きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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滑り込み投稿じゃあああ!!!!
きららちゃん誕生日オメデト☆


きらら誕生日記念2020:チャラい彦星

 ランプとマッチとともに巻き込まれた七夕の衣装騒動の後。

 私は、彦星について考えていた。そして―――

 

 その昔、織姫という女性と好きあっていて、やがて結ばれた男性。

 

 男性、というだけでひとり連想してしまったのだ。このエトワリアでは女性の方のほうが多いから、余計に目立つ。だから記憶に残っていた。

 その名をローリエ。

 八賢者唯一の男性で、彦星と比べるとその……浮気性、いえ…飽き性の、じゃない……女たらし…でもなかった。えーと………気の多い人だけど。有名な男の人、だと思う。

 だからか、彦星の……しいては男の人の感覚についてちょっとお話するために、私は神殿に顔を出していた。

 

 

「あ、きららちゃん。誕生日おめでとう!

 これ、プレゼントな」

 

「ありがとうございます、ローリエさん。」

 

 ローリエさんが綺麗に包装された直方体を手渡してくれた。形と重さからして本かな? ランプとマッチに続いて、プレゼントしてくれるとは本当にありがたい。

 

「しかし、どうして俺のところに?

 七夕祭りは終わっただろう?」

 

「えっとですね……」

 

 私は、七夕祭りの前に起こった騒動について、包み隠さずローリエさんに教えた。彼は、目を丸くして楽しそうに相槌を打ち、話を聞いてくれた。

 

「はぁ〜…ハッカちゃんがこの前不在だったのはそういう事だったのか……しかし、きららちゃんがランプを口説くとは」

 

「ち、違います!口説いてません! 織姫と彦星を演じてただけでした!!」

 

「あ、良いよ。俺応援するから。なんなら牧師役もやるぞ。」

 

「違うって言ってるのに!!」

 

「……それで、この土産話について、何か思うことでもあったのか?」

 

「!!」

 

 図星でした。

 彦星は演じられたけど、彦星のように本当に好きな人が現れる感覚が分からなかった。だから、同じ男の人であるローリエさんに聞きに来た。

 そうして悩み――というにはちょっとしたものだけど――を話し終えると、ローリエさんはため息をついて、

 

 

「そんなん気にするだけ無駄だ」

 

 

 ―――と。ず、ずいぶんバッサリです。

 

「それを言われてはおしまいのような…」

 

「でも事実だ。だいたい、きららちゃんは誰かを好きになりたいのか?」

 

「え? いえ、そういう訳では……」

 

「だったら良いだろ。彦星は彦星、きららちゃんはきららちゃんだ。ヒトを気にしてたらいつまでたっても恋愛なんざできやしねぇ。

 聖典の中にも、女の子同士でちゅっちゅしてるのあんだろ。どんな理由であれ、人を愛するのは素晴らしい事よ。理屈で考えちゃあいけないのさ」

 

 確かに、春香さんや優さんの出てくる聖典では、キスをしている描写はいくらかあった。でも……

 

「そういう、ものなんですか?」

 

「あぁ。春香と優ちゃんは恋人になるしコトネとしずくは最終的に結婚するからな。あの二組はお互いを愛し合っていた。彦星と織姫も似たようなモンだろ」

 

 確かに。コトネさんとしずくさんの結婚のくだりは初耳だけど、自分の好きになりたい人を好きになるって意味では、あながち間違いでもないのかも。

 

「……ところで、ローリエさんはそういった恋愛とかはしたことは?」

 

「ない、って訳じゃあないけど、俺の場合ちょっと特殊だからねぇ」

 

「……………………複数人いますもんね」

 

「オイなんだその凄まじいジト目は。確かに俺は好きな人いっぱいいるけどさ。そーゆー事じゃなくてさ。もっとこう……『幸せにしたい』じゃなくて『幸せになってほしい』って感情なのよねー」

 

「………???」

 

 

 ローリエさんのその答えには要領を得なかったけれど、それなりの意見を得ることができた。夜も遅くなるといけないので、この辺で失礼することにした。

 

 

 

 

 

 ……そして、夜。自宅にて。

 今日は色んなことがあったなぁ。ランプとマッチを始め、皆からプレゼントを貰った。こんな賑やかな誕生日は生まれて初めてかもしれない。

 

 そういえば、ローリエさんからは本を貰ったっけ。袋はまだ開いてないから確定じゃあないけど、何の本だろう。ちょっと包装を開けてみようかな――――

 

 

 

灰獣〜ハーレム王に俺はなる〜

 

「」

 

 

 全身が凍った。

 い、いや! そんなはずはない!

 ローリエさんは軟派なイメージが強いけど、年齢を弁えることのできる人です! 幼いクリエメイトには紳士的だし、女性の意思を最優先してお話をする!

 ……そんな人が、大人の本を私に渡すはずがない!たとえ妖しいタイトルだったとしても、例え表紙絵が危ない感じだったとしても………

 これは、ローリエさんからの善意の誕生日プレゼントなんだ!!

 

 そう決意しながら本を開いて。

 

 ――――――私はその行動を後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめん、きららちゃん!!渡す本間違えた!!

 コリアンダーに渡すはずのものが手違いになって………」

「そうですか」

「お、おや? そんな爽やかな笑みをして……まさか……」

「はい。読みました。ちょっとだけ」

「OH………読んじゃったか…」

「読んじゃいました」

「こっちを渡すつもりだったんだけど……」

「……『七夕物語』?」

「全年齢向けの童話集だ。持ち運べる文庫版を探すのには苦労したぜ」

「そうでしたか、分かりました。許しましょう。でも後ろの二人が許すでしょうか?」

「へ?後ろ? なんの―――」

 

「先生?」

「覚悟は出来たかローリエ」

 

「おーまいぐっねす」

 

 

 

 

 




キャラクター紹介&解説

きらら
 七夕の主役。ローリエに恋する気持ちを相談したが、それは己次第と知り誕生日を終える。しかし、夜にとんでもないバースデーテロを受け、爽やかな笑顔でキレかけた。誤解が解けたことと制裁要員が来た事で矛を収める。

ローリエ
 きららからの相談を請け負った変態。その裏でコリアンダーにちょっとただれたハーレム官能小説を送りつけようとしたが、きららのバースデープレゼントと混同する痛恨のミスを犯す。このことで、制裁要員からOHANASIを受ける羽目になった。

ランプ&アルシーヴ
 制裁要員。



桜Trick
 タチ先生によって2011年〜17年まで連載されていた百合ラブコメ。高山春香と園田優の『特別な友達の証』としてキスをすることから始まる純愛の軌跡を描く。飯塚ゆずと池野楓の片思い恋愛や野田コトネと南しずくの家庭の事情が絡むディープなラブストーリーも見物である。

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