きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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最終決戦真っ最中なのにこんなの書いて投稿しちゃいます。
今回の閑話はWとディケイドのサブタイトルをごっちゃに混ぜました。

このお話では、テレビを見る都合上、テレビの登場人物の台詞と実際に見ている人達のリアクションを同時に行うところがあります。
番組スタートから終わりまでは
「」←番組の台詞
『』←番組を見ている人の台詞
 で行きます。地の文で説明もしますが、混乱しないようお願いします。


UA35000突破記念閑話:Hの誕生/魔法少女大戦

「ルーラー?」

 

 記憶を失った少女・灯守唯彩(ともりゆあ)は突如、世界の崩壊に巻き込まれる!

 阻止するには、8つの世界を旅して、世界崩壊の謎を解き明かすしかない!!

 果たして、唯彩に身についた力の謎とは…?

 そして、世界崩壊の真実とは……?

 

 

 ―――新番組・魔法少女ルーラー!! このあとすぐ!!!

 

 

 

「「「「「…………………」」」」」

 

 

 場所は神殿・大広間にて。

 特設されたテレビの前で、賢者の全員とアルシーヴちゃん、ソラちゃん、きららちゃんにランプ、マッチ、アリサが集まっていた。

 勿論、俺が呼んだ。新たなヒーロー……魔法少女の誕生を見てもらうためだ。

 

 

「魔法少女……ルーラー?」

 

「そうだ。聖典の世界にも魔法少女はいたにはいたんだが……なにせ、皆別々の世界から来てる上に資料がないからな。エトワリアでも新たに特撮を一本作ったワケよ」

 

「つ…つまり、この魔法少女がエトワリア魔法少女の第一号になるってこと!!?」

 

「そーいうこった」

 

 

 聖典の元になった世界を観測していたソラちゃんは大興奮だ。この後始まる番組が楽しみそうだ。

 ……それに対して、面食らったという顔をしていたのは、フェンネル、カルダモン、アルシーヴちゃん、ジンジャーだ。

 

 

「いや、それよりも、今の番宣………」

 

「見間違いじゃないと思うけど…ソルト映ってなかった?」

 

「髪型や服装は違っていたけどな…」

 

「なぁソルト、なにしてんだ?」

 

 そんな彼女たちの質問に、ソルトは真っ赤になりながらも答える。

 

「え、えっと………………実は、この『魔法少女ルーラー』……ソルトが主役を演じておりまして…」

 

「「「「「「「………ええええええええええええええええええええええええッッッ!!!!?」」」」」」」

 

 

 ソルトから投下されたトンデモな爆弾情報に声を張り上げて驚くしかない一同。

 驚いていないのは、俺と主演ソルトを除くとクリエメイトとの連絡役を担ったランプと、とある役で『魔法少女ルーラー』に登場するシュガーだけだ。

 

 

「ソルトってばすごいよねー! ま、シュガーも『魔法少女ルーラー』に出るから知ってたけど!」

 

「シュガー。まだお前の役は言うなよ?」

 

「う。わ、わかってるよー!」

 

「え、シュガーも出るの!?」

 

「ランプは、知ってたの?」

 

「一応、制作スタッフですので」

 

 

 明らかになるシュガーの出演とランプのスタッフ判明に驚く一同をよそに、そろそろ放送が始まる。

 この『魔法少女ルーラー』だが……ストーリーは中々特殊だ。

 

 主人公はソルト演じる灯守唯彩(ともりゆあ)。記憶喪失の彼女は演者のソルトとは程遠い自信家で、誰に対しても尊大かつ傲岸不遜な態度を崩さない……魔法少女らしからぬ性格だ。画家を名乗ってはいるが、人物画も風景画もマトモな出来にならない。彼女曰く、『世界が私に描かれるのを拒んでいる』とのこと。実力不足の言い訳にしか聞こえないが、『上手く描けないから、上手く描けるまで描き続ける』を信条にしている故、知っている者からすれば言い訳ではないと察することができる。

 そんな唯彩だったが、ある日突然世界がバラバラに分断され、魔物たちに襲われ、世界が崩壊する…いわゆる終末の日(アポカリプス)を経験する。そこで『魔法少女ルーラー』になる為の道具を手に入れ、世界を渡る力を得る―――というプロローグだ。

 

 さて、色々言ったが、もうじき上映開始だ。

 

 

「さ、そろそろ放送が始まるぞ。しっかり見てってくれよな」

 

「「「!!」」」

 

 俺が声をかけると、みんながCMが流れるテレビに視線を移した。いつ始まるのだとCMが終わるのを今か今かと待っている。そして――――――始まった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 物語は、一人の少女の夢から始まる。

 そこでは、様々な姿をした魔法少女が戦っていた。

 リボンが特徴的な少女。ゴシックでモノクロだがオシャレなデザインの少女。桃をモチーフとした姿で、魔力を両手に纏って戦う少女。

 だが……それら全ての魔法少女を圧倒する魔法少女がいた。襲いくるリボンを難なく躱し、星型の魔法を跳ね返して宙を舞う魔法少女を撃ち落とし、拳の接近戦でも汗一つ流さない。

 やがて、戦いが終わると…立っていたのは、一人の魔法少女と、夢の主である筈の変身していない少女だけだった。

 

「……ルーラー……!」

 

 夢は、変身していない方がそう呟く場面で終わる。

 

 

 

「……またあの夢…」

 

 呟いたのは、夢を見ていた少女・青野凛(あおのりん)(演:斎藤恵那)だ。長い髪をした恵那―――否、凛は突っ伏していたカウンターから起き上がり、先程の夢に思いを馳せようとしていた……が。

 

「ちょっと!寝てる場合!?」

 

「!?」

 

 どう見ても不機嫌な客(演:スクライブの少女)に意識を叩き戻されてしまう。凛は察した。自身の店・『青空堂』へのクレームだと。

 

「なによこの絵!! こんなのにお金を出せっていうの!?」

 

「ちょっと描いてあげましょうかーって言ってきて…!」

 

「それで任せたらコレかよ!納得いかないわ!」

 

「前衛芸術って言われたほうが納得出来るくらいよ!!」

 

 凛はまた頭を抱える。こんなトラブルを招くのはアイツしかいない、と。

 

 

「もしかして…唯彩ちゃん、ですか?」

 

「そうだ、そうだ!」

「酷いと思わないの!?」

 

「……うん、酷い。コレは酷すぎる!!!」

 

 

 客が出してきた前衛芸術の絵(笑)を全て受け取り、『唯彩のダメ絵入れ!!』とある箱にブチ込むと、客の対応を母・たか子(演:町子リョウ)に任せて走っていく。こんなクレームを招き入れた元凶の元へ。凛曰く、

 

「(灯守唯彩(ともりゆあ)。ちょっと前にフラット現れてうちに住み着いた変なヤツ。自分が何者なのか、なんの目的があるのか……いまだに喋らない! しかもウチの店を出して変な絵ばっかり描く女! 今日こそはとっちめてやる!)」

 

 ―――とのことだ。

 

 

 

 …その頃。

 一人の少女がスケッチブックに筆を走らせていた。

 彼女こそ主人公・灯守唯彩(ともりゆあ)。演者はソルトだが、様相はかなり違う。ふわふわにウェーブがかかった髪はストレートに、かつ後ろでまとめてポニーテールになっており、魔法かウィッグか不明だが特徴的な狸耳が見当たらない。また、服装もゆったりとしたワンピースから一転、白地の半袖・薄い青ジーンズを身に着け、オレンジ色がベースのチェックのスカーフを首に巻いていた。

 

 

『おぉぉ、いつものソルトと全然違うぜ』

『ソルトさん、オシャレですね』

『でも、知ってる人が別人を演じるとなんだか違和感が拭えませんわね……』

『見ないでください…』

『何言ってんだ主役。主役見ないとお話分かんないだろ』

 

 なお、いつもと違うソルトを見た反応は三者三様。普通にギャップに驚く者、唯彩のファッションセンスを良しと捉える者、よく知る仲間の違う姿に戸惑う者……。

 当の本人は顔を更に赤くして「見ないで」などと言っているが、主役を見ない特撮など何分残るだろうか。

 

 そんな真っ赤になっているソルトだが、映像の向こう側では、失敗作の絵を見て「またダメかぁ」とのたまいながら、見るからに怖そうな男二人――当然、唯彩の絵のクレーマーだ――の暴力を華麗にかわしている。

 

 

「どうやっても上手く描けないんだ。描けるようになるまで描くのは当然でしょ?」

 

 そしてスケッチブックに向き直る。しかし……スケッチブックに描いた歪んだ風景から、謎の少女(演:神崎ひでり)が現れ、こう告げた。

 

 

「ルーラー。今日、貴方の世界が終わります」

 

「!? ………ルーラー…?」

 

「? どうしたんだオメー」

 

 

 そこにやって来た凛が唯彩の耳の付け根に親指を突き刺して“笑いのツボ”を刺激、凛が謝罪することでその場は上手く(?)収まった。

 

 

「やめてよね、青リンゴ。無理矢理笑わされるこっちの身にもなってよ」

 

「あ・な・た・に・言われたくありません! これに懲りたら、『青空堂』を広告するのをやめてください。」

 

「善処する―――」

 

「……」(←無言の“笑いのツボ”用意)

 

「分かった、分かった!!」

 

 いくら尊大かつ傲岸不遜な唯彩も、凛の笑いのツボにはタジタジだ。彼女は、ツボを押されることで無理矢理笑わされるのを嫌う。だが、凛がその手を使うのは唯彩が変な絵を客に売りつけるからであって……要するに、自業自得だった。

 

「唯彩。どうして、あんなヘンな絵を描くんですか?」

 

「私はこの世界をありのまま描きたいだけよ。でも世界は私に描かれたがってない。勝手に歪んじゃうの」

 

「…え?」

 

「街も光も、自然も人も。私から逃げてく。……ここも、私の世界じゃあない」

 

「貴方の、世界?」

 

「私に描かれる資格を持った世界ってこった」

 

「……とにかく! 今後私達の店を代理店扱いしないでください!

 今までに無駄遣いした画材の費用やら立て替えたお金を合わせて…」

 

「成程。大体わかった」

 

「大体じゃなくって!!」

 

 

『…随分偉そうですわね、この唯彩って娘』

『主役とは思えぬ尊大さ。』

『…えぇ、お気持ちはわかります』

 

 

 テレビの唯彩の不遜っぷりにいささか不快感を口に出すフェンネルとハッカを、ソルトはやんわりと肯定した。

 まぁ、こんな性格の人間、現実にいたらなかなかにとっつきにくく嫌な奴である。「満足いく作品を描き続ける」という芸術家気質を差し置いても、だ。それを視聴者の誰もが大体察していた。

 そんな中、突然番組の事態は急変する。

 

 

「……え?」

 

 なんと、空から降ってきた壁か天井のようで、しかも水面のように揺らいでいるそれが……背の高い建物を押しつぶして破壊しだしたではないか。更に、破壊された建物の残骸の一片一片が、翼竜のような魔物に変化するオマケ付きである。

 

 そして、その壁のようなものは、唯彩と凛にも襲い掛かる。二人を分け隔てるように立ち塞がった。

 

 

「唯彩ちゃん!唯彩ちゃん!!」

 

「凛ーーーーーー!!」

 

 

 二人も、お互いの心配をしている余裕はない。

 凛は多くの人々と合流できたものの、次々と景色や場所が変わる現象に見舞われながら、正体不明の魔物に襲われ続ける。

 唯彩は、再び現れた謎の少女と出会い、不可解な言葉をかけられた。

 

 

「ルーラー。今日がその日です。……バックルとメダルはどうしました?」

 

「? ゲーセンには行かない主義だ」

 

「世界を救うには、貴方の力が必要です」

 

 

 そして再び唯彩の前から消えた少女。

 唯彩はわけのわからないまま、景色が切り替わっていくのを眺めているだけであった。

 

 

『こ、これは……』

『ここまでくると、訳が分からないね』

『でも、世界が終わる、ってことですよね?』

『でしょうね。ここから唯彩はどうするつもりなのかしら?』

 

 

 景色が次々変わる現象、人々を襲う魔物。殺されていく人間たち。

 パニックに陥りながらも逃げた先で、凛はあるものを見つける。

 

「これ……私の夢の! どうして…?」

 

 それは、夢で他の魔法少女を相手に無双していた魔法少女が身につけていたバックルとケースだった。

 

「おい!青リンゴ!」

 

「! 唯彩ちゃん!! 無事だったんですね!」

 

「無事って状況じゃないでしょこれ!」

 

 壁を隔てて、再び唯彩と凛が合流する。

 しかし、その安心もつかの間、脅威は訪れる。

 

『あっ…後ろ…!』

 

 

「ひっ…!」

 

「おい!凛!!凛!!!!」

 

 

 凛の後ろに迫っていたのは、不気味な笑みを浮かべた、真っ黒い怪人だった。更に二体、三体、四体と現れ、凛の逃げ場を無くす。

 唯彩は壁を叩き壊して凛を助けようとするも、壁はまったく壊れる気配がない。全力のキックでも、全然効いていないようだ。

 

 

「こんな…こんなものなのか!! 世界が終わる日ってのは!!!」

 

 

 そう叫ぶ唯彩だったが……下ろした視界に入ってきた、凛の持つバックルとケースを見て、思い出した。

 ―――貴方のバックルとメダルはどうしたと、あの少女に言われたことに。

 

 

『なるほど。ここで凛に渡してもらうんだ。』

『おっ、そろそろソルトの変身シーンか?』

『ソルトじゃなくって唯彩の変身です…』

『みんな、見ててよ? こっからのバトル、すっごいびっくりしたんだから』

 

「世界を救ってやる!……多分」

 

 凛からバックルとケースを受け取った唯彩は、右腕にバックルを巻きつける。

 そしてケースから一枚のメダルを取り出した。メダルには、9つのメダルのデザインと共に、『RULER』とアルファベットが刻まれている。

 それを手に持つと、唯彩は叫んだ。人々を理不尽な悪から守るための、あの言葉を。

 

 

「変身!」

 

MAGICAL(マジカル) GIRL(ガール)

 

 メダルをバックルに入れると、女の子が好みそうなカワイイ電子音声がなる。迷う暇はない、と唯彩はバックルを閉じた。

 

RULER(ルーラー)

 

 瞬間、8つの人影が唯彩に集まり、彼女の服装に変化をもたらした。

 半袖・ジーンズ・スカーフの姿から一転、スカイブルーを基調とし、フリルやリボン、桔梗の花飾りが目立つコスチュームに身を包む。髪型はポニーテールが解け、ウェーブがかった長髪になり。髪色も、変身前の薄い青色が、変身したら濃くなっている。

 そして、先ほどまでヒビすら入らなかった壁が、いとも簡単に砕け散った。

 これが―――『魔法少女ルーラー』。世界を旅して、世界を救う使命を持った魔法少女である!!

 

 

『『『おおおお……!!』』』

『や、やめてください…恥ずかしい……!』

『これ、まんまソルトじゃないのか?』

『違います、ソルトではありません! 現に服のデザインも派手だし、耳が生えていません!』

『いえ、ですから耳が生えていないだけのソルトなのではと……』

『み、見ないでください………』

『主役の戦闘シーン見るなとか無理だろ』

 

 

 エトワリアに新たに生まれた第一号魔法少女・ルーラーの変身に歓声が出る。ソルト本人は顔を覆って倒れ、耳まで真っ赤になっているが、主役の戦闘シーンのところで「見ないでください」は流石に無い。

 

 そんな真っ赤になって倒れているソルトだが、映像の向こう側では、素早く怪人に近づき凛を害そうとする者から殴りかかって、凛を救いだしている。

 凛を解放されて不利を悟った怪人が逃げ出そうとするも、ルーラーは逃がすまいと二枚目のメダルを取り出した。そして()()()()()()()それを()()()()()()()()バックルに入れる。

 

 

「ちょこまかと……!」

 

MAGICAL(マジカル) GIRL(ガール)

 

FRILL(フリル)

 

 

 すると、先ほどまでルーラーだった唯彩の姿形が、大きな赤いリボンに包まれて変わっていくではないか!

 長い黒髪に大きなリボン、へそ出しのコスチューム、白・赤・ピンクがバランス良く映えたデザイン……先ほどまでとは全くの別人に変身したのだ。

 

 

『べ、別の魔法少女になっちゃいましたよ!?』

『ソルトの変身魔法……なのか?』

『おや、アルシーヴちゃん鋭いね』

『別人になる魔法少女………アリね!素晴らしい初代エトワリア魔法少女じゃない!』

『そ、ソラ様……?』

 

 そして、銀縁の青いメダルをバックルに挿し込んでフリルの武器を構えたルーラーは。

 

ATTACK(アタック) MAGIC(マジック)

 

FLAME(フレイム) RIBBON(リボン)

 

「ハァッ! セヤッ!!」

 

「「「「ぎゃあアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」

 

 伸びた炎上するリボンを新体操選手のように振るい、怪人達に当てていく。鞭のようにしなったリボンと炎を受け、爆発する怪人達。

 攻撃を終えると、バックルからメダルが飛び出し、色を失っていく。それに伴い、フリルだった姿も元のルーラーの姿に戻った。灰色になってしまったメダルを手にした唯彩は、ただ戸惑っていた。

 

 

「なんで私、()()()()()()()()()()……?」

 

『…意図して選んだものではない……?』

 

 不思議そうにしていたのは、唯彩だけではない。慣れた手付きで怪人達をぶちのめしたルーラーの戦いを見た視聴者達もだ。

 

『強いですね、ルーラー。』

『なかなか面白い戦い方をするね』

『ソルトも、ローリエさんの提案を聞いて驚きました。まぁ、これは撮影ですからね』

『カッコいいわ、ルーラー!』

 

 

「ルーラー…!」

 

「おい、なんでその名前知ってんのよ」

 

「………一体、何処に行けば…?」

 

「帰るんだよ。ウチへ」

 

 ルーラーの戦い方に惹かれていく視聴者達。

 その間にも、物語は進む。ルーラーの姿のまま、唯彩は凛をハスを模したスクーターに乗せ、『青空堂』に帰ろうとする。しかし、また別の怪人達が後ろに乗っていた凛をスクーターから落とし、攫おうとする。

 

 

「チッ、またか!」

 

MAGICAL(マジカル) GIRL(ガール)

 

MOON(ムーン) RANGER(レンジャー)

 

 再び、ルーラーが別のメダルをバックルにはめて変身する。

 今度は、紫がメインの露出の少ないウィッチデザイン。月のエンブレムや白のフリルこそ見受けられるが、よりスタンダードなデザインだ。

 ルーラー本人の顔付きもより勝ち気なものに変わり、髪色も青から金色に変化した。

 

ATTACK(アタック) MAGIC(マジック)

 

REQUIEM(レクイエム) SHOOT(シュート)

 

「そこだぁぁ!!」

 

「「「「ぐわあぁぁぁ!!!?」」」」

 

 

 杖を誘拐犯の怪人に向けると、杖先が分身して複数のビームが放たれた。

 ビームが命中した怪人達は、「たまらん…」などとのたまいながら、紫色の光に包まれて消滅した。

 だが、安心できない。今度は崩壊した都市のガレキの中から、グロテスクで見るものを不安にさせるデザインの怪物が現れ、生き残りの人間達に遅いかかろうとしている。また、空を飛ぶ怪物の個体も現れ始め、逃げ惑う人間をつけ狙う。

 だから、ルーラーは再びメダルをバックルに入れる。

 

 

MAGICAL(マジカル) GIRL(ガール)

 

MADOKA(マドカ)

 

ATTACK(アタック) MAGIC(マジック)

 

SHINING(シャイニング) ARROW(アロー)

 

 

 桜色と白を基調としたツインテールの魔法少女となったルーラーは、花のつぼみがついた木の枝のような弓をどこからともなく取り出して、光の矢を放った。矢は一本残らず、怪物達を追尾して貫き、爆散させていく。

 

「(どうして……? 私は、戦い方を知っている……しかも、一度や二度じゃない、常に戦場に身を置いてるヤツの戦い方だ…………!!)」

 

 

 最後の怪物を撃ち落とすのを確認すると、ルーラーの姿は元の唯彩のそれになる。同時にバックルからメダルが飛び出し、「MADOKA」と描かれたメダルからまた色が消え、灰色になってしまった。

 

「なんでだ…?」

 

「何がですか?」

 

「どうしてか、力が長続きしない…!」

 

「それは、かつて貴方がすべてを失ったからですよ、ルーラー」

 

「「!!!?」」

 

 凛と唯彩が『青空堂』へ歩みを進める中交わした会話に、再び謎の少女が介入してきた。かと思えば、都市を巻き込む大爆発が起き―――そして、場面は宇宙空間のような場所に変わる。

 だが、地球のような青と緑の惑星が8個も見えるのは一体どういう事なのか。そう思っていると、唯彩がスケッチブックで見た、謎の少女の姿が現れる。

 

 

「お前……!」

 

「まだ、少しは時間があります」

 

「私が、世界を救えるって言ったよね?」

 

「えぇ。すごい光景ですね。…なにか、思い出しましたか?」

 

「いや。戦い方だけよ。……ところで、アレらは何? 地球が8つあるように見えるけど」

 

「全部地球ですよ。コレは、魔法少女を筆頭とした、特別な戦士が8人、生まれたことでできた8つの地球。それらは独立した別々の物語。ですが今…物語が融合し、世界が一つになろうとしています。やがて………全ての世界が消滅します」

 

『なんだか、盛大なお話ね…!!』

『ソラ様、とてもハマっていますね?』

『このままだと、全部消えちゃうみたいだね』

『成程、それを止めるのがルーラーの役割か』

 

「ルーラー。貴方は、8つの世界を旅しなければなりません。それが世界を救う、たった一つの方法です」

 

「……なぜ私?」

 

「貴方は全ての魔法少女を統べる者だからです。魔法も、時空も、世界も……それが統治者(ルーラー)ですからねぇ。」

 

 

 要領を得ない答えを言いながら消えていく謎の少女。「貴方が旅を終えるまで、私と、私の仲間がこの世界を生きながらえさせておきます」と告げて、場面は転換する。そこは、爆風も逃げ惑う人も何もかもが時間を止めたかのように静止した……唯彩と凛のよく知る『青空堂』の前の通りだった。

 

 

「つまり…貴方が世界を救うんですね?」

 

「まぁ…そういうことらしいよ? 8つの世界か……描いてみるか。もしかしたら……」

 

「わかりました。行きましょう」

 

「なーんで青リンゴまで行くんだよ!」

 

「唯彩ちゃん、アテになりませんから。それに………(あの夢が、夢じゃなかったら…)」

 

「…?」

 

「それに! 唯彩ちゃん、この機会に借金を踏み倒すかも!」

 

 

 唯彩と凛は、世界を救うたびに出なければならないことが分かったようだ。そして、視聴者も壮大な物語を理解し始めてきている。ローリエ自身、元にした物語が物語なだけに理解してもらえるかどうか、そしてウケるかどうか不安だったが、一応は杞憂で済んだらしい。

 

 やがて、第一話は唯彩が手にした『魔法少女ルーラー』の力――真っ白な巨大キャンバスに触れたところ、唯彩も凛も凛の母も知らない街並みが現れ、それに伴い外の『青空堂』の位置も変わっていた――で『青空堂』ごと世界を渡り、「まちカドまぞく」のパラレルワールドに辿り着いたことを唯彩が察した時点で幕を閉じる。

 

 

 ―――次回、魔法少女ルーラー!

「巡査・灯守唯彩……この世界で私に与えられた“役割”らしい…」

「どうでした? 今日の私の変身!」

「美晴……今日はゆっくり休んでね」

「あれは…魔法少女……?」

「契約とかはしてないよ」

「聞いていた通りだな――『支配者』!」

「やめて!!二人が戦ったら…!」

「ルーラー……お前はこの世界にあってはならない…!」

―――全てを統治し、全てを繋げ!!

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「えええっ!! こ、ここで終わり!?」

 

「まちカドまぞくって言った……」

 

「でも、シャミ子が魔法少女に変身してたぞ…最後チラッとだけだけど…」

 

「桃さんも魔族の格好してましたね……我々の知る聖典とは正反対です」

 

「それがパラレルワールドってことね」

 

「そういえば、シュガーは出ていませんでしたね」

 

「し、シュガーは中盤から出てくるもーん!」

 

 

 ―――いやぁ、初回放送が終わった。

 視聴者の皆様方の反応からして、まったくウケないなんて結果にならなくて良かった…!

 特にソラちゃんときららちゃんには大好評……に見える。ルーラーの戦闘シーンとか心奪われてんのが見え見えだったし。

 

 

「次回が楽しみです、ルーラー!」

 

「まちカドまぞくの世界でなにするつもりなの、ルーラー?」

 

「や、やめてくださいソラ様! きららさんも……あの格好、恥ずかしいんですよ!!」

 

「何を言ってるの! とても似合ってたわよ。ねぇ、みんな?」

 

「……まぁ、似合っていたよ」

「すごく良いイメチェンだったよ。最初気づかなかった」

「たまにはああいう洋服も良いと思うぜ?」

「印象がガラリと変わるのも、悪くありませんわ」

「今度またイメチェンしようね、ソルト!」

「……ソルトさん、素敵でした」

 

「うああぁぁぁぁ…………ろ、ローリエさん…助けてください……………」

 

「何言ってんだソルト。『魔法少女ルーラー』はもう最終回まで撮ってあるんだから、これから毎週あの姿を見られるんだぞ。慣れとけ」

 

「わぁぁぁぁぁぁ!!! ローリエさんのバカ!!!嫌いです!!もう!!!!!」

 

「何故だァァ!!?」

 

 

 ……トマトみたいに顔を真っ赤にしたソルトにぼこぼこ殴られたのは納得いかないけどな!

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ……『魔法少女ルーラー』の放送の影響は大きかった。

 

 エトワリアにはもともと()()()()()()()()()()聖典があるため、『別々の世界があり、そこを転々と渡って世界を救う魔法少女』は実にウケたようである。クリエメイトについても……

 

 

「!! ふ、フリルちゃんだわ…!」

 

「うおぉぉすげぇー! ムーンレンジャーに変身したぞ!?」

「ムーンレンジャーの知識をローリエさんに渡して良かったですね!」

 

「と、特撮だ…特撮やってる!?」

 

 ……とまぁ、魔法少女アニメや特撮ファンを中心に大ウケしたのである。

 いくつか反省点こそあれど、結果として『魔法少女ルーラー』は大成功。ソルト・ドリーマーは、八賢者ではなく『灯守唯彩』として有名になっていった。

 

 

 ちなみに、次回作の魔法少女も、数多くのスタッフを元に作られるわけだが……

 

「次の魔法少女の変身道具をいくつか作っているんだが……ソラちゃん、アルシーヴちゃん、ちょっと見ていってくれないか?

 どれが一番魔法少女に相応しいか女の子目線で選んでほしい」

 

サイクロン! ジョーカー!

 

タカ!トラ!バッタ!

! ! バ!

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

DRIVE(ドラ――イブ)TYPE(タイプ)SPEED(スピ―――ド)!!

 

ラビットショートケーキ!ベストマッチ!】

 

「…………………全部ボツだ、やり直せ」

「……………そうね、ローリエ。もっと可愛くお願いできる?」

「えぇ〜…ダメ?」

「「ダメ」」

 

 

 その間、実に様々なボツ変身道具が生まれたことは言うまでもない。




キャラクター紹介&解説

ソルト・ドリーマー/魔法少女ルーラー/灯守唯彩(ともりゆあ)
 ローリエによってエトワリア産魔法少女特撮の主役にスカウト―――もとい、大抜擢された八賢者。変身魔法使用中の演技力向上のために最終回まで撮影したものの、本人としては恥ずかしいようだ。
 ちなみに「魔法少女ルーラー」の変身は、ソルトの変身魔法とローリエ謹製のバックル&変身メダルを使って変身している。例えば「魔法少女フリルメダル」でフリルに変身する際はソルト本人は桜ノ宮苺香に変身し、コスチュームと装飾品はローリエのバックルで変身するといった原理になっている。なお、ソルトは律儀にも変身元の人間に変身許可を貰いに行っていた。
 主役「灯守唯彩(ともりゆあ)」の名前の由来は、「ルーラー」の日本語訳からのアナグラムから取っている。ただ、近年の子供の名付けには変わった読みを当てることも多々あり、それも参考にしている。

 統治者
→TO U CHI SHA
→TO SHU CHI A
→灯 守 唯 彩
灯守唯彩(ともりゆあ)

斎藤恵那/青野凛(あおのりん)
 『魔法少女ルーラー』の主人公の親友・第2ヒロイン役で出演。ちなみにオーディションには「面白そうだから」とリンとなでしこを巻き込んで参加し、自分だけが受かった。友情出演にちくわも出して良いか頼んだが、ほんのちょっとだけの出演しか許可してくれなかった。しかし、現場には必ずちくわがいた。

神崎ひでり/謎の少女
 女の子役を難なくこなせる男の娘。オーディションにはノリノリで参加し、余裕で受かった。

町子リョウ/青野(あおの)たか子
 オーディションに参加した椎名に差し入れをしに行ったら、スタッフにオーディション参加者だと間違われた女。そのままオーディションを受け、なぜか合格する。

シュガー・ドリーマー/魔法少女ルーヴェル/西山イツキ
 『魔法少女ルーラー』第一話では出番がなかったいわゆる2号の魔法少女。この時点ではシュガーの見栄だと思っている人が多半を占めていたが、ホントに魔法少女役として登場人物した時はその全員が面食らった。しかも、普段のシュガーには似合わぬ飄々としたキャラであったから更に驚きだ。

ローリエ・ベルベット
 『魔法少女ルーラー』の脚本&監督。キャストはソルトはスカウトしたが、それ以外はオーディションで決めた。この『魔法少女ルーラー』成功により、以降もエトワリアの魔法少女シリーズ構成に携わっていくことになる。





魔法少女ルーラー
 エトワリアで始まった新番組。記憶喪失の少女・灯守唯彩(ともりゆあ)が、様々な世界を渡り、『魔法少女ルーラー』に変身して世界崩壊を防ぐ物語。旅する世界は『聖典の世界で放送されていた作品』つまりきらら漫画の劇中作が中心で、ローリエは制作にあたり様々なクリエメイトから話を聞いている。旅する世界はそれぞれ、
・魔法少女フリルの世界(ブレンド・S)
・魔法少女ムーンレンジャーの世界(NEW GAME!)
・おしゃれ探偵ラブリーショコラの世界(ひだまりスケッチ)
・怪盗ラパンの世界(ご注文はうさぎですか?)
・プリティ☆プロジェクトの世界(こみっくがーるず)
・色彩戦隊イロドルンジャーの世界(GA芸術科アートデザインクラス)
・魔法少女まどか☆マギカ(のパラレルワールド)
・まちカドまぞく(のパラレルワールド)
―――となっている。ちなみにだが、初回放送でクリエメイトもエトワリア人もほぼ大絶賛だったとのこと。
元ネタは「おのれディケイド」で有名な『仮面ライダーディケイド』。キャッチコピーは「通りすがりの魔法少女だ。覚えときなさい!」「新たな魔法少女の旅が、今始まる」。当然だがスーパー説教タイムも存在する。

     キャスト(モブ略)
灯守唯彩/魔法少女ルーラー
 ソルト・ドリーマー
青野凛
 斎藤恵那
謎の少女
 神崎ひでり
青野たか子
 町子リョウ
千代田美晴
 シャドウミストレス優子
吉田麗花
 千代田桃
西山イツキ/魔法少女ルーヴェル
 シュガー・ドリーマー

     魔法少女アドバイザー
 星川麻冬
 篠田はじめ
 桜ねね
 ランプ
 秋月紅葉

     脚本/監督
 ローリエ・ベルベット


ボツを食らった変身道具の数々
 元ネタはそれぞれ「仮面ライダーW」「仮面ライダーオーズ」「仮面ライダーウィザード」「仮面ライダードライブ」「仮面ライダービルド」。見事に仮面ライダーしかいないが、ビルドのラビット・ショートケーキの組み合わせは、「キラキラ☆プリキュアアラモード」のキュアホイップから取っていたりする。

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