きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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“俺は気づくべきだったのだ。このローリエ・ベルベットがいる時点で、エトワリアは俺の知っているエトワリアではないことに。”
 …ローリエ・ベルベット 著 自伝『月、空、太陽』
  第4章より抜粋



※2020-7-23:フェンネルの口調を微修正しました。


エピソード4:さばくぐらし?~学園生活部の黄金の意志編~
第25話:転生者(おれ)の知らない男


「はい、7のスリーカード」

 

「こっちは……A(エース)のスリーカード、ですか?」

 

「あッ、ジョーカー入ってる。フォーカードだぜこれ」

 

「ふふっ、やりました!」

 

「おにーちゃん、シュガーのは!?」

 

「えーっと………ああ、これは…残念、役なし(ブタ)だ」

 

「ぶー…」

 

 

 シュガーがふくれて、セサミが穏やかに喜ぶ。そして、俺とシュガーのオモチャのチップをセサミのところへ移動させる。

 俺達は今、セサミの部屋にてポーカーの真っ最中だ。

 

 エトワリアにポーカーがないので、ルールブックを暇つぶしに書いたところ、これが神殿内で大ヒット(そのせいで俺がポーカーの創始者みたいになっちゃってるが)。どうやら、エトワリアは相当娯楽に餓えていたようだ。

 

 ポーカーは究極の心理戦だ。賢者が心理的にどんな性格をしているのか判断できると意見したところ、アルシーヴちゃんも試験的に認めてくれたのだ。

 

 八賢者の中の「新しいゲーム」に目がない子の後押しもあって、少しずつ賭け金のないポーカーがブームになりつつある。少し前までは将棋ブームだったのにな。

 おっと、噂をしたらなんとやらだ。たったったっと軽い足音が聞こえてくる。

 

 

「あ、いたいた。ローリエ、楽しそうだね。イカサマはしてない?」

 

「するわけねーだろ女の子相手に。俺は紳士だぞ?」

 

 部屋のドアから顔をだしたカルダモンはいきなり失礼な事をぶっこむ。俺がイカサマするのはフェンネル相手の時だけだ。

 

 この前、勝負を持ち掛けたら拒否されたので「負けるのが怖いか」と挑発したところ、見事に乗っかった。そして、頭に血が上っている彼女相手に初歩的なイカサマ(セカンドディール)を仕掛け、見事に勝ちまくったことがある。その後、()()()()()で追っかけまわされたが。

 

 

「アルシーヴ様が呼んでたよ」

 

「おぉ、そうか」

 

 アルシーヴちゃんに呼ばれている事を知った俺は、シュガーとセサミに一言言ってトランプを片付け、洒落た部屋を後にする。

 

 

 部屋を出ると、カルダモンが付いてくる。

 俺とカルダモンの仲はジンジャーやシュガー並みに良好だ。俺のおふざけを良く思ってないソルトやセクハラを嫌うセサミ、アルシーヴちゃんの見方で徹底的に対立しているフェンネル、10年前の件があってどうしても話しにくくなってしまうハッカちゃんと比べてみると、良い関係を築けていることだろう。

 個人的には、ハッカちゃんと仲良くなりたいところだけど……

 

 

「カルダモン。そういや、アルシーヴちゃんから()()通達は来たのかい?」

 

「うん。ローリエは、最近なにをしてたの?」

 

「そうだなぁ……色んな武器を作ってそのテストをしたり、セサミと一緒にシュガーの遊び相手もしたし、授業も数回したし……あとは、ポーカーでフェンネルをカモったりしたな!!」

 

「ちょっと最後。何したのさ……」

 

「いやぁー、アレは傑作だったよ。後始末がスーパー大変だったけど」

 

「どうせまた追いかけられてたんでしょ?」

 

「正解。流石にまる一日逃げることになるとは思わなかったけどな。」

 

 

 そんな雑談をしながら入ったアルシーヴちゃんのいる大広間に着くと、案の定「オーダー」で呼び出したクリエメイトの捕獲について話し出した。

 俺は彼女の話を表向きでは聞きながら、これから呼び出される()()()について思考を巡らせた。

 

 カルダモンが出張る今回の「オーダー」で呼び出されるのは、「がっこうぐらし!」の学園生活部の4人だ。

 

 天真爛漫で笑顔なムードメーカー、ゆきこと丈槍(たけや)由紀(ゆき)

 シャベル大好きなボーイッシュガール、くるみこと恵飛須沢(えびすざわ)胡桃(くるみ)

 しっかり者な学園生活部部長、りーさんこと若狭悠里(わかさゆうり)

 クールで要領のいいみんなの後輩、みーくんこと直樹(なおき)美紀(みき)

 

 この4人が、巡が丘学院高校を舞台に、学校で寝泊まりしながらほのぼのと日常を過ごす――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――と言ったな、アレは嘘だ。

 「がっこうぐらし!」は、ゾンビが学校の外に蔓延している荒廃しきった世界で、学校に立てこもって生活している、というバイオハザードな世界観の物語なのだ。

 

 ゆきは精神を病んでいる影響で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()し、くるみちゃんは中盤から終盤にかけて大変なことになるし、りーさんやみーくんもヤバイことになる。

 

 とまあ、雑に本編を紹介したが、ネタバレを防ぐためだ、これくらいの雑さもやむなしだろう。

 

「ローリエを呼び出したのは他でもない。砂漠で任務を行うにあたり、そこで活用できる魔道具を提供して欲しいからだ。」

 

 八賢者ローリエとしては、ミネラさんの情報で渓谷の村に直接転移すればいいので、3章の舞台となる砂漠に行く理由はない。今アルシーヴちゃんが俺に命令したことも、それが終わってしまえば、とっとと村へ転移してしまえって話になるだろう。

 

 だが、()()()ローリエとしては、殺伐とした世界で、何を思って彼女達学園生活部が生きているのかを、この目で見てみたい。

 やや不謹慎な話になるが、彼女達の「全員で生き抜く」という意志を、学びたい。それはきっと、港町でリリィちゃんローズちゃんの百合夫婦(予定)に言った、「真実へ向かおうとする意志」にも通じることだろうから。

 それが、現段階における俺のやりたい事その1だ。

 

 

「頼まれてくれるか? ローリエ。」

 

「いいよ。カルダモン、ご注文は? 冷房?」

 

「私の武器をちょっとお願い。作業は現地でいいね?」

 

 

 その質問に頷くと、カルダモンはタッ、踏み切ったかと思うと一瞬で消えてしまった。

 恐ろしく早い縮地……オレでなきゃ見逃しちゃうね―――

 

 

 ―――ごめん嘘。このリハクの目をもってしても見え(読め)なかった。 

 それはさておき、俺にはまだアルシーヴちゃんに聞きたい事がある。

 

 

「ところでアルシーヴちゃん。」

 

「なんだ?」

 

「ハッカちゃんについて教えてよ。」

 

「ハッカのこと?」

 

 

 そう、ハッカちゃんの事である。さっきカルダモンにも言った、フェンネルをカモった時の話なのだが、さんざんカモった後フェンネルに追っかけまわされたきっかけが彼女にイカサマを見抜かれたことにある。

 

『ぐぬぬ……次こそは勝ちますわ!』

『いいだろう! どう足掻いてもこのローリエには勝てないことを思い知らせて……』

『待たれよ、フェンネル。』

 

『『!?』』

 

『ハッカですか。珍しいですね。』

『ハッカちゃんもやるかい?』

『遠慮しておく。カードの配り手がイカサマをするような遊戯は信頼できぬ。』

『な!? ハッカ、ローリエはイカサマをしていたのですか!?』

『言いがかりはやめてくれないか?』

 

『否。言いがかりではない。

 ローリエは山札の一番上ではなく二枚目を配っていた。一番上のカードとローリエの手札を見てみれば……』

『……既に10のスリーカードができている、ですって………!?

 ローリエ!! 何か弁明はありますか!!?』

 

『………バレなきゃイカサマじゃあねぇんだぜ』

『バレてから吐く言葉ではありませんね……!!』

『ローリエの(はかりごと)は明白。』

 

 以上が、その時にあったやりとりのダイジェストである。

 要するに、「俺とフェンネルがポーカーをしている最中、ハッカちゃんがその場に現れて、通りすがりのヒーローが人を騙そうとする怪人の手口をバラすかのようにイカサマの手口を見抜いた」ってことだ。

 

 

「お前な……言いたい事が色々ありすぎて何から咎めればいいのか……」

 

 事情を聞いたあとのアルシーヴちゃんは、文字通り頭を抱えて、俺の行動を何と評すればいいか決めあぐねていた。

 

「ポーカーでイカサマをするってのはただ(こす)い手を使って勝ちにいくってことじゃあない。人の『思い込み』や『錯覚』を利用しそこを突くことなんだ。」

 

 例えば俺がフェンネルにやったセカンドディールも、「山札の一番上から配られる」という心理を利用して仕掛けられるものである。

 つまりハッカちゃんは、そういう先入観・思い込みに惑わされず、俺のイカサマを見破ったという事になる。

 

「初めて会った時はソラちゃんを盗賊から助けに行った時だ。一緒に捕まっていた。

 そんな彼女が今やアルシーヴちゃんの懐刀になっている。どんな経験を積んだのか、そもそもなんであの時あそこにいたのか、気になってな……」

 

「……話している場合ではないのだが、お前がそんなことで引き下がる訳がないもんな……」

 

「そうだよ。そんなことを本気で言ったらフェンネルとセサミにアルシーヴちゃんの隠しブロマイドをこれでもかって程渡すからね」

 

「おい待て、今聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ!?」

 

 気のせいでしょ。

 

 

 

 

 

 

「……今から言う事は他言無用だ。

 ハッカは、魔人族と呼ばれる少数民族の生き残りだ。」

 

「ふぁっ」

 

 観念したのか、溜息混じりに出たアルシーヴちゃんの言葉からいきなり凄まじい設定?が出てきて戸惑いを隠せない。

 魔人族ってなに? メリ○ダス? ブ○?

 エトワリアはきららの筈なんだけど。ジャ○プとかサ○デーとかじゃあないはずなんだけど??

 

「エトワリアで20年生きた俺が聞いたことないんだけど」

 

「特定の歴史書以外に記すことを禁じられているからな。」

 

「その魔人族ってのは……心臓が10個あるとか、細胞一つ残っていれば完全再生するとか…」

 

「ある訳ないだろ、お前はハッカを何だと思っているのだ。

 ただ、魔人族は普通の人間よりも使える属性の魔法が多いだけの種族で、人間と大差ないんだ。」

 

 あ、良かった。そこまでトンデモ設定とかじゃないのね。地球で言うところの肌の色とか髪の色程度の違いというわけか。

 

 

「中でもハッカは全属性を100%使いこなせる天才児だった。」

 

 まじかい。『ハッカちゃんが全属性を使いこなせる』って設定はきららファンタジア(スマホアプリ)でプレイしていたから知っていたけど、そんな事情があったのか。

 羨ましすぎる。俺なんて、火・水・土・風属性が5%、月・陽属性が40パーセントしか使えないのに。

 

 でも、普通の人よりも優れた少数民族がいるとなったら、多数派の「普通の人間」がやりそうな事に予想はつく。

 

「でも、魔人族は迫害された、って訳か。」

 

「知っていたのか……?」

 

「いいや。でも、予想はつくさ。」

 

 なにせ前世(地球)のテレビや教科書を通して、その手の迫害は何度も見てきたからな。

 

「動機は、自分たちより多くの魔法を使える事に対する恐れや嫉妬といったところか?」

 

「それだけじゃあない。感情の起伏で瞳の色が変わる特性を珍しがられ、奴隷にされることもあった。瞳をくり抜かれることもあったという。もう100年以上昔の話だがな。」

 

 

 それなんてク○タ族?

 ―――なんて茶々を心の中で入れないと落ち着きを失いそうになるくらいに、「普通の人」のやることに反吐が出た。奴隷とか人体コレクションとか、現実味のない非道な行いに対して、幼稚な正義感しか湧かない自分に少々腹が立つ。

 

 

「それで、物珍しさにあの盗賊に攫われてたということか………」

 

「ローリエ、お前が何を考えているかは知らないが、この事はあまりあの子の前では話さないでくれないか?

 出自にトラウマを持っているんだ、ハッカは。」

 

 

 トラウマ、ねぇ………

 きっと、酷いことがあったんだろう。

 でも、10年前の彼女のあの怯えよう。トラウマの元は出自だけじゃあないはずだ。

 

「俺に対するトラウマの間違いだろ……?」

 

「? なにか言ったか?」

 

「いいや、なーんにも。

 じゃ、カルダモンのトコヘ行ってくるぜ。」

 

 

 ハッカちゃんと話すのはもう少し先になりそうだ。

 今は大人しく、建て前を果たしに砂漠へ向かうとしましょうか。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 砂漠というものは、教科書やテレビで見ているものよりもずっと厄介である。

 直射日光がよく当たり、それを遮るものも一切ない。

また、砂は熱が籠もりやすく放射もしやすいため、昼は暑く、夜はよく冷え込むのだ。

 

 「逃げ水」というものは聞いたことがあるのではないだろうか。地上のものが浮かび上がっているように見える下位蜃気楼の一種で、近づいても水が逃げていくように見えることからその名で呼ばれている。

 砂漠を移動している時にこの「逃げ水」に引っかかったが最後、逃げ続けるオアシスを追って、無駄な体力を浪費する羽目になるだろう。

 

 

「いやぁ、ほんと……転移魔法がなければ即死だった……」

 

「即死かどうかはともかく…確かに、転移魔法なしでここをうろつくのは危険だよね」

 

 

 砂漠の真ん中に立つ教会にカルダモンと転移した俺は、砂漠の危険を遮れる建物の中にて、あまりの暑さにくたばっていた。

 

 

「ローリエ、早くクリエメイトを探そうよ」

 

「カルダモンお前……そんな民族的な格好でよく元気でいられるな…」

 

 しかし、カルダモンはそれすら許してくれない。

 無理矢理起こされ、教会の扉を開く。

 

 

 そこは、風がほとんど吹かない、一面の砂漠。

 アラビアンナイトの、アラジンやアリババに出てきそうな、砂の海が広がっていた。ただ、耳を澄ませば聞こえてくる、ゾンビのうめき声がそれらの世界観を台無しにしているが。

 

 そして、こちらにむかってくる、ひとつの人影。

 

 

「あれは………………………っ!!!」

「おや、いきなりとは運がいいね」

 

 

 俺もカルダモンも人影の正体が分かったようだ。

 緑色のボロついた、しかしサスペンダーまできっちりとつけたセーラー服を着た、パールホワイトのショートヘアの少女。

 若干白人(コーカソイド)寄りの雰囲気とスレンダーな体型からボーイッシュさを感じるが、明らかに小柄で女性的な体格、そしてセクシーなガーターベルト付きストッキングのために男と見間違うことはない少女。

 

 

「間違いない、直樹美紀だ…」

 

 俺の人相書きを見ながらそう呟くカルダモンが隣にいることを思い出し、「みーくん…!」と口に出しそうになったのをこらえる。

 

 俺達の見つけた少女――みーくんは、俺達を見つけると、すぐさま持っていた鉄パイプを握りしめ、こちらに向けて構えた。

 

 

「何者ですか、あなた達は……?」

 

「ま、待ってくれお嬢さん、俺達は……」

「直樹美紀。クリエメイトとして、捕まってもらうよ」

 

 

 おいイイィィィィィーーーッ!!? カルダモンお前! なにいきなり「捕まってもらう」とか言ってくれてるの!? 俺がせっかく説得して、武力行使なしで連れていこうかと思ったのに!

 

 

「ちょっとォォォ! いきなり実力行使で拉致しようとすなぁ!!」

 

 一瞬でみーくんに近寄り、回り込んで首の後ろに繰り出されたカルダモンの手刀は――――――空を切った。

 

 みーくんはカルダモンが動き出す直前に、ほぼ反射的に真横に飛んだのだ。そして、受け身を取ってそのまま鉄パイプを構え直した。

 

 

「ローリエ、そういうことは早く言って貰わないと」

「おめーが早すぎるんだよ!!」

 

「それに、彼女ならそういうの、嘘だって見抜きそうだからね……!」

 

 

 そう言うと、カルダモンの体が再びぶれ、今度は金属質の甲高い音が響く。

 二人が剣戟を始めて、やっとそれがナイフと鉄パイプがぶつかった音だと気づいた。

 

 

 ――もはや、説得は不可能か。

 

 そう思いながら、俺は愛用のリボルバー・パイソンにすばやく麻酔弾を装填する。そして、みーくんとカルダモンが戦っている所へ向けた。

 

 麻酔弾。柔らかい皮で、麻酔液を包んだものを弾頭にしたものであり、被弾したら、ペイント弾のように中の液体が飛び散り、その部分を麻痺させる。当たったら即座に寝落ちするような漫画みたいなものは作れなかったが、命中したらターゲットの動きを確実に鈍らせるものだ。クリエメイトを最低限傷つけないために作ったものである。

 

 

「っ!!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()を構えている俺に気づいたみーくんは、目を見開いたかと思うと、なんとカルダモンの攻撃を受け流しながら彼女の体を盾にし、俺の射線上にカルダモンが入るように立ち回り始めたのだ。このように動けば、俺はカルダモンへの誤射を防ぐために、なかなか引き金を引くことができない。

 

 ……上手いな。正直、動揺して隙を生み出すと思っていた。

 同じ日本人でも、遠山さんとはえらい違いだ。「ランダルコーポレーションが起こしたバイオハザードから生き延びている」ってだけではここまで冷静に拳銃使い相手に立ち回ることはできないだろう。ゆきちゃんやりーさんだったらこうはいかない。くるみちゃんだったら似たようなことはできるかもしれないが。

 

 みーくんは、バイオハザードが起きた時、親友の圭ちゃんとショッピングモールにいた。ゾンビ達から二人で逃げ、途中から一人になっても、学園生活部が来るまで一人で生きていた。そんな学園生活部のブレインたる彼女だからこそ、戦闘中も冷静に周りを見て、俺からの狙撃を未然に防ぐことができたのか。

 

 

 

 

 

 ―――ただ、みーくんに誤算があるとするならば。

 

 

 

「ふっ!」

「う゛っ!?」

 

 俺の狙撃の盾に、カルダモンを利用することが悪手だったという点だろう。

 

 カルダモンは、俺達八賢者の中では一番素早さが高い。メタルスライムやはぐれメタルとタメ張れるんじゃないかな? ってくらいに。そんな人物からの猛攻の中、俺の銃撃を警戒し続けてみろ。その時に生まれた僅かな隙さえも突かれてしまうだろう。

 

 ちょうど今、一瞬動きが止まった手首にナイフを握ったままの拳を叩きこまれ、鉄パイプ(武器)を落とされてしまったように。

 

 

「きゃあ!?」

「捕まえた」

 

 みーくんの武器を叩き落したカルダモンは、すぐさま彼女を砂の上に押し倒し、首筋にナイフを当てて動きを封じた。

 

 

「大人しくあたしについてきてくれる?」

「っ……。」

 

 カルダモンの一言に、みーくんは沈黙する。

 この場における勝者がどちらかは明白だった。

 ちょっと俺が手出しした分、卑怯な感じはするけど―――

 

 

「―――っ!!?

 カルダモン! みーくんっ!!()()()()()()()ッ!!!」

 

「「!!?」」

 

 

 嫌な予感がして、咄嗟に叫んだ。

 真夜中にトイレへ行くために家の廊下を歩いている時のような、底知れない不安がしたから。

 

 俺の突然の叫びにも、みーくんを捕まえたままカルダモンは反応し、その場から飛び退く。

 

 次の瞬間、カルダモンとみーくんがいた場所に、細長い矢のようなものが飛び込んできて、ざくっ、と砂の音を立てた。

 

 俺が気づかなかったらと思うと、鳥肌が立つ。

 

 

「チッ、勘のいいやつだぜ」

 

 

 俺以外の男の声が砂漠にせり出した岩のひとつから聞こえ、そちらに顔を向ける。

 

 そこには、クロスボウをひっさげ、砂漠にカモフラージュするかのような砂色のローブを着た、黒髪ロングの男がいた。朱色の双眸は、厭らしくこちらを見据えている。

 

 

「だ、誰だお前は……!?」

 

 その言葉は、本心だった。

 

 きららファンタジアには、3章どころか全章通して男の登場人物はほぼいない。故に、こんなやつが出てくるはずがない。

 そんな俺の困惑を嘲笑うかのように―――

 

「クリエメイトの命、オレ様がもらい受けるッ!!」

 

 ――きららファンタジアをプレイし尽くした筈の転生者(おれ)の知らない男が、獲物を見つけた肉食動物の瞳で、俺達に(わら)いかけた。

 

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 カルダモンの武器整備士として砂漠に同行したら、みーくんだけでなく自分の知らない男に出会ったでござるな男。突然現れた謎の男は、ローリエにとっては完全に予想外の存在である。それが彼にどんな影響を及ぼすのだろうか。

カルダモン
 素早さが天元突破しているCV.田○○心の八賢者にして、序盤の壁と言われる3章ボス。ローリエがポーカーを広める手伝いをした賢者でもあり、面白いこと&新しいこと好き。ポーカーは表情豊かだが本心は読ませないタイプで、ローリエ曰わく「凄腕のギャンブラーに大成するタイプ」。しかし、各地を巡る調停官の仕事があるため、ポーカーばかり出来ないのが悩み。

アルシーヴ&フェンネル
 今回の不憫枠。アルシーヴはローリエにブロマイドを隠し撮りされており、フェンネルはハッカに咎められるまでローリエにカモられていた。フェンネルはアルシーヴのブロマイドは好きそうではあるが、一歩間違えれば、部屋中アルシーヴの写真だらけの典型的ヤンデレになりそうで怖い。本家ではそのような気配は欠片も感じなかったのに。

ハッカ
 ローリエのイカサマを見抜いた八賢者。複数の魔法に適正を持つ魔人族の少女。このハッカの種族については、拙作のみのオリジナル設定。寡黙な性格ができるまでを想像していると、どうしても重い過去が出来てしまうが、作者は悪くないはずだ。ハッカの過去と心は、後ほど掘り下げたい。

直樹美紀
 本家きららファンタジアでも、カルダモンに捕まっていた学園生活部2年生。カルダモンに対しては迷わずに立ち向かっていったが、原作との違いは、ローリエとカルダモンの二人の実力者を同時に対処しようとしたばかりにあっけなくカルダモンにとっ捕まってしまったこと。


ポーカー
 5枚の手札を一度だけ交換して、より強い役を揃えた方が勝利する、ギャンブルでよく使われるトランプゲーム。これに賭け金が発生した途端、レイズ(賭け金を上げる)、コール(勝負に乗る)、フォールド(勝負を降りる)の三択で相手の心理を探る心理戦になる。イカサマをするのも勝負の要素の一つとなり、その駆け引きもまた、賞賛されていた。
ローリエが発言した「バレなきゃイカサマじゃあねえんだぜ」の元ネタは『ジョジョの奇妙な冒険・第3部』の空条承太郎の台詞。

セカンドディール
 山札から配る時、一番上ではなく上から二番目を配る、初歩的なイカサマ。カードを置く場所と手首のスナップがコツで、上手い人がやると違和感なく配れるため、ディーラーの技術も問われるイカサマである。

がっこうぐらし!
 原作:海法紀○、作画:千葉サ○ルの両氏による漫画作品。2012年より連載開始し、2015年にアニメ化した。ゆき、めぐねぇによるキューティーな日常と、くるみ、りーさん、みーくんによるシリアスでバイオレンスな世紀末サバイバルを鮮やかに描き、Twitterでは表紙と内容のギャップで一世を風靡した。学園生活部がバイオハザードが起き滅んだ世界で、ささやかな幸せを探す為に奮闘する姿は、多くのきららファンを魅了した。2018年には、実写版が制作され、アニメ実写化による風評被害に遭いつつも、くるみを主人公にしたホラー映画としてリメイクされた。

魔人(魔神)族
 拙作に登場する、エトワリア人の人種。通常に比べて使用できる魔法の属性が多い。決して「七つの大罪」や「ドラゴンボール」の要素はなく、3000年前に光の聖痕(スティグマ)に封印された種族でもなければ、魔導士バビディに復活させられた最凶の食いしん坊でもない。

クルタ族
 「HUNTER×HUNTER」に登場する、少数民族の一。感情が高ぶると目が赤くなる性質のため、骨董品「緋の目」を手に入れる為に残虐な乱獲・拷問が行われた。その結果クラピカ以外のクルタ族は滅ぼされている。

メタルスライム、はぐれメタル
 いずれも、「ドラゴンクエスト」シリーズに出てくる、銀色のスライム。殆どの呪文・特技が効かず、武器攻撃も1ダメージしか与えられない上に、すぐに逃げ出そうとする経験値稼ぎスライムにしてドラクエの代名詞モンスターの一匹。ナンバーによっては、仲間に入れることができたり、メタル斬りや魔神斬り、一閃突きで狩りの対象になったりする。



△▼△▼△▼
ローリエ「俺の知ってるきららファンタジアには出てこない謎の男――――――その目的は、クリエメイトたるみーくん達の命だった!? 俺にとっては、クリエメイトは人生の一部! そう簡単に、殺らせてたまるかよッ!!」

次回『そいつの名はサルモネラ』
美紀「次回もお楽しみに。」
▲▽▲▽▲▽

きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?

  • あんハピ♪
  • 三者三葉
  • スロウスタート
  • ゆるキャン△
  • こみっくがーるず
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