしかない。
見つからなかったら、放送スタートの延期も視野に入れるか……」
「そんな…………!」
新番組に力を入れ続けていたスタッフが絶望しかけた表情をし、ローリエの困り果てた表情を見た時、胸が苦しくなりました。
「(どうして………こんなに苦しいのでしょう?悔しいのでしょう? 皆さんが頑張ってきたのは知っている。でも、フリル役の方がドタキャンするなんて………)」
フリル役の人が誰なのかは聞いています。なので、確信できることがあります。
彼女は……何の理由もなく、ドタキャンするような人物だとは
しっかりとした根拠もあります。彼女は聖典の中では、そこまで無責任な人物ではありませんでした。
なので、ソルトは彼女―――桜ノ宮苺香さんに会うべく立ち上がりました。
探していた人物は、なかなか見つかりませんでしたが、夜の砂浜に座り込んでいるのを見つける事ができました。
「苺香さん」
「っ!!?」
「大丈夫です。ソルトは、話をしにきただけですから。
連れ戻そうとか考えていません……嫌なことを無理矢理やらせるなど非合理の極みですから」
「そ、そうですか……」
苺香さんは、ドタキャンした罪悪感からかソルトを見るなり立ち上がろうとしましたが、ソルトがそう言えば落ち着いてくれました。
こういう場合、こちらから話すのが良いでしょう。撮影が始まってから、共演者とは色々話しましたが、主演になったきっかけとかは話した記憶はありませんからね。
「……少々、ソルトのお話に付き合ってほしいのです。いいですか?」
「あ、はい…その程度でしたら……」
「ソルトは元々、『ルーラー』役はローリエにスカウトされたのですが………正直、気が進みませんでした」
「そうなんですか?」
「はい。急に道具のテスト役やらされて、そのままよく分からない魔法少女番組の主演ですよ? ローリエの正気を疑いました。
撮影が始まってからも、ミスが多くて、皆さんの足を引っ張ったかと…………ですが、ソルトはこの仕事を、やり切ることにしました。」
「…どうして、ですか?」
「ソルトは、一度始めたことは途中で投げ出したくないのです。シュガー…妹が何でもかんでも投げ出しがちでしてね……そのフォローをしているうちに、そういうタチになりました」
シュガーは諦めがちな子でしたからね………そんなあの子をやる気にさせる為に、色々行ったものです。
そんなソルト達の姉妹関係に相槌を打っている苺香さんに、ソルトは続けます。
「それに………ソルトは、『変身』したいのです」
「変身?」
「より良い自分、更に上の自分……そんな存在に、ですね。
ソルトは『変身魔法』と計略には自信がありますが……きららと戦った際に、敗北した事がありまして」
それからソルトは、あの山奥の村での一件を、苺香さんに話すことにしました。
変身魔法は完璧だったのに、見破られたこと。策を練って挑んで、敗北したこと。あの時の悔しい出来事を、事細かに。
苺香さんは、何も言わずに聞いてくれました。
「―――その日から、ソルトは考えるようになりました。
今のままで、これからも大丈夫だ……とは、到底思えなくなりました」
そこまで話した時に、腕に『魔法少女ルーラー』の変身アイテムがあることに気付きました。
返し忘れたと思いましたが、それと同時に良いコトを思いつきました。
「だから私は……もっと演技力や、計略や、自分の力を、もっと磨き上げて………!!!」
「え!!? そ、ソルトちゃん!!?」
メダルをバックルに入れて閉じれば、たちまち私は『魔法少女ルーラー』の格好になりました。
苺香さんが混乱するのも構わず、彼女を真っすぐ見据えます。
「もっと良い自分に『変身』したい。
ソラ様やアルシーヴ様のお役に立ちたい。
そう思ったから、ソルトは『ルーラー』をやり抜こうと思ったのです」
「………そう、だったんですね。
私も同じです。直前になって、皆さんの足を引っ張るのが怖くなりました」
やはり、でしたか。
桜ノ宮苺香は、無責任ではありませんが、少々自信がないきらいがありますからね。
彼女がこのような理由で動けなくなるのも、ある意味予想通り、ではあります。
「私も、スティーレで働く前は…色んな所の面接に落ちてまして。
今回の撮影も、笑顔が怖くて皆さんにご迷惑をかけてしまいたくなくて…!」
「表情の問題なら、ソルトにも理解できます。
普段使わない表情筋を使うんですよね。もっと笑ってとか言って、何度リテイクを食らったか」
「私は、意識して怖くない笑顔にしようと思うんですけど……やはり、上手くいかないんです…!」
……その後は、表情を出すことに悩みのある者同士の愚痴大会みたいになってしまいましたが、まぁいいです。
帰り際に「気が変わったら、早めに会いに来てください」と添えてソルトは去ることにしました。
翌日、撮影現場に苺香さんの姿があったことに、ひとまず安心しました。
◇◇◇◇◇
やがて、『魔法少女ルーラー』の全撮影が終わり、放送されるようになった頃。
全てのテレビで放送されると聞いて、覚悟はしていたんですが………
「「「おおおお……!!」」」
「や、やめてください…恥ずかしい……!」
「これ、まんまソルトじゃないのか?」
「違います、ソルトではありません! 現に服のデザインも派手だし、耳が生えていません!」
「いえ、ですから耳が生えていないだけのソルトなのではと……」
「み、見ないでください………」
ここまで恥ずかしいとは思いませんでした!!!
だ、だんだんと体が熱くなっていく……!
番組制作に関わっていない皆様(特にきららさんとソラ様)が私を『魔法少女ルーラー』として見ているのがちょっと……!
穴があったら入りたいとはこのことです…………!!
「うああぁぁぁぁ…………ろ、ローリエさん…助けてください……………」
「何言ってんだソルト。『魔法少女ルーラー』はもう最終回まで撮ってあるんだから、これから毎週あの姿を見られるんだぞ。慣れとけ」
「わぁぁぁぁぁぁ!!! ローリエさんのバカ!!!嫌いです!!もう!!!!!」
「何故だァァ!!?」
ローリエに助けを求めたら、案の定と言うべきか、そんな回答が。
もう……なんでここまで意地悪なんですか。嘘でも、ソルトを慰めてくれてもいいのに。
やはり、ソルトが子供だからですか? ……だったら簡単です。
こっちも、ローリエが構うような
幸い、『魔法少女ルーラー』の撮影は、演技力向上という点では、有意義なものになりました。恥ずかしかったけど後悔はありません。この経験も糧にするのみです。
7年経って、背が伸び切ったソルトにローリエが言い寄ってきて、その正体を知った時のリアクションが今から楽しみです。
……あ、変身魔法という意味ではありませんのであしからず、です。
あとがき
はい、というわけで「いつの間に好きになっていた」系のソルトでしたー。
読んだ方はわかると思いますが、UA突破記念閑話「Hの誕生/魔法少女大戦」に繋がっている部分が多いです。
ソルトがローリエにスカウトされた経緯や、主演を受ける&やり通すことにした理由をフォーカスして書きました。
八賢者編で書いてないのはあとカルダモンとシュガーだけになりましたね。必ず二人のお話も書くぞよ。それでは、また次回会いましょう~。
P.S.とうとうNEWGAMEも終わりか~。長いようであっという間だったなー。あおっちを始めとしたイーグルジャンプの皆、大好きだぜ。そして得能先生、お疲れ様でした。
キャラ特別編人気投票:一番良かったストーリーは?
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アルシーヴ編:プライド革命
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ソラ編:君じゃなきゃダメみたい
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アリサ編:我ら思う、故に我ら在り
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ハッカ編:Lonely lullaby
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ジンジャー編:September
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きらら編:ふわふわ時間
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セサミ編:Ture my heart
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フェンネル編:フィクション
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ソルト編:ヒトリゴト
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カルダモン編:気まぐれロマンティック
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シュガー編:白金ディスコ
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ランプ編:恋するフォーチュンクッキー