きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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本番外編を読む前に「気まぐれロマンティック/いきものがかり」の用意をお願い致します。


カルダモン編 気まぐれロマンティック

「リュウグウランドの招待券?」

 

 始まりは、彼女からの誘いだった。

 

「そう。二人まで行けるチケットでね。まぁ、誰も誘わないのは勿体ないから。」

 

 彼女―――カルダモンは困ったように笑う。

 

「そんなもん、セサミかジンジャーでも誘えば良かったんじゃ?」

 

「男女カップルで更に安くなるチケットなんだって。こういうの、指定しない方が儲かりそうなのにね?」

 

「ほう。それで、俺に声がかかったってワケか」

 

「ううん。先にコリアンダーを誘ったんだけどね。仕事があるって断られちゃった」

 

 

 俺――ローリエの質問にそう答えたカルダモンに対して複雑に思ってしまう。なんでだ。まさか、カルダモンが俺より先にコリアンダーをお誘いとは。カルダモンのことだから別に深い意味はないんだろうが…………とりあえずコリアンダー、お前は後で泣いたり笑ったりできなくしてやる。

 

 

「……嬉しくないの?」

 

「嬉しいに決まってるだろ。君みたいな超がいくつも付くほどの美人からデートに誘ってもらえるなんて。

 しかも―――()()()()なら尚更だろ。男として答えなくっちゃあな」

 

「あはは、相変わらずだねー、ローリエ」

 

 

 かわいく笑う俺の彼女は、久しぶりの俺とのデートに超わくわくしていた。

 

 

「…ちなみに、俺より先にコリアンダーを訪ねた経緯を教えてくれない?

 時と場合によっちゃあアイツをオカマにする必要が出てくる」

 

「あははは! そんな大した意味はないよ。ただちょっとからかっただけだって。嫉妬してるの?かわいいね、ローリエ」

 

「うっさい。つーか、かわいいのはカルダモンの方だろ」

 

「……そういう事言うのちょっとアレだと思うよ」

 

「ちょっとアレってなに!!?」

 

 

 こっち向いて下さいカルダモンさん!!?

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 調停官であるあたしは、基本的に紛争地に赴いて争いの調停をする為に、基本的に神殿には帰れない。

 だから、今日という日を楽しみにしていた。久々に貰えた休みに、リュウグウランドの招待券。それを使って、あたしの恋人と遊びに行けるんだ。楽しみじゃない訳がない。

 

 だからこそ、この時の私は、あんな事が起こるとは思いもしなかった。

 

 

「いやぁー、こうして二人で遊ぶのって初めてじゃあないかな?」

 

「まーカルダモンはしょっちゅうあちこち周ってるしな。俺とて決して暇じゃない。今日みたいに二人きりでどっか行けるとかないだろうなぁ…」

 

「そうだね~」

 

「とにかく、今日は色々回ろうじゃない! さっさと優待パス買いに行こうぜ!」

 

 

 リュウグウランドは、人気も相まってか「優待パス」が存在する。

 持っていればアトラクションとかに早く乗ることができる、便利なものだ。

 普段はいけない分、ローリエはすぐにこのパスを確保できたから、どのアトラクションも時間をかけずに乗れた。

 

 

「カルダモン絶叫系好きだね、知らなかった」

 

「そう? 確かに、あたしこういう刺激のあるもの大好きかも」

 

「そっかぁ。じゃあ、もっかい乗る?」

 

「うん、良いよ。その次はお化け屋敷ね」

 

「え。ちょっと待って、あそこって確か―――」

 

 

 ジェット系って大好きなんだよね。まぁ退屈じゃあないなら何でも良いんだけど、刺激は強い方が良いに決まっているよね。

 最恐って名高いお化け屋敷に行くって言った時にローリエの表情が一瞬固まったのを見た瞬間、「あ、これは絶対行こう」と決意した。面白いものが見れそうだったから。

 

 

『あ゛あ゛あ゛ああ!!!』

 

「ギャアアアアアアアアアアアーーーーー!?!?!?!?」

 

「うわああああああああ!? ちょっと、驚きすぎだよ!」

 

「だから無理だって言ったのにィ……もう無理だって…」

 

ガタンッ

 

「わあああああああああああああああああああああ!!!!?」

 

「きゃああああああああ!!」

 

 

 ……結果、なんというかローリエの怖がりようは予想以上で、あたしはお化けのギミックよりもローリエの絶叫で驚いた回数が多かった気がするよ……でもまぁ、あたしの知るローリエとはまた別の一面を見れたと思えば、役得ではある、かな?

 

 

「あはは、あそこまで怖がるとはね」

 

「だからやめようって言ったのによ……」

 

「でも、お陰で良いコト知っちゃった。また来ようね?」

 

「おう、そりゃ良いけどさ……お化け屋敷だけは……」

 

「ちょっとしっかりしてよねー。あたしの彼氏でしょー?」

 

「うっ……でも無理なものは無理だよ…」

 

 

 お化け屋敷で弱っていたローリエを近くの建物3階にあったカフェに連れてそこでの創意溢れるメニューを頼む。

 意外だったなぁ。ローリエが怖いの苦手とはね。ユニ様のお葬式でソラ様と変な挙動してたのは、何か見えたから、とかだったりする? ………まさかね。

 でも、あんまり情けない姿は見せないものじゃないかな。少しでも慣れた方が良いと思うけどね、あたしは。

 

 それはおいといて。

 注文から暫くすると、店員さんがオシャレなハンバーガーセットを持ってきてくれた。味もなかなか、悪くない。

 

 

「良いお店だね。来て良かった」

 

「そ、そうだな…あのアトラクションの出口付近だったからすぐ寄ったけど、これは大当たりかもしれない」

 

 

 おすすめだからって頼んだこのハンバーガーだけど、ジューシーなお肉とピリ辛なスパイスが効いていて食欲をそそる。セットについてきたサラダやらドリンクも、ハンバーガーに合う味だ。

 ふと反対側を見てみると、ローリエが笑っている。

 

 

「なーに? あたしの顔になにかついてる?」

 

「えーとね、カワイイ笑顔、かな?」

 

「もー、なに言ってるのさ!」

 

 

 ローリエは付き合い始めてからというもの、あたしに可愛いとかなんとか誉め言葉をよく使うようになった。曰く「信頼を得るためにやってる」みたいなんだけど、それを言うなら付き合う前の身の振りも考えれば良かったのに。

 

 そんな事を考えていたその時―――カフェのガラス張りの大窓から、黒い煙が上がるのが見えた。それにやや遅れて小さく何かが破裂したような音が。

 あたしとローリエは、黒煙が上がる瞬間を見た途端、フォークとナイフを置いた。

 

 

「……あーあ、まったく。折角のデートが台無しだ」

 

「ほんとだよ。遊園地に爆発物持って来る人がいるなんてね」

 

 

 二人で席を立ち、カウンターへ向かう。あの爆発の規模からして、もうすぐここにも危険物爆発のアナウンスが流れるだろう。避難にごった返す前に、ここから去ることにした。会計も時間がないからか、ローリエが「釣りはいらない」と代金より多い金貨を渡していた。

 

 

「はぁ~、勿体ないことしちゃったな」

 

「それは、お金のこと?それとも食べ物?」

 

「どっちもだよ。食べ物と金の恨みはすさまじいんだぞ」

 

「そうだね。じゃあ、あの犯人たちにその恨みをぶつけに行かない?」

 

「怖えー怖えー。ま、俺も恨みが溜まってたところだ。下手なテロリストだったら後悔させてやる」

 

 

 怖いと言いながら思いっきり悪いこと考えているローリエの横顔を見て、苦笑いしながら、爆発が起こった現場へと二人で歩みを揃えて向かうことにした。

 

「さて、ここだな…」

 

 煙の出た場所に到着すると、そこは入場受付なんかがある、スタッフ達の事務局と思われる建物だった。黒い煙があがり、物々しい雰囲気になっている。

 これは、ほぼ確実にまぁ、無難にお金目的ってところかな。

 

「どうする?」

 

「正面突破がリスク高いから、こうして屋根から入ってきてるんでしょ?」

 

「まぁね」

 

 そう。あたし達は今、問題が起こった建物の屋根から既に侵入していて、通気口から室内の様子を伺っている。

 このまま通気口の金網を外せば、あたし達は室内に突入ができる。しかし………

 

 

「相手は?」

 

「10人。それなりに多いね」

 

「時間がかかる数だな……人質を背に戦いたくない」

 

 

 職員は皆犯人グループらしき人達に縛られている上に、犯人グループは皆武装している。無策で突っ込んでいい状況じゃない。幸い二人はお金をバッグに埋め込んでいる為か手には持ってないけど、大差はない。

 

 

「ローリエ、カブトムシは持ってきた?」

 

「そんなの持ってきてる訳ないだろ」

 

「そっか、残念。アレさえあれば即座に終わらせられたのに」

 

「G型とニトロアントが数匹ずつと二丁拳銃くらいしか持ってきてないからね。あと弾」

 

「……いや、十分だよ。随分と用意がいいね」

 

 

 ローリエはひょっとして、常に飛び道具と爆弾とおぞましい虫の偵察機を身に着けてるの? 明らかにデートに必要ない物の筈なのに、こういう非常事態で頼もしく見える分、なんか複雑な気分。

 最近作ったっていう超加速できるカブトムシさえあれば、一瞬のうちにあたしが敵を黙らせることが出来たんだけど、贅沢は言わないよ。

 

「G型を使って、詳しく偵察してよ」

 

「おっけー」

 

 ローリエが、通気口付近で虫の魔道具を起動する。

 虫がカサカサと通気口から天井を這うように進むと、ローリエの手持ちの端末に映像が映し出された。

 

「エントランス……この下が一番多いな。6人いる。うち二人が……いや、一人だけになったな、金詰め込むの。

 で、3人は通り側の入口の警備と衛兵への威嚇、残り1人が裏口を監視してるようだ」

 

「いつ突入する?」

 

「ニトロアントを爆破させる。テロリストを半数ぶっ飛ばしてから奇襲攻撃だ」

 

「弾、いくつ使う気?」

 

「12発だ」

 

 

 ローリエが左手をサムズアップにしてから、立てた親指をそのまま人差し指の付け根に倒す。そこに付いているスイッチを押すような動作は、ローリエを知るあたしにとっては、ゴーサインだった。

 

「「「「「ぐわあぁぁぁ!!?」」」」」

 

 通気口の金網を蹴破ってエントランスに突入すると同時に爆発に巻き込まれたテロリスト達と人質のみんなの悲鳴が反響した。

 驚かしてごめんね、人質の皆。必ず助けるからね。

 

「な、何なんだ今ノブハァ!!?

 

「おい、どうしたわば!!!?

 

「何が起こってるんダバス!?!?

 

 人体急所の顎や鳩尾を打ち抜いて、一人ずつ敵の意識を刈り取る。爆発で少なくとも3人は吹っ飛んだのを見たし、ローリエの発砲の音も聞こえるから、爆発に巻き込まれた奴はまず戦闘不能だろう。これで6人。エントランスの敵はあっという間に全滅だ。

 

「な、何事だ一体…!?」

 

 流石に表に出ていた3人も、異変を感じて室内に戻ってきたようだけど、反応が遅い。

 爆発で起きた土煙に紛れて一番反応が遅い奴に回り込んで、勢いがついた蹴りをお見舞いしてあげる。

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!!!!?」

 

「な、何だテメーは!!?」

 

「教えてあげるよ……全員叩きのめした後でね」

 

「このガキッ………!!?」

 

 

 逆上して剣を振り上げても遅い。

 すぐさま相手の懐に潜り込んで、金的と顎の2コンボを叩き込んだ。

 

「あ゛ッッッッ!?!? グボォ………」

 

 結果、振り上げた剣の重さでひっくり返って、男は泡を吹きながら倒れた。確実に意識を奪えたね、これで8人…あと2人だ。

 で、その残りなんだけど………

 

 

「う、う、動くんじゃあねぇぇぇぇ!!」

 

 

 やっぱり、こうなるか。

 2人は、未だ縛られているままのスタッフを人質にしてきたね。

 あたしとしては、誰一人死なせずに鎮圧したかったから、これはちょっとまずい事態だ。

 

 

「よ、よくも仲間を……! 武器を捨てろ! 人質を一人ずつ殺すぞ!!」

 

「下手に動いてみろ……後悔するぞ!!」

 

 

 よくありそうな三下じみた台詞だけど、効果はそれなりだ。

 人の命がかかっているんだ。たとえハッタリでも、あたしが八賢者で調停官である以上、下手を打つことはできない。あの2人が一般人に危害を加える前にあたしのスピードで無力化することは簡単だ。でもそれだと、その現場を見ている人質の皆に「八賢者は人質よりも敵の撃破を優先した」と思われかねない。

 

 まったく、上手くいかないもんだよ。このままじゃあ、あたしも武器を捨てて降参せざるを得ない。大ピンチだ――――――ローリエがいなかったら、ね。

 

 

「さぁ、とっとと服を脱いで―――わあああああ!!?」

 

「オイどうした、なんだってん―――ぎゃあああああああ!!!!?」

 

 

 突然、二人が悲鳴を上げた。武器を手放して、服の中に手を突っ込んだと思えば、何かを叩きつけた。

 ―――それは、ゴキブリだった………イヤ、ローリエのG型魔道具だった。でも、テロリスト達はそんな事知るよしもない。あたしでさえ、知らなかったら本物かと思うくらいそっくりだ。動きからツヤまで。………ちょっと気持ち悪いな。

 

 

「なん、なんで、ゴキブリがあああああああああああ!!!!」

 

「離れろっ、服の中に入ってくんなぁぁぁぁあああああああ!!!」

 

 

 もう、2人とも人質どころではない。

 突然降りかかり纏わりついたG型たちに恐慌状態で、その相手に必死になっていて、完全に隙だらけだ。

 

 

「ラッキー♪ 隙ありだね」

 

「しま…ガッ!!!?」

 

「そこだ」

 

「ギャアアアアアアアアアアア!!」

 

 

 あたしは、G型が生んだスキを突いて一人を蹴り上げて気絶させる。

 残りの一人は、ローリエの弾丸が彼の目を撃ち抜いていた。非殺傷弾だろうけど、痛そー。

 

「「セイヤアアアアアア!!!」」

 

「タコス!?!?!?!?!?!?」

 

 そうして、目を抑えて苦しむラスト一人を、ローリエとの息を合わせたダブルキックでKO。

 これで、占拠していた連中の完全制圧に成功したのだった。

 

 

「いやー。ゴキブリが偶然味方になってくれて良かったぜ。ツイてるー!」

 

「白々しい………」

 

 

 一般人たちに運が味方したみたいに聞こえるようにローリエは大きな独り言を言っていたけど、タネが割れてるあたしからすればわざと言ってるようにしか見えないよ。まぁ助かったから良いんだけどさ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「随分鎮圧が早かったから何事かと思えば……お二人がやってくださったんですね。ありがとうございます」

 

「礼には及ばないよ。あたし達はたまたまここにいただけなんだから」

 

 

 リュウグウランドに警備隊と一緒にやってきていたウミガメのウミに敵を全員引き渡し終えてから、お礼を言われる。あたし達からすれば、デートの邪魔されたからやったようなものだし、オフだったからそういう公式の謝礼を受け取る気はないよ。

 

 

「そうそう。俺らデート中にここに来てただけなんだって。お礼の品受け取ったらソラちゃんあたりに叱られそうだ」

 

「そうだったんですね。なら、そう言う事にしておきます。」

 

 

 「ありがとうございました!」と言って、ウミと警備隊は犯罪者たちを連行していった。

 ローリエもあたしも、戦いを終えてデートどころじゃあなくなったため、帰ることにした。

 

 

「いや〜、とんだ休日になっちゃったな」

 

「そうだね。まさか、テロリストと戦う事になるなんて。」

 

 

 仕方がないと言えば仕方ないけど、今度は2人きりでゆっくり過ごしたかったのにな。戦闘でのローリエのサポートは助かるけど、オフの日くらいは普通に過ごしたかったなー、と。

 そう思っていると、ローリエは急に肩を抱き寄せてきた。そして、こっちの目を見つめてくる。

 

 

「なに? ローリエ」

 

「…今度はトラブル無しの旅行が良いな。またどこか行こうぜ?」

 

「…約束だよ?」

 

 

 ローリエは、あたしの言葉に力強く頷いた。

 

 

「あぁ。約束だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♬MUSIC:気まぐれロマンティック/いきものがかり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あとがき
 カルダモンってTDリゾートで例えるとタワテラとかビックサンダーとかホーンテッドとか刺激の強い絶叫系大好きそうですよね。でもそういうのは積極的に言わずにさりげなくアピールしてきそう。
 書き続けてきた各キャラ特別編も終わりが見えてきました。最後の最後まで応援ありがとうございます。もう少しだけ、お付き合いをお願いします。

キャラ特別編人気投票:一番良かったストーリーは?

  • アルシーヴ編:プライド革命
  • ソラ編:君じゃなきゃダメみたい
  • アリサ編:我ら思う、故に我ら在り
  • ハッカ編:Lonely lullaby
  • ジンジャー編:September
  • きらら編:ふわふわ時間
  • セサミ編:Ture my heart
  • フェンネル編:フィクション
  • ソルト編:ヒトリゴト
  • カルダモン編:気まぐれロマンティック
  • シュガー編:白金ディスコ
  • ランプ編:恋するフォーチュンクッキー
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