きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
いやー、2部の4章驚きでしたね。骨のある奴も出てきたし、中々敵を追い詰められないし、先行きが不安です。まぁ、拙作ではリアリスト達を余裕で超える実力の持ち主をもう数人出しちゃったからそっちはそっちで不安なんだけどネ。
さて、遂に書きたかったお話………言ってしまえば裏ボス戦の投稿です。そして、これにて『きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者』の連載は終了となります。今までありがとうございました。
それでは、最後の物語をお楽しみください。どうぞ。
それは、ある一言から始まった。
「きららとローリエって、どっちが強いのかな?」
昼食中に集まった中での、マッチの何気ないひとことに即答するものが二人いた。
「そりゃあもちろん、きららさんでしょう」
「おそらく、ローリエ先生の方が強いと思います」
瞬間、視線をぶつける2人。
一人はランプ。“ドリアーテ事件”できららと出会って以降、彼女と行動を共にした、女神候補生だ。
もう一人はアリサ。こちらも、ドリアーテの事件の重要関係者になって以降、ローリエと共に真犯人の一味と戦った呪術師で、現女神候補生である。
「きららさんは、他の八賢者やアルシーヴ先生とも戦ったんですよ? 強いに決まっているじゃないですか」
「ローリエ先生はドリアーテの刺客を何人も倒してるし、ナットさんやドリアーテ相手に生き延びてる。ローリエ先生の方が強いと思うな」
「ナットさんやドリアーテなら、きららさんも戦っています」
「ローリエ先生も、一人で盗賊団を壊滅させたり暗殺者を倒したりしてますよ」
立ち上がって静かに睨み合う二人。ランプはきららを、アリサはローリエを推して譲らない。
「お、おい!やめないか! 僕はちょっと思っただけだぞ?どっちでもいいじゃあないか!」
「「よくありません!!」」
マッチが止めようとするも、逆効果。二人にぴしゃりと黙らされてしまった。
ここまで譲らないのは二人とも、ひとえにお互いの友人や師の実力を知っており、尊敬しているからである。
とはいえ、こんな議論は到底意味があるとはいえない。お互いがぶつかった事がない以上、過去に基づいた想像で語るしかないのだから。
埒が明かなくなったと踏んだマッチは、ある提案をした。
「そんなに気になるなら、試合でもなんでもさせればいいじゃあないか」
「「それです!!!」」
昼食中にも関わらず、手を付けた料理をほっぽってローリエときららを探しに行ったアリサとランプ。はっきり言ってお行儀が悪い。
「……ごめん、きらら、ローリエ……多分、二人が迷惑かけると思う……」
一匹取り残されたマッチは、これから巻き込まれるであろう二人に対して、ただ虚空に謝ることしか出来なかった。
◇◆◇◆◇
ある日、お昼ご飯の真っ最中にアリサに「ちょっと来てください」と言われて無理やり神殿前に連れてこられた。理由も言ってくれないため、理解不能だった。「いつもは落ち着きがある奴なのに、珍しい奴」と思う余裕もなかったかもしれん。
連れられた神殿前では、ランプに手を引かれたきららちゃんが頭上にハテナマークを浮かべまくっていた。彼女もまた、連れてこられたのだろうか?
「おう、きららちゃん」
「ローリエさん」
「…何か聞いてる?」
「いいえ、何も………」
「先生、きららさん。ここに連れてきたのにはお願いがありまして…」
「「お願い???」」
「お二人のどっちが強いかを私達に見せて欲しいんです! その為に、是非戦ってほしいんです!!」
ランプが俺達を連れて来てまで何を頼むかと思ったところ、そんな事を言って頭を下げてきた。ランプの隣でアリサも何故か「お願いします」と頭を下げている。
……ちょっと何言ってるか分からない。何言ってるか分からな過ぎてナニイッテルカワカリマセン共和国が生まれそう。
「……どう言う事なの?」
「実はですね…」
当事者(?)が混乱中の中、きららちゃんがかろうじて訳を聞くと、アリサは話してくれた。
何でも、先の事件で活躍した俺ときららちゃんの実力がどれほどのものかが知りたいらしく、どっちが強いかという議論になったらしい。その為に俺らは連れて来られたというワケだ。
俺は、しょうもなさすぎる理由で口論したという生徒二人に、はっきり言うことにした。
「ランプ、アリサ。正直に言わせてもらうよ?
……ぶっちゃけ、俺もきららちゃんも、君達の議論に付き合って戦う理由も義理もないと思うよ」
「「うっ…」」
「まぁ……もし、きららちゃんがどうしてもって言うなら、俺はきららちゃんとひと試合するのもやぶさかじゃあないけど」
そう言ってきららちゃんを見る。
俺と同じで未だ状況が飲み込めてないようで、ずっと黙ったままだ。考え込んでいるのか?
「え、えっと………ローリエさんに迷惑かかっちゃうよ…」
「え?きららちゃん、俺の話聞いてた? 君が嫌ならやらないって意味で言ったのよ、俺」
「良いんですか? そちらこそ、ランプの頼みとはいえ、急にこんな迷惑なこと……」
「迷惑とは言ってない。ただ、きららちゃんの都合があるだろってだけで」
「いえ、ローリエさんが…」
「だから、きららちゃんが…」
「「「「………」」」」
俺としてはきららちゃんの意思を尊重したつもりだったのに、きららちゃんまで気を遣ってきたことで、なんかお互いで遠慮しあう変な感じになってしまった。
ランプとアリサは、この様子を見て「双方合意で良いですね」とか言い出しおった。コイツら読解力ねーな。戦いが終わったら、2人に居残り講義を受けさせてやる。科目は当然、国語だ。
子供とは時に残酷なもので、この事をアルシーヴちゃんとソラちゃんに報告しおったせいで、なんか試合が組まれる事になってしまった。「戦う準備ができる」点では公平だけど、本当に良いのだろうか。
いちおう、きららちゃんに聞いてみたけど、「いきさつはとても急でしたけど、やるからには勝ちに行きますから、お互い頑張りましょう!」って言ってきた。良い子すぎない?それでいいのか召喚士。
まぁ、きららちゃんが良いと言うなら、俺にも異存はない。『きららファンタジア』の主人公と戦える機会なんてそうそうない。俺も
◇◇◇◇◇
試合は、ランプとアリサが俺らを引っ張ってきた日から1週間後に行われることとなった。
ルールは単純。決定打を打ち込んだ方の勝ち。武器を脳天や首、心臓等の急所に突きつければいい。拳銃の場合は、銃口を急所につければいいとのこと。当然、命に関わる攻撃は禁止。これによって、俺の銃の弾丸がぷにぷに石弾以外使用不可能になる上に武器がいくつか制限されるが問題ない。
試合は、神殿近くに急増された会場で行うことになった。このときの試合会場を建設するにあたって、神殿の森の奥に作ってあった俺の射撃場が会場に魔改造された。泣きそう。
まぁそんななんだかんだがあって、俺ときららちゃんが戦う時がついに来た。
「きららちゃん、魔力の貯蔵は十分か?」
「はい!もちろんです!」
「開始は、打ち上げたコインが地面についた瞬間からとします。両者、準備はよろしいですね?」
セサミの確認に揃って頷く。
「それでは………参ります!」
キィィィン、とコインを弾く音が、森のさざめき以外の音がしなくなった試合会場に響く。コインが回転しながら高く上がり……そこから、高度を落としていって………やがて、地面に、落ちた。
―――と同時に、俺達は行動を起こした。
きららちゃんは即『コール』を使用し、クリエメイトを呼び出すつもりでいる。
俺もまた、初手を打つ。それは、マントを翻すこと。それと同時に、何かが散らばり。そして―――
「うわぁぁぁ!またあのゴキっ……!」
「うわっ…初っ端からアレか…」
「容赦ありませんわね、ローリエ……」
その何か―――G型魔導具は、群れとなってきららちゃんと呼び出されそうになったクリエメイトに襲いかかった。
きららちゃんが立っていた場所とクリエメイト達を旋回して囲い込むG型の群れ。だが、悲鳴は一切聞こえない。それは羽音のせいか否か……だが、俺はもう次の攻撃に移行していた。
G型の群れのど真ん中……きららちゃんが立っていると思われる位置に『パイソン』で発砲。
だがその直後、G型の竜巻の上から飛び出す影があった。
きららちゃんだ。全身にほんのり赤いオーラを纏い、クリエメイト2人……ひでりくんと宮ちゃんと手を繋ぎ、さっきの銃撃を避けたようだ。
「やるね」
「そっちこそ…!」
どちらも、お互いの行動を見抜いていた。きららちゃんは、俺のG型攻撃に対して、G耐性の高い宮ちゃんとひでりくんを『コール』したのだ。俺はそれを見越して二人の弱点の月属性魔法弾を放ったんだが……
飛び上がったきららちゃんは、ひでりくんと宮ちゃんを帰し、新たなクリエメイト召喚を詠唱しながら、俺に向かって杖を振り下ろしてくる。
「はぁぁぁぁっ!」
彼女が向かってくるのを確認して、俺は空いている手でサイレンサーを抜刀した。襲ってきた杖の一振りを、その銅剣で受け止める。
……重い。ただの少女の腕力ではあり得ない、ジンジャーの軽い一振りでも相手にしているかのようだ。きららちゃんがまとっているオーラ……おそらく、身体強化だろう。
「えいやぁぁぁ!」
「!!」
鍔迫り合いをしていると、すぐそばから第三者の声が聞こえた。
反射的に杖の押してくる力を利用して距離を離れると、剣が空ぶった。
俺は、さっきのやや気の抜けたあやねるボイスを知っていた。そして、それが今俺ときららちゃんの鍔迫り合いの途中で攻撃をしてきた人なんだろうなと、なんとなく察していた。
「ココア……」
一週間の間に、ごちうさキャラの『コール』も可能にしていたのか。
俺は、きららちゃんとココアちゃんの2人から目を逸らさずに、周囲の気配にも気を配る。
「! 魔法ッ!! そこか!」
光り輝く魔法が飛んできた。それらを捌きながら反撃で一発撃つと、弾が金属に弾かれたような音がした。
………2人だな。魔法を撃ってきた子と、俺の弾を弾いた子。いちおう、それぞれが誰だかもおおよそ予想がついている。
「いきます!」
「かかってこいッッ!!」
身体強化のかかったきららちゃんとせんしのココアちゃんが同時に接近してきた。
きららちゃんは杖を、ココアちゃんは剣を舞わせ、それぞれの武器が襲い掛かってくる。
サイレンサーで太刀打ちし、パイソンで牽制するが……
「はっ!」
「てやーーー!」
「ぬっ!? ぐっ…」
やはり、2対1なのが向かい風になっているせいか、ドンドン押されて行っている。
様々な敵と戦ってきた事が伺える、きららちゃんのフェイント混じりの杖の舞。
せんしのクラススキルを併用しているのか、振るう度に威力が増していくココアちゃんの剣の舞。
どっちか片方だけなら、あるいは善戦できたのかもしれないが、流石に同時相手はキツイ。剣一本じゃあいなすのにも限界があるし、弾幕を放とうにも……
「うおおおっ!!」
「リゼちゃん!」
「防御は任せろ!」
「ありがとうございます、リゼさん!」
……と、ナイトのクラスを持つクリエメイト・
「はぁぁ!」
「うおおおお!!? あっぶね!?」
更には、遠距離からまほうつかいとなった
これで実質4対1。戦いにおいて、数の利を簡単に覆すことができるのだ、『コール』は。落ち着いて息を整える暇さえない。
きららちゃんが強い訳だ。しかも俺とタメ張れる八賢者全員と戦ってきたんだろ? 強いに決まっている。
まぁ―――だからといって、大人しくこのまま負けてやる義理なんてないがな!!
ドグォォォォ!!
「きゃああああ!!?」
「ふおおおおおお!!?」
「これは…爆発!!?」
突如、きららちゃん・ココアちゃん・リゼの前衛組の足元が爆発した。それと同時に、土煙があたりに巻き起こる。
リゼちゃんの言う通り、コレは爆弾による爆発だ。最初に展開したのはG型だけじゃあない。ニトロアントもまた、地面に隠れスタンバっていたのだ。G型の嵐に襲われていたきららちゃんには、見えなかったようだけど。
俺はその爆発で起こった土煙の中で静かに息を整え、弾を補充する。視界が一時的に悪くなった今、味方へ攻撃が当たるのを恐れてチノちゃんは魔法を撃てない。だから、『パイソン』の照準をチノちゃんの方向へ向ける。
俺の目からはチノちゃんは見えないが、ルーンドローンが上空から彼女の場所を教えてくれた。まほうつかいは厄介だから、先に撤退させておきたい。
「チノ!……させるか!」
そのまま俺は、光る弾丸を放った。
チノちゃんに弾丸が当たる前に、リゼが射線上に立ち塞がり。そのまま、盾で弾丸を弾こうとして。
「ぐああっ!!?」
「リゼさん!!!?」
弾こうとして失敗したのか、リゼの全身がブレ、姿勢が崩れてゴロゴロ転がっていった。
カラクリは今俺の放った弾丸にある。ドリアーテとの戦いで奴のありとあらゆる魔力を封じた『真・天衣無縫の魔弾』だ。コレを試合用に調整した弾である。名付けるなら『至高の魔弾』といったところか。
試合用に調整した弾と言ったが、それでも、受けた人物は残り体力の9割を持っていかれるという凶悪な性能を持つ。誰であろうと一発でも受けたらひとたまりもない。
本当はきららちゃん本人に1発目を撃ち込みたかったが、ここで押し切られたら元も子もない。チノちゃんを狙ったのも、リゼに庇わせるためだ。その為にわざわざリゼに気付かれる位置で撃った。本当はこんなことしたくないが、今は真剣勝負中だ。後で埋め合わせをさせて欲しい。マジで。
リゼが満身創痍になったのを確認して、俺は……弾倉を三つ回転させて、そのまま真後ろに向かって発砲した。
「うわああああっ!!?」
「ココアさん!!」
ノールックで撃った火炎弾は……後ろから迫ってきていたココアちゃんに命中。炎のエフェクトを纏いながら吹っ飛んでいった。
さっきのやりとりの間に、ココアちゃんが俺の後ろから来ていた事は確認済みだ。ルーンドローンのカメラに抜かりはない。
「!!」
ない―――はずだった。
真横の土煙から突然現れたきららちゃんには、全く気付かなかった。
俺にぶつかる直前の振り下ろされた杖は……回避が間に合わない!!
「ぐううう―――っ」
「うっ……」
避けられないならばときららちゃんに撃った弾が、脇腹を掠っていくのがスローモーションで見えた。
それと同時に、左腕に激痛が走り、思わずパイソンを落としそうになる。
きららちゃん容赦なさすぎ………
「はぁ……はぁ……」
「ふぅー………」
すぐに回復魔法を剣を持った右手で使うが、時間がないから気休めでしかない。
左手が回復するまで、銃を撃てないため、パイソンを落とす前にホルスターにしまった。
しかし、なぜルーンドローンの監視網をかいくぐることができたのか………いや、違うな。
「ドローン何機か撃ち落としたな」
「………えぇ、まぁ」
肩で息をしながらそう答えるきららちゃんは、いつもの温厚な雰囲気はどこへやら、真剣な眼差しでこちらを見ていた。
あぁ、こりゃあ容赦なくなるわ。だって、本気で挑んでいるんだもの。
今まで手を抜いてたワケでは断じてないが、レディーファーストとか言ってる場合じゃない。俺は、その瞳の奥に垣間見えた闘志の炎を前に、彼女の本気に答えたくなった。
故に―――使える手は使わせて貰うぞ…!
【Start Up】
「!! しまっ―――」
赤いカブトムシ『ソニックビートル』を起動して、超高速の世界に突入する。
HPが大ピンチのリゼの懐に一閃。続いてココアちゃんにも数回斬撃を入れた。
超高速の俺にまるで対応できず、煙に巻かれてダメージ超過で消えていく2人をよそに、チノちゃんの真後ろに回り込んだ。
【3…2…1……Time Over】
「でやぁああああ!」
「ううっ!?」
「チノさん!!」
そして、時間切れを通知する音声と同時に、魔法封じの剣でチノちゃんに攻撃した。
さすがにワンパンはできなかったが、これで彼女はしばらく通常攻撃の魔法すら出せない。
「勝たせてもらうぞ、きららッ!!!」
「私も…負けませんよ、ローリエさんっ!!!」
感覚が戻り、痺れが取れ始めた左手の指を鳴らすと、上空のルーンドローンが一斉に砲撃を始めたのだ。そして、ドローンの砲撃の雨を縫うように突貫する。
次の『コール』で誰を呼び出すのかは知らないけど、きららちゃんも何人も呼び出していたら辛いはずだ。ゲームでは助っ人含めて6人。この戦いが始まってから確認したのは宮ちゃん、ひでりくん、ココアちゃん、チノちゃん、リゼの5人。きららちゃんにどれだけ余力が残ってるか知らないけど、あと10人くらいはフルで戦えるとかはないと思いたい。
「『コール』…、っ!!」
「ちっ、召喚に間に合わなかったか」
きららちゃんは、ルーンドローンの砲撃前にチノちゃんを帰していたようだ。だが、それと新たな詠唱、そして回避は同時には出来なかったようで、身体のところどころにレーザー痕がつき、煤けていた。しかし、それでも『コール』を発動させたのだ。
上空に魔法陣が現れ、その2つからクリエメイトが現れる。そして、それもやはり俺の知る作品から来たキャラだった。
「くらえぇ〜!」
「いつも隣に!九条カレンデース!」
呼び出されたのは、アルケミストの斉藤恵那ちゃんと、せんしのカレンちゃんだ。
恵那ちゃんは、呼び出されて早速フラスコのデバフ薬品を投げてきた。受けるダメージは度外視で、俺の弱点を突きに来たか。だが……
「月属性は食らってやれないな」
【SASUKE Invisible】
「「!!?」」
バッタ型魔道具『サスケ』の効果を発動し、光学迷彩で2人の視界から消える。
呼び出されたクリエメイトは動揺したが、きららちゃんは至って冷静だ。
「大丈夫! 姿が見えないだけです。まだ、2人の目の前にいます!」
まぁ、予想通りってところか。きららちゃん
きららちゃんは、パスで人を見分けることが出来る。初見でソルトの変身を見破れる程には正確だ。そんな彼女の前では、ただ姿を消す魔道具は無意味に見えるだろう。
だが―――クリエメイトはそうではない。パスで探知できるのはきららちゃんだけだ。そこを狙う。
陽属性の戦士特化型魔法弾がパイソンに入っていることを確認して、カレンちゃんに斬りかかる。
単純に真っすぐ攻撃しているのだが、それに気付いているのはきららちゃん本人だけだ。カレンちゃんも恵那ちゃんも、全く気付かない。
こんな状況で「正面から攻撃!防御してください!」と言ったところで間に合うわけがない。ならば、どうするか。
「―――ぐっ!」
きららちゃん本人が、カレンちゃんの前に立って受けるしかないよな。
距離があって駆け付けるのが遅れたためか、彼女はずいぶん無理な姿勢で俺の剣を受けていた。当然、力など入る筈もなく、今なら簡単に押し勝てる。
「カ、レン、さん…銃口が、そっちに」
「オラァ!!」
「うわああああああ!!?」
「キララ!?」
きららちゃんを押しのけ、カレンちゃんに特攻弾を撃ち込んだ。
「ア―――――――――――――ウチ!?!?!?!?」
月属性せんし対策の陽属性魔法弾は、たった一発であっけなくカレンちゃんのHPを全損させたようで、カレンちゃんは悲鳴をあげながら煙と共に撤退していった。
きららちゃんの限界が近いからか、恵那ちゃんも姿が維持できなくなって、煙をあげて消えてしまったみたいだ。
「うぅ……」
きららちゃんは、まだ諦めていないようで、俺を見る目から闘志は消えていなかった。でも、身体の方がダメージの魔力の消耗についてこれなかったのか、簡単に立ち上がることもできない様子だ。
あとは、俺が銃口か剣を急所に突きつければ勝ちだ。確かに彼女は主人公で、色々な困難を乗り越えてきたのだろうが、俺も俺で魔道具やクリエメイトの属性相性を最大限に利用し、俺自身も磨き上げたものがある。今回は、ちょっと競り勝ったんだ、などと思い近づいていると。
「まだ………まだ!!!」
きららちゃんの杖が光り輝いた。
そして、その現象の意味が分かった瞬間、見上げた魔法陣から出てきた
―――瞬間的に、腕に返ってくる衝撃が今までで一番重いと確信した。
次いで視界に入ってきたのは………金のボタンとワッペン型勲章が目立つ真っ黒な軍服と軍帽。俺の剣を受け止めた、美術的な鍔が目立つサーベル式軍刀。そして………それらを絶妙に着こなした、うっすらヒゲが特徴的な、
「……フッ、間一髪、といったところか」
「な………!!?」
俺は……その男性を知っていた。そして、この
だが…だが! こんなことってあるのか?『コール』って、こんなこともできるのか!?
「
そう。
俺は、クリエメイトの中で何人か警戒していた人がいたが……この人が来るなんて完全に予想外だ! しかも彼は―――
「はぁぁぁっ!」
すぐさま、鍔迫り合いをキャンセルして距離を取り発砲。しかし。
「ほう。筋は良いようだ」
タカヒロさんは、それをあっさりと避けた。
プロは銃口を向けた相手の目だけでどこに撃つか分かり、射線を予測して躱せるって聞いたことあるけど、まさかそれか!?
近づいてくるタカヒロさんに斬りこみたいが、下手な攻撃はカウンターを招く。どうしたものか―――
「呆ける暇があるのか?」
「うっ―――!」
いや、攻撃しなくても、どの道あっちから攻めてくる!
剣と剣がぶつかりあう金属音がこの場に鳴り響き始める。
タカヒロさんの太刀筋は素早く、そして重い。まったく目で追えないから、殺気で先読みするしかない!
「なっ―――」
だが、それも長くは続かなかった。
殺気がくる方向を予測して……振りかぶっての縦切りを読んだはずなのに、軍刀が真横から来ている!!
「ぐおおおおおぉぉぉぉ!!?」
横からの一太刀を、思いっきり食らって転がり込んだ。
そこに、追いかけてくるタカヒロさんが見える!
「おおおおおおおっ!」
「でやああああああああああああああああああッ!!!」
立ち上がることもできず、再び剣戟にもつれ込まれた。これはマズい。一旦ニトロアントで爆破させて、仕切り直しに持ち込みたい。
声を張り上げて、必死に、かつ冷静に剣を振り回すことで、かろうじてもう一撃は受けていないが………
「―――む!」
「なっ―――」
だが、爆破する直前でタカヒロさんは、飛び上がって俺との距離をとった。
それによって、直後に巻き起こった爆発の範囲から逃れることに成功していた。
「……ホントに元・軍の交渉役か? メッチャ強いじゃんかよ」
「…敵地に一人で赴くのもまた交渉役だ。いざという時、敵に囲まれても尚、生還できるほどの強さがなければ務まらんさ」
「なるほど」
タカヒロさんの言い分に一理あると思いながらも、立ち上がった俺は状況を考えた。
きららちゃんはもうほとんど動けない。だが、彼女は最後の力を振り絞りタカヒロさんを『コール』した。
全力なら兎も角、俺も消耗してるこの状態でタカヒロさんと真っ向勝負は分が悪すぎる。
なんとか彼を突破してきららちゃんの元へ行きたいところだけど……ソニックビートルのクールタイムが終われば勝ちの目があるが……
そう思って手を突っ込んだときに気付いた。
―――ない。
「…お探しのものはこれかな?」
「あっ―――!!!」
声をかけてきたタカヒロさんの手には、俺が持っているはずのソニックビートルがあった。彼はそのまま、ソニックビートルをきららちゃんの座る位置の真後ろまで放り投げる。
いつ抜き取ったんだあの人。まったく気づかなかったぞ………
「ココアくんとリゼくんを破ったスピードは見せてもらった。アレ相手は私も骨が折れるからね」
「骨が折れる程度かよ……つーか、娘さんいるのにそんなことしていいワケ?」
「フフ…確かにチノにはあまり見せられないな。だから―――手っ取り早く終わらせよう」
タカヒロさんがじりじりと歩き始めた。マジで終わらせる気だ。
俺も、最後の一撃をお見舞いして、きららちゃんとの戦いを終わらせる気概でいかないといけない。
だから、俺はサイレンサーを放り、パイソンの銃口を空へと向けた。
「
「!!」
そして、引き金を引く。
撃ちあがった紫色の弾は、途中で16発のホーミング弾になり、タカヒロさんに襲い掛かる。
男二人は、同時に駆け出した。俺は、きららちゃん目がけて。タカヒロさんは、間違いなく俺に向かって。
お互いが、距離の縮めていく。最初の一太刀だけを避けるんだ!そこで、アレを叩き込む!
「ハァッ!」
振るわれた軍刀。俺は全く見えないそれを、大ジャンプで躱した。
「!?」
タカヒロさんは、躱した俺の位置をすぐに探し当て、上を向いた。
このままでは着地を狙われるが、今度はこっちの全力攻撃だ。
ここで俺は、今の今まで隠していた武器―――ショットガン・アイリスを構え、すぐに分身機能を使い。
「
メタルジャケット・フルファイア(試合版)をぶちかまし、ぷにぷに石弾の雨を注ぎ込んだ。
立ち上がる煙の先を見ている時間はない。着地した俺は、すぐさまきららちゃんの方へ走り出し……
そして、両膝をついて、杖で身体を支えながら荒い息をするきららちゃんを確認する。そして―――
「―――くると、おもってました」
きららちゃんの手から放たれた魔法の光に気付いた。
なるほど、タカヒロさんに引きつけて、文字通り最後の魔法弾で仕留める気だったのか!
確かに、もう俺に余裕はない。かわしたり、食らったりしたらタカヒロさんに追い付かれて敗北決定だ。
だが―――!
「俺の方も、予想通り―――!」
俺は『リフレクタービット』を持って、きららちゃんの魔法弾を跳ね返そうとする―――
「ぐ―――!」
―――が、予想以上に身体のダメージが響き、手元がブレた結果、リフレクタービットを落とし、魔法弾はあさっての方向へ飛んで行った。
だが問題ない。足の動きは止めてない!そして、このまま―――!!!
会場の誰もが、息を忘れていた。
そう言うくらいの静寂に包まれた試合会場の真ん中で。
俺は……確信していた。
「……参りました、ローリエさん」
きららちゃんの頭に、パイソンの銃口を当てた感覚と―――
「参りました、ね………
そりゃ俺の台詞だよ、きららちゃん。だってこの銃、
俺の首筋に、軍刀の峰が当たる感覚を。
わあああああああと、一拍おいて歓声が響くと同時に疲れ切った体が倒れ、それを確認したようにきららちゃんも倒れた。
「はぁぁぁぁ、きららちゃん強すぎ。もう動けんわコレ」
「えと、ローリエさんも強かったですよ? タカヒロさんを『コール』できなければ負けてました」
「あ!そうタカヒロさんよ!なんで『コール』できたのさ!?」
「わかりません……負けたくないって思って無我夢中でコールしたので……気が付いたら、って感じで」
「なーんじゃそりゃ」
「あははは」
体力も魔力も出し尽くした俺達は、見上げた青空の様に晴れやかに笑っていた。
◇◇◇◇◇
―――それからの話をしよう。
まず、ランプとアリサについてだ。
俺ときららちゃんの熱戦・烈戦・超激戦を見て満足したのか帰ろうとしたが、俺は日を跨いでも二人を逃がさなかった。戦う前に決めたことを有言実行し、徹夜で作った国語のプリントを押し付けてやったのだ。やりたくないと言っていたが、そうなったらそうなったであいつらがラビットハウスの特別期間メニューが食べられなくなるだけだから問題ない。
あと、俺VSきららちゃんを見ていた他の賢者達やアルシーヴちゃんにも大好評で、特に俺について「あそこまで戦えるとは思ってなかった」的な事を次々と言ってきた。しかも、ソルト以外の賢者が「私とも手合わせして♡」とねだってきた時はなんの冗談だと思った。こういうモテ方は望んでねーよ。フェンネルは毎回のように俺と戦ってるだろ飽きろ。カルダモンもカルダモンでとっておき級の技見せちゃったからめんどくさいし、ジンジャーも諦めが悪い。あと、ハッカちゃんやアルシーヴちゃんは上目遣いで「私とも戦って♡」って頼むな。色仕掛けの使いどころ超間違ってるぞ。
そして、最後に―――タカヒロさんがエトワリアに来た。
……いや、俺だって衝撃的だよ? あの戦いだけのオマケ演出なのかと思っていたから尚更。でも、ティッピーもチノちゃんも驚いていたから俺の勘違いではない筈だ。
まぁ、「エトワリアは女の花園だろ」という理論もあるだろうけど、タカヒロさんは
何故って? そりゃあもちろん―――
「よう、タカヒロさん。やってる?」
「いらっしゃい、ローリエ君。………また違う女性を連れてきたのか」
「ローリエさん、どういうことですか?」
「ちょ、きららちゃん違う誤解だ! タカヒロさんも人聞きの悪いこと言わないでください!」
「そうか? てっきり私は、君があらゆる女性に手を出しまくる節操なしかと思ったが。
………娘に何かあったら出禁にするぞ」
「言い方ァァァァァ!!しかも釘の刺すタイミングが最悪だァァァ!!!」
「ローリエさん♪」
「き、きららちゃんその顔怖いからやめて!!!!!」
昼のラビットハウスは勿論、夜のラビットハウスの雰囲気も大好きだからに決まってるだろ。
キャラクター紹介&解説
ローリエ&きらら
裏ボス戦と題して戦いつくした2人。決着は一応きららの勝利となっているが、お互いが「やられた」と思っている。しかし、それでも本人達は満足している。なお、この戦い以降、里に生まれた夜のラビットハウスにもしばしば通うようになる。
ランプ&アリサ
自分の信じる人同士の強さが気になった結果、特別試合を立ち上げた発起人達。試合後はローリエによって宿題に国語の特別課題が増やされ、泣きを見る羽目になった。また、終わらせないとラビットハウスの新メニューを食べてはいけないという罰も課され、やらざるを得なくなった。
宮子&神崎ひでり&保登心愛&香風智乃&天々座理世&九条カレン&斎藤恵那
ローリエ戦できららが『コール』したクリエメイト達。ローリエから受けたダメージはすべてぷにぷに石弾によるもので、再召喚した時にはすっかり傷が癒えている。リゼとココアはリベンジに燃えており、またカレンはワンパンされた己の力不足を実感してライネの修業所にしばしよく通うようになったとか。
香風タカヒロ
拙作では、なんと公式では叶わないと思われる形で「クリエメイト」として登場。退役軍人とは思えない実力で、きららを助けた。エトワリアでは、娘たちが先んじて建設していたラビットハウスに住み、夜のバータイムの営業や会計事務を請け負うようになった。
ローリエの使用技
詳しくはコチラ→『ゲーム・きららファンタジア風資料集:敵編その⑤』。ソニックビートルとサスケは、この資料集の後に編み出したため、明記されていないが、それでも裏ボス級の強さをローリエは持っている。
キャラ特別編人気投票:一番良かったストーリーは?
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アルシーヴ編:プライド革命
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ソラ編:君じゃなきゃダメみたい
-
アリサ編:我ら思う、故に我ら在り
-
ハッカ編:Lonely lullaby
-
ジンジャー編:September
-
きらら編:ふわふわ時間
-
セサミ編:Ture my heart
-
フェンネル編:フィクション
-
ソルト編:ヒトリゴト
-
カルダモン編:気まぐれロマンティック
-
シュガー編:白金ディスコ
-
ランプ編:恋するフォーチュンクッキー