きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
リアルの研修がようやく終わって、一日で仕上げました。
アンケート結果
ローリエ×アルシーヴ:4
ローリエ×ハッカ :1
ローリエ×ライネ :0
ローリエ×ジンジャー:1
そんなことより本編だ:6
……はい、続き書きまーす!!!!!!←
“俺は港町で、愛の形を二つ見た。
一つは八神さんと遠山さんの。もう一つは、そこに住むとある二人の少女のものだ。”
…ローリエ・ベルベット 著 自伝『月、空、太陽』
第3章より抜粋
くせのついた銀色ショートヘアの女の子。
先日、俺とコリアンダーを「ママを治すのはやめて」と言って追い払った子だ。
その子が今、
「おいローリエ、は、早く退散した方がいいだろ?
覗きなんて、趣味悪いぞ」
「顔真っ赤にして言うな、説得力が皆無なんだよ」
俺達は、物陰から彼女達を見守っている。すぐに立ち去ってもいいんだが、もうしばらく見ていたい。
さっきからコリアンダーが、俺の袖を引っ張ってここから立ち去ろうと何度も言っている。しつこいぞ。
「見つかったらマズいんじゃないのか?」
「見つかったら百合を応援する資格を失う。
見守るのも命がけだ。だから覚悟決めろ」
「勘弁してくれよ、そんな覚悟いらないぞ……」
なにか言ってるヘタレを無視して観察を再開する。
うおっ、舌絡ませてるぞ、ガチのやつだ……!
いやぁ、最高ですな。
爽やかな潮風、町の木陰で重なる二人の影、近くに昨日見た男……
……っ!!?
昨日見た男……!? それって、
「おいヘタレ! あそこにいるの、昨日の強盗じゃねーか?」
「なっ!? 本当だ……! あいつ、何する気だ………!?」
交番へ行ったはずのその男は、昨日みたいにやる気を全部削ぎ落されたような雰囲気はなく、眉間にしわを寄せ、ナイフを片手に悪意を滾らせていた。きっと、なにかの拍子に正気に戻ったんだろう―――目が雄弁に語っている。
あの目は、マズい。目が濁りかけている。かつて俺が殺した、あの盗賊を彷彿とさせる。ソラちゃんとハッカちゃんを攫い、アルシーヴちゃんを傷つけたあの野郎だ。
あいつはきっと、銀髪の子でも攫って身代金でも要求するつもりなのだろうか。女子二人は、まだあいつに気付いていない。このまま放っておくわけにはいかない。
「コリアンダー、あいつをぶっ倒せ。二人は俺が守る」
「えっ!? ………あぁ、わかったよ!」
突然の指示に目を白黒させたコリアンダーだったが、すぐに戦闘態勢に入った。アルシーヴちゃんのお墨付き通り、戦い方の基本は分かっているということだろう。
コリアンダーはどこからともなく木剣を取り出すと、ひとっ飛びで強盗に切りかかる。強盗は木剣をナイフで受け止めたものの、女の子達を見ていてコリアンダーに気づかなかったため、初動が遅れた。
そりゃそうだろう。だって、俺達と強盗との距離は少なくとも10メートルはあった。それを一息で接近できる奴なんてカルダモンくらいだ。
その後も彼は、縦に、横に、めちゃくちゃに振り回して強盗を圧倒した。剣の達人たるフェンネルには見せられたもんじゃない(少なくとも俺はそう思った)が、相手の得物がナイフであることも相まって現段階でコリアンダーが押している。
「二人とも! ここから逃げるんだ!」
「「!!?」」
俺はコリアンダーが時間を稼いでいる隙に百合CPの二人に呼びかける。案の定二人とも驚いた様子で固まる。
お熱い所、邪魔して申し訳ないが安全確保が優先だ。
「こっちだ!」
強盗とコリアンダーから離れるように誘導して、二人を避難させる。
女の子二人は、突然の乱入者に混乱していた様子だったが、やがて状況を飲み込んだのか、俺についてきてくれた。
コリアンダーはあのままで大丈夫だろうか………まぁ、なんとかするだろ。
「あのっ!」
「? なんだい?」
赤髪の女の子に後ろから声をかけられる。
「あなたは、何者なんですか?」
そして、そう問いかけてきた。
なるほど、彼女達にとって俺は、危機こそ知らせてくれたものの、名乗ってない以上、素性を知らない怪しい人間には変わりないってことみたいだな。
しかし、ここは普通に賢者と名乗って良いものか。賢者に悪いイメージはない。むしろイメージは良い。ただ、
「俺は………」
かといって、ここで嘘をつく理由も必要性もない。
少し悩んだ結果、俺は……
「俺はローリエ。しがない魔法工学の教師さ。」
こう名乗ることにした。
◇◆◇◆◇
「つ、強い……!」
「まだまだですね召喚士。」
「り~ん~。」
「うふふ。もう、コウちゃんったら~~。」
すぐ近くで、そんな会話と水の音がする。
けれど、それを確認するのも面倒くさくて、傍らのコウちゃんの体温と体重に身を委ねる。透き通ったヴェールを被った金色の髪を抱き寄せる。
コウちゃん、可愛いなぁ……。私に、ここまで甘えてくれるなんて。
「八神さん! 八神さんっ! しっかりしてください!」
「ん~~帰らなきゃって気はするんだけど、仕事せずにだらだらしてるの気持ちいいんだよね~。」
「そうよ~青葉ちゃん。私はもうちょっとコウちゃんとだらだらしてるから~。」
欲を言えば、ちょっとじゃなくてずっとこうしていたい。
こんなにも幸せな瞬間はないから。めんどくさい仕事をせず、大好きなコウちゃんとこうしていられるだけで、最高の気分だ。でも私達の答えに青葉ちゃんは「な……二人とも、そんなことを言うなんて……」とショックを受けている。
「そのままだと、ダメ人間まっしぐらやないですか!」
「お休みの日とか……だらける時はだらけていいと思うけど………今はダメ……」
ゆんちゃんやひふみちゃんがなにか言っているけど、私はこれでいい。
私はこのまま、コウちゃんと一緒にいたい。
誰かに取られるなんて、嫌……そう、思っていると。
「はあぁ………」
ため息が聞こえた。
私のではない。隣のコウちゃんも眠そうに目を半開きにしている。あくびはしてもため息は出さない。周りを見てみると、青葉ちゃんの視線が、ゆんちゃんやひふみちゃんの視線が、はじめちゃんに集まっていた。
「あの……はじめ?」
「八神さんもですけど、遠山さんもです! 遠山さんはこんな八神さんが好きなんですか?
八神さんを甘やかして、二人のゲーム作りへの情熱はどこへ行っちゃったんですか!!」
はじめちゃんにそう言われた時、頭の中で、昔の記憶が蘇った。
初めてコウちゃんに出会ったのはイーグルジャンプに入社した時。
同期なのに、物怖じせず人を寄せ付けない、ギラギラした雰囲気を持った人。でも、その瞳には情熱が燃えている。それが、コウちゃんだった。
仕事は本当に出来る人で、入社翌月に「フェアリーズストーリー」のメインキャラデザを先輩達を押しのけて勝ち取ったほど。当時の私にとっては、それがあまりに現実離れしていたから、「あぁ、天才ってこういうひとの事を言うんだな」って思って、半ば追いつくことを諦めていたのかもしれない。
でも、それでいいと思っていた。私は私なりに、自他に厳しく、好きなことに対して一生懸命な彼女を支えようと思ったのだ。幸い、この時からコウちゃんは私にだけは心を開いてくれてたから、大丈夫だろうと思っていた。
そして、私達の関係が大きく変わったのが「フェアリーズストーリー2」の製作時の事。葉月さんからADを任されたコウちゃんは、今までに見たことがないくらいに頑張っていた。一切の妥協を許さず、よりよいゲームを作ろうとしていた。
ただ……その実力を、周りの人に押し付けていたのかもしれない。当時の自分のストイックさを、後輩や部下に求め過ぎていたのかもしれない。
そのせいで――――――入社したての後輩が半年で辞めてしまった。
後輩が辞める前日、彼女はコウちゃんにこう言っていた。
『皆がみんな、先輩みたいに凄くないんですよ……?』
苦しそうに訴えてきた後輩を、コウちゃんはその時「だから何?」と簡単にあしらっていた。その翌日から彼女が来なくなり、葉月さんから辞めたと聞いたことで、私は彼女がコウちゃんに言っていたことの意味が少し分かった気がした。
そして、コウちゃんはその日から目に見えて落ち込んでいった。この時は葉月さんや他の上司に何か言われたのか、コウちゃん自身があの後輩の言葉の真意に気づいたのかまでは分からないけど。
仕事のペースは落ち、会社を休む日も増えてしまった。
そこに、葉月さんに頼まれた私がマンションのコウちゃんの部屋を訪れたのが始まりだった。
『コウちゃん……?』
その時のコウちゃんは正直見てられなかった。部屋に引きこもり、まともにご飯を食べることすらせず、瞳の中の情熱も消えかかり、
その原因が後輩のことであることに気づくのに時間はかからなかった。
私はすぐにご飯を用意し、コウちゃんに話しかけた。
『大丈夫? ご飯、作っておいたからね……?』
『………遠山さん? なんでここに……?』
『……りんでいいわよ。』
その時、思ったんだ。
あぁ、この人も私と同じ弱い人間なんだって。
この時まで、私はコウちゃんのことを完璧超人が何かだと思っていた。
でも、そうじゃないんだ。誰だって一人じゃ弱いままなんだって思った。
いつだかのドラマで聞いた、「人という字は、人と人が支え合ってできるもの」という言葉を実感できた気がした。
その後、私はコウちゃんの所に通い詰めて、少し話して帰るといった日々を過ごすうちに、コウちゃんの家に行くのが日課になり、毎日ご飯を作ってあげているうちに、コウちゃんは私に心を許すようになった。
やがて、後輩が辞めた直後のショックから回復し職場に復帰したコウちゃんは、それまでのとげとげしい雰囲気を改め、人と接するようになった。私ともよく話すようになった。それからはコウちゃんのいろんなことを知った。
東京出身の8月生まれで、家族以外からなかなか誕生日を祝われたことがないこと。
昔から絵が上手で、小学生の頃からゲームデザイナーを目指していたということ。
血液型をO型とよく誤解されること。
私の手料理が大好きだと臆面もなく私に言えるくせに、鈍感なこと。
―――かつての後輩を、「自分を超えるキャラクターデザイナーになる」と内心では信じていたこと。
彼女を自分の手で潰してしまったと知ったとき、ひどく後悔したこと。
懺悔するように心の内を教えてくれたコウちゃんに私はただ頭を撫でて、
『辛かったね』
と一言、伝えながら心で決めた。
この人を支えようと。
コウちゃんは、実力がある。それも、天才だと言われるほどに。でも、そのせいで独りになってしまう。
だったら、せめて私だけでもそばにいようと決めた。 ……だって、独りぼっちは寂しいもの。
そうして二人でまっすぐ走っていくうちに、ひふみちゃんと出会い、ゆんちゃんやはじめちゃんと出会い、そして――――――青葉ちゃんと出会った。気が付いたら、コウちゃんは独りじゃなくなっていた。
それでも、私は、遠山りんは変わらない。
私が働く理由。
それは―――
『八神コウと二人でゲームを作ること』
頭のくらくらや、全身の気だるさ、脳の中にかかっていた
◇◆◇◆◇
「ローリエさんですね。私はローズです。それでこっちが……」
「ちょっと待ってローズ!」
さっき助けた
「なによ、リリィ。私たちを助けてくれた人よ。何か問題あるの?」
「いや、確かに助けてくれたけど……」
どうやら、銀髪ショートヘアちゃんはリリィというらしい。彼女とは彼女の母親に声をかけた時に既に会っているからな。あの時の「ママを治さないで」発言も気になるし、こちらから切り出してみるか。
「あー、実はね? 俺は『ある情報』を集めてるんだけど、その時に彼女のお母さんに話しかけたのを見られてしまってね………」
「そ、そうなの? リリィ?」
「うん……。」
流石に発言についてストレートに聞かない。言いにくいだろう部分をフォローしただけ。あとは彼女達が自分から話すように誘導……もとい、話題替えするだけだ。
「ねぇ、どうしてローリエさんを警戒するの。たかがリリィのお母さんにたまたま声をかけただけじゃない。私達を助けてくれた人だよ?」
「でも……あたし達の関係は、秘密にしないと……!!」
「……お母さんと、何かあるみたいだね」
ローズちゃんはリリィちゃんとは違い、助けてくれた俺達(主に俺)に対して肯定的のようだ。
そこから情報を聞き出せないか、ちょっと攻めてみよう。
「あー……仲悪いんです、リリィとリリィのお母さん」
「ちょ、ローズ!? 他人に話すことじゃないでしょ!? それに……」
仲が悪い……? まだ情報不足だな。もう少し情報が欲しいところだけど……
「リリィ、あなたこの人を信じてる?」
「信じられる訳ないでしょ! 今日初めて会ったのよ!?」
考え事をしている間に、ローズちゃんとリリィちゃんの口論が始まってしまった。
しかし、「信じる」か………日本人の前世を持つ俺の感覚からしたら、リリィちゃん側の「初対面の人は信用しない」タイプの方が気持ちは分かる。
だが、初対面だから、と俺を警戒するリリィちゃんにローズちゃんはこう反論する。
「そうだね。でもね、『初対面の人を助けられる』ってなかなかできないと思うの。私でもできるかどうか分からない。この人はそれをやったの。さっきのメガネの人もそう。私には、二人をいきなり疑う理由があるとは思えないの。」
「でも、それはあたし達を油断させるか脅すかするためかも……!」
「ほぼ初対面で面識なんてないに等しい私達を?」
リリィちゃんの「でも」にローズちゃんはそう言い返して、リリィちゃんの反論を封じた。
ローズちゃんの言う事にも実は一理あるのだ。
たとえば、満員電車のなか、目の前で女性が痴漢に襲われているところに出くわしたとしよう。
その状況下で、はたして正しい行動のできる人間のどれだけいることだろう。
普通は、逆上した痴漢に襲われたり、男だったら女性に痴漢と間違われたりする可能性が思い浮かび、見て見ぬふりをしてしまうんじゃないだろうか。俺も、前世だったらそうする可能性の方がデカい。
まぁ、生物的に考えれば、関係ない事件に首を突っ込まないのは、逆上した痴漢から己の身を守ったり、冤罪という社会的死から自分を守ったりするためという点では合理的だ。
ローズちゃんには俺やコリアンダーが「自分の身を顧みずに自分たちを守ってくれてる男達」に見えていることだろう。信用は高めと考えてよさそうだ。
あとはリリィちゃんの信頼だけだな。
「じゃあさ――――これから、俺はこの街で情報収集するんだけど、二人も一緒に行くかい?
そうすれば俺がどんな人なのか分かるかもしれないだろ?」
俺は二人にそう提案した。一拍置いた後で、二人とも「なるほど、その手があったか!」と言わんばかりにポン、と拳を掌に収めた。
キャラクター紹介&解説
ローリエ
港町の百合カップルの避難誘導を請け負った八賢者。当の百合CPには賢者であることは言わず、二人の信用を得るために行動を共にすることを提案した。次回は聖者モードのローリエが見られるかも。女が大好きで、百合CPが大好きなのだから、普段の彼だったらやらない事もやるかもしれない。
コリアンダー
港町の百合カップルを狙う男の捕縛を請け負った神殿事務員。アルシーヴが「戦闘の心得はある」と言っていたが、彼の実力が秘密のヴェールから放たれるのはまた次回。にて。
遠山りん&八神コウ
new gameの公式CP。今回、りんの視点から過去編を少々執筆した。得能先生は八神コウの過去編について、「ドロドロしそうだから描かない」と発言しており、作中でも大まかな流れしか書いていない。つまり今回、作者は禁忌に足を突っ込んだことになる。これから作者は得能先生に足を向けて寝られないし、アニメ版ポプ○ピピック等で再びネタにされても「おこった?」とか聞けない。
リリィ&ローズ
拙作オリジナル百合CP。名前の由来は百合と薔薇。リリィは少々人見知りで慎重、ローズは人懐っこいが冷静。詳細の方は次回以降にて。
八神コウの過去編
遠山りんと八神コウが一層仲良くなったきっかけになるであろう幻のエピソードにして、上記の理由から原作者によって描かれることはまずないヘビーストーリー。
八神さんは昔は印象が違ったという遠山さんの証言と葉月しずくの存在から、今回はオリジナルエピソードとして盛り込んだ。
要職についた八神さんの振舞いには、「ゲームをより良いものにしたい」という思いが根底にあり、それを達成するには実力を示し続けることだと思ったのではないだろうか。しかし、人間そう簡単にはいかないもので、少しのきっかけでポッキリ折れる。そういう経験があったのだろうと推測した結果このようなエピソードとなった。プロ(?)の考察班ほど高クオリティではないので悪しからず。
△▼△▼△▼
コリアンダー「俺には一人、友人がいる。そいつについて話そうと思う。―――なに、畏まらなくていい。ただの雑談だ。なにしろ、今まで会ったヤツの中で一番変な奴の話だからな。」
次回『コリアンダーの考え事』
コリアンダー「見ないと何も始まらないぞ。」
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きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?
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きんいろモザイク
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ステラのまほう
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ゆゆ式
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うらら迷路帖
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夢喰いメリー