きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
それでは~
バレンタインデー。
その起源は、ローマ帝国の時代まで遡る。
ローマ帝国皇帝・クラウディウス2世は、恋人がいると士気が下がるという理由で、兵士の婚姻を禁止した。
だが、キリスト教司祭ウォレンティヌスは、そんな兵士たちの為に内緒で結婚式を行った。皇帝の禁止命令にも屈せず、兵士達の愛を祝い続けた結果、処刑されてしまう。
その聖ウォレンティヌスの処刑日は、2月14日であった。このためこの日は祝日となり、恋人達の日になった、というのが一般論だ。
「――という訳だ。今までの話のどこにチョコレートが出てきた?いいか、コリアンダー。バレンタインデーは本来、チョコレートなんか要らねーんだよ!」
「一個しかチョコレートを貰えなかった男の僻みはよせ、ローリエ」
「あれは母さんからのだ。あのね、そういうのは異性から貰ったチョコとしてカウントしないの。一個も貰えてないの、俺は。
というか、
「俺は同級生の女子からいくつか貰ってる」
「泣きそう」
「余裕だな、お前」
神殿内で恋人どもがくっつきイチャつき始めるこの時期に、俺は必死にコリアンダーにバレンタインデーの意義を説明していた。別にチョコレートを貰えなかったから悔しい訳ではない。
リゼちゃんの誕生日を祝うのは百歩譲らなくてもよしとしよう。だが、チョコレート云々で騒ぐのは違うと思うのだ。
「まったく、リア充はとっとと部屋に引っ込んで静かにけだものフレンズやってればいいのに。
そもそも、最初にバレンタインデーにチョコレート渡そうなんて考えたのはどこのお菓子屋だ?どーせ、ココアいじりながらガラスパイプでコカイン吸ってる変なヤツだろ?」
「いい加減にしないか、ローリエ」
「だってぇ!!おかしいと思わないか!?俺は女の子達とお近づきになりまくってるってのに!!」
「お前はただセクハラしてるだけだろ。そういうスタイル、絶対嫌われるぞ」
「そうかなぁ?
コリアンダーみたいな草食系の男はさ、多分……女の子達から『彼は…そう、いい人よね?』みたいな、女の子がテキトーに男を褒める時の言葉ランキング1位の言葉を浴びせられて………それだけだぜ?きっと、日を跨げば忘れられちまう。
そうなるよりは、『ガンガンいこうぜ』の方がいいと思うな。」
「お前はガンガンいきすぎてんだよ。そんなんだと、籍に入る前に牢屋に入るハメになるぞ?」
コリアンダーの裏切りといきすぎ宣言を受け萎えた俺は、鬱屈した気分を晴らす為に、外をふらつく事にした。
「ちょっと外歩いてくる」
「女子に迷惑かけるなよ」
「今日はそんな気分じゃない……」
今日の俺の足取りは、きっと一年で一番重いだろう。
◇◆◇◆◇
「はぁ……困ったもんだ、あの男も」
ローリエが立ち去り、部屋に残った俺は、ため息をひとつつく。
アイツの女好きについてはもう言うことはないが、特にアルシーヴやソラという女性に対する執念じみたものを感じる。
アイツは、二人が好きなのだろうか?
それにしては、アプローチの方向性が違いすぎる気がするのだが。
「ローリエ、いるか?」
そう考えていると、扉の方から女性の声が聞こえてきた。俺は女子の相手は話しづらいから好きじゃないのだが、ここには俺しかいないから仕方がない。
「……何か、用か?」
「おや、君は…確か、コリアンダーだったか。
ローリエはいないか?」
相手はこの前に会ったばかりの、アルシーヴという女子だった。ローリエの幼なじみの一人らしい。
「……アイツは、自分がチョコレートを貰えないことを散々愚痴ってから、出て行った……」
「何やってるんだ……」
「用があるなら、伝言するが……」
「いや、いい。こっちで探してみよう。見つからなかったら、また来る。」
「そうか。」
アルシーヴは、扉を閉めた。
それにしても、伝言する、か。我ながら無粋なことを言ったもんだ。
伝言がいるかどうかなんて、手に隠し持っていた
ローリエ。お前は案外、嫌われてないのかもな。
◇◆◇◆◇
私は、神殿の外を
神殿の外にとどまらず、言の葉の樹の中の洞窟に入り、街へ下る道を歩きながらきょろきょろと探していく。
そして、言の葉の街から神殿へ繋がる入口まで来た時、その姿を見つけた。
「ローリエ!」
私がその名前を呼ぶと、緑髪の少年はゆっくりとこちらへ向いた。その表情は、驚きの感情に満ちている。
私自身も、これからチョコレートを渡す事実を受け、緊張してきた。顔もさっき走ったせいか熱い気がする。さっさと渡してしまおう。
「なぁ……今日は何の日か、わかるか…?」
「今日?えっと……」
変なことを聞いてしまった。でも、今日が何の日かなんて、答えは一つしかないはずだ。だから……
「あっ、分かった!リゼちゃんの誕生日だ!!」
「誰だその女は」
「え、ちょ、そんな顔すんな!ごちうさ……じゃない、聖典の子だよ、聖典の子!!」
確かにバレンタインデーと誕生日が同じ聖典の人物ならいたかも知れないが、空気くらい読んで欲しい。それとも、意図的に読んでないつもりか?
「そんな事を伝えに来たんじゃない。他にもあるだろ?」
「他にも……ああ、アレだ!
ふんどしの日たわば!!?」
張り倒してやろうかと思った。というか張り倒した。
「もういい!そんなにとぼけるなら渡してやらん!!」
そしてちょっと、冷たい言葉を叩きつけてしまう。
いや、今のはコイツが悪い。こっちの気も知らないで、ふざけたことばかり言うからだ。
そう考えてこのまま帰ってしまおうかと思った時。
「待てよ」
手を掴まれた。私の足が止まる。
「……バレンタインデーだろ?知ってるよ。
…ただ、アルシーヴちゃんが俺にくれるとは思ってなかったんだ。だって俺は……変わったからな…」
その言い訳をしそうな表情に頭に来た。
「どんな事があっても、ローリエはローリエだろう!!これでも食べて落ち着け、バカ者!!」
久しぶりに出した大声とともに、私はローリエにチョコレートが入った箱を押し付ける。
これにはローリエも目を丸める。だがそれも一瞬で、すぐにかつて見た、人をからかう時に見せた笑顔になる。
「へぇ~ぇ、アルシーヴちゃん、そんな顔もするんだ?」
その言葉を機に、私の頭が冷静さを取り戻す。
「み、見るなぁっ!!!」
「タコス!!?」
ニヤニヤしていたローリエにビンタをかまし、逃げるようにその場を後にした。
あの時ローリエが私のどんな表情を目にしたのか。
それは神殿に戻った後で鏡を見ても、分かりそうにはないだろう。
キャラクター紹介&解説
ローリエ
バレンタインデーを否定しつつ、実はチョコレートが欲しかっただけの男。いるよね、こういう人。かくいう作者もこういう一面はあります。
コリアンダー
女が苦手な男。こういう人に限って、女子に丁寧な対応をするから、学生時代にクラスメート全員にチョコレート配る系女子に救われてたりする。
アルシーヴ
今年ヒロイン的ポジションを獲得した女性。幼なじみの異性とか、憧れのシチュエーションであると思う。純愛系EL同人では王道だ。ちなみに作者もそういう幼なじみがいて、もっと関係を進めたかったと後悔している。
バレンタインデーの起源
出展はWikipedia先生より引用。
『最初にバレンタインデーにチョコレート渡そうなんて考えたのはどこのお菓子屋だ?』
日本でバレンタインデーが流行したのは1958年ごろ。第二次世界大戦ののち、流通業界や製菓業界の努力によって、1970年代後半に日本社会に定着する。
なお、バレンタインデーにチョコレートを渡すのがいいのではと最初に考案して実践したのは、一説に大田区の製菓会社メリーチョコレートカムパニーであるとされる。しかし、同社が行ったとされるイベントは昭和33年であるのに対し、神戸のモロゾフ製菓が20年以上前の昭和11年2月12日に外国人向け英字新聞『ザ・ジャパン・アドバタイザー』に、「あなたの
ちなみに後に続く『どーせココアいじりながら~変な奴だろ?』の元ネタは、映画『デッドプール2』にて、デッドプールが『スーパーパワーを最初に考えた漫画家』に対して『どーせガラスパイプでコカイン吸ってる変な奴だろ?』と言ったことから。いずれにせよ、作者に貶す意図はございませんのでそこはご注意を。
あとがき
リゼちゃん誕生日おめでとう!!きらファンで絶対当てるマンことこの三毛猫が☆5ココアとチノに続いて迎えに行ってあげるからね!!!!!!
きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?
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