きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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“俺の魂はいつも、アリサの心と共にある。”
 …ソウマ・ジャグランテ


第36話:ソウマの真実

 アリサが兄と二人で暮らしていた筈のログハウスの火事。それを目にした俺は、少しの間動けずにいた。

 

 だが、それも束の間、すぐに行動を開始する。

 アリサをすぐそばの木に寄りかからせるように寝かせ、俺は火の手の上がる家へ突入した。

 

 アリサの兄は、おそらく怪我(十中八九俺の弾丸によるものだ)をしているためベッドから離れられない。彼は確実に家の中にいる。

 

 このままでは、彼が死んでしまう。

 アリサにとっては勿論、俺にとってもそれはマズい。

 

 女神ソラ呪殺未遂事件の容疑者として、アリサの兄を挙げてはいるが、

 ①本当に彼がやったのか。

 ②仮にやったとして、その動機は何か。

 ③やっていなかったとして、容疑者に他の心当たりはないか。

 この三つがまだ明らかになっていないまま死なれてしまったら、事件の真実を追うことが困難になってしまう。

 

 迷う理由なんて、なかった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 家の中にも火の手が上がっている中、アリサの兄を探すべく奥の扉を蹴破って入ると、そこには驚きの光景が広がっていた。

 

 

 まず、屋根と壁が殆ど吹き飛ばされていた。

 ベッドに目を向けると、上半身だけを起こして、包帯だらけの手を向けながら息を切らす茶髪の青年がおり、

彼の手の先を注視すると黒を基調として高級感ただようローブを身にまとった長いオレンジ髪の美女がいて、お互いが魔法をバカスカ撃ち合っていた。

 

 

 この場で俺がどっちの味方をするべきか、迷うはずなどない。

 

 すぐさまオレンジ髪の美女に非殺傷弾を発砲し、顔色の悪い男を背にかばう。

 

 

「あ、あなたは……!?」

 

「お前、アリサのお兄さんだろう? 今、あんたに死なれたら困る。手を貸そう」

 

「あ、あぁ。ありがとう。俺はソウマという」

 

「ローリエだ」

 

「っ!!」

 

 

 俺の名前に心当たりがあるのか、敵前にも関わらず動揺していまうアリサのお兄さん改めソウマ。まぁ、自分を殺そうとした奴の名前くらい覚えてしまうか。アリサには伝えなかったみたいだけど。

 

 そして、軽く名前だけをソウマに告げながらも俺の視線はオレンジ髪の美女から逸らさなかった。

 彼女は、先程俺が撃ち込んだ弾丸を、魔力を卵のカラのように丸みを帯びた盾にすることで、すべてを防ぎきっていた。

 リロードする手を休めずに尋ねる。

 

 

「おいねーちゃん、手を引いてくんな。この男からは、聞きたいことが山ほどある」

 

「……フフ。そいつには是が非でも死んでもらうわ」

 

 

 オレンジ髪の美女は、俺の言葉にそう返すと、炎を矢のように引き伸ばしたかと思うと、そのまま炎の矢を雨のように放ってきた。

 

 水属性の弾丸で応戦するも、いかんせん数が多い。全てを相殺することが出来ず、弾丸をすり抜けてきた炎の矢は、俺とソウマの目の前で防壁のようなものに弾かれ消えた。

 

 

「助かった」

 

「こちらこそ。さっきよりも楽になりました」

 

「で、あいつお前さんの何なの? 女?」

 

「ご冗談をッ!!」

 

 

 撃ち漏らした炎の矢を防いだソウマは、ジョークをご丁寧に返しながら、禍々しい人魂のような魔法をオレンジ髪の女に向けて反撃とばかりに放つ。それに対して女は、おびただしい数のレーザーで応じる。人魂とレーザーが激突すると、大爆発を起こした。

 

 俺は、あの女が放つレーザーに何故か見覚えがあった。

 

 一体、いつどこで見たのだろうか?

 

 そう思った時、女が煙の中から飛び出し、こちらに向かって迫ってくる。手に何か持っているのが見えたが、この女の目的が「ソウマの口封じ」であろう以上、どの道ロクな物ではないことは確かだ。

 

「ッ!!」

 

「甘い!」

 

 牽制の為にパイソンで全弾発砲するも、女のスピードが落ちることはない。そもそもパイソンは回転式(リボルバー)なので思うように素早い連射ができない。それもまた、あの女の隙を突けない原因にもなっていた。

 ソウマもさっきの人魂の魔法で女を近づけまいとしているが、それすらもものともしない。

 

「危ないっ!」

 

 突然、押しのけられる。

 バランスを崩した俺は、何事かと思い突き飛ばされた方を見ると、そこには何か―――暗殺用ナイフを振り下ろすオレンジ女と、袈裟懸けに切り裂かれるソウマがいた。

 

「この野郎っ!!」

 

 怪我人がなぜ俺を庇ったのかは知らないが、無茶しやがって!!

 すぐにサイレンサーで攻撃するも、あっという間に距離を取られてしまい、更に魔法の詠唱まで始めた。

 

 それを見てパイソンのリロードを行うも、状況は不利になるばかり。

 雨のように攻撃してくる魔法を防ぐ為には、どうしても俺一人じゃ限界がある。

 さっきはソウマの防壁が守ってくれたが、ただでさえ怪我人のソウマがダメージを受けた以上あまり期待はできない。

 

 底の見えない女相手に()()()を使いたくはないが、()()()()()()()()使()()しかない……と思った時、相手の異変に気づいた。

 

 なかなか魔法を撃ってこない。それどころか、こっちを見ていない。何より、ニヤニヤとした不気味な笑みを浮かべていた。

 数秒その意味を考える。アイツの視線の先に何かあったか―――そう考えて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全身の毛が逆立った。

 

 

「てめぇっ!!!」

 

 最悪の光景が頭に思い浮かび、突き動かされるようにその方向に走り出す。だが……数秒、足りなかった。

 

 

「アリサっ!!」

 

「……フフフ。さぁ、私と一緒にこの子も殺したくば、存分に戦いなさい。まぁ……つい、ウッカリ、この子を盾にしてしまうかも、だけど……」

 

「―――ッ!!」

 

 

 女の手に未だ意識が戻らないアリサが渡ってしまい、攻撃を封じられてしまった。なんて女だ。ソウマを確実に口封じするためなら何でもしようとするオレンジ髪の女のあまりの執着に戦慄するとともに、俺は自分自身の失策を悟った。

 

 燃え盛る家の中に気絶中のアリサを連れ込むのはマズいと判断したのは俺だ。つまり、俺があの時、アリサを連れてきていたならば、こんな事は起こりえなかった………ッ!!!

 

 だが、そんな事を悔やんでも後の祭り。どうしようもない。

 

 俺としてはソウマを連れて転移魔法で撤退しても良いんだが……ソウマは絶対に許可しないだろうから、そんな事は提案できない。

 

 

「妹を……放せっ……!

 アリサは、()()()については何も知らない………!!」

 

「なら、あなたの命と引き換えよ」

 

 ソウマは妹を人質にした女を睨みつけてそう言うと、女はあっけらかんとそう言ってのける。

 

 

「わかった」

 

「なっ!!?」

 

 

 即答だった。

 あの女が素直に約束を守るとは思えない。

 口封じなんて企む輩だ。ソウマを殺した後、アリサや俺を始末しにかかるに決まっている。

 それでも……ソウマは、自分の命と引き換えに、妹を守る選択を躊躇なく選んだ。

 

 

「だが、アリサの解放が先だ」

 

「ふむ………まぁいいわ」

 

 

 ソウマの言葉に女が考えるそぶりを見せると、了承の意を見せるとともに、こちらへアリサを無造作に投げてきた。それをキャッチしたソウマは、俺にアリサを渡す。そして―――

 

 

「後は、お願いします」

 

「お前、正気か………!?」

 

「はい。それと――――――」

 

 

 

 

 ―――アリサを抱えた俺にとんでもないことを任せてきやがった。

 

 

 

 

「さぁ、あとはお前が殺るだけだ……!」

 

「潔いのは好ましいわ」

 

 

 床の無事な部分にアリサを寝かせる俺をよそにソウマは覚悟が決まったと言わんばかりにオレンジ髪の女の方へ歩いていきそう言った。

 女の方はというと、約束を律義に守ったソウマを偉そうに評価しつつ、少しずつソウマに近づいていく。

 どうあがいても、ソウマが殺される未来しか見えないが、もし今、ここで動いたらあの女と本格的な殺し合いになる。「不気味」「不可解」という言葉が何より似合う目の前の女と戦うには、手札も仲間も状況も、全てが整ってなさすぎる。

 

 

 それに…

 

 

 ソウマが俺に残したあの一言が、気になる。

 

 

 

 そうして、迂闊に動くことができないまま、

 

 

 ソウマは、光のレーザーに貫かれた。

 

 

「がっ………!」

 

「………ッ!!」

 

 

 急所を貫かれ、膝から崩れ落ち……うつ伏せに倒れた。

 おそらく……もう二度と、起き上がることはないだろう。

 

 

 

 

「………あは…

 アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!」

 

 

 女が狂ったように笑いだす。

 俺はただ、目の前が真っ暗になりそうな錯覚を振り払いながら、武器を手放していないかを確認する。

 

 

 

「ほんっと、潔く、律義な男だった。

 でも……それだけ。本当に――――――救えないほどの愚か者だったなッ!!!」

 

 

 そう言いながら歩み寄ってくる女を見て、俺は確信した。

 やっぱり、俺達を生かして帰す気は―――最初からソウマの約束を守る気などなかったな、と。

 

 分かり切っていた。

 

 あの女がアリサを人質に取った時から、だ。

 

 

「誇り、仁義、やさしさ………そんなものこの世界では必要ないものよ。

 そんな幻想を抱くから呆気なく死ぬのだ。この男も、お前も………!」

 

 

 目の前の女は、勝ち誇った顔で笑う。

 

 確かにそうなのだ。現実は、思ったよりも甘くない。よく言われることだ。実際、「甘くない」と想定し、あらゆる予測と努力をしても尚、思った通りの結果がまったく出ない程には厳しかった。俺も、前世は社会人であったため、それを嫌というほど思い知らされた。

 

 

 

 

 

 

 ―――だけど、それが何だ。

 

 

 現実は甘くない。だからこそ人は、支えあいを、義理人情を、優しさの重要性を説き、それを持ち続けようとする。その結果生まれたのが、転生者(おれ)の大好きなきらら作品であり、エトワリアなのだ。

 

 目の前の女は、それを否定した。

 

 コイツが何者かは分からない。ソウマを口封じした目的も不明だ。だが………

 

 

 俺の目の前で、あまりこの世界を――――――エトワリアを馬鹿にするなよ。

 

 

「死ぬのは、お前だ」

 

 

 両手に持った()()()()()で、ありったけの弾丸を浴びせてやる。銃声と鉛玉の嵐が、オレンジ女を襲う。

 片方はいままで愛用していた『パイソン』で、もう片方は、最近完成させた俺の自信作だ。

 

 回転式(リボルバー)拳銃をモデルとしたパイソンと違って、こちらは自動拳銃(オートマチック)をモデルとし、試行錯誤を幼少期のように繰り返しながら完成させた拳銃だ。パイソンよりも素早い連射が可能となっていて、威力も申し分ない。

 俺はこの二丁目の拳銃を……モデルにした銃から『イーグル』と名付けた。

 

 

 両手の拳銃から放たれた弾丸は、一発も違えることなく、女の体に命中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――しかし、力なく倒れるかと思った体はぐらついた後、しっかりと立て直し、目は依然とこっちを睨んでいた!

 

 

「は!!?」

 

「クックック………滑稽じゃなあ!!」

 

 ありえない、と思い被弾した箇所を観察していると、どの銃創からもしっかりと血は噴き出している。なら何故、と思ったとたん、銃創から炎が燃え上がり、数秒たったかと思えば、炎が晴れたところには先ほどまであったはずの銃創が綺麗さっぱり消えていた。

 

 

「……不死の力!? 何でもありだな………!!」

 

 

 万事休すか、と思った刹那、今度は女に異変が起こった。

 

 

「「ッ!!!!!!!?」」

 

 

 女が光の柱に包まれたのだ。

 彼女の動揺ぶりからして、自身が意図して起こした魔法ではないのは確かなのだろうが、なぜそんなことが起こったのか、俺も奴も分かっていない。もちろん俺はまだ何もしていない。

 

 

「兄さんの、封印結界…!」

 

「!!!」

 

 声がして振り返ってみると、アリサが意識を取り戻していた。どうやら、今起こっている現象に心当たりがあるようだ。

 

「本来は危険な動物を閉じ込めたり実験の被害を出さないようにする呪術なのに、どうして……!?」

 

 

 アリサが驚く一方で、俺はソウマがアリサと己の命の交換を強引に迫るというあの女の取引に応じた謎が解けた。

 ソウマ自身も、一種の確信を持っていたんだ。「この女は、自分を殺した後に約束を反古にするだろう」と。だから、あの女が俺やアリサに襲い掛かろうとした時にアリサを守れるよう、あらかじめこの魔法をしかけていたんだ。

 

 ―――妹に牙をむく悪意を、永遠に封印するために。

 

 

「頭が下がるぜ、お前のお兄さんにはよ」

 

 

 命を落とした後でも妹を守ろうとするとは。

 彼が女神呪殺未遂事件の容疑者とはとても思えない。

 

 

「おのれ、死にぞこないがぁ………!!」

 

 封印結界に包まれた女は、心底恨めしそうにそうつぶやくと、転移魔法の詠唱を始めた。

 中から破壊することができなかったのだろう。そうである以上このまま封印されてはたまらないと思っての行動だ。

 

 

「私自身のために、次は必ず殺すぞ、ゴミ共………!」

 

 

 その恨みのひとことと共に、転移の光に包まれて女は消えてしまった。

 典型的な小物な悪役の捨て台詞のはずなのに、それを全く感じさせないスゴ味があった。

 

 夜の森林に、再び静寂と暗闇が戻ってきた。

 生き残った。

 静寂は、その事実をひしひしと痛感させられた。

 

 

「兄さんッ!!!」

 

 

 思い出したかのように、アリサがソウマに駆け寄る。

 「兄さん、兄さん」と何度も体を揺さぶるが、返事はない。

 

「兄さああああああん!!! うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 そう。ソウマは、死んでしまった。その事実が、俺に重くのしかかる。

 彼は、女神呪殺未遂の容疑があった。にもかかわらず、何も語ることなく、語る暇さえ貰えず、あのオレンジ女に口封じと称し殺されてしまった。

 アリサの悲鳴のような慟哭が、むなしく森に響き渡った。風に揺られる木々のざわめきも、まるで親しい親戚の死を悼むように、さめざめと泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 こつん、と足に何かがぶつかる感覚がある。

 それに気づいて足元を見れば、俺のG型魔道具があった。

 

「…………………っ!!」

 

 そこで、ソウマが最期に俺に対して言った言葉を思い出した。

 

 

『それと…魔道具、お借りしました。アリサのこと、頼みます。』

 

 

 

 アリサのことはどうすればいいのか分からないが、「魔道具を借りた」と言ったのだ。

 なんであのタイミングで言ったのか、いったい何を借りたのか……それが分からなかったが、このタイミングで、雷が落ちたかのように閃いた。

 

 

「ま、まさか……!!」

 

 

 俺の思い付きが、当たっていて欲しい。一縷の望みにかけて、俺はG型魔道具とプロジェクタを持ってきて繋げ、焼け落ちた家の壁だったであろう残骸に映し出した。

 

 

 

『これは………!!? すごい作りだな……!』

 

 そこには、驚きの表情をしたソウマが映し出されていた。

 

「兄さんっ!!?」

 

 あまりに突然のソウマの声に、さっきまで打ちひしがれていたアリサがすっ飛んでくる。

 それからしばらく、ソウマが俺のG型魔道具を観察している様子が移されていたかと思うと、俺たちに向けて―――搭載されているカメラに向かって、の方が正しいか―――話し出した。

 

 

『これを作った人が聞いてくれることを期待して、メッセージを残したい。

 きっと、あなたがこのメッセージを聞いている頃には、私はもう死んでしまっているだろうから』

 

「「ッ!!!!?」」

 

 

 何たることぞ。ソウマは、さっきの観察で魔道具にカメラが搭載されていることまでも見抜いていたのだ。

 いや、カメラじゃあないな。録音機能みたいなものがあると分かったのか。

 

 

『私は、とんでもないことをしてしまった。女神ソラ様に、「体内のクリエが減っていく呪い」をかけてしまったのだ。

 とある女に妹の命を盾に脅されていたとはいえ、罪は罪だ。だが…妹はこの件については知らない。酌量を、かけてやってくれないだろうか……!』

 

「そんな……兄さんっ!!」

 

『私は……自分自身が許せないのは勿論だが………ソラ様のお命を私に狙うように脅してきたあの女を許しはしない。

 あの女は一切自分を語るようなことこそしなかったが……私に分かったことは一つだけある。

 

 あの女は、「不燃の魂術」を自分自身にかけている』

 

「「!!!」」

 

 

 不燃の魂術。永遠に若く生き続ける不老不死の魔術。神殿の禁書にそんなものがあったのを、見たことがある。

 

『平たく「自分の肉体を不滅の炎にする不老不死の術」とされているが……アレはそれだけじゃあない。

 自分の肉体年齢を、自由自在に操作することができるのだ。自分の精神をそのままに。』

 

「なん、だと……」

 

 

 初耳だ。禁書の所には幼いころ、デトリアさんに烈火のように怒られて以降、入ったことがないので不老不死、という認識しかなかったが……そんな効果もあったとは。

 オレンジ女が銃の傷を炎に包まれながら治していたのは実際に見たが、あの姿さえ、何かを偽っている可能性が大きいのか。

 

 

『だが、見分ける方法はある。それは、「どんな傷も炎と共に再生する」特性を逆手に取った方法だ。「不燃の魂術」使用者は、どんな小さな傷も……擦り傷や紙で切った程度の切り傷さえ再生する。炎を伴ってな。私はそれであの女の魔法に気づいた。

 あの女はエトワリアを滅ぼすつもりだ。どうか……この事実を誰かに伝えてほしい。

 そして、最後に………アリサへ。』

 

「ッ!!!」

 

『一人にしてすまない。だが、俺の魂はいつも、アリサの心と共にある―――っ!!』

 

 

 アリサへのメッセージを残した直後、魔法の直撃音とともにソウマが布団の中へG型魔道具を隠す映像が映り、再生が終了した。

 

 

 ……これが、最後に残した「ソウマの真実」というやつか。

 

 ソウマの犯行の動機、女が我が身に施した「不燃の魂術」の本質、それの見分け方。

 

 彼自身の命を守ることはできなかったが……重要な手がかりを彼は残してくれた。

 

 俺は……彼の遺した手がかりを生かさなくてはならない。

 

 

「……アリサ。」

 

「!!」

 

「俺は今から、不燃の魂術について調べ上げ、あの女の野望を食い止めるために動く。

 ―――君はどうしたい?」

 

「………」

 

 

 俺の質問に、アリサはすぐに答えを返せずにいる。

 まぁ、突然唯一の家族を失って、衝撃の真実を知って。そんな状況で心の整理なんてつくわけがないか。

 

 

「わ…私は!!」

 

「!」

 

「私は―――――――――」

 

 

 ―――アリサの答えに、俺は驚きのあまりその場から動けなくなる。

 

 振り返ると、その目には既に覚悟が宿っていた。

 

 

「……マジかよ」

 

 スゴ味の宿った少女に、「なんでこんな子が森で隠居暮らし染みたことしてたんだ」って思いを表情に隠せないまま、ようやく俺はそう言った。




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 呪術師ソウマの真実を知り、改めて黒幕を討つことを決心した男。そして、黒幕が自身に施している可能性の高い「不燃の魂術」について調べることも目標とした。

アリサ・ジャグランテ
 兄の死と彼が経験した真実を知った少女。初めは家族の喪失に打ちひしがれていたが、兄がどのような事情があったかを知り、覚悟を決めた模様。彼女はいったい何を決意したのか、それは次回以降に持ち越したいと思う。
 というのも、本来の予定ではアリサもソウマとともに死ぬ予定ではあったのだが、いざ登場人物を殺してみたら心が痛んだのと、生かしておけば後の伏線になるだろうと思い生存ルートへ。

アリサ「怖い! 作者怖いよ!」
作者「登場人物をあっさり殺せる漫画家・作家の皆さんすげぇや…」

ソウマ・ジャグランテ
 ローリエとアリサに重要な手がかりを遺して逝った呪術師。女神ソラに「クリエが減る」呪いをかけた張本人ではあるが、その背景には、妹の命を人質に取られていたことで、仕事をやらざるを得なくなったという事情があった。もちろんそんな事を彼が許せる筈もなく、二人に自分の調べられるだけの黒幕についての情報を与えた。

オレンジ髪の女
 ソウマを口封じし、「エトワリアを滅ぼす」目的を達成しようとしていた人物。彼女は自身についてソウマに語ることはしなかったが、後述する性質を逆手に取られ、自身が不老不死であるということを見抜かれた。狡猾なのか間抜けなのか分からないかもしれないが、ここはソウマの方が上手だったということで一つ。



不燃の魂術
 拙作オリジナル魔法の一つ。神殿では禁忌のひとつとして登録されている。寿命やケガ、病気によって死ぬことがなくなり、肉体の年齢操作を行うことで見た目を変化させることができる魔法。ただし、いかなる小さなケガも立ちどころに炎と共に修復するという特徴ももち、それが一般人と「不燃の魂術」を施した人間を見分ける方法にもされている。

イーグル
 さらっと登場したローリエの二丁目の拳銃。回転式(リボルバー)拳銃をモデルとしたパイソンと違って、こちらは自動拳銃(オートマチック)タイプにしたことで、連射時間とリロードの手間が省ける。作者の独断による、二丁拳銃のロマンを実現させた結果生まれたオートマのマグナム。
 ローリエの使用する銃のモデルは両方とも実在した拳銃を元にしているのだが、二丁拳銃の名前のモデルはメジャーな所から借りたので詳しくない人でもわかるだろうか。


△▼△▼△▼
きらら「突然召喚されたクリエメイトのユー子さん、ナギさん、トオルさんと出会った私たちは、八賢者・ソルトとクリエメイトを巡って戦います。しかし、突然不穏なクリエを感じたかと思えば、思わぬ人物たちが立ち塞がりました。
 一人は……オーダーの事件を引き起こした、筆頭神官アルシーヴ。そしてもう一人は……“黒一点”の八賢者……ローリエでした。」

次回『ソルトの策略/発明王ローリエ』
ローリエ「次回も見てくれよな!」
▲▽▲▽▲▽

先日のフェンネルのイベクエにて、フェンネルの出自に公式と拙作で違いが出ました。公式は流浪の剣士。拙作は騎士の家の令嬢です。この違いはもうこのままでいきたいと思います。それは兎も角、皆様はどっちのフェンネルがお好みでしょうか?

  • 流浪の剣士フェンネル(公式設定)
  • 騎士の家の令嬢フェンネル(拙作設定)
  • どっちも好き。上下などない。
  • むしろ差を作りまくれ!

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