きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
教育も同じ。
…ローリエ・ベルベット 著 自伝『月、空、太陽』
第3章より抜粋
「セサミ、ちょっと頼みがある」
遠山りんとローリエの無茶苦茶なやりとりがあった後。
彼は私にそんなことを言ってきた。はっきり言ってローリエからの頼みなんて想像する限り嫌な予感しかないのでとっととつまみ出したいのが本音ですが。
「魔法を効率よく使う方法を教えてほしい」
そう思っていた私に彼がしてきた頼みは、予想外のものだった。
「どうしたんですか、いきなりそんな事を聞くなんて」
「まったくだローリエ。お前、変なものでも食ったか?」
「張り倒すぞお前ら。俺だっておふざけ一辺倒じゃないの。」
そう言ってローリエが説明しだす。なんでも、転移魔法を一回しか使えないのが悩みだという。自身の属性が曖昧な上に魔力の総量も少ないことが魔法を使いにくくしているのだというのだ。そこで彼は魔法が得意な賢者達に教えを請おうと考えたのだそう。
「いいんですか、私で? アルシーヴ様の方が魔法の技術はありますし、女神候補生の教育をしてるのもアルシーヴ様でしたが……」
「あいつにはもう根掘り葉掘り聞いたよ。属性は兎も角、魔力総量は個人差があるからどうしようもないんだと。俺個人としては心許なさすぎる魔力総量を何とかしたいんだがな」
魔力総量は、人が魔法を使うために補充できるクリエの総量である。これは、それぞれの生まれつきによるものがとても大きい。私もまた、幼い頃から魔法を覚えるのには苦労していても、覚えた魔法を使うことに苦労した記憶はない。……ゆえに、私はもう一つの方法を彼に提案した。
「ローリエ、やはりあなたの属性を一つに絞った方が早いのではないですか……?」
「ええっ! エトワリアに最大MPの増加ないの? ふしぎなきのみくらいあってもいいだろ!?」
「不思議な木の実?」
「食べると魔力の総量がアップする、みたいな……」
「ある訳ないでしょう、そんなの」
頓珍漢なたわ言を一蹴する。大体、そんな木の実があったら神殿の書庫の数冊にそれについての本があるはずです。記録がないということはつまり……魔力総量ばかりはどうにもならないということ。
「アルシーヴちゃんにも同じこと言われたし……やっぱ属性を絞ることしかないのか?」
「そもそもなぜ『魔力総量を上げる』という発想に拘るんですか」
「簡単なことだよセサミ。もし魔力総量を上げる方法が見つかれば、エトワリアの魔法は更に発展する」
ふと思いついた疑問に、さも当然であるかのように答えてみせた。その時のローリエの目は、いつものちょっとやらしい目つきやふざけた気配が消え失せ、まっすぐ撃ち貫くかのように私の瞳を覗いていて、オレンジと金色のオッドアイに引き込まれそうになる。
「まず『魔法がどれだけ使えるか』で起こる差別は減るだろう。俺自身、経験したことだ。『魔法は使えないのに』って遠巻きに陰口叩かれてたっけ、コリアンダーと仲良くなる前は。でもまぁ、俺のケースはマシな方かな。」
「マシな方だと?」
「ああ。酷い時は、イジメが発生して、それがエスカレートして被害者を殺す、なんてことが起こり得る。」
「なっ……!?」
「はっ……!?」
コリアンダーが魔法での差別云々に切り込んでいくと、ローリエが衝撃的な答えを返す。コリアンダーも私も、言葉に詰まってしまう。
イジメで人殺しなんて、そんなことがあるとは到底思えない。でも、ローリエの口ぶりはまるでそういった出来事を見てきたかのような確信に満ちていた。どんな人生を送ったらこんなことが言えるのだろう。なんて言っていいか分からずにいると、ローリエは「他にも」と流れを打ち切って話題を変える。
「更に強力な魔法も開発できるだろう。魔法工学に発展も望めるだろうな。 ………あ、それはそれで『魔法開発のためなら命はどうでもいいのか』みたいな別問題が生まれそうだなぁ……」
私とコリアンダーを置き去りにして、一人で勝手に考察を進めていくローリエ。流石、私と同じ地位にまで登りつめただけあって画期的な発想を持つといったところだろうか。
「ローリエ、お前は魔力総量を上げる魔道具を作ろうと思ったことはないのか?」
「……!!
なる程、手段が見つからないなら作ればいいってことか。」
「い、いや、なにもそこまで本気にしなくても……」
コリアンダーの冗談半分な助言に何かを閃いたように表情が明るくなるローリエ。私には理解できません。
「無謀です! 今まで成功した試しがないというのに、魔力総量を増やす手段を探すなんて!」
「セサミ。確かに、道のりは厳しいものだ。君はそれを分かっていて言っているのだろう。もしかしたら、魔道具どころかヒントすら掴めないかもしれない、俺のやることが無意味になるかもしれない、と思っているんだろう?」
「だったら……」
「でもね、全ては『できる』って信じることから始まるんだ。例え蜘蛛の糸並みに細いチャンスでも、
教育も同じ。
これでも俺はアルシーヴちゃんと同じ教師なんでな、と席を立って笑う彼からは意図やふざけた気配など感じなかった。でも、一瞬だけ、影を落としたような表情になり、それが私に違和感のようなものを残していった。一体、そんな顔をして何を考えているのか。
「何を考えているのですか、ローリエ……」
その言葉をやっと口に出した頃には、私以外誰もいない空間に、半開きのコテージの出入り口から潮風が穏やかに吹き込んでいた。
◇◆◇◆◇
「しかし、かったりぃ~~町中の情報収集とかよ~。」
「お前なぁ、これはお前が言い出した事だろうがよ。いくらかったるくても何とか頑張ってくれ」
セサミとの魔法談義から数分。
俺達男タッグは、だらけた町へ繰り出して情報収集をすることになった。本来はもっとセサミと話をしたかったがアルシーヴちゃんに窘められた以上そうも言ってられない。でも全くといっていいほど気が進まん。俺もオーダーの影響を受け始めたのか?
だとしたらマズい。こんな時に寝落ちなんてしたらやりたいことができなくなる。正気を保ってる今のうちに俺の「働く理由」を繰り返し暗唱し定着させなければ……!!
理由……
俺の働く理由……
「はぁ……神殿内でハーレムを築く…神殿内でハーレムを築く…神殿内でハーレムを築く…筆頭神官と
おお。思った通り、だんだんダルさとか面倒くささとか、そういった怠惰な感情が抜けていく感じがする。アプリで答えを知っていたとはいえ、これで寝落ちの心配が無くなったのはデカい。
「おいローリエ、お前さっきから欲望がダダ漏れだぞ」
「コリアンダー、俺は至って真面目だ。」
「動機がスゴく不純だったが」
「寝転がってる町の連中の仲間入りをしたくなければ同じようにしろ」
「意味が分からん……」
そうほざくコリアンダーに俺は説明をしておく。オーダーの副作用で町の人々の「働く意欲」が失われているのだとしたら、俺達にもその副作用が降りかかりかねない。それを予防するためにも、自分の働く理由を口に出して再確認させることが予防に繋がるのだ、と。
一通り説明をするとコリアンダーは一応は納得したのか少し考える素振りをすると、自身の働く理由を口にしだした。
「金を稼ぐ……金を稼ぐ……おぉ、確かにやる気が復活した気がするな。」
金ってお前……夢がなさすぎるだろ。そんなことを思っていたら、口に出していたのか、コリアンダーから「やりたいことを見つけた時の為の貯金だよ」との返事が返ってきた。まぁ確かに、何かやることが見つからなかったらまずは金を稼げと
「ところでお前、
視界外からの鋭い視線を感じたことで、俺はまた失敗したと悟った。彼が言わんとしていることはつまり、「なんでオーダーの副作用とその予防法を知ってたの?」ってことだろう。下手な嘘は見抜かれる。
「俺はただ、町の人々の様子から考えられる推論を述べただけだ」
前を見たまま、コリアンダーの方を向かずに答えて、「さぁ、早く聞き込み再開すんぞ!」と無理矢理会話を中断した。不安しかないが、こういうごまかし方以外この時点では思いつかなかった。
「お姉さん、何ボサッとしてるのさ。さぁ立って」
「おっさん、働かないと生活できないぜ」
「そこのお嬢さんも、仕事してやりたいことやるんじゃないのか?」
「仕事の後に何かご褒美でもあるんだろう、兄さん?」
「ねぇねぇ彼女、君は誰の助けになりたいんだい?」
「………。」
俺達二人は、町中のだらけた人々に片っ端から声をかけて、正気に戻していた。それも、聞くべきことを聞くためである。「働く理由」を思い出させた後、“例の件”について聞いて回っているんだが、どうも良い情報は得られていない。
往来に寝転んでいた人々だけじゃ足りず、屋内のだらけた大人たちにも声をかけようとした。まずはドーナツ屋の女店主だ。テキトーな強盗()に狙われて、投げやりになっていた人。彼女も、正気に戻さなければ。
「奥さん、いつまでもそうやって寝そべってないで」
「おいローリエ」
「何だよコリアンダー。俺は今、仕事中なの。見りゃ分かるだろ」
「にしては女にしか声をかけてないじゃないか。もうちょっとマトモにやろうとは思わないのか」
「……ナンパじゃあないんだけどなぁ」
コリアンダーにあらぬ疑惑をまたかけられる。確かに、俺が声をかけた人の女性率は多いかもしれないが、そんな場合じゃないことくらい分かってる。仕方ない、またアルシーヴちゃんに何か言われるのも面倒だ、男にも声をかけて――
「ちょっとっ!」
「「?」」
渋々ドーナツ屋を出ようとした俺に、幼い声がかかる。振り向くと、14、5くらいの女の子がカウンターの影からこちらを見ていた。
「お嬢さん、君は……?」
「あんたらね、町の人達を元に戻してるのは?」
「うん、まぁ、そうだけど……?」
「ママを元通りにするのはやめて」
くせのついた銀色のショートヘアを指でくるくるさせて、俺達を睨みつけながらそんなことを言われた。
「………はい?」
「しかし、君の母親なんだろう?見た限り、父親はいないようだけど……」
「関係ない!早く出てって!!」
「お母さんが働かないと生活できないんじゃないのか?」
「うるさいわね!あんたらには関係ないでしょ!!!」
コリアンダーが説得するも、彼女は聞く耳持たずと言わんばかりに「出て行って」の一点張りである。これが反抗期というやつなのだろうか。俺には前世でも今世でもこういう典型的な反抗期が来なかったため実感が湧かない。結局、俺達は中2の少女に「出てって」とドーナツ屋から追い出されてしまった。
「何なんだよ、あの子供は。」
「仕方ない、他を当たろう。あの子については暫く後回しだ。」
しかし、珍しいな。「お母さんを助けて」なら兎も角、「お母さんを治さないで」なんて聞いたことがない。アプリでは、小学生ほどのロリがお父さんを叱咤激励してやる気を取り戻させていたが、それぞれの家庭の事情というやつなのだろう。なれば無闇に首を突っ込むべきではない。
「そういえばローリエ?」
「ん?」
「オーダーの副作用の件、セサミは知っているのか?」
「……………あっ」
「あ、じゃねーよ!
早くコテージに戻って、伝えに行くぞ!」
セサミにオーダーの副作用の件を伝えてなかったのはわざとではあるが、そんなことは言う必要はないだろう。あたかも忘れてたかのようにコリアンダーに引っ張られながらコテージへ戻った。
◇◇◇◇◇
「あらら、コリャまたぐっすりお休みで……」
「遅かったか……」
帰った俺達を待ち受けていたのは、クリエケージの中で、パンツ丸出しでぐっすりと眠りについている遠山さんと八神さん、そしてそのクリエケージの前の床で、ただでさえあぶない水着が脱げかかってきわどくなっているのも構わず、これまた気持ちよさそうに夢の中へ旅立っているセサミだった。どちらもあられもない姿となっており、目撃したコリアンダーは茹で蛸のように真っ赤になってしまっていた。俺は何の迷いもなくカメラで三人を撮る。
「おいお前なにやってんだッ!」
「さて、立て直すとしますかァ」
「それより写真を消せッ!!」
消すワケねーだろ。男の夢だぞ。それに俺が撮ったのは彼女達の寝顔だ。なんら問題はない。それに、たとえ写真を消したとしても俺の心のフィルムは一生忘れはしない。
「ローリエ! いい加減に―――」
「うるさいぞコリアンダー、遠山さんと八神さんの睡眠妨害だ。セサミを静かに復活させることに専念しやがれ。」
そう指示するとコリアンダーはさっきまで喚いていたのが嘘みたいに黙る。こうなったら今日中になんとかするのは無理だろう。コイツのような純情派はセサミみたいなあぶない美人がこうかばつぐんだ。セサミ、ありがとう。
俺は俺でクロモンにコウりんの服について指示したり、コテージにやってくるであろう、きらら達の
◇◆◇◆◇
一方、きらら達一行は、だらけた港町にて、イーグルジャンプの社員である涼風青葉、滝本ひふみ、篠田はじめや飯島ゆんと合流し、きららの『パスを感じ取る能力』で残りの呼び出されたイーグルジャンプの社員・八神コウと遠山りんに近づきつつあった。
しかし、彼女達はコテージの前で起こった予想外の事態により、ダメージを負ってしまったのだ。
「いったた……」
「み、みなさん……大丈夫ですか?」
「ううぅ……」
「ほんま、汚いと思うわ……」
「何だったんだ、今のは……?」
この時の様子を、イーグルジャンプ・モーション班の篠田はじめはこう語る。
「気が付いたら見慣れない町に放り出されるし、いつの間にか着ていた服装は見慣れないし、ゆん以外のみんなは見つからないしで、最初こそ戸惑ったんだけど、まるで自分がゲームの中に入ったみたいで、RPG気分を味わえた。きららさんやランプちゃんのお陰でこの世界についても知れたしね。それでも――――――流石にあんなやつに出会うとは思わなかったよね」
彼女は、エトワリアに召喚された後、同僚である飯島ゆんとはすぐに合流できたものの、他のブースメンバーに会うこともなく、だらけた町人たちからエトワリアのことを聞くこともできずに右往左往していた。しかし、青葉とひふみが見知らぬ人々を連れてはじめ達と合流してからは、その見知らぬ二人と不思議な一匹が、エトワリアについて教えてくれたのだ。それが、きららとランプ、そしてマッチである。
その後ブースメンバーときらら達一行は、あらかじめはじめが見つけていた大きめのコテージへ行くために、川に架かっていたいた橋を修繕作業を始めたり、その道の職人をたずね、彼らの「やる気」を復活させるべく、手探りで仕事をする意味を思い出させようとしたりして、ようやく橋が直ったのだ。体を休めたきらら達は、ようやくコテージへ向かうことにした。
しかし事件は、コテージの前で起こった。
「コテージの前まで行った時、中から……神父が出てきたんだ。金髪で、いかにも神父ーって格好の男だったよ。まるで、『フェアリーズストーリー』シリーズとか、ひと昔前の『ドラゴンクエスト』シリーズから出てきたかのような神父服だったね。それで、その男は開口一番、こんなことを言ったんだ。」
『ようこそ、マヨえる仔羊タチヨ。わが教会に何のゴ用カナ?』
『『『『……………………。』』』』
金髪の神父は外国人のようにカタコトの日本語できらら達に話しかけてきたのだ。
「………うん、わかるよ。『まるで意味がわからない』って顔をするのは。実際私もすぐにはピンとこなかったし、青葉ちゃんやゆん、ひふみさんも私と同じ感想だったと思うよ、この時点ではね。きららさんやランプちゃん、マッチに至っては訳が分からなくて混乱してたみたいだったし。」
そんな混乱する一行を無視して、神父は続ける。
『おいのりをする?
おつげをきく?
いきかえらせる?
どくのちりょう?』
『生き返らせるって……』
『見たらわかるやろ…』
「ゆんのツッコミでもう私は吹きだしちゃったよ。だって、エトワリアに召喚されたとはいえ、ゲームから出てきたかのような格好の男がゲームの台詞をそのまんま言うんだもの。元ネタを知っている身としては笑っちゃうよ。」
『あの、私たちはそのコテージの中に用があるんです。中で何が起こっているか教えてください。』
きららはここでもこの金髪の男が敵である可能性を捨ててはいなかった。パスは確かにコテージの中から感じる。しかし、目の前の男はコテージの入口を遮るかのように立っている。しかも意味不明な発言。RPGネタを良く知らない彼女にとっては疑うなという方が無理な話である。
『オゥケイ。今、中ではケッコンシキが行われていマス。ゴサンレツの方は、招待状を見せてクダサイ。』
『け、結婚式っ!?』
神父の衝撃発言に、今度は一行全員が目を見開く。きららのパスの探知は確かなはずなのに、なぜこんなコテージで結婚式が行われているのだろうか。きらら達が考えるより先にランプが反論する。
『そんなはずありません! このコテージの中にはクリエメイトがいるはずです!それなのに、結婚式なんてデタラメを言うのはやめてくださいっ!』
『まぁ待てランプ、いきなりそんな事を言っても、神父さんが困るだけだ。まずはもっと情報を引き出してみるべきだ。』
『そうデス。オつげを聞き、オいのりをしながら落ち着いてクダサイ。』
『まだそれやるんだ……』
そうして、(誰も頼んでいないというのに)金髪の神父はおつげとおいのりを始めたのだった。
「ドラクエにおける「おいのりをする」はセーブ、「おつげをきく」っていうのはいわゆるあとどれだけの経験値でレベルアップするのかを知るってことなんだ。私達の作った「フェアリーズストーリー」シリーズも、セーブ時に話しかける相手が下級天使だったりと仕様はちょっと違うものの、影響を受けたのは間違いないよね」
『きららサン。アナタは、あと796Pointの経験値で次のレベルに上がるでしょう。』
『あの、青葉さん、レベルが上がるってどういうことですか?』
『えっと、レベルっていうのは、今の強さで、それが上がるってことは、強くなる……ってことなんでしょうけど。』
『そんな概念がエトワリアにあるんかいな?めっちゃ怪しいで。』
『確かに……現実は……』
「きららさんの疑問に青葉ちゃんは答えたものの、そもそもレベルって概念がゲームの中の物だし、ゆんは相当疑ってた。ひふみさんも、現実じゃセーブとかできないって言おうとしたみたいだけど、そういうことは考えるだけ辛いよね。」
『ランプサン。アナタは、あと114514Pointの経験値で次のレベルに上がるでしょう。』
『なんで私はそんなに経験値がいるんですか!!?』
神父は、きららに続いてランプにもお告げをきかせたのだが、そのあまりにも多い経験値に、ランプは抗議の声を上げる。だが、神父のお告げはこれだけでは終わらなかった。
『そしてソコのモーモンは……もうレベルアップ出来まセン。』
『なんでだよ!?』
『もう上限レベルだからデス。デモ、アナタがモーモンからツッコミ役にジョブチェンジすれば、レベル上限は更に上がるデショウ。』
『僕はモーモンじゃないし、余計なお世話だよ!!』
あまりにもひどすぎるマッチの扱いに、ランプは先程まで怒っていたのを一変、笑いをこぼし始めた。
そこで「何笑ってるんだランプ!」と喧嘩になるも、神父は更に次の作業を始める。
「マッチへのお告げを終わらせた神父は、「つぎはお祈りをしましょう」って言って、懐から二つのものを取り出した。片方は羽根ペン。こっちはいいさ。なんせ、「フェアリーズストーリー」を筆頭とした、様々なファンタジーものには欠かせないアイテムだったから。問題はもう片方。アレは…メモ帳の1ページみたいな紙切れだったね。ここで青葉ちゃんが笑っちゃったよ。」
黙々と雑な紙切れに何かを書き込んでいる神父、唖然としているきらら達、笑いをこらえるブースメンバー。この時点で混沌とした空気になっていた。
そして、神父はメモを書き終えるとこう言ったのだ。
『ソレでは、コノまま冒険を続けマスか?』
それは、セーブしたあと神父が主人公に尋ねる典型的な質問。「はい」と答えればゲームを続けられるし、「いいえ」と答えればゲームを終了できる。
「きららさんは、それに戸惑いながらも、「はい」って答えたんだ。そうしたら神父は「Oh!この冒険者タチにカミのゴ加護のあらんコトを!」というと、きららさんにメモを押し付けてこういったんだ。」
『…お疲れ様でした。このまま電源をお切りしやがれ』
『イヤ普通に喋れるんかいっ!!!』
「いや~~、ゆんのツッコミがエトワリアに来てから一番綺麗に決まった瞬間だったね。
その神父はどうなったかって? ……そのまま私達の修繕した橋の方へ歩いていったよ。ほんと、なんだったんだろうね。今でもよく分からない。それでね、「なんか良く分からないけど神父さんが退いてくれたからコテージへ入ろう」ってマッチが言った途端に、聞き覚えのある効果音と共にこんな声が流れてきたんだ。」
『涼風、篠田、飯島、滝本、ランプ、
『ええっ!?』
『な、何ですか今の声は……』
『っ! きらら、アレ!!』
「…………年末の笑っちゃいけないヤツの宣告が流れたかと思えば、黒いおもちゃのバットみたいな棒を持ったクロモンが襲いかかってきた。きららも応戦したんだけどね。数が多かったのか取りこぼしちゃってね。こっちにも来たんだけど…その時のあいつら、執拗に私たちの……お、おしりを狙ってきたんだ。
……そう、完全に年末のアレだった。」
『痛いっ!』
『あ"っ!』
『いたーい!』
『ひうっ!?』
『痛いですぅ…』
「地獄だったね。あいつら、一発しか殴らなかったけど、相当痛かったのを覚えてるよ。
アレがタイキックだったらと思うと、ゾッとするよ。
でも、今思えば、これは前座だったのかもしれない。神父さんが言ってた、『中で結婚式をやっている』ってアレ。ランプちゃんは信じてなかったけど、信じればよかったのかなって思う。
コテージの扉を開けて見えた光景に、皆絶句したから……!」
キャラクター紹介&解説
ローリエ
エトワリアの魔法の考察を深めたり、ハーレムを諦めてなかったり、あぶないコウりんやきわどいセサミを写真に収めたり、眠ってしまったセサミの代わりを請け負ったりした、真面目と不真面目の境界を漂っている八賢者。彼の目的は「ランプが成長&アルシーヴとソラが救われるハッピーエンド」と揺るぎない。魔力総量を上げることで、エトワリアの魔法発展を望めると言っていたが、このフラグをどう回収したものか。
コリアンダー
純情派なローリエの相棒。その性格上セサミには弱いが、ローリエの言動にある何かを見抜き、見出しつつある。人と人との絆とは不思議なもので、似たような性格同士が惹かれあうこともあれば、真逆な性格の人同士が惹かれあうのもまたありうる。事実は小説よりも奇なりとはよくいったものである。
セサミ&八神コウ&遠山りん
オーダーの副作用という名のラリホーに負けた人たち。「働く意味」を思い出さない限り怠惰の化身となるわけだが、そんな無防備な彼女達にローリエが何もしないわけがなく、写真を撮られてしまった。写真割合はセサミ7のコウりんが3。もともとローリエが百合の心得を会得していることもあり、コウりんは比較的無事だった。セサミについては……次回に語るとしよう。
きらら&ランプ&マッチ&涼風青葉&滝本ひふみ&篠田はじめ&飯島ゆん
ロ…金髪の神父にドラクエ風神父ごっこにさんざん付き合わされた挙句、子供の使いから輸入されたケツバットの制裁を受ける羽目になった人たち。このシーンの語り部にはじめさんを選んだのは、青葉とゆんと違って書きにくく、ひふみ先輩は性格上語り部に向かないからである。ぶっちゃけオーダーが解けたらその記憶はなくなるのだが、この語るタイミングについては言わぬが華だろう。
new game!とフェアリーズストーリーとドラクエの関係
フェアリーズストーリーについては原作開始時に2作目まで出ていること、『3』では青葉が手掛けたソフィアが出る(しかも盗賊に殺される)こと、ラスボスが主人公の親友コナーであることぐらいしか情報がない訳だが、青葉が子供の頃プレイしたのが『フェアリーズストーリー2』で、家庭用ゲームとして広く流通していることとnew game!の世界観を考えると、ドラクエよりも後でフェアリーズストーリーが始まったと考えられる。青葉は知らなくても、はじめやコウ、りんや葉月さんがドラクエを知っている可能性は高い。少なくとも、拙作ではこういう裏設定にする所存。
『このまま電源をお切りしやがれ』
元ネタは『ドラゴンクエスト9』のカラコタ橋の神父代行。ここでセーブをしたあとゲームを終了すると、上記のメッセージを見ることができる。『9』で初めて見られた屈指のパワーワードである。
△▼△▼△▼
セサミ「私としたことが、まさか職務中に眠ってしまうとは…しかも、働く理由すら忘れる始末……アルシーヴ様に何と言えばよいか…それに、私が寝ている間に色々してくれた彼らに感謝しなければ……って、なんですかこの内装は!?」
りん「私たちの服も変わってる…!?コウちゃん起きて!私達、大変なことになっちゃってるよ!!」
コウ「……zzz」
次回『恋仲に首を突っ込むのは野暮というもの』
りん「次回もお楽しみに……って寝てる場合じゃないよコウちゃんっ!!!」
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あとがき
結局、千夜ちゃんもシャロちゃんも当たらなかったよ……
令和もよろしくお願いします。
特別編のアイデアしか浮かばないですが、本編頑張りたいと思います。
ろーりえ「ああ、これ作者が働き始めたら失踪するパターンだ」
こりあん「言っていい事と悪い事があるだろ!」
きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?
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きんいろモザイク
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ステラのまほう
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ゆゆ式
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うらら迷路帖
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夢喰いメリー