きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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さて皆さん。お待たせしました。
(作者が)待ちに待ったコラボ編後半の始まりですぞ!!



2020/10/3:本文を一部修正しました。


男三人のブルース その②

 ―――翌日。

 

 日を改め、人払いをした食堂の隅にて行われた男三人の会談は、ホーブンさんの家族の話から始まった。

 

 

「娘は……きららは生まれた時から不思議な力を持っていた。どんな力かすらも分からなかった故、その力のせいで災厄が起こったり、悪事に巻き込まれたりするのを何よりも恐れたよ。私は各地を巡る商売をしていたから、なおさらな」

 

「そうだったんですか……」

 

「悩みに悩んだ末、私はとある田舎の村人達に見つかるであろう入口付近に、まだ赤子だったあの子を…託した……」

 

「あの……奥様はそのとき、どちらに…?」

 

「産後の肥立(ひだ)ちが悪くてね…長生き出来なかったのだ。

 不思議な力を持つ娘を身籠っていたから、なにか悪い影響を受けたのかもしれない。」

 

「…ごめんなさい……」

 

「謝らなくていい。私とて、あの時の判断が正しいのか間違っているのか、今も分からないままだ。

 ―――だが、少なからず後悔はある」

 

 

 ホーブンさんは、娘を連れ回していたら、何かあった時に彼女を守れないと思ったのだろう。故に、田舎の集落に彼女を託したのだそうだ。

 

 

「なるほど。で、もし娘さんに会えたら何をする気なんだ?」

 

「娘はきっと私の事など知らない。自己紹介したら、すぐに謝りたいと思っている。」

 

 

 俺が娘と会ったらのことを聞けば、ホーブンさんは合間を置かずにそう答える。

 なるほどな。ホーブンさんとしては、きららちゃんとの絆を作り直したいと思っているのか。

 

 

「……心儀、お前はどう思う」

 

「えっ!? どう、って……」

 

 いちおう、心儀に訊いてみるが言葉を濁す。モロ家族の事情だ、こうなるのも当たり前である。

 ―――だったら先に、俺の考えを言ってしまおう。

 

 

「……ホーブンさん、あなたの気持ちはよく分かった。

 良い知らせと悪い知らせがある。どっちから聞きたい?」

 

「……? では、良い知らせから…」

 

「あなたの娘、きららという少女。俺はおそらくその子を知っている」

 

「!!! ほ、本当ですか!?」

 

「ここでの嘘は不誠実というものだ。

 ―――だが、あなたが親として彼女と会うことは許さない。これが悪い知らせだ。」

 

「「!?!?!?」」

 

 

 俺の言葉に二人が動揺する。それはすぐに、『何故だ』という眼差しに変わる。その理由も、しっかり説明しておこう。

 

 

「俺の知っている『きらら』は……元気に、逞しく育った。生まれ持った力を上手く使いこなし、人との絆を繋げていっている。親無しで、仲間たちと共に。仲間たち()()でな」

 

「た、確かにそうではありますけど………」

 

「簡単なことだ、心儀。きららちゃんは『両親がおらず、村の人に育てて貰った』子なんだ。そして今は多くの仲間がいる。そんな彼女に『父親』をすげつけるとどうなるか?

 ―――そこで生まれるのは、ただのすれ違いだけだ」

 

「…そんな、ことって……!」

 

 

 そこまで聞いたホーブンさんが拳を握りしめる。握力で拳が白くなっているのがわかる。それは俺への怒りというよりも、彼女を捨てた自分自身へ向かう怒りのようだ。頭では分かっていたとしても、理屈でどうにもならないのが感情というものだ。

 

 

「こうなる予感はあった。娘は私の事を忘れて……いや、覚える機会すらなかったのだ。覚悟はしていた。だが……ままならぬものだな」

 

「ホーブンさん……?」

 

 ホーブンさんが口を開く。心儀は心配そうに見ているが、俺は何も言わない。

 

 妻を失い、娘の恐ろしい未来を案じたのであろうホーブンさんの行動。それが全て裏目に出たと思う。同情はするし可哀想だとは思う。

 だが彼をきららちゃんの父親として紹介するかは別だ。彼女の意思次第では、ホーブンさんは奥さんの忘れ形見を家族として扱う事が出来なくなる。

 

 

「で、でも! だからといってすぐに決めてしまうのはどう、なんでしょう……」

 

「……!」

 

「もう少し色々話し合って……決めたほうが……良いんじゃないかなって……」

 

「心儀さんは優しいお人だ」

 

「えっ? いや、人として思った事を言っただけですので……」

 

 

 心儀が恐る恐るながらも俺の意見に反対する。ホーブンさんはどちらかというと心儀に心が傾いている。まあ当然だな。ここで素直に俺の言うことを聞いてしまったら逆に怖い。

 心儀はホーブンさんのことを気遣っての発言なのだろうが、俺だって意地悪で言ってはいない。きららちゃんの幸せを第一に考えているのだ。とはいえ、このままでは折り合いがつかない。どうしようか。

 

 

「ローリエさん。貴方の意見はよく分かりました。父親にも関わらず、その責任を果たせなかった者にとっては耳が痛い話です。―――しかし……

 この世でたった一人の家族には変わらないのです。親子としてではなくてもいい。もしくは一度でもいい。どうか合わせていただけませんか…?」

 

「ホーブンさん……」

「……………」

 

 大の大人の懇願に、心儀も俺も絶句する。娘のために土下座までするとは。

 困った。これでは、俺が悪人みたいじゃあないか。だがコレばっかりはきららちゃんの心持ち次第でしかないのは変わりないし………ん?ちょっと待て。

 

 

「……親子としてではなく……?」

 

「ローリエさん?」

 

「ホーブンさん。少し良いだろうか。」

 

 ホーブンさんと心儀に耳打ちする。男同士でこういうことはあんましたくねーが、妙案が思いついたのだから仕方がない。細かいことは後にすべきだ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 俺が思いついた妙案。

 それは、ホーブンさんの防具屋にきららちゃん達を呼ぶことであった。これなら、客と店主という関係できららちゃんをホーブンさんに会わせることができる。

 

 

「これが新しくできた防具屋ですか……!」

 

「凄い品揃えですね、きららさん!」

 

「ローリエも心儀も、いい店を知ってるね。」

 

「……おい、本当に大丈夫なんだろうな?」

 

 ……ランプとマッチ、あと佐久隊長も来ているけど想定内だ。あとはホーブンさんの露骨な暴露に気をつければ良いだけである。

 

 

「お客さん……何を、お求めだろうか……?」

 

 ホーブンさんが明らかに動揺した声で4人に話しかけているのを見て、頭を抱えたくなる。彼としては、すぐにでもきららちゃんを抱きしめたいのだろうが、事前に「そんな事したら彼女が驚く」と釘を刺してある。でもコレ時間の問題だな。場合によっちゃあ、刺した釘が秒ですっぽ抜けるぞ。

 

 

「わ! 見てくださいきららさん! この星の首飾り、とても可愛いです!」

 

 ランプが手に取ったのは、星の首飾り。それをきららちゃんに見せた途端……

 

 ―――ガラガラガシャーン!!

 

「「「「「!?!?!?」」」」」

 

 ……ホーブンさんのいる場所から荷物やらなんやらが崩れ落ちる音がした。動揺のしすぎでは?

 密かに心儀が助けに行ってるのを横目に見ながら、きららちゃんのやり取りを聞いていると、こんな話が聞こえた。

 

「何だろう、この首飾り……なんだか、安心する気がします……!」

 

「安心……? また、変な表現だな。」

 

「やはり、きららさんが星の髪飾りをつけているからじゃないですか?」

 

 ―――ホーブンさん、ステイステイ。出てこようとしないの。心儀君を困らせるんじゃあありません。

 

「そうなのかな…?

 とにかく、これを買おうかな。」

 

「!!! ありがとうございます…!」

 

「……………動揺のしすぎだろ…」

 

「先生、なにか言いました?」

 

「いや、なにも言ってねぇ」

 

 傍から見たら怪しさ150%のホーブンさんがきららちゃんから星の首飾りを受け取り、値札を取って会計を済ませる。そして、首飾りをきららちゃんに渡した―――その時。

 

 

「よおおおお! ジャマするぜぇ!」

 

 如何にも三下なガラの悪い男が5、6人入ってくると、いきなり店に飾ってある商品を片っ端から壊し始めた。

 

「なっ……!? ちょっと、何やってるんですか!?」

 

「おい、警邏隊たる私の前で乱暴狼藉を働く気か?」

 

「アァン!!? 乱暴狼藉じゃありませ〜〜ん!!

 俺たちゃ、正式な契約に基づいてやってんだ!コレを見ろ!!」

 

 当然のように注意したランプと佐久隊長に男Aが見せつけてきたのは、一枚の紙。商会や店同士で行われる契約書だ。そこには………借金の旨と『返せなかったら店を明け渡す』という文言――そしてホーブンさんのサインが。

 

「なっ!!? ど、どうして……ホーブンさんのサインが…!?」

 

「書いたからに決まってんだろ、バァァァカ!!」

 

 三下の男連中が殴り倒したくなるほどウザいが、真偽の程はホーブンさんに聞かなければならない。目配せをすると、ホーブンさんは厳つい表情のまま軽く首を横に振った。

 

 ―――成る程、偽造か。

 ならば、そんな事をする商会を突き止めなくちゃな。

 

 カウンターから男達の前にずんずんと進み出るホーブンさんの服にさり気なく触って発信器をつける。

 

「……話は分かった。

 私がそちらに出向けば良いのだろう。これ以上、店の商品に手を出すのは止めていただこう。お互い、穏便に話を済ませたい筈だ」

 

「さっすがダンナ! 話が分かるゥ〜!!」

 

「そ、そんな、店主さん……!」

 

「下がっていなさい、お客さん。たとえ身に覚えのない書類だったとしても、ここはまだ私の店だ。客も商品も私が守る」

 

 きららちゃんの前に立ち、男達を睨むホーブンさん。穏やかな口調とは裏腹に、凄まじい怒りが店内に漂う。だが男達は言葉だけは従順な様子に気を良くし、明らかに怒るホーブンさんの様子に気づくはずもなく、彼を連れ去っていってしまった。

 

 ……時間にして、わずか3分程度だった。

 しかし、あらゆる状況が一気に変わった。

 ホーブンさんはいずこかに連れて行かれ、店の前には閉め出されたきららちゃん達と心儀が立ち尽くすのみ。

 

 

「……どうして、ホーブンさんは連れて行かれなきゃいけなかったのでしょうか……?」

 

 きららちゃんが呟き、星の首飾りを握りしめる。

 

「助けに行きましょう!」

 

 ランプが奮い立つ。俺もそれに異論はない。

 奴らがやったのは、完全な違法行為だ。『借金の返済に店をかけてはならない』という法に触れているし、契約書があるからといって乱暴狼藉を許す理由にはならない。ソレを迷路帖の警邏隊や八賢者の前で堂々と勇敢なことである。

 つまり、違法の証拠を目の前で見せてくれた。すぐさま捕まえる事ができる。やりやすいったらありゃしない。後は発信器の反応を追って商会の場所を突き止めるだけだ。

 

 ―――ただし、きららちゃんには聞きたいことがある。

 

 

「ランプ、マッチ。佐久隊長を連れて馬車を引く馬を調達してくれ。できるか?」

 

「あ、はい! 分かりました!」

 

 俺の生徒は、正直に俺の言うことを聞いてくれた。本当に、成績以外は良くできた生徒である。

 そして、ランプが店を出ていき、店内に俺と心儀ときららちゃんの3人だけが残ったタイミングを見計らって、きららちゃんに話しかけた。勿論、戦いの準備を始めながら、だ。

 

 

「きららちゃん。…やっぱり、助けに行くのか?」

 

「…何を言っているんですか? そんなの、当たり前でしょう。」

 

「その人が例えば―――君のお父さん、とかだったとしても?」

 

「ローリエさん!!」

 

 心儀のリアクションからして、ちょっとストレートすぎたか。俺の質問に、きららちゃんは一瞬、苦虫を噛んだような苦しさのような表情をした。けど、すぐににへらと笑う。

 

「あはは、私にはお父さんはいませんよ。」

 

「……」

 

「村にいた頃はずっと思っていましたよ。『どうして、私には皆みたいにお父さんもお母さんもいないんだろう』って。でも……今は仲間がいます。その仲間が『助けたい』って言ったんです。私も助けたいですよ……勿論、私自身の意思で、です。

 ましてやその……助ける人が、本当に私のお父さんだったとしたら……助けない理由がないじゃないですか」

 

 

 ……嗚呼、なんていい答えなんだ。

 ソレを聞ければ、十分かな?

 

「分かった。行こうか、きららちゃん。

 このローリエが、君の意思を全力で手助けしよう」

 

「ありがとうございます!!」

 

 こうして、俺達の『ホーブンさん奪還作戦』が開始した。

 

 

「――ところできららちゃんは、子供の作り方って知ってる?」

「ちょ!?!? 藪から棒になんてこと訊いてるんですか!!!」

「え? えっと…川を流れるおっきな桃をコウノトリが運んできて、それを割ったら生まれるって聞いたことが……」

「あれ、随分と混じってませんか?」

「……悲しいな、心儀。俺はきっと数年後に、この子に【自主規制(ピッーーーーーー)】のことを教えないといけない」

「なに言ってるんですかぁぁぁーーー!!? 目の前にきららさんがいるのに!!」

「あの、ローリエさん、心儀さん? 何ですか、そのせっ……」

「わーーー!わーーー!! 言わないで!言わないで良いから!!」

「あーーー、子供作りの儀式?」

「誰がギリギリの線を攻めろと言いました!?!?!?」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 言ノ葉の都市・とある商会の地下室にて。

 

 二人の男が対面していた。

 一人は痩せぎすの男。豪奢な服飾に身を包み、厭らしい笑みを浮かべている。

 もう一人は筋肉隆々の男。全身を鎖で縛られ、檻の中で痩せた男を見上げている。

 

「ふっふっふ………やっと手に入れましたよ。ホーブンさん。あなたの技術。そしてコネクションをね。」

 

「………」

 

 鎖で縛られた男・ホーブンは、睨んだ瞳で、痩せぎすの男に詰め寄った。

 

「ビレッツ……あんたは…自分がなにをしようとしているのか分かっているのか…!?」

 

 筋肉質の大男も、鎖と檻に遮られているせいか、痩せぎすの男―――ビレッツにとっては恐怖の対象になりえないようだ。

 

「当然です。ゴールデンホーンに岩トカゲ…金属生命虫に飛竜!!

 ここまで良質な素材などどこにいるでしょうか!!

 あなたのお陰です。コレで我々『ビレッツ大商団』も、大いに賑わい儲かることでしょう!!!」

 

「……あんたらの素材の乱獲の噂はかねがね聞いている。動物たちが絶滅するまで乱獲を続けるつもりか………!!?」

 

「知ったことではありませんね。

 私達は商売人なんですよ? 商人は金を稼ぐものではありませんかッ!!

 まぁ……確かに金になる生き物が死に絶えるのは嫌なのでこちらで管理させていただきましょうかね」

 

 

 ビレッツの底知れない、なによりも汚れた欲望にホーブンは後ずさる。

 それと同時にホーブンは、目の前の男は自分と相いれないものだと確信を得た。

 ホーブンは、防具を作る時、素材となった生き物たちに感謝を込めて、それらを無駄にしないように、素材の力を100%以上引き出すことを信条にしている。また、多くの人々に愛され使われることこそ奪った命への礼儀であり、一番大切にしていることなのだ。そうして生まれたホーブンの防具の信条が『限りなく軽く・丈夫に』だ。

 ホーブンは防具の素材を大切にしている。だから防具の素材となる動物や魔物の採取は適度に抑えて乱獲を避けるし、他の商会にもホーブン独自の素材調達のルートは内緒にしてきた。弟子さえとってない徹底ぶりである。

 

 だが自分を捕らえたビレッツにはそれがない。素材になる動物たちを、金のなる木かなにかと勘違いしているのだ。彼はおそらくホーブンのコネクションを最大限活用して動物たちを狩りつくす腹積もりだろう。文字通り絶滅はさせないだろうが、それでもロクな事にならないのは目に見えている。

 

 これはまずい、とホーブンが思った、その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォ――――――――――――――ン!!!!

 

 

「「!!?」」

 

 地下室が大きく揺れた。

 何事かと驚愕に表情を変える二人。

 揺れが収まったかと思った途端、地下室の入り口の扉が乱暴に開かれ、そこから大慌てで男が一人、転がり込んできた。状況からしてビレッツの部下である。

 

「何事ですか!」

 

「敵襲です! 八賢者と警邏隊と言っていましたが……ぐわぁぁあ!!?」

 

 報告が終わる前に背中から吹き飛ばされて地下室の壁に叩きつけられて意識を奪われるビレッツの部下。

 

 

「ハァーーーーーーーーーーッハッハッハッハッハッハ!!!

 貴様らの悪だくみもここまでだ!!!」

 

 もうもうと流れる煙の中から現れたのは、髪を二つの星の髪飾りでまとめた少女・きららと、卸したてのマントを靡かせて高笑いする八賢者・ローリエだった。

 

 

「何故って? ―――私が来た!!!」

 

「「「…………」」」

 

 

 何処ぞのヒーローの顔マネ&声マネを盛大にかましたローリエは………ものの見事にスベッていた。

 

 

 

 

 

 

 

 呆気に取られていたホーブンとビレッツをよそに、すぐさまローリエは懐の拳銃を抜き、クイックドロウで4連射。

 

「ぐぎゃああぁ!!?」

 

 放たれた4つの弾丸は、ビレッツが隠し持っていた武器―――クリスタル2つと、大小のナイフを弾き飛ばし、彼を丸腰にした。ビレッツがコッソリと手をナイフに伸ばした瞬間には既に着弾していたので、実力の差は一目瞭然だ。

 

 

「……さ、大人しく縄につこうか?」

 

「…無駄ですよ。仮に商団長の私だけを捕まえたところで、商団の警備達は止まりません。

 みんな、この商団を守るために必死になれる方々です。私を取り返すために躍起になるでしょう」

 

 

 ローリエの降伏宣告に、渋々従うビレッツ。

 だがビレッツは、己の部下たちを信頼していた。たった二人にどうこうできるほどの質と人数ではない。伊達に大商団を名乗っていない。

 しかし……そう言うビレッツに対して、ローリエは余裕の笑みを崩さない。

 

 

「それはなんとも…忠誠心が高いこって。」

 

「…そんな笑みができるのも今のうちです」

 

「心配ならいらないよ。なぜなら―――」

 

 

 ローリエは、ビレッツの知らない事実を、今ここで教えてやることにした。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 …場面をビレッツ大商団の本拠地、その建物内・ロビーに移す。

 少々時が遡ったそこでは、現在………

 

 

「ひいいいいいいいいいいいい!!!」

「心儀、目を閉じるな! いざという時に目を閉じてたら対応ができないぞ!」

「で、でも! 怖いです!!」

「だいじょーぶ! 精一杯サポートするよ!だから頑張って!」

「無理はしないでくださいね!」

「由紀ちゃん、青葉ちゃん、気持ちは有り難いけど…想像以上にキツいぞ、この戦い……」

 

 

 ……四人のクリエメイトが大立ち回りを演じていた。

 異世界に来ても町の治安を守る警邏隊のような恰好の色井佐久。

 シロクマのコートが良く似合うツインテールの少女・涼風青葉。

 動物耳が生えたようなニット帽のトレードマークはそのままに、天使のような羽衣をまとう丈槍由紀。

 そして―――異世界の戦士装備が自前の黒髪にあまりマッチしていない男性・白河心儀。

 

 それぞれが、商団お抱えの傭兵や忠誠心の高い従業員たちと戦っていた。

 

 佐久は己の身を盾にしつつ、敵を槍の刃以外の部分で敵を殴って昏倒させ。

 青葉は雪を伴う突風を起こして相手を吹き飛ばし。

 由紀は他のクリエメイトの傷を癒したり、防御力を上げる加護を与えるなどして補助に回る。

 他の三人が奮戦している中、心儀はというと………

 

 

「ローリエさん……いくらホーブンさんときららさんのためとはいえども、『表に立って戦え』なんて無理があるよもう……!」

 

「心儀さん!後ろ!!」

 

「うわあっ!!?」

 

「ギャアアアアアアアアアアア!!?」

 

「うわあああああああああごめんなさいっ!!」

 

「心儀落ち着け、今殴ったのは敵だ」

 

「えっ……あれっ……?ほ、ほんとだ……」

 

 

 他の三人にアシストされながら、危なげに戦っていた。今、後ろからの危機を青葉から指摘されて、振り向きざまに敵を一人撃破したのだが、味方だと思って慌てて謝罪してしまう必死っぷりだ。

 まぁ、無理もない。彼はもともと、社会人のクリエメイトだ。そして、エトワリアに召喚されてから比較的日が浅く、こっちでも戦闘経験も少ない。マウスの代わりに剣を握ってキーボードではなく敵を叩けと言われても困ってしまうのだ。

 

 

「うぅ…他のクリエメイトの皆さんの足を引っ張ってしまって申し訳ない……」

 

「弱音は終わってから言え!」

 

「は…はい!!」

 

 

 こうなった訳を説明するには、突入前のきらら達について少し語っておく必要がある。

 

 

 

 まず、ホーブンの保護にはローリエときららが動くことにした。

 彼が囚われているそこには、間違いなく強い敵か商会の長がいると予想したからだ。

 続いて、ランプとマッチには建物の外で避難誘導を行うことになった。二人(一人と一匹)は非戦闘員であるから、建物に突入するのはよろしくないときららとローリエが話し合った結果である。

 だが、そうなると……建物1階で、部下たちを引き止め戦う人数が圧倒的に足りない。荒事に慣れた警邏隊の佐久がいるとはいえ、戦いに慣れてない心儀と二人で……はさすがに心配であった。

 

 そこできららが『コール』で呼び出したのが青葉と由紀である。

 二人はそれぞれ「まほうつかい」と「そうりょ」のクラスであった。きららが広範囲制圧と味方の補助を考えて『コール』した結果である。

 

 そうして………

 

 

『ちわー、三○屋でーす。

 この度は―――神殿から、手錠のお届け物だァァァァァァァ!!!』

 

『『『『『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!?!?!?』』』』』

 

『『『『『その挨拶必要あるーーーーーーーーーーーー!!?』』』』』

 

 

 ローリエがニトロアントの群れで盛大に入り口をぶっ飛ばし、ガサ入れと称した戦闘が始まった。

 

 

 

 ―――そして、四人の大乱闘に至る。

 大乱闘と言っても、攻撃をしまくってダメージのパーセンテージを貯め、吹き飛ばす技で敵を場外にすればいいというワケではない。

 しかも、相手は数十人といる。佐久と青葉を中心にかなりの数を撃破してきたが、一向に数が減る気配がないと心儀は思っていた。

 

 

「倒しても倒しても、全然減りませんよ!?」

 

「…確かに、いささか数が多いな……青葉、また魔法で一掃できそうか?」

 

「すみません……もうちょっと待ってください!」

 

「うぅ、こっちも回復が尽きそうだよ~…」

 

 

 まさしく多勢に無勢。

 いくら『コール』によって強化されたクリエメイトでも、あまりの数の多さに、少しずつ押されていく。

 このままでは時間の問題だ。

 ローリエときららに早く来てくれと佐久や心儀が心の中だけで願った時……

 

 

「カスタードスマッシュ!!」

「ソルティードッグ!!」

 

 

 地を揺らすような、思い一撃が二発。

 ソレをまともに受けたビレッツ大商団の兵たちが派手に吹っ飛んだ。

 

 

「い、今のは!?」

 

「お待たせしました、クリエメイトの皆さん」

「おにーちゃんの言う通りだー! ドンパチやってるね!」

 

「シュガーちゃん、ソルトちゃん!!?」

 

 

 姉妹でお揃いの戦槌をひっさげて登場したのは、ローリエと同じ八賢者のシュガーとソルトだった。

 あまりにもタイミングの良い、しかも強力な助っ人の登場にクリエメイトは皆、言葉を失うも。

 

 

「あ、あの……お二人はどうしてここに?」

 

「心儀おにーちゃん! 実はね、ローリエおにーちゃんが教えてくれたの!ここが悪い商会だって!」

 

「ビレッツ大商団の悪事とその決定的な証拠の数々が神殿に届いたのですよ。あまりにも手際が良すぎるので、確認に来ました。もっとも………この状況を鑑みるにその必要もなさそうですが」

 

 

 心儀が疑問を投げかけることで、詳細が明らかになる。

 まさか、ローリエが応援要請を出していたとは。

 しかも、そのやり取りを聞かれていたのか、傭兵たちに動揺が走る。

 

「八賢者のシュガーとソルトだと!?」

「なんでここに入ってきたんだよ! 俺達がなにかしたってのか!?」

「ええい、所詮はガキ共だろう! 囲んで叩いちまえ!!」

 

 

 八賢者が三人も現れて及び腰になる者が現れ始める。だが、それでもまだ戦おうとする無謀な者たちがいた。

 その数だけでも十分数えきれない。再びクリエメイトと幼い姉妹賢者を取り囲み、襲い掛かろうとする……が。

 

 

「ディープレイン!!」

「隙ありだね」

 

 

 暴威を雨が流し、熱風が侵略する。

 

「ギャアアア!?」

「くそっ、今度は何だ!また新手か!?」

「なんなんだよ、コイツはぁッ!!?」

 

「こ…これって、まさか……!?」

 

 心儀は、やはりというべきか、『きららファンタジア』のプレイヤーとして当然だったというべきか、これらの攻撃に心当たりがあった。どちらも、ストーリーモードで見た強敵だった。

 

「八賢者・セサミ推参。あなた方の悪意を押し流す清流です」

「八賢者・カルダモン。覚えなくていいよ。どうせ君たちはすぐに捕まる」

 

「セサミさんにカルダモンさん!?」

 

 心儀の声に他のクリエメイトが驚く。

 シュガーとソルトが現れただけでも十分驚きなのに、更に二人のおまけがつくとは!

 この時点でローリエ含めてこの建物に5人の八賢者が集合したことになる。たかが一つの商会相手に戦力過剰どころの話ではない。

 

「あれー、セサミもカルダモンも来ちゃったの? シュガー達だけで良いと思ったのにー」

「今日は予定がなくて暇を持て余しそうだったからね。それに……ローリエが、こんな素敵なものを送ってくれたから」

 

 カルダモンが取り出した紙には、『ビレッツ大商団の悪党を包囲殲滅しようキャンペーン』と称した文言が書かれていた。しかも、『一番多くの悪党を捕まえた子には俺が自腹で好きなだけボーナスしてやろう!』とまで書いてある。色んな意味で問題のある招待状だが、カルダモンを焚きつける燃料には十分すぎた。

 

「うわぁ…」

「馬鹿かあいつは…」

「ローリエさん……」

 

 クリエメイトたちは正直、引いていた。商会ひとつのガサ入れ(戦闘)のためにここまで八賢者を動員していいものなのか? ……と。

 ちなみにローリエはこの時、カルダモンに送った招待状()を、シュガーやソルト、セサミには勿論、他の八賢者全員に送っていた。

 また、G型魔道具による短期間の諜報記録や悪事の書類の写真を、ルーンドローンで神殿に届けたのも彼である。

 この作戦を発案した彼曰く―――

 

『戦力の集中は戦いの基本だろ。ならどんな手を使ってでも最強の布陣を作るだけだ』

 

 ―――とのこと。何なのお前。発想が頭の冴えた馬鹿のそれなんですけど。

 ちなみに、当時の筆頭神官はこう語る……『どう転んでも、ローリエの財布が死ぬ以上の打撃はないだろう』……と。とりあえず、後処理をしてくれるだろう彼女を崇めよう。

 

 

「……というワケだから、後はあたしたちに任せてよ。」

「あーっ、ずるいカルダモン! ローリエおにーちゃんのごほーびはシュガーがもらうもんッ!」

「あ、こらシュガー!!独断専行するんじゃありません!」

「やれやれ……私も、行きますか。ローリエには灸をすえる必要もありますしね」

 

 

 八賢者4人はそれぞれ、本格的に戦う準備を始めた。

 何でも奢ってもらうというご褒美は単純だが効果覿面だ。

 ビレッツ大商団の面々は絶望した。派手に侵入してきた不届きな客たちと戦う仕事かと思ったら、援軍に八賢者が半分も来たのだから。もう殆どの敵に、積極的な戦意は残っていない。

 

「うわあぁぁぁーー!!俺は帰るぞ!」

「か、勝てるか!こんな連中に勝てるかよ!!」

「八賢者たちと戦うなんて聞いてねぇ!!」

「これで戦ったら俺達、犯罪者じゃねえか!」

「もう犯罪者扱いされてんだよ!逃げるしかねーじゃねぇか!?」

 

 そんな弱音を吐きながら逃げていく傭兵達。

 だが―――絶望は、終わらない。

 

 

「逃がさねぇよ! シュートバースト!!」

 

「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?」」」」」

 

「ハッハッハッハッハ! 往生際が悪いな悪党ども!

 このジンジャーから逃れられると思うなよ!!」

 

「「「「「ヒィィィーーーーーッ!!!!?」」」」」

 

「「「「……………」」」」

 

 

 市長、降臨。

 そもそも、ビレッツ大商団の本店が言ノ葉の都市に構えられているのだから、そこで悪事を働けば遅かれ早かれこの市長がやって来る事は当然だ。

 

 シュガー、ソルト、セサミ、カルダモン………そしてジンジャー。

 ここまで八賢者が揃ってしまえば、戦力差は歴然というレベルではない。天元突破した差はどうしても埋まることはない。

 ここから先の詳細はあまり記す必要はないだろう。

 なぜならそれから始まるのは、戦闘ではなく蹂躙なのだから。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ―――ビレッツ大商団は、アレからたった1時間足らずで潰れた。

 

 え、嘘でしょ?こんなのにホーブンさんが攫われたの? ってくらいにそれはもうアッサリと。

 さすがのビレッツも雇われ共も、八賢者半分以上相手に事を構えられる程に肝は据わっていなかったようだ。

 

 

「八賢者のみなさん、ありがとうございました。お陰で助かりました…!」

 

「気にすんな! 私は私なりに市長の仕事をしただけだ!」

「ソルト達もソルト達で仕事をしただけなのです。」

「そうだね。あたしに至っては退屈しのぎだったし。まぁ……おかげで、いいものを貰えそうだけど」

「むーー……! カルダモンに負けたぁ…あと二人多かったらシュガーの勝ちだったのにぃ…!」

 

 

 心儀が律義にも八賢者のみんなにお礼を言う。

 ちなみに、俺発信の『ビレッツ大商団の悪党を捕まえようキャンペーン』のMVP賞は僅差でカルダモンになった。賞品としてカルダモンは俺に各地の高級お土産を要求してきた。しかも財布がカラになるまでという注文つきで。チクショウ。タダより高いものはなかった件。

 

 

「……ローリエさん、ありがとうございます。」

 

「…ホーブンさん」

 

 

 ビレッツによって囚われていたホーブンさんも解放された。

 これで万事解決……じゃなかったな。まだひとつ、あったわ。

 

 

「……言うのか?」

 

「…はい」

 

 俺の質問に短く答えると、ホーブンさんは金色のペンダントをポケットから出して、開く。

 そこにあったのは、きららちゃんにそっくりな――きっと2、30代のきららちゃんがなるであろう雰囲気を持った――女性と、その隣に立ち不器用に笑うホーブンさんの写真。

 よく見てみると、写真の中の彼女は、お腹が少し膨らんでいた。

 

 

 俺も心儀も、「その女性が誰か」とは、聞かなかった。分かり切っていることを訊く必要はないだろう。

 

 ホーブンさんはがれきと化したビレッツ大商団の本拠地跡の真ん中に一人立っていたきららちゃんのもとへ歩いていき、彼女に話しかけていた。遠いからあまり聞き取れないが、野暮も必要ないだろう。

 

「あ、きららさーん!」

「あんなところにいたのか。おーい、きら――」

「はいストップ」

「うわあっ! せ、先生!?」

「しっぽっ……またしっぽを引っ張ったな!!」

 

 二人の元へ行こうとしたランプとマッチを引き止める。

 きららちゃんは、家族がいなかった分、仲間に恵まれたが……それでも良いタイミングに割って入る必要はないだろう。

 

「よしてやれ、ランプ、マッチ。実はあの人はな――――」

 

 その為に、二人には一足先にホーブンさんの正体を教えることにした。

 

「……ええええええええええッ!!? あのホーブンさんが…きららさんの、おとうぐっ

「声がデカい。今、ホーブンさんの大事なところなんだ。しばらくはあの二人っきりにしてやってくれないか」

「しかし…意外だね。まったく似てないはずなのに……

 でも、それならきららが星の首飾りに『安心する』って言ってた意味が分かった気がするよ」

 

 マッチとランプも加わり、俺達は夕日に照らされだしたきららちゃんとホーブンさんが、やや躊躇(ためら)いがちに抱きあうのを、しばらく見守っていた。

 

 

「心儀。今日はありがとさん」

 

「いえいえ、とんでもないです。寧ろ私が戦い慣れしていないせいで、クリエメイトの皆さんや八賢者の方々に助けてもらってばかりで……なんだか面目ないです」

 

「それでもだ。馴れないながらも上で大乱闘スマッシュブラザーズしてたらしいじゃあないか。佐久隊長から聞いている」

 

「あ、あはは…」

 

「じゃあ、帰ろうか」

 

「……そうですね、帰りましょうか」

 

「あぁ。()()()()()帰ろうぜ」

 

 

 ……?

 ちょっと待て、()()()()()()()()()……

 元の世界だって?

 

 自分の言ったことなのに、違和感を抱かずにいられなくなり、そのまま―――

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 ……目がぱちりと開く感覚がする。

 起き上がるとそこは神殿の俺の部屋で、寝てたところは俺のベッドで、そして……カーテンを開けば、朝日が眩しく俺に差し込んできた。

 つまるところ…………

 

 

「……………夢オチなんてサイテー……」

 

 

 こんな事を言う日が来るとは思わなかった。

 だが、夢と言うには、かなりリアルだった。それも……直前まで、夢だと気づかないくらいには。だから俺は、どうしてもこの出来事を鮮明に覚えていられるし、夢のままで終わらせるには勿体ないと思った。

 まぁ、だからといって何も出来ることはない。ホーブンさんの手がかりはない上にきららちゃんとの関係を証明できないし、心儀に至っては別次元だ。()()()手も足もでない。

 

 なので―――

 

 

「おっはよーソラちゃん!」

「あら、ローリエ? 珍しいのね。

 今日は一体どうしたの?」

「探して欲しいクリエメイトが……聖典に書いてほしいクリエメイトがいる。それをちょっと見つけてくれないか?」

「ええっ!!? ど、どうしたの急に!

 クリエメイトを探すって結構大変なのよ?見た目の特徴はもちろん、どこの世界かも探さないと……」

「頼む。ソラちゃんにしか出来ないんだ」

「……そう。なら、一応聞くわ。

 …なんて名前の、どんな人なの?」

 

「とある会社に勤めていて、『きららファンタジア』の聖典を愛する、黒髪の優男だ。

 ―――名を、白河心儀という」

 

 

 ―――手を出せる人に、ちょこっとお願いをしておく事にした。

 さて、飛竜のマントでも買いに行きますかね。

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 奇妙な邂逅を果たした拙作の主人公。もう一人の主人公とともに、いまだ確認されていないきららの父親を助け出した。なお、この後カルダモンのリクエストに律義に答え、各地を回ってお土産ツアーを開催し、財布が死ぬことになった―――夢が正夢になったならば。

白河心儀
 今回コラボしたきらファン原作二次創作『白河心儀のエトワリア冒険記』の主人公。至って常識的で温厚な性格をしているため、ホーブンの相談にもビレッツ大商団との戦いでも手堅い功績を積み立てた。なお、こちらの女神の根気次第ではもしかすることがあるかもしれない。

ホーブン
 今回のコラボ編でローリエと心儀が出会った、いかつい顔の防具屋の店主。その正体は『きららファンタジア』の主人公にして、両親がいないはずのきららの父親。それもそのはず、彼の名の由来は『まんがタイムきらら』の系統の雑誌を出している「芳文社」から取ったのだから(限りなくアウトに近いアウト)
 彼は妻が命と引き換えに産み落としたきららに宿った力が災いの種になるかもしれないと考え、生まれたばかりの娘を辺境の村に託す。しかし、いずれ再び会って彼女に謝ることを想って各地を旅する。
 …そして、願いは果たされた。

「私には生き別れた娘がいる。今日までずっと探していた」
「…見つかったんですか?」
「星の髪飾りと『きらら』の名だけを頼りに探していたんだが……友人たちのお陰で見つかってね」
「……!! それじゃあ、私が…!? ホーブンさんと、私は………!!?」
「……嫌、だろうか? 会って日も浅い、仕方ないとは思うが…」
「…………い、いえ!ちょっと驚いただけです。
 ただ、おっしゃる通りまだ会って日も浅いので…えと、ホーブンさんの事、色々と教えてください。
 …『お父さん』と呼ぶのは、それからでもいいですか?」
「……ありがたい。…ありがとう」

きらら&ランプ&マッチ
 主人公勢として当たり前な人助けをした結果、衝撃的な事実を知った原作主人公とその仲間たち。ビレッツ大商団の騒動の後、ランプとマッチはきららからホーブンとの関係を聞き、ゆっくりと親子関係を築いていく………ことになればいいなぁ。

シュガー&ソルト&セサミ&カルダモン&ジンジャー
 ローリエの証拠付きの応援要請に応じてくれた賢者達。別名・莫大なご褒美(奢り)に釣られた子たち。もちろん彼女たちは不正を許さない心意気でビレッツ大商団の警備を圧倒していったが、撃破数で優勝したらしたでローリエに遠慮をする気はなかった。ちなみにフェンネルはアルシーヴの警護のため、ハッカは秘蔵されている身分上外に出にくいという理由で応援に来れなかった。

ビレッツ
 ホーブンを拉致って、ホーブンが取り扱う武具の材料を奪い取ろうとした悪徳な商会「ビレッツ大商団」の商会長。しかし、ホーブンの拉致の過程をローリエに捕捉された上に悪事の証拠をG型魔道具に奪われたせいで賢者8人中6人を敵に回すこととなり、あっけなく商団は崩壊、本人もローリエに逮捕された。名前の由来は『卑劣』から。劇場版ドラゴンボールZの敵役並みに安直であるのはご愛嬌。



夢オチ?
 ローリエは夢だと思っていたようだが、心儀はそもそも『クリエメイト』なのである。クリエメイトとは、女神の聖典に描かれる人物であり……召喚士が『コール』をすることでエトワリアに顕現させることができる存在なのだ。いつか、この日の出来事が夢という一言で片づけられない日がやってくるだろう。
 ……まぁ、『これコラボですよね』とか言われたら身も蓋もないのだが。



あとがき
 まずは、長々と本文のご愛読ありがとうございました。そして、快くコラボの許可を下さったstrawberrycake様にこの場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました!

きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?

  • ブレンド・S
  • NEW GAME!
  • ひだまりスケッチ
  • がっこうぐらし!
  • Aチャンネル

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