きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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拙作のお気に入りが50を超え、総合UAも7000に手が届きそうです。
読者の皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも、どうかこの「きらファン八賢者」をご贔屓いただければ幸いです。


今回のお話は、「この世界でも、笑顔を」と「続きから▷港町」の間のお話です。キャラ崩壊がいつもより甚だしいです。
※『勇者ヨシヒコ』シリーズとのクロスオーバー要素がチョコッと含まれております。ぶっちゃけタグをつけた方がいいのか?ってレベルで。


お気に入り50突破記念:ローリエの魔法研究大作戦

 意識を集中させる。

 

 人差し指を立てると、その指先に魔力が集まる。

 

 魔法陣が形成されて、魔力が熱を帯びる。

 

 ―――そして。

 

 

「………メラ」

 

 

 呪文と共に、指先から小さな火の玉が飛んでいく。

 それは、狙いをつけていた数メートル先の円い的に当たり、燃え上がって消えた。

 同時に、体内の魔力がそこそこ減っていくのがわかる。

 

 

「……低級の魔法一つでこれとは……

 ローリエ、あなたやはり純粋な魔法に向いてませんよ?」

 

 セサミに心配されてしまう。

 でも、向いてないからって、諦める訳にはいかない。

 なぜなら。

 

「おいおい、セサミ。忘れたのか?

 これはただの魔法の練習だっつってんだろ?」

 

 そう。自分を知るための魔法練習だからだ。

 きっかけは、シュガーちゃんとの任務を終えた日。転移魔法一回で、俺の魔力総量(最大MP)がほぼスッカラカンになってしまったことに始まる。

 俺は生まれてこの方魔法工学ばっかやって、現代兵器の製作しかしてこなかったもんだから、エトワリアの魔法があまり使えないのだ。

 そこで翌日、俺はどれだけ魔法が使えるかを実験及び練習していた。そこにセサミが通りかかり、今に至る。

 

 

「それにしたって、一通り全属性の低級魔法を見させていただきましたが、私もあなたみたいな人は初めて見ます」

 

「そうなの?」

 

「はい。まずあなた自身が呪文を唱えないと発動しないというのが特徴的です。本来『呪文を唱える』というのは、発動した魔法のイメージを固めるためのものです。

 ローリエのは何というか……その言葉一つでどういう魔法かを決めているのではないでしょうか?

 そのままだと、無言で魔法を使うということが出来ないですよ?」

 

 

 それは分かる気がする。前世持ちの俺が、魔法と聞いて最初に浮かんだのはやはり、俺が物心ついた時にやっていた、ゲームの魔法だ。単純で覚えやすい呪文が、俺の中に根強く覚えられているのだろう。

 

 

「それに、他にも気になる点があります。『めら』とか『ばぎ』、『いお』など詠唱は私の聞いたことのない単語でしたし、水属性魔法が使えない代わりに氷属性魔法が低級とはいえ使えるというのは、かなりのレアケースだと思います。」

 

 

 セサミは俺が使った氷属性魔法「ヒャド」に興味を持ったようだ。

 でも、今教えて、きらら達のハードルが上がるのは嫌だな………よし。

 

 

「なるほどな………でも、真似しようと思うなよ?

 詠唱は一人ひとり違うかもしれないし、何より敵に放ったと思ったら自分が冷凍保存されてたとか笑えないだろ?」

 

「私とて、氷の呪文は難易度が高いですよ。

 ローリエはきっと、魔力の適性が固まる前から氷属性の魔法が身近にあったからできただけです。

 普通の人間はまず習得できません。水属性魔法と風属性魔法の併用ですしね」

 

 

 へぇ。ここでは、ヒャド系呪文ってそういう扱いなんだ。ドラ○エでもポ○モンでも「ヒャド系(こおりタイプ)」で独立してたから、考えたこともなかったな。

 

 

「しかし、ローリエ。先程も言いましたが、このままでは戦闘に魔法は使えませんよ?」

 

「問題ない。俺には他の武器がある。」

 

 

 ―――とはいえ、これではい終わり、では魔法の練習兼研究の意味がない。自分が転移魔法を日に一度しか使えないのには訳がある。理由は判明しているのだが、現状を確認したい。

 でも、これ以上魔法を使ったら、俺の魔力が底をついてしまう。ただでさえ魔力を回復させながら行った低級魔法連打だ。こんなしょうもない理由でまほうのせいすいは使いたくない。

 

「……待てよ?」

 

 動きが止まる。

 

 

 自分の魔力総量(最大MP)が低級魔法でもキツいほど少ない?

 

 それはねジョ○ョ、無理矢理低級魔法を使おうとするからだよ。

 

 逆に考えるんだ。

 

 ―――更にレベルを下げた魔法を編み出せばいいさと。

 

「……ローリエ? どうしたんですかローリエ?」

 

 

 俺の中の○ョースター卿が俺を諭す。

 簡単に言ってくれる。

 だが、不可能ではない。それはなぜか?

 

 ―――あるからだ。そのビミョーな魔法が。

 

 予算が少ないと自称する、冒険活劇の魔法使いが使っていたからだ………そんな呪文の数々を。

 俺は、おもむろにセサミを指差す。

 

 

「!!? ローリエ、一体何を!?」

 

 

 少し、お借りしますよ。

 面白おかしく冒険を彩った、愛すべきビミョーな呪文達を。

 

 

「………チョヒャド」

 

 

 そう呟いた刹那、セサミの髪とローブを、風が揺らした。

 

「……? ちょっと寒くなった……??」

 

 ローブをしっかりと羽織ったセサミは、放たれた冷風に少し耐えた後、口を開く。

 

「い、今のは……?」

 

「氷の呪文……ヒャドの一つ下の魔法だ。

 カーディガン一つ羽織る程度の冷風を与える………名をチョヒャド。」

 

「………。」

 

「………。」

 

 

 懇切丁寧にしたはずの冷風呪文の説明に、空気が凍る。マヒャドレベルで。

 うわぁ……沈黙が痛い。勇者がいないから尚更だ。あの魔法使いは、こんな空気を毎回味わっていたのか。尊敬してしまうぜ。

 

 

「それ………………戦闘に使えるのですか??」

 

 

 ……うん、まぁそうだよね。そうなるよね。

 でも、その質問については答えを控えさせていただきますよっと。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 ビミョーな氷(?)呪文でコキュートス並みに凍った空気から逃げてきた俺は、次の呪文の実験をするべくとある人物を探していた。

 

 彼女がどんなリアクションを取るか―――今からでも楽しみだ。

 

 神殿内をスキップしていると、たぬき耳の少女が向こうから歩いてくる。すぐに見つけられるとは、今日はついている。

 

 

 

「スイーツ」

 

「………??」

 

 

 すれ違いざまにかけられた魔法にソルトは気づきやしない。いや、指先を向けられ「スイーツ」と言われた程度では魔法というより何かのイタズラを企んでいると思われてはいそうだけど。

 

 甘味魔法・スイーツ。

 どんな奴でも、甘いものを食べたくて仕方なくなるという凶悪(笑)な呪文だ。多分シュガーには効かない(というか元々甘党だから意味がない)呪文の一つ。

 だが、ソルトにかけたら絶対面白いことになるだろう。元々おやつに塩気のあるものを好む彼女だ。甘いものが食べたいと言い出した日には、シュガーから熱の心配でもされるに決まっている。

 

 でも、結果の確認は後ほど行うとしよう。今はこのまま、スキップで次の実験台……もとい、協力者を探すとしましょうか。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 ソルトに通りスイーツ(魔法)をお見舞いした後、俺はハッカちゃんと通路で出会い……

 

 

「……ローリエ。此度は何を企んでいる」

 

 

 いきなりそんなことを言われた。

 俺は魔法の実験をしているだけだぞ。それを「何か企む」とは失礼な。

 

「なに、俺でも使える呪……魔法の協力者探しだよ。ただそれだけ」

 

 そう言っても、疑いの眼は俺に向いたままだ。

 疑り深いハッカちゃんめ。そんな子にはこいつをくれてやる。

 

 

「………ゲラ」

 

「……ローリエ、戯れはそこまでに……ぷっ…!」

 

 俺が魔法をかけた途端、ハッカちゃんは口元を抑えて笑いをこらえ始める。周りを見ても何もおかしいものはない。ハッカちゃん自身は、俺に何かされたと思いながらも、彼女の中に沸々と湧き上がる愉快さで吹き出しそうになるのをこらえずにはいられないだろう。

 

 笑い誘発呪文・ゲラ。

 術者の言った言葉を聞くとそれがなんであったとしても爆笑してしまうこれまた凶悪(笑)な呪文だ。

 

 

「それでは、俺は協力者探しを再開するから……」

 

「ブッフゥ!!」

 

 

 ……あれ。

 ちょっと効きすぎじゃない? ゲラってここまで強かったっけ?

 

 

「あの、ハッカちゃん?」

 

「や……やめ………ックッ……ブファッ」

 

 

 おい、まだ何も言ってないんだけど。これ絶対効きすぎだよ。

 笑わせる呪文と思ってたけれどここまでとは思わなかった。薬を作ったと思ったら劇薬だったでござるって気分だ。

 こんなことなら転生する前に「勇者ヨシ○コ」を見返しておけばよかった。

 

 

「じゃ……じゃあ、俺はこの辺で。またね、ハッカちゃん」

 

「ブッフハハハ…………!!!」

 

 未だに口元とお腹を押さえ、キャラ崩壊してんじゃないかってくらい爆笑しているハッカちゃんに心の中で謝りながら、俺は早足で立ち去った。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 ハッカちゃんから逃げるように自室に戻ってきた俺は、頭を悩ませていた。

 あとどんな呪文があったっけか、とノートに呪文名と効果を書き連ねていたのだ。

 

 言動を○ート何某(なにがし)にする呪文・タケシズン。

 眉毛を太くする呪文・ヨシズミ。

 顎をしゃくれさせる呪文・シャクレナ。

 ポリフェノールを与える呪文・ポリコズン。

 攻撃力を1.2倍にする呪文・チョイキルト。

 ブラがズレているような感覚を相手に与える魔法・ブラズーレ。

 冷え切ったご飯をレンジでチンしたかのような熱を与える呪文・メラチン。

 

 あとは……なんだったか。思い出せないが、今はこれでいいだろう。

 だが、これだけじゃなくて、もっと魔法が欲しいな。

 前世の記憶から引っ張ってきたものだけじゃなくて、自分独自に開発した魔法か何かが―――

 

 

「ローリエおにーちゃん!!」

 

「……なんだシュガーちゃん。俺は今、魔法の開発中だ。遊びなら後に……」

 

「遊びじゃないよ!」

 

 ―――ほわっつ?

 

「ソルトに何をしたの? ソルトったら、『甘いものが食べたい』って言ってて大変だったんだよ!

 アルシーヴ様やフェンネルも怒ってたんだから!」

 

 シュガーはぷんぷんと効果音がつきそうな様子で怒っていた。まったく怖くない。

 

 

「シュガーちゃん。ソルトだってたまには甘いものを食べたくなる時があるかもしれないだろ? いきなり俺がなにかしたって考えるのはおかしいと思うんだが…」

 

「だからってシュガーの激甘超特大どら焼きを食べたいって言いだすなんて変だよ! 普段のソルトなら絶対食べようとしないもん!」

 

「いや、もしかしたら目覚めたのかもしれない。甘党に」

 

「それにしたっておかしいよ! いきなりシュガーのおやつを欲しがるなんて!!」

 

 

 甘いものを食べたいと言い出したソルト。それは間違いなく、俺の開発した魔法「スイーツ」によって甘いものが食べたくなったのが原因だろう。

 だが、そんなことは俺が自白でもしない限りバレることはない。俺が「人の好みなんて年とともに変わるものだよ」と反論しようとした………その時。

 

 

「その通りだ。それに、ソルトとハッカから微量の魔力が残っていた。故に、二人には何らかの魔法学的干渉……つまり、何かの魔法をかけられていることは予想できた。」

 

 

 底冷えした声が、扉から入ってきた。

 声の主は、アルシーヴ。俺の幼馴染にして、現筆頭神官だ。後ろにはカルダモンとフェンネルもいる。

 

 

「ソルトとハッカの証言からローリエ、お前が何かしたと判断した。

 貴様、こんな時に何を考えている?」

 

「何を企んでいるのか知りませんが、洗いざらい吐いてもらいますわよ!」

 

「面白いことをするなら、あたしにも教えてよ、ローリエ。水臭いじゃん」

 

 

 なんか一人違う事を言っているが、ほぼ俺がなにか後ろ暗いことを企んでいると思っている。これは大変なことになった。

 今日、俺が『実験』で使った魔法は、それこそ大したことなどない。効果が微妙ということは、アルシーヴちゃんやフェンネルが思っているような悪用もできない(というより、地味なイタズラ程度で大それたことなどできない)ということだ。

 

 このまま変な勘違いをされて、する必要のない対立をするよりかは、今ここですべて教えてしまった方がマシだろう。

 

 

「企むもなにも、俺はただ『俺でも使える魔法』の開発に(いそ)しんでただけだ。まぁ、俺の魔法適正は皆無に等しい(お察しだ)から、チョットしたことにしか使えないけどな」

 

「…なに?」

 

「たとえば……ほいっ」

 

「?」

「おい、ローリエ!」

 

 

 シュガーに「スイーツ」をかけてから、自分のおやつ用の粒あん団子をパックごと渡す。

 

 

「はいシュガーちゃん、あげる」

 

「えっ!! いいの?」

 

「うん。いま、()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「すごい! シュガーの考えてることがわかったの!?」

 

 

 突然の甘味に目を輝かせるシュガーちゃんに微笑みを返したところでアルシーヴちゃん達に目を向ければ、アルシーヴちゃんは信じられない、という顔をしていた。カルダモンはどうやら俺がしたことを理解したようで笑いをこらえており、フェンネルは今起こったことが理解できておらず混乱している。

 

 

「今、俺が使った魔法は『スイーツ』といって、甘いものが食べたくなる魔法だ」

 

「あはは! なにそれ!」

 

「まったくもって理解できません……」

 

「ローリエ、お前な………

 …なら、ハッカにかけたのも似たようなイタズラ魔法か」

 

「そ。術者の言葉に反応して爆笑しちゃう魔法で、『ゲラ』って名付けた」

 

 

 実演したイタズラ魔法に呆れるアルシーヴちゃんとフェンネルに、ツボにハマったのかお腹を抱えてくっくと笑いだすカルダモン。ハッカちゃんを笑わせた魔法の正体もついでに教えると、アルシーヴちゃんはますます呆れた様子で片手で頭痛を抑えるかのように頭を抱えた。

 

 

「他にも色々開発しててね。効果次第ではすぐに実現できる魔法もあるかもしれない。詳しくはここのノートに書いたんだが………」

 

「言わなくていいです。アルシーヴ様、たかがイタズラといえども、勝手な行動は咎められるべきでは」

 

「あッ!!? フェンネルお前、余計なことを!!」

 

 

 一ヵ月間ブラズーレの刑を食らわせてやろうか!?

 ずーーっとブラジャーがズレているかのような感覚を味わわせ続け、刑期を過ぎた頃には逆にブラジャーがズレてないことに違和感を持つほど、しつこくやってやろうか!? 

 

 

「ふふふ……そうだな……そうだな、フェンネル。」

 

 

 そう思った時、アルシーヴちゃんがフェンネルに笑い声で答える。

 その笑いは、いつもアルシーヴちゃんがしてそうなうっすらとした美しい笑みでも、しょうもないダジャレで吹きだしそうになるのを堪える笑みでもなく。

 

 

「ローリエ……魔法の開発はとても興味深い。お前でも使えるということは、効果と原理を知っていれば、誰でも使えるということだからな……!」

 

 

 いい事を思いついた俺の顔を、鏡で見た時のような笑みだったのだ。

 

 

「ゲラ!」

 

「だァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッハッハッハッハッハ!!!!!」

 

 

 魔法特有の不思議な感覚とともに、自分の意思と反して口角が上がり、腹筋が震える。立つことも困難になり、呼吸が上手くできなくなる。

 

 

「しばらくそうやって笑っていろ。それが仕置だ」

 

「こうしてみると、笑わせる魔法とは不気味ですね…」

 

「ヒィーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 

「うわぁ………」

 

「おにーちゃん………」

 

 

 このままでは、確かに腹筋と頬が死ぬ!

 だが………やられたまま終わるヤツだと思うなよ!

 

 笑いが治まってきた時を見計らって残り少ない魔力に集中する。

 イメージは、前世のアキバにいそうなメイド………それも、猫耳のッ!!

 練習などしていないが、やり返すなら今、ぶっつけ本番でしかない!!

 猫耳メイドの言葉を鮮明に思い出しながら、密かに魔法を組み立てる。

 

 食らえ! 俺の新呪文……!

 

 

「………ルカ、ニャン……!」

 

「「「!!?」」」

 

 

 完全に後ろを取られたはずのアルシーヴちゃんは、俺の魔法に即座に反応して、防御魔法を無詠唱で展開する。

 

 でも残念。俺の新魔法は、攻撃魔法ではないのだ。

 

 

「…………?? ローリエ、今の魔法はにゃんだ……っ」

 

「「「…………。」」」

 

 

 口を開いてそう言ったアルシーヴちゃんが固まり、シュガー、カルダモン、フェンネルも同様に沈黙する。

 はたから見れば、アルシーヴちゃんが噛んだように聞こえるだろう。でも、彼女は噛んだわけでも意図的ににゃんと言った訳でもない。

 

 

「………………おい」

 

「………なん………だいっ……フフッ」

 

「今、ニャにを……

 …ニャに………

 …ニャ……」

 

「あ、アルシーヴ様……?」

 

「……にゃぜだ…? にゃぜ、にゃって言えニャい……?

 フェンネル、違うんだ。こ、これは……さっき、ニャんらかの魔法を……っ!!」

 

 

 鼻血でもだしそうな程に真っ赤になったフェンネルを見ながら、弁解の言葉を口に出すことでな行がなぜか言えなくなったことを少しずつ理解したのか、その表情はだんだん赤くなっていく。そして。

 

 

「ローリエエエ!! 今すぐこの魔法を解けェェーー!」

 

 そう掴みかかってきた。未知の魔法を身に受けたせいか、かなり動揺している。

 アルシーヴちゃんが言ってきたことは全て正しい。

 猫語魔法・ルカニャン。俺が思いついた、萌え特化の魔法だ。原理と効果がぶっつけ本番でまだ不安定だが、研究次第でもっと言動を猫に近づけることができるだろう。

 面白いからもうちょっとからかってやろう。

 

「知らない! 知らないよォォーーーッ!」

 

「嘘をつくにゃッ!!

 お前が私にさっきの……『ルカニャン』だかをかけた結果、ニャ行が言えニャくニャったんだろうが!!!」

 

「いいじゃあないか。可愛いよ、アルシーヴ」

 

「貴様、とうとう開きニャおったな……!!」

 

 開き直りじゃあなくて事実だから。後ろにいるフェンネルも、直立不動のまま鼻血を静かに流している。猫語のアルシーヴちゃんに脳がオーバーフローしたんだろう。カルダモンも複雑な顔をしながらシュガーと共に部屋を出ていった。

 

「反省が足りニャいようだニャ………」

 

「ちょ、待て!! 可愛いから! 可愛いから許して!!」

 

「許さんッ!! 私の魔力が尽きるまで、貴様の開発した魔法(ゲラ)の餌食にしてくれる!!!」

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 

 アルシーヴちゃんの宣言通り、俺は『ゲラ』でひとしきり笑った結果、腹筋と頬の筋肉が地味に筋肉痛になった。

 

 

 

 

 追記。

 アルシーヴちゃんにゲラをかけられたせいで腹筋と頬肉が死んだ俺は、腹いせに計画通りフェンネルにブラズーレをかけまくって、いつも通り追いかけ回されたのは言うまでもない。

 彼女を撒いた後俺は、人目を気にしながらズレているような気がするブラジャーを直そうとするフェンネルを一度G型魔道具を通して見たのだが、いつもの彼女とは全く違う、羞恥に染まった一面に不覚にもときめいてしまった。

 セサミに「あまりにも可哀想だからやめてあげなさい」と言われた後も、ごくたまにコッソリやっている。

 

 なお、この一件があってから、『ブラズーレ』と『ゲラ』、そして『ルカニャン』が準禁忌(無許可の使用が発覚した場合、軽度の罪に問われる)の魔法として登録された。おかげで新開発の魔法の研究もできなくなった。納得いかねぇ。

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 前世で見ていたビミョーな魔法を再現すべく好き放題開発した諸悪(笑)の根源たる八賢者。そして準禁忌の魔法を三つも編み出した凶悪な一面(笑)は、後のエトワリア魔法史にしっかりと記されることになる。後世にてそれを学ぶ未来の神殿の新人たちは、あまりにもショボい真実を知る事は絶対にないだろう。

ソルト&ハッカ&アルシーヴ
 ローリエの魔法(笑)の被害者(笑)。どうして彼女達になったかというと、ただ単純に作者が「甘味を躊躇しながら欲しがるソルトが見たい」「まったく笑わないであろうハッカの爆笑シーンを見てみたい」「アルシーヴにニャンニャン言わせたい」と思ったからである。そういった欲望と魔法は、実に相性が良かったわけだ。

フェンネル
 アルシーヴを崇拝している八賢者。今回はただ忠誠心を鼻から流すだけで終わってしまったが、あまりにも扱いが雑だと思ったため、最後の最後に『ブラズーレ』によって見る人によっては女を感じる一面を作った。作者はハッカちゃん一筋なので上手く演出できたかは自身がない。

セサミ
 ローリエの魔法の検証に付き合った八賢者。氷の魔法には興味こそ湧いたものの、難易度とローリエがネタに走ったことから、拙作の港町編では普通にきららと戦った。



ローリエの魔法
 元ネタは『勇者ヨシヒコ』シリーズの魔法使い、メレブの魔法から。効果の低い魔法は、往々にして消費MPも低いという法則がある(メガンテなどの例外はあるが)。ローリエの元々の魔力総量(最大MP)が少ない事に注目して登場させた。

勇者ヨシヒコシリーズ
 深夜に放送されていた、ドラゴンクエストのパロディドラマ。勇者としての素質を持ったヨシヒコが、熱血戦士ダンジョーやタイラームネなただの村娘ムラサキ、そしてビミョーな金髪ほくろ魔法使いメレブとともに魔王を倒す……という話のはず。2019年現在では『魔王の城』『悪霊の鍵』『導かれし七人』の3シリーズが存在する。



あとがき

随分更新が遅くなった上にパロディをパロった番外編で申し訳が立ちません……w
いや、別にドラクエウォークや東方CBが面白かったから、とかではないんですよ?ええ。……違いますとも。
………スライムナイトのこころ集めなきゃ。あとルーミアもゲットしなければ。
という冗談はさておき、筆が進まないのはプロットが完成してないからです。プロットだけでも完結させてから筆を進ませた方がいいのかなぁ。
では、次回もお楽しみに!

ヒロイン投票です。(投票結果が反映されるかどうかは不明です)

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