きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
いつもよりも早く目がさめる。
鼻歌を歌いながら、クローゼットを開いて、そこにある服を見て、笑顔になる。
今日は、夜が待ち遠しい。
「おや、珍しいですね。シュガーが早起きなんて」
珍しいものでも見たかのようにソルトがシュガーに声をかける。
とーぜんだよっ! だって今日は……
「だって今日は、おまつりの日なんだもんっ!!」
今日は、何より楽しみなお祭りの日。おにーちゃん達との約束の日だ。
◆◇◆◇◆
「「お祭り(ですか)?」」
時は少々遡り、数日前。そうシュガーに聞き返すのは、かつて敵対した召喚士・きららと、同僚の八賢者の唯一の男・ローリエである。
「そう!」と元気よく返すのは、狐耳を生やしたフレンドリーな少女・シュガーである。
「それって、言ノ葉の都市で行われる……?」
「そーだよっ! そのおまつり! 今年もシュガーは楽しみにしてるんだよ!」
嬉しそうに耳をぴょこぴょこするシュガーに、ローリエは顔を綻ばせる。
「それで、話ってのは俺達をそのお祭りに誘おうって話か?」
「そう! いろんな屋台が並んで、楽しいと思うよ!
だからさ、一緒に行こうよ、おにーちゃん、おねーちゃん!!」
シュガーはこの祭りの日を楽しみにしていた。
都市の祭りは、一日だけの特別な日。見慣れぬ屋台や
今年も例に漏れず、市長ジンジャーの指揮のもと、祭りが行われるのである。
「はい! みんなで一緒に行きましょう!」
「当然だろ! 俺もあの祭りは大好きなんだ!」
「…!!」
無論、あらゆる絆を繋いでそれを大事にしているきららと、前世から日本古来の縁日やお祭りに触れているローリエが断るはずもない。
二人の気持ちの良いOKに、シュガーは嬉しさで飛び上がった。
「やった〜〜〜! ありがとう、二人とも!おまつりが楽しみだね!」
生まれてからずっと一緒の姉だけじゃなく、和解したお姉ちゃんと仲良しのお兄ちゃんの二人と一緒にお祭りに行ける。その楽しみな行事が、シュガーに数日間の活力を与えた。
シュガーはこの日の為に、ギリギリまでやらない宿題を稀に見る速さで終わらせることに成功し、当日は早起きする事も出来たのだ。
◆◇◆◇◆
今夜が楽しみでわくわくしていると、たまたまソルトが机に向かっているのが目に見えた。
こっそり覗き込んでみると、皆に出された宿題をやっていた。もうそろそろ終わりそうだけど……
「あれ、ソルト…宿題終わってなかったの~?」
「毎日コツコツとやっていたのです。昼までには終わるので大丈夫です。
シュガーはやりましたか?」
「もっちろん! 一気に終わらせちゃったもんねー!」
「…本当に珍しい。普段からそこまで頑張れれば良いのですが」
もう。終わったんだからいいじゃん!
お祭りの本番は夕方からだけど、やきそばとかわたあめはそれよりも前から出てやってるんだから、今から行かないと損なのに。ソルトはいっつもコツコツやるから、こーゆうおまつりの時に遊びに行けないのは損だよねー。
それじゃあ、ソルトは置いてって、シュガーはもう行っちゃおう!
「ソルト、シュガーはもう行っちゃうね?」
「もう、せっかちですねシュガーは。今行っても殆ど始まっていないでしょうに」
「いーの! それじゃ、集合はお昼に噴水前でいーい?」
「はいはい、分かりましたよ」
シュガーは、ソルトを置いて言ノ葉の都市に行くことにしたよ。
街は、もういっぱいの人でにぎわってた。
今夜おまつりがあるって知ってるから、皆今からでも楽しもうって思ってるんだね。
もう、皆こうなんだから、ソルトもさっさと宿題終わらせちゃえばいーのにね。
「おじさーん! わたあめ一個くださーい!」
「おや、お嬢ちゃん一人かい? 偉いね~、ちょっと待ってな」
早速開いているわたあめ屋さんに行って、早速わたあめを買いました。
おじさんがサービスでちょっと大きいわたあめをくれたのが嬉しかったなー!
そうして、わたあめやヨーヨー釣りを楽しんでいたら、あっという間に昼過ぎになっていたから、ひさしのあるベンチで焼きそばを食べながら休憩する。
「ソルトも来れば良かったのに……」
そうすれば、わたあめやらヨーヨー釣りやらがいっぱい楽しめたのに。
まぁ、この後シュガーはいったん戻って、着物に着替えないといけないんだけど、それでも十分楽しめたよ?
一人で回った屋台では、お店のおじさんやおばさんがサービスしてくれたけど……なんだろ。なんだか、楽しくなくなってきた。ソルトでも一緒にいれば、楽しくなってたかな?
「どうしたシュガー? 浮かない顔して」
「! ローリエおにーちゃん! どうしてここに?」
「祭りの警備ついでに見回ってたのさ。シュガーはどうしたんだ?」
「あのね……」
シュガーは話した。今日という日のために、宿題をぜんぶやったこと。まだ終わってない様子のソルトを置いていって、一人でおまつりに行ったこと。最初は楽しかったけど、後からつまらなくなったこと。
おにーちゃんは、シュガーの話を最後まで聞いてくれたあと、こう言った。
「まぁ、人間そんな日もあるものだ」
「そんな日?」
「ひとりでいたい日もあるってこと。でもな…そういうのって、後から寂しくなるものなのさ。誰かと一緒にいたくなる」
「そうなの?」
「あぁ。俺だってそうさ」
「おにーちゃんも?」
おにーちゃんが寂しがっている所なんて見た事ないよ? いっつも授業してて、ランプ達に囲まれて、一人でいてもカッコイイけどね。
「そうは見えないなぁ」
「まー人に見せるもんじゃあないからね」
むー。そう言われると、見たくなっちゃう。
おにーちゃんってなんでそうかくしたがるのさ!
「おにーちゃん、隠さなくってもいいんだよ!」
「いや、隠してるわけじゃあないんだけどさ……だってシュガー、子供だしねぇ」
「子供じゃないもん!」
「そう反論してる内はまだ子供だ。」
もー、子供じゃないって言ってるじゃん!
しかもそう言ったら「それが子供だ」って……どうすればいいのさ!
言いたいことはもっといろいろあったけど、夕方に備えて着物に着替えないといけないから、戻らないといけない。
シュガーはしょうがなく、「警備の続きだ」って言ったおにーちゃんと別れて、戻ることになった。
……あーあ、大人になりたいなぁ。
「シュガー、どうしたのです? 随分浮かない顔をしていますが」
帰ってきた時、ソルトからいきなりそんなことを聞かれた。
そんなにシュガーの顔が不機嫌に見えたのかな…?
ソルトは気になる事はぜったい確かめる性格だから、シュガーの悩みをちょっと聞いてもらおっと。
「…ソルト、大人になるにはどうすればいいのかな?」
「………あなた本当にどうしたのです? 熱でもあるんですか?」
「そんなわけないでしょ!! 失礼なんだから、ソルトは!」
本当に驚いたような顔をしたソルトに怒ったら、ソルトは「すみません」と軽く謝った後、
「そうですね~、まずは食べ物の好き嫌いをなくしてですね……」
「違うよ、そういうことじゃないの」
「? なら、どういうことなのです?」
うっ、な、なんて言えばいいんだろ。
おにーちゃんとの事を話したいけど、そのためにはシュガーが一人でおまつりに行った時に感じた、あのなんかよく分からない気持ちから話さないといけないんだけど………
どうやって説明すればいいのか分かんないよ。だってだって、シュガー自身にも分からないものを、ソルトにどうやって説明すればいいのかな?
「………シュガー?」
着物にきがえて、これから楽しいおまつりに出かける時になっても、答えはわからなかった。
◇◇◇◇◇
やがて、約束の時間になって、太陽が地平線に沈んでいく時間帯。
ソルトときららおねーちゃんとローリエおにーちゃんと会っても分からなかった。
分からなかったけど………
「おねーちゃん! おにーちゃん! 今日はいっぱい遊ぼうね!!」
「はい! いっぱい遊びましょう!」
「シュガーとソルトが行きたいトコから行こうぜ」
「さっきまで考え込んでいたのは何だったのですか……」
おにーちゃん達ふたりの顔をみた瞬間、おまつりを楽しみたくなっちゃった!
おにーちゃんがシュガー達の行きたい場所から行きたいって言うから遠慮なく言っちゃおう!
えーっとね、まずは……
「金魚すくい!」「型抜きが良いです」
「「……………」」
うわー!! こんなときにソルトと意見が割れたー!!
でも、ちゃんとふたつとも連れてってくれた。他にも、色んな所にみんなで行ったよ。
「わーん!外れた!」
「どれだシュガー。俺が当ててやる」
「ほんと!? あそこに立ってるやつなんだけど」
「ほい」
「「「一発で取ったーーーー!!?」」」
射的に行って、シュガーのほしかった景品をおにーちゃんが代わりに当ててくれたり。
「きららちゃん、ちょっとこれ被って『俺は人間をやめるぞ』って言ってもらってもいい?」
「え? えっと……こうして…お、おれはにんげんをやめるぞー! ………これでいいですか?」
「完璧!」
「何が完璧なんですか」
「ていうか、これなに?」
「石仮面のレプリカ。本物は被ったら吸血鬼になれる」
お面屋さんに行って、おまつりのお面を買ったり、石仮面みたいなヘンな仮面を眺めたり。
「やったー!3匹目!!」
「しゅ、シュガー……ローリエが…!」
「オイィィィィィ!!あんちゃん、勘弁してくれ!!!」
「そうですよ!いくら何でも取りすぎです!!」
「大丈夫。後でみんな返すから」
金魚すくいに行ったり。シュガーは5匹すくえたよ!
ちなみにだけど、おにーちゃんは水槽にいた殆どの金魚をすくってた。流石にぜんぶ持って帰れないから最後返してたけど、あれすごかった。どうやるんだろう。
いやー、楽しかった! あとは皆で花火を見るだけだね!
「………って、あれ?」
周りを見渡すと、気づけば誰もいなくなっていた。
ソルトも、きららおねーちゃんも、ローリエおにーちゃんも、見えなくなっている。
これって、まさか……はぐれちゃった!!?
「ど、どうしよう………!!」
朝やお昼に比べて人がいっぱいいるから、はげしくなった人波でみんなバラバラになっちゃったんだ!
本当にどうしよう……1回みんなで行ったところ探してみる? それとも、シュガーが見つかりやすいところに行った方が良いかなぁ?
え、えーと………こういう時は……
「今まで行ったお店の人に聞いてみよう…!」
「お嬢ちゃんの連れ? いや、見てねぇなぁ。」
「ゴメンね、お客さんいっぱいいたから、覚えてないわ。」
「嬢ちゃん、そう言う時はあらかじめ集合場所を決めておけば良いんだよ!」
「ジンジャー様のいる本部に行った方が良いと思うよ?」
う、うぅ……ダメだった。全然見つからない。
そうだよね、お店の人だって暇じゃないから、ソルト達を見かけても覚えてないって……。
どうすればいいんだろう? 確かにジンジャーのところへ行けばきっと力になってくれると思うけど、迷子のお知らせを流されるのは……ソルトになんて言われるかわかんないし、大人になりたいのにこんな子供みたいな解決方法はいやだ。
こうなったら、シュガーだけでなんとかしなきゃ! それをやってこその「大人」じゃんか!
「………」
そうやって意気こんで探したけど……やっぱり見つからない。
みんな、どこにいるのかな? もしかして、もう先に帰っちゃったのかな?
……やっぱり心細いよ、ソルト、おねーちゃん、おにーちゃん。
「シュガー!!!」
「!!?」
突然、名前を呼ばれた。
振り返った先にいたのは……
「お、おにーちゃん……!」
「探したぞ!! みんな心配してたんだ!
………怪我とか、具合悪いとか、なかったか?」
息を切らしながらそう聞いてきたおにーちゃんに、シュガーは、もう、限界だった。
「おにーちゃぁぁぁぁぁあああああん!!! うわああああああああ!!」
「!! よ、よしよし……もう大丈夫だからな」
寂しかった。辛かった。一人ぼっちはいやだよ。
その思いを、おにーちゃんはその時はただ受け止めて、抱きしめて、頭を撫でてくれた。
◇◆◇◆◇
シュガーが泣き止んだ後、ローリエは通信機できららとソルトに連絡しようとする。
しかし、シュガーはそれを袖を引っ張って止める。
「シュガー……?」
「もうちょっと…おにーちゃんと一緒にいたい」
ローリエはため息をついて、「後が大変になるぞ」と尋ねる。
彼はきららとソルトがシュガーを必死に探していたことを知っている。ローリエはきららに通信機を持たせて、ソルト・きららと別れて探していたのだ。連絡が遅れるということは、きららとソルトを心配させる時間を延ばすことを意味している。
「………集合場所に行くぞ」
ローリエは、2人に申し訳ないと連絡は入れないまま、あらかじめきらら達と決めていた合流場所である言ノ葉の樹の入口へ行くことに決めた。シュガーも、その案を呑んだのであった。
目的地について、2人でベンチ代わりの窪みに座った時、夜空にぱっと咲いた光の花に気付いた。
「あ、あれ……!」
「おぉ、花火だ。良いタイミングだったな」
そして、その花を皮切りに次々と花火が上がる。
シュガーとローリエは、派手に咲いては夜空に消える、光輝く花火に釘付けになった。
「おにーちゃん…」
「?」
シュガーが、おもむろに小さな体を隣に座るローリエに寄りかける。
「今日はありがと……おにーちゃん。好きだよ。大好き」
舟を漕ぎながらのその言葉。
受け取りようによっては告白にも聞こえるそれに、ローリエはいくばくか、沈黙を貫き。
「シュガー……お前はまだ子供だ。俺よりもイイ男に会う機会ならいくらでもある」
それは、告白に対する「NO」だった。
しかしシュガーは、ローリエの答えに何も文句は言わなかった。
何故なら―――
「―――5年だ。5年後にここで同じことを言ってくれたなら、俺も本気で考えるよ」
まどろみながらもシュガーは、その後の言葉を聞き逃さなかったから。
あとがき
というわけで、シュガー編でした。テーマ曲はあらかじめ決めていましたよ。決して中の人ネタではないからね!
ローリエの最後の台詞は、絶対に言わせたかった言葉です。
子供相手ならではの、ローリエの口説き文句です。まぁ、ローリエは子供を口説くことはありませんけど。最後の台詞も、シュガーには聞こえてないだろうと思って言ったのもですからね。
さて、あとはあの子だけだね。誰だか分かりますか? 予想しながら待っていてくださいね。それでは。
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