きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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“きっとあの人は、誰かの気持ちを察するのが上手いんだと思います。”
 …港町のドーナツ屋の店主・ミネラ



第21話:ミネラ その②

 宝石商から「ミネラさん」について聞いた俺は、二人を伴って、遠山さんやリリィちゃんと初めて会ったドーナツ屋に来ていた。

 ドーナツ屋の女店主改めミネラさんは、相変わらずカウンターにぐだっと寄りかかり、寝そべっていた。オーダーが解除されれば悪影響もなくなるかもしれないが、会いに行くと言った手前、彼女を元通りにせざるを得ない。それに、オーダーが解除される前にミネラさんを復活させた方が()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……一度きりだからね。

 もしダメだったらママのことは諦めてもらうわよ」

 

「分かってるよ。」

 

 

 リリィちゃんにそんなことを言われ、ここに来るまでのやり取りを思い出す。

 

 

 

 

 

 

『―――という訳で、ミネラさんから話を聞こうと思う。』

 

『なによそれ! そんなの聞いてないわよ!』

 

『だろうな。俺も初耳だ。

 安心しろ、親の馴れ初めなんて本人に聞きでもしない限り知らんからな』

 

『そうじゃなくて! ママを元通りにするのはやめてって言ったでしょ!』

 

『……初めて会った時から思ってたが、何をそんなに恐れてるんだ?』

 

『ま、まあまあ二人とも、落ち着いて……』

 

『なによ、ローズ? コイツの味方をすんの?』

 

『違うよ。ちょっと折衷案を出そうかなと。』

 

『『??』』

 

 

 

 そう言ってローズちゃんが出した折衷案が、『彼女を正気に戻すチャンスを一度にする』というものだ。

 はっきり言って、この案は俺には分が悪い。だが俺はすぐさまその案に乗った。これで下手にゴネたら、リリィちゃんに難癖を付けられて、ミネラさんに会う機会すら奪われかねない。ほぼ即答に近いレベルで「いいだろう、その案に賛成だ」と答えることで、リリィちゃんが言い訳を考える時間すら与えなかった。ちょっとズルいがまぁいいだろう。

 

 そうしてミネラさんのドーナツ屋まで来たわけだが。

 

 

 俺は内心穏やかじゃあなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……失敗したらどうしよう。

 

 心配事はその一つに尽きた。

 予想はできる。だが、それが正しいという確証がない。ちょっとこれまでの情報をまとめておこう。

 

 

・ミネラさんはドーナツ屋の女店主である。バイト等は目撃しなかった。

・リリィちゃんとローズちゃんは恋人である。(自分の目撃情報による予測)

・リリィちゃんとミネラさんは仲が悪い。

・リリィちゃんはミネラさんを正気に戻すのを嫌がっている。

 

 当然、これだけじゃあ「ミネラさんが働く理由」について言及するのは難しい。

 ここで重要になってくるのが、杖についてちょっと教えてくれた、死亡フラグ乱舞マンこと宝石商とした会話である。

 

 

 

 

『――――――ミネラ。昨日、リリィとかいう娘の為とウチで買い物をした女性だ』

 

『リリィ、だと…? なあ、ミネラとリリィって他にこの町にはいないよな!?』

 

『あ、あぁ。ミネラはドーナツ屋の女店主しかいないよ。リリィも一人だけだ。』

 

『その女性、何を買っていった?』

 

『この“グリーンクリスタルのネックレス”を()()、買っていった。』

 

『……! これ、“緑の水晶”……!』

 

『宝石には石言葉ってのがあってね……お兄さん、この“緑の水晶(グリーンクリスタル)”の石言葉って知ってるかい?』

 

『? いや、石言葉なんてものは初めて聞いたぜ。』

 

 

『いいかい、緑の水晶(グリーンクリスタル)の石言葉はな―――

 ――――――――――だ…………』

 

『…………!!

 ……ありがとな、宝石商のダンナ』

 

 

 

 

 

 宝石商が言っていたあの言葉……もし、ミネラさんが()()()()()()買ったのならば、俺にも勝算はある。

 

 もし、()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()

「家族の絆は必ずある」みたいな、ひと昔前に最高視聴率を取りそうな家族ドラマのテーマをまったく信じているわけじゃない。この世には、どうしても救いようのない状況っていうものが存在してしまう。確か、哲学用語かなんかにそんなものがあった気がする。詳しくないから知らんけど。きっと、エトワリアでも、そういった問題があるのだろう。幸いなことに、俺にはまだそんな不幸は降りかかってはいない……と思う。

 

 

 不安になっても何も始まらないことは頭では分かっているが、いざミネラさんに話しかけるとなると、妙に喉が渇いた。何度深呼吸をしたことだろう。いい加減に話しかけないと、「まだ~?」と急かされてしまう。主にリリィちゃんに。

 

 

「ねぇローリエ、まだ~? とっとと話しかけて、ママのこと諦めてほしいんだけど」

 

「……うっさいな、今考えをまとめてるとこだ。あと、もっと言い方を考えろ」

 

 

 まるで俺がミネラさんにプロポーズか何かするみたいじゃあないか。彼女の夫が健在か否か知らないが、俺は未亡人もNTR(寝取り)もあまり好きじゃない。

 

 ……仕方ない、覚悟を決めるか。

 

 盗賊を殺した(あの)時よりかは、断然マシだ。

 

 

 

 

 

「ミネラさん」

 

「んぅ?」

 

 

 俺の声に、寝ぼけた声を出して反応する。娘と違って青みがかった銀髪から覗く端正な顔立ちも、健康的な体つきも、子どもを産んだとは思えない……じゃないよ。今はやる気の復活に集中しないと。

 煩悩を押し殺して、俺は組み立てた推理を述べる。

 

 

 

 

「おたく、緑の水晶……グリーンクリスタルのネックレス、買ったろ。二つも」

 

 

 

「…………。」

 

 

 

「宝石商のダンナに聞いたぜ。

 

 

 

 

 どうして、そんなものを買ったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『娘のためだ』と、言ったそうだね?」

 

 

「「!!?」」

 

 俺の言葉に二人が動揺する。

 

 

 

「それって、どういう……」

 

「そして……驚いたことに、宝石には石言葉ってのがあるみたいだな。

 

 

 

 

 

 

 緑の水晶(グリーンクリスタル)の石言葉は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――“祝福”

 

 石言葉という概念は初めて知ったが、きっと花言葉みたいなもんだろう。

 

 

「う、うそ……」

 

 

 ミネラさんにとってはネックレスを買ったことも秘密だったのか、少女二人はただただ絶句している。

 ここまで言うが、ミネラさんはカウンターに突っ伏した体勢からただ虚ろな目で俺を見上げるのみ。

 俺の考えが正しいかどうかは、全て言ってみないと分からない。それで初めて俺の予想が合っているかどうかがわかる、というものだ。

 

 

「ミネラさん、あなたは娘を……リリィちゃんを祝福したかったんじゃないのか?」

 

 

「やめて……」

 

 

 リリィちゃんが力なく呟いた。俺はそれを聞こえないフリをした。

 これはさっきの折衷案を成し遂げようとする俺のエゴだ。一度決めたことは、最後までやり抜く。たとえそれで誰かが……あるいは、自分自身が傷ついたとて、その程度の覚悟ができなければ、俺はこのエトワリアで為したい事も為せない。そのことは、あの事件で学んだつもりだ。

 推理を進めていく。

 

 

 

「本人は隠していたつもりだったけど……あなたはなんとなく察していたんだ。娘に……恋人が―――同性の恋人ができたんじゃあないかと」

 

 

「やめて……」

 

 

「つまり。あなたの働く理由は―――」

 

 

「もうやめてよっ!!」

 

 

 

 推理の最後、最終的な答えを言うより先に、悲痛ともいうべき絶叫が店内に響く。

 

 

「これ以上言わないで!! あんたなんかが、あたしの邪魔をしないでよ!」

 

 

 リリィちゃんだった。両手に拳を握り、こっちを睨んでいる。隣のローズちゃんが押さえていなければ、今にも飛び掛かってきそうだ。

 無論、だからといって、引き下がるわけにはいかない。俺は俺なりに、「真実」に向かって足を進めるだけだ。それにリリィちゃん、妙に「怖がっている」ようにも見える。

 

 

「邪魔? ローズちゃんの案を聞いてなかったのか? 俺は折衷案に則り、為すべきことを為しているだけだ。」

 

「そんなのもういい、帰って!!」

 

「いいや、帰らないね!! 一度約束したことは最後まで守ってもらう!!」

 

「ちょ、リリィ、ローリエさん……」

 

「ローズは黙ってて! 大体、ヒトの家庭の事情に首を突っ込むとかどういう神経してんの!? ふらっと現れたと思ったら分かったような口ばっかきいて……ふざけるんじゃないわよ!!!」

 

 

「俺は至って大真面目だ。モヤモヤしていることは解決しないと気が済まん。それに、教師の仕事っつーのは……ほぼ『余計なお世話』だからな!」

 

「頼んでないわよ! 自分たちだけでどうにかするわ!!」

 

「そんなことを言っているから、子どもなんだよ」

 

「っ!!?」

 

 

 

 烈火の如く怒鳴る彼女を、正論でたたっ切る。怖がらせ過ぎないように圧をかけることも忘れない。こちとら、生きた時間だけなら同年代の人々(アルシーヴや賢者達)よりも多いんだ。14、5の子どもを言い負かすことなど容易い。まぁ、こんなことばっかしてると老害の仲間入りをしてしまうのでできればやりたくないが、今は彼女を説き伏せ、ミネラさんに答え合わせをさせることが重要だ。

 

 

「聞くが、どうにかするってどうするつもりだ? 今ここで具体的なことを言ってみろ!」

 

 そう言った途端、リリィちゃんは俯いてしまう。そのリアクションが意味することは二つ。言えないか、言いたくないか。まともな手段があるならば、答えることができるはずだ。そうしないということは、何も考えていないか、考えていてもそれを実行する自信がなかったり、後ろめたい手段であるということだ。

 

 

「何も答えられないならば、それは逃げているのと変わらないさ。」

 

「あっ、あたしは逃げてなんて……!」

 

「……逃げる事自体は悪くない。だが、注意すべきことが二つある。

 一つ、逃げる時は『その後どうするか』を考えることだ。ただ闇雲に逃げるのは意味がない。逃げながら対抗策を考えるのが良いんだ――」

 

「あたしは逃げてない!!」

 

「いいや、逃げてるね。()()()()()()()()()()()……」

 

 

 意地っ張りな彼女にそう断言してから、ミネラさんの方を向く。

 彼女はもぞもぞと動いている。

 

 

「彼女を知ろうとしろ。本当の気持ちを理解しようとしろ。その上で逃げるなら仕方ない。逃げた後の事も考えていいだろう。

 だが……何も知らない先から逃げたなら、お前は一生無知な子どものままだ!!」

 

「!?」

 

 

 リリィちゃんからは、もう子供じみた言い訳は出てこなかった。ローズちゃんには、彼女のフォローをしてもらおう。

 あぁ、あと言いそびれたことがあった。

 

 

「で、逃げる時に注意する事その二だが………本当に逃げるべきかをよく見極めることだ。周りをよく見て、相談できる人に相談して、人が何を考えているかを観察することだ。

 そうすれば、案外味方になってくれる人がいるかもしれないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうだろう、ミネラさん?」

 

「……そう、かもしれませんね」

 

 

「「!!!?」」

 

 

 ミネラさんなら、もう既に復活している。というかさっき気付いた。

 

 

「起きてるならそう言ってくださいよ。」

 

「だってタイミングが……」

 

 そう言いながら、ミネラさんの目とリリィちゃんの目が合う。だが、それに気づくと娘の方はすぐに目を逸らしてしまった。

 リリィちゃんが気まずそうに何と言うべきかを目で床の木目を追いながら考えていると、ミネラさんが口を開く。

 

 

「ごめんなさいね、リリィ。」

 

 

 その一言でリリィちゃんははっと我に返り、自分の母親に目を向けた。

 

 

 ……これから始まるのは、きっと家族だけの会話だ。

 

 俺はそれが終わるまで、しばらく店を出ているとしよう。ここから先に、俺の出番はない。すべては彼女達次第ってとこだろう。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ―――ごめんなさいね、リリィ。

 

 いきなりそう謝られた本人はどうしてそんなことを言われたのか分からなかった。

 リリィにとって、母であるミネラは相容れない存在だと思っていたからだ。

 母親という事実は、ミネラが今は亡き父親と恋に落ち、愛を育んだ先にリリィを産んだということに他ならないことは、リリィも知っていた。

 

 故に、母親の愛と、自身の愛は、全く別物だと思っていた。誰かを愛すると言えば同じだが、()()()()()()―――それによって、全くの別物になってしまう、と……リリィは思っていた。

 だから、リリィはローズとの関係はひたすらに秘密のものとしていた。

 

 その母親が……ミネラが今、リリィを真剣な眼差しで見ている。それがまた、リリィを苦しめる。

 まっすぐ娘を見る母親と、母親からつい目を逸らしてしまう娘。その様子は、子どもがたった今、人を殺めてきたかのようだ。

 店を沈黙が支配する。彼女の恋人もまた、恋人の母親の突然の謝罪の意図を量りかねているようだ。

 

 

 

「どうして、ママが謝るの……?」

 

 

 沈黙を破ったのは、娘からだった。その後に続く、「謝るべきはあたしなのに――」という言葉は罪悪感からかリリィの喉から出てこなかった。言いたい事がすべて言えず、罪悪感は更に募っていく。

 ミネラが答える。

 

「わたしね、さっきの人の言うとおり、何となく分かってたの。」

 

「わかってた……何を……?」

 

「すべてを。リリィは、小さい頃からほかの子たちとは違ったもんね。」

 

 

 ま、その頃は本当に何となくだったんだけどね、と笑うミネラにリリィは驚愕する。

 ミネラは、リリィが自覚する前から、彼女の悩みを察していたというのだ。

 ではなぜ、その事を話さなかったのかをリリィが聞こうとすると。

 

「リリィはいずれ気づくだろうから、話してくれるまで待とうかなって……その時に味方になろうって思ったんだけど……

 パパが死んじゃって、わたしが忙しくなっちゃって……いつの間にか、リリィに恋人が出来てたことにも気付けなかった。」

 

「あ………」

 

「教えてって言っても頑なに教えてくれなかったから、何に悩んでるかも分からなくって。わたしなりに調べちゃった♪」

 

「………」

 

 

 茶目っ気強くプライベートもへったくれもないことを言うミネラをリリィは先程とはうって変わってジト目で見つめる。自身は恋人のことでどれだけ悩んでいたのか分かっているのか、と言外に伝えている。

 

 

「リリィがその人との将来を考えてるかもしれないから、ネックレスを二つ買ったわ。……ちょっと値は張ったけど。」

 

 そう言いながら部屋の奥へ行く。暫くして戻ってきたミネラが持っていたのは、春の日差しを浴びた新緑の葉のような色をした水晶が飾られた、二つのネックレスだった。

 

 

「リリィ、一つだけ聞かせて。あなたは、隣のその子が―――ローズさんのことが、本当に好き?」

 

 

 

 ミネラから発せられたその質問は、明確にリリィの心を照らし出していた。

 リリィは、すぐに答えられなかった。ローズへの想いに偽りがある訳じゃない。彼女の心にあったのは―――母への罪悪感と、未来への恐怖だった。

 質問に正直に答えたら最後、町中の人々に、母にさえ、捨てられてしまうのではないか―――自分が異質であることは分かっていた。それを認めたらどうなるか………リリィはそれが分からないほど無知でもなければ、楽観的にもなれなかった。

 

 

 

 ふと、リリィの手に温かな感触が広がる。

 

 温かさの元を見ると、自身の手を握る手があり、視線を上げていくと、薔薇のように情熱的な赤髪の少女の紫水晶(アメジスト)と目が合った。

 

「大丈夫だよ」

 

 ローズがリリィに囁いた言葉は、あの時自分の心を溶かしてくれた時のそれと同じ言葉(もの)だった。

 その言葉が、禁断の接吻を交わす度に間近に見た透き通った瞳が、今はリリィに少しの勇気を与えた。

 

 

 

 

 リリィは臆病な少女だった。ローズと恋仲になった時も、それを誰にも言おうとしなかったし、ローリエと出会った時にミネラのやる気の復活を拒んだのも、ただ自分とローズを臆病な彼女なりに守ろうとしたからだ。

 

 

 だが、臆病な百合の花も、隣に一輪の薔薇が咲いている限り、美しく咲き誇ることができる。

 

 

 

 

「ママ」

 

 

 リリィはミネラをまっすぐ見つめる。

 

 

「あたしは、ローズが大好き

 

 たとえ、皆から嫌われても、

 ママにさえ認めてくれなくても、

 

 あたしを好きでいてくれるローズを、愛してるし、一生をかけてローズを愛する!

 何があってもこの気持ちに、嘘はつきたくない!」

 

 

 言った。言ってやった。

 勢いに任せた、拙く語彙に乏しいものだったが、それは確かにリリィが自身の母親に向けた決意であり、ローズに対する告白であり、二人を前に建てた“誓い”であった。

 

 リリィの決意を受け取ったミネラはしばらく目を閉じ、何も言わないでいたが、やがて目を開けると、リリィを手を取り―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――ネックレスをその手に握らせた。

 

 

「えっ……? ママ………?」

 

 

「………あなたの誓い、確かに受け止めたわ。

 

 これからのあなたの人生、きっと楽なことばかりじゃあないわ。

 あなたの言った事を一生かけて貫くなら尚更よ。中には、あなた達を認めない人もいるかもしれない。

 

 でも……わたしは、ずっとリリィの…あなたたちの味方だからね。」

 

 

 ネックレスを渡したその手で撫でられていることに気づいたリリィは、あっという間に視界がぼやける。

 

 

「ありがとう………ママ……!!」

 

 すぐに泣いていると気づかなかった。母への感謝を声に出し、その声が震えていることに気づき、母への不安と罪悪感が霧散して初めて気づいた。だが、今瞳から次々と流れていくそれは、孤独に怯える冷たい涙ではもうなかった。

 

 

 

「ローズさん」

 

「はいっ!!」

 

 そんな泣き虫な娘を優しい目で見てから、娘が得た恋人にミネラは顔を向ける。

 

「ご覧の通り、彼女は不束な娘です。それでも、娘を愛すると誓いますか?」

 

「勿論です! 私は、私が見つけた『真実()』を受け止めます! リリィを幸せにしてみせます!!」

 

 

 何の躊躇いもなく屈託のない笑顔でそう答えるローズを見て、思わずミネラから笑みがこぼれる。

 

「あなたなら心配なさそうですね。

 どうか、娘をよろしくお願いしますね。」

 

「はい!」

 

 

 ミネラは、自分を正気に戻してくれた緑髪の男に内心で感謝しながら、二人の“娘”を抱きしめた。

 

 

「でも、結婚はまだ先ですからね。」

「もう、ママったら!」

「あはは、ですよねー。」




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 見事百合CPのキューピッドを勤めた八賢者。ミネラを元に戻す為の答えは彼なりに考えた結果であり、きっと「最終的には彼女達次第」と言うだろう。石言葉を初めて知ったにしては察しが良いのは、たまたま「花とともに花言葉を送る」という日本(地球?)の文化を当てはめただけである。これもまた、彼なら「魂が古ぼけてただけだ」と言うだろうが。

リリィ&ローズ
 めでたく母親から許しを得た百合CP。リリィがミネラに決意表明をする直前まで揺れた描写の元ネタはQueenの名曲「ボヘミアン・ラプソディー」の歌詞から。2018年末に公開され、5月頃まで上映されていた映画も作者はバッチリ見て、作業用BGMにしてまで書いた。私自身は異性愛者だし、そういう人物に出会った事がないので想像の域を出ないので、そこら辺はあしからず。
 イメージCVはリリィが○宮有○さん、ローズが降○愛さん。

ミネラ
 拙作オリジナルキャラクター。リリィの母親。未亡人でありながら、一人娘の悩みを理解しようとし、リリィの恋愛を受け入れた人格者。ローリエはこのことなど知る由もないが、もし彼女の行動を知ったのならば、彼女を「スーパー人格者」と崇めるだろう。
 イメージCVは井○喜○子お姉ちゃん。



エトワリアでの同性愛の見方
 近年、同性愛の差別は目立たなくなってきているが、未だ残っている。それは、地球において、長い間同性愛というものが差別されていたからだと考える。感情的な理由だけでなく、生産性から見た理由で差別もされていたのだろう。戦争や国家間での経済競争などの面からも、物理的な人の数は比較的重視されていたとも考えられる。
 エトワリアでは、複数の国が存在するような描写がなく、戦争の技術はあれどはるか昔のものとなっている描写(シュガー参戦イベ等)があるため、同性愛の見方は地球よりも抵抗感がないと考えている。故に、前世の記憶を持たないエトワリア人のミネラのような、同性愛に寛大な人も多いと考えている。
 ※上文はゲームイベントを見た作者個人の考察であり、何かを侮辱する意図はないことをご理解いただきたい。



△▼△▼△▼
セサミ「ローリエさん、今回ギリギリの線を行ってませんか?」
ローリエ「何言ってんだ。どんな形であれ、愛は尊いに決まってんだろーが。で、お前の方はどうなんだ? き……召喚士には勝てそうか?」
セサミ「……………ローリエのおかげさまです。」
ローリエ「俺のお陰ェ?(ま、まさか、勝っちゃったとかじゃあないよな……?)」

次回『決着・セサミ』
ローリエ「見ないとタイキックだ!」
セサミ「タイキック………??」
▲▽▲▽▲▽

きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?

  • あんハピ♪
  • 三者三葉
  • スロウスタート
  • ゆるキャン△
  • こみっくがーるず

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