きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
そると「なんですか、これは?」
作者「ま……待ってくれ。これは、読者の読みやすさと俺の書きやすさを兼ね備えた文章の量を計った結果、こうなっただけであって……」
ろーりえ「……『ノープラン万歳』をした結果がこれかよ……」
そると「合理性に欠けるのです。」
作者「……………」
というワケで、今回からは全くノータッチだったきらら・ソルト側を描いていきます。すぐにローリエ・アリサと合流させたいと思いますので、よろしくお願いします。
“物騒にも『ヤる』といった彼女の瞳は、夕陽を背にして親友の姿を借りながら見下し笑う賢者に対する炎よりも激しい怒りが燃え上がっていることを、一目でわたしに見せてくれた。”
…ランプの日記帳(のちの聖典・きららファンタジア)より抜粋
必死に逃げたユー子さんを追いかけて暫く。
案外粘る彼女に驚愕しながら、ようやく追いついた私たちは、再びオーダーが使われたことを悟りました。
アルシーヴの企みを再び阻止するため、クリエメイトの皆さんを探し始めました。
ユー子さんを落ち着かせた後は、街中で子供に群がられている、露出度の高い服装のトオルさんを見つけ、召喚されているクリエメイトはあと二人であることを確認します。
まずは、目撃情報のあったナギさんという方の行方を探すため、ランプやマッチ、トオルさんと別れユー子さんと村の人々に聞き込みを始めたのですが……
「ああ、その子なら見かけたよ。北の川の方に行ってたね。」
「ほ、本当ですか! ありがとうございます!」
「えっ、東の町の方に行った? さっきは北の川って言わへんかったっけ……?」
「南の渓谷に行った、ですか………」
「ど、どういうことなん……?
みんなナギを見かけとるのに、話がバラバラなんやけど……」
そう。村の人たちから得た情報が、何一つとして噛み合わないのです。この不可解な状況を戻ってきたランプ達に説明すると、三人も同じ感じだったと言いました。
「私たちの方も似たような感じだった。ついさっき見かけたなんて話もあったし……
……私たちが知らないだけで、ナギって双子だったり、三つ子だったり、五つ子か六つ子だったりするのかな?」
「そんなことあらへんやろ! 5人も6人もおらへん!
ウチの知ってるナギは一人だけや!」
「分からないよ、ユー子。性格がてんでバラバラな五つ子なのかもしれない。」
「ある訳ないやろ! それにもしナギが5、6人もおったりしたら、コタツがナギに独占されてまうやん!」
「気にするのそこ……?」
「けど、町の人が嘘をついてる感じもしなかった。見間違い、にしても数が多すぎるな。」
トオルさんとユー子さんの話からして、双子とかの線はなし。
マッチの言う通り、私たちが聞いた人たちも聞いたことに素直に答えてくれてた感じだったし、見間違いも多すぎて不自然です。
うーん……こんなにたくさんの情報があると、どれを信じていいか分からないね。
「どれを信じるか……きららさんはパスを感じてるんだよね。ナギのもわかるの?」
「ごめんなさい、誰のパスなのかとか詳しいところまでは分からなくて……
なんとなくこっちかなーとか、なんとなく近づいたかなーぐらいはわかるんですけど…」
トオルさんが私に聞いてくるが、私のパスによるクリエメイトの探知はなんとなく、大体でしかわからないものなのです。それも、ここに住んでいる人達とはパスの構造がまるで違うからわかるようなもの。
村へ入るときにすれ違った白衣の男の人のアレは、なにか乱れてるってほどじゃあないんですけど、普通の人にはない歪さがあったからわかったようなものなのです。
「でも、感じてはいるんだよね。なら、きららさんのそれを信じようよ。私はそうしたいし。」
「トオルさん……」
私のパス探知は確かに、誰がいるかまでは分からない。でも、その先にクリエメイトがいるのも確か。これまでの旅路でも、その力が役に立ったのは事実。
それに、トオルさんの真っすぐな目は、私を信じてくれているような気がするんです。
「分かりました。そういうことなら……
………多分、こっちだと思います。」
「南の方やね。行ってみよか。」
トオルさんの期待に答える為にも、私はパス探知を行う事にしました。
そして、パスを頼りに南の森を探していると、森の中にひっそりとあった洞窟の中から反応を感じ、そこにクリエメイトがいることを確信します。
私達は洞窟の中に入ろうとしますが、クリエメイトのお二人は、なかなか入ろうとしません。
「………ユー子、お先にどうぞ。」
「えええええっ!!? 急に何やの!? こんな暗い洞窟一人で入るん無理や!!」
「あぁ、洞窟が怖かったんだね。」
「うう…お化けとか、熊とかおるかもしらんやん!?」
洞窟にお化けがいるかもしれないと震えるユー子さん。なんとかして落ち着かせたいけど、流石にお化けのパスは感じ取れないからいるかどうかはわからない。クリエメイトがいるのは確実なんだけど。
「せやから怖いんや。けど中にナギがおるんよね……なら、勇気をだして………うう。
や、やっぱりトオル一緒に行かへん?」
「そうだね、このままだといつまでたっても動けなさそうだし。」
そうして覚悟を決めた二人が洞窟に踏み入ろうとした時―――
「なあ、そこに誰かいるのかー?」
「「「「「!」」」」」
洞窟の奥から、聞きなれない声が聞こえてきました。
それが聞こえた途端、ユー子さんとトオルさんの表情が明るくなる。
「あ、この声は……!
ナギー! ウチや、ユー子やー!」
「な、なんでユー子がここにいるんだッ!?」
「それはえっとー………せ、説明するのが難しいんやー!」
「そこら辺はきららさんに任せた方が早いかな。ナギー、早く出てきなよー。」
「トオルまでいるのか!? もしかして夢かッ!?」
「夢じゃあなくて異世界なんだってさ。説明したいから早く出てきなよ。」
「いやー………けどなぁ……」
ユー子さんとトオルさんの知るナギさんに出会えて良かったのだが、肝心のナギさんは突然オーダーによって召喚されたことに動揺しているのか、ユー子さんやトオルさんの呼びかけにも言葉を濁らせ、奥から出てこようとしない。
「どうしたの、何か出てこれない理由でもあるの?」
「も、もしかして……中で熊に襲われたりしとるんやないの?」
「そんなことない! 無事だよ! ただ……その、外って風が冷たいだろ?」
「……え、そんな理由?」
「大事だろ! 真っ先に雨風を凌げる場所を私は探したんだからな!」
「「「「…………」」」」
……何だろう。ナギさんの言っていることは間違っていない。むしろ正しい。旅などでは、必ずしもテントが建てられる場所にありつけるとは限らない。崩れにくい洞窟の中などに野営することも多々ある。
なのに、なんでこう……微妙な空気が流れているんだろう。
「なるほど……それは確かに一理あるね。」
「そうだろそうだろ……って今の声、聞いたことないな。誰か他にいるのか?」
「うん。炭酸2号とあと二人いるよ。」
「炭酸2号って…なんだ?」
マッチの納得したような声がナギさんに届き、トオルさんの軽い紹介で、ナギさんは炭酸2号……もといマッチに興味を持ったようです。
ちなみに炭酸というのは、トオルさんが元いた世界で飼っていた猫ちゃんの名前なんだそう。
「ほら炭酸2号、鳴いてごらん。」
「……にゃー。」
「さっきの声と同じ!? 炭酸2号って、喋れるのかッ!!?」
「うん、気になるでしょ?」
「……分かった、出るよ。」
よほど炭酸2号……もといマッチが気になるのか、洞窟の奥のナギさんは、出てくることに決めたようだ。
そうして奥の方からゆらりと動く影が見えて、それがこちらへやってくる。
それは一人の少女だった。
茶色い髪を、首筋あたりでおさげにしている、眼鏡をかけた少女。金縁に紺色の、研究員のような恰好が知的な雰囲気を醸し出している。
彼女から、ユー子さんとトオルさんとのつながりを―――パスを感じる。間違いない。彼女こそ、二人が言っていた、ナギさんだ。
「あ! 出てこられました! ナギ様です!」
「うわ、さむっ!!? ……………」
ランプが喜ぶと同時に、ナギさんが体を震わせ悲鳴を上げると、すごすごと洞窟の中へ戻っていって……
………ってアレ。
「ナギ! 戻ったらあかんて!?」
「………」
………この後、ナギさんを外へ連れ出すのに五分ちょっとくらいかかりました。
ナギさんにエトワリアにオーダーで呼び出された事情を話すと、ナギさんは理解してくれた。
ナギさんとトオルさんが、「炭酸の方が可愛い」という意見で一致し、マッチがちょっと不憫な目にあったり、ユー子さんの「寒い」発言に来ている衣服のせいだろとナギさんがユー子さんの脇腹をつつきながら指摘したり、ランプが「ここでいくら太っても元の世界へ戻れば無かったことになる」とか「太ってるじゃなくて、デブじゃなくて……」とか言ったせいでナギさんがひどく落ち込んだりもしたけど……
ここで、不穏な事件が発生する。
それは夕方頃、残りのクリエメイトがるんさんだけとなって、静かだったトオルさんが、私に「パスを感じる力を使って、早くるんちゃんを探して」と熱心に迫り、言うとおりにるんさんのパスを探知しようとした時であった。
「るんちゃんの笑顔を……一緒にいると元気が出てくるような笑顔を思い浮かべて!」
「えっと………こう?」
「違う! もっときらきらしてる感じ!!」
「……パスを感じるのって、イメージの問題なんだっけ…」
「トオルさんがそう仰るのなら、そういうこともあるのかも!」
「……やれやれ、ランプに聞いた僕がバカだったよ。
…………って、あれ?」
「どうしたの、マッ―――――と、トオルさん!!」
るんさんのパスを感じようとしている私とアドバイスをするトオルさんを見ていたマッチが声をあげ、続いてランプがトオルさんを呼ぶ。
「どうしたの、ランプ。」
「あ、あそこに! るん様がッ!!!」
「えっ――――――」
ランプの指をさした方向を見てみると、そこに立っていたのは、エトワリアの僧侶のような恰好をした、色素の薄いオレンジのような髪をした一人の少女だった。
「っ………! るんちゃん!」
トオルさんが彼女を見るなり、花が咲いたような笑顔になって駆け出していく。
「ったく、いい表情になっちゃって。」
「トオルは、ほんまにるんちゃんのことが大好きやなぁ。」
私にしていたパスを感じるときのアドバイスや、ナギさんやユー子さんの言葉から考えて、トオルさんはるんさんのことが大好きなのだろう。
でも、ここで私が感じたのは……安堵や安心などではない。
―――底知れない不気味さと恐怖だった。
「待ってください、トオルさんッ!!」
突き動かされるように走り出し、トオルさんの前に立ちふさがる。
私に邪魔されたと思ったトオルさんは、花のような表情から一変し、まるで敵を見るかのような顔になる。
「………なに?」
「お、おい、きらら? 今のトオルを止めるのは危ないぞ……!」
ナギさんが忠告してくれる。
でも……私は、止めないといけなかった。
なぜなら。
「その方は………………違います。
その方はクリエメイトじゃ――――――るんさんじゃありません!!!」
「なっ!?」
私の言葉に、ナギさんだけじゃなくて、ユー子さんもトオルさんも、ランプもマッチも驚きに表情が変わる。
「嘘やろ!? えっ………どう見てもるんやん。せやんな?」
「そうだよー、るんだよー。」
「ほ、ほら、本人もそう言ってるやん!」
目の前のるんさんの言葉にユー子さんが戸惑うが、私には分かる。
このるんさんからは―――クリエメイトのパスを感じない。
ナギさんとユー子さん、そしてトオルさんとのつながりを……パスを感じられない。
原理は分からない。でも、ここに現れたるんさんが偽物だってことは確かだ。
「でも、違うんです! トオルさん、私を信じてください!」
「………」
トオルさんは―――私を振り切って、るんさんの偽物の元まで走っていってしまった。
違うのに……その人はるんさんじゃないのに……!
「……待たせてごめんね、るんちゃん。
ここまで来て疲れたでしょ、お腹減ってない?」
「トオル……うん、お腹減っちゃったよー。」
「るんちゃんは、食べるとしたら何がいい?」
「お肉! お肉!」
トオルさんとるんさんの偽物の会話が弾んでいる。まるで、本物の親友みたいに。
「そうだよね。いいよ、お肉食べよ。
けど、間にさっぱりしたものも挟まないとね。」
「そうだねー、お野菜とかも食べないとねー。」
突然、トオルさんがるんさんの偽物から離れる。
表情は暗く、親友に出会えて、会話を交わした後だとは思えない。
「きららさんの言うとおりだったね。
―――
「………っ」
「!!」
るんさんの偽物も含め、全員が息を呑む。
「るんちゃんはお肉の合間に『
トオルさんがるんさんの偽物にそう言い放つ。
つまり……さっきの会話は、るんさんが本物かどうか確かめるため、わざとかかったフリをしていたんだ。
私の言葉を、確かめるために!
「全然さっぱりしとらんやん! 普通はサラダとか甘いものやあらへんの?」
「いや! るんはそう言いだしてもおかしくないッ! つまり、本当にこのるんは―――」
「……よく、わかりましたね。」
ユー子さんとナギさんが警戒を強めたあたりで、るんさんが底冷えした声でそう言う。
それと同時にるんさんの姿が光に包まれたと思ったら、シルエットが小さくなり、全く違う姿の少女になった。
背丈はランプと同じくらい。水色のウェーブがかった髪にタヌキのような丸耳が生え、白いワンピースに身を包んだ少女。
「る、るんがるんやなくなって……誰やの、この子は!」
「ソルト……!」
ランプが苛立たしげに少女の名前を呟く。
名を呼ばれた少女―――ソルトはランプを無視して続ける。
「ソルトの変身は完璧でした。見破られるなんて計算外です。計算が狂ったのは―――あなたのせいです。」
ソルトの指は、まっすぐ私に向けられる。
「コールを使う召喚士。アルシーヴ様の敵。名前は確か……きららといいましたか。
ソルトはそう甘くありません。シュガーとは違うのです。
シュガーの邪魔をし、今度はソルトの邪魔をする。………計算外の要素は、ここで排除します。」
「「「「「「「くーーーーー!!!!!」」」」」」」
ソルトの宣言と共に、クロモン達がクリエメイトの皆さんと私達に飛びかかってくる。
それを―――
「「「「「「「くーーーーー!?!?!?」」」」」」」
『コール』したクリエメイトの、炎属性魔法で弾き飛ばしていく。
「そうはさせません!」
「ソルト、ここで捕まって貰います!」
私とランプがそう言い返すと、ソルトはしかし、何かを企むような目でほくそ笑む。
「この程度で勝てると思うなど、計算が甘いのです。」
ソルトの後ろから、伏兵のクロモン達が飛び出した。
私達は、統率されたクロモン達を前に、クリエメイト達を守るのに精一杯で、ソルトにまで手が届かない。
「なら、私が―――!!」
私達の状態を察したトオルさんが、バット片手にソルトに飛びかかる。
「あなたはもっとも計算しやすい。」
その一言と共に、ソルトの姿がるんさんに変わる。
「―――っ!!!」
トオルさんが振り上げたバットが止まる。
その隙に、ソルトはトオルさんから距離をとった。逃げるつもりなのだ。
「頭では違うと分かっているのに、攻撃できない。やはり計算通りです。
本物のるんは私が預かっています。あなたがたはしばらくクロモン達と踊っていてください。
―――さようなら、おバカさんたち。」
るんさんの姿のまま、ソルトは見下すように笑う。
陽が落ちかけている赤い空を背にしたその光景は、ほんの少しだけだが、一種の美しさを覚える。
トオルさんも、私も、他のみんなも、動けなかった。
そしてソルトは、そのまま森の茂みの中へ入り、そのままどこかへ行ってしまった。
その後も、襲い来るクロモン達の相手に手一杯で、ソルトを追いかけることも叶わず、全てのクロモンを倒した頃には完全に日が沈んでしまっていた。
「偽物だって、分かっていたのに…………動けなかった………」
「トオル……」
トオルさんは、るんさんに変身したソルトを攻撃出来なかった事を悔いているみたい。でも、すぐにその目には決意の炎が灯る。
「次は………絶対にヤる。
るんちゃんを騙ったこと……後悔させてやる。」
「や、ヤるって……もうちょっと穏便に…」
「やめとけユー子。こうなったらトオルは止まらないぞ。それに、こっちの方が頼もしい。」
トオルさんのちょっと物騒な宣言におっかなびっくり宥めようとするユー子さんと逆に味方にするナギさんを見て、この三人はもう大丈夫だと思った。
るんさんのパスを追えば、村のだいたいどの辺にいるのかは分かる。だから、後は追うだけだ。
「水を差すようで悪いけど、今日はもう休んだ方がいい。夜の森は、迷いやすいからね。下手に動かない方が得策だ。」
「でも……ソルトは八賢者いちの策士です。
あんまり時間を与えると後が怖い気もするけど…」
「い、嫌やで、ウチは。
こ……こないな暗い森の中進むんは…」
でも、マッチは追いかける事をせずに、ここで休むことを提案する。ユー子さんもいるし、夜の森を進むのは確かに難しいから私も異論はないけど………ランプの懸念も分かる。
敵襲の後、私達はランプからソルトの事を聞いた。
“計算高い”八賢者と呼ばれている少女・ソルト。
曰わく、自由奔放で人懐っこかった、最初に戦った賢者シュガーの双子の姉であると。
また、あらゆる政略・策略・計略に精通しており、計算高い攻め方をしてくること。
『おそらく、私達の情報はさっきの襲撃で集められていると思います。』
『私たちの情報? 何かあったか?』
『………例えば私が、ソルトの変身を見破ったこと、とかですか。』
『はい。ソルトはおそらく……きららさんを、一番危険視すると思います。』
『そっか。なら、アイツがきららさんに注意を向けている間に、私がヤればいいだけだね』
『『『『『……………』』』』』
……まぁ、トオルさんのただでさえ高くなっている戦意を滾らせる結果になったけど、戦いの前はそれでいいと思う。
「それで……休むにしたって、どうするつもりなんだ?」
「ああ、それなんだけど……」
私がソルトの話を思い出している間に、マッチはナギさんの疑問に視線で答える。
マッチの視線の先には、ナギさんが私たちと合流するまでこもっていた洞窟があった。
「洞窟で一休みですか!?」
「なるほど。あそこなら絶対カゼはひかないな。ソースは私」
「そう……ですね。テントでもあれば良かったんですが……」
「問題は、ユー子だけど……ユー子?」
「………」
「ねえ、ユー子? ユー子ったら」
「……………………………………」
トオルさんがユー子さんを叩く。
さっきから静かだったユー子さんは、トオルさんが叩いた勢いにしたがって、ゆっくりと倒れて―――って!?
「ユー子さん!!?」
倒れそうになったユー子さんを、私が支える。
体制を整えながら顔を見ると、ユー子さんの表情は魂が抜けたかのように虚ろなものになっていた。体を揺さぶっても返事がない。
「ゆ、ユー子さん!! 大丈夫ですか、ユー子さん!!」
「ユー子が気絶した!!?」
「…………」
ナギさんが驚く。
出会って間もないけど、怖いものが苦手だとなんとなくわかっていましたが、ここまでストレスが溜まっていたなんて……
「……まぁ、また逃げ回られるよりかはマシかもね。みんな、中に入るよ。」
「マッチ…ちょっと空気読んでよ……」
「これで良かったんでしょうか……」
マッチの呆れた様子をランプが非難しつつ、みんなは洞窟の中に入っていく。私も、気を失ったユー子さんを背負って、あとに続く。
気になることは多い。でも…るんさんを見つけ出して、ソルトを下すためにも、今日はしっかり休まないと。
キャラクター紹介&解説
きらら&ランプ&マッチ/炭酸2号
原作とあまり変わらない動きで、ユー子、トオル、ナギと合流できた原作主人公サイド三人(?)組。初めてるん(の偽物)と会った時のきららの心情の変化には特に力をいれて書いた。その分、作者の想像もあるが、この章のきららの活躍から察するに、一目でクリエメイトか否かを見分けることなど容易いのではと考える。
トオル
本名・
拙作のソルトがるんちゃんの姿で「るんちゃんはそんなこと言わない」的なことをやってしまったため、攻撃性が増してしまっている。
ナギ
本名・
ユー子
ビビリーな関西JK。拙作の流れでは真っ暗な洞窟に野宿せざるを得ない状況になり、逃げだすこともできない(夜の森を迷走することになるため)ので、精神の強制シャットダウン(=気絶)を選択した。アワレなり。しかし、公式設定に不幸体質とあるので、日常的にこれ以上の酷い目に遭っているのではないだろうか。
ソルト
るんちゃんで見下すという、「るんちゃんはそんなこと言わない」ことを実行したため、トオルに「お前をコ□す(CV.〇川光)」的宣言をされた計算高い八賢者。原作とは違い、きらら達について計算をし直す時間が約一日分与えられているので、なんとかして原作とは違う作戦を実行したいところ。
ナギ五人姉妹説
元ネタは、「おそ松さん」と「五等分の花嫁」。どちらも「年の同じ複数きょうだい」という設定があり、それぞれ一人ひとりの個性が強い傾向にある。
彼女のダメ人間っぷりからして実装するなら「おそ松さん」的な五つ子(松野家は六つ子だが)だろうが、もし「五等分の花嫁」的な五つ子にナギがなったら、間違いなく父親の涙が枯れる上に、親バカが過ぎてエライことになるだろうから、ナギが一人っ子なのはある意味救いなのかもしれない。
ナギ1「お姉さんに話してごらん?」
ナギ2「フッ……己との戦い…孤独の試練……」
ナギ3「はいはい……ごみは動きませんよっと」
ナギ4「ちょっとくらい、頼ってもいいでしょ?」
ナギ(本物)「うわああああドッペルゲンガーだああ!!?」
ナギ父「(尊死中)」
作者「やべぇ、おそ松さんと五等分の花嫁混ぜちゃった」
あとがき
まえがきに書いた通り、ノープ…じゃない、切りのいいところで分けたら複数パートになったので、次回は『ソルトの策略/発明王ローリエ その②』をお送りいたします。
先日のフェンネルのイベクエにて、フェンネルの出自に公式と拙作で違いが出ました。公式は流浪の剣士。拙作は騎士の家の令嬢です。この違いはもうこのままでいきたいと思います。それは兎も角、皆様はどっちのフェンネルがお好みでしょうか?
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流浪の剣士フェンネル(公式設定)
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騎士の家の令嬢フェンネル(拙作設定)
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どっちも好き。上下などない。
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むしろ差を作りまくれ!