きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
“破裂音のする魔道具、空飛ぶ機械、爆弾、忌むべき虫型魔道具………ローリエは、一体どうしてこのような魔道具を発明できたのでしょう?”
…ソルト・ドリーマー
きらら達は、トオルを中心としたクリエメイトとの協力をもって、計算高い賢者、八賢者いちの策士・ソルトを下した。
しかし、その後現れた『黒一点の』八賢者・ローリエとの戦いで……
「うっ…………………」
「きららさん! しっかりしてください、きららさん!きららさんッ!!」
「『コール』じゃ何も得られない………だっけ? アルシーヴちゃん」
「……あぁ。ローリエ、よくやった。」
「…ありがとうございます、ローリエさん、アルシーヴ様……」
―――無残にも敗れ去ってしまった。
その時の、辛酸を舐めるが如く苦過ぎる戦いを、ランプの保護者にして空飛ぶマスコット・マッチはこう振り返る。
「あの時ほど、僕は自分の無力さを呪ったことはないよ。なんてったって、『コール』を使ったきららが、わけもわからないまま倒されるのを、見ていることしか出来なかったんだから。」
◆◆◆◆◆
ソルトに勝利したあと、きらら達はソルトを縄で縛り、クリエケージを壊してるん達を元の世界に帰した。
トオルは、次はるんと冒険すると約束した。
るんは、まだ見ぬ冒険を夢見た。
ナギは、村の人たちが引きこもりのままでなくなることに安堵した。
ユー子は、「ランプに会うために頑張って召喚される」と約束した。
「るん達が帰り、オーダーの影響がなくなった後、ランプがソルトに勝利の事実を告げると、ソルトはきららの力に興味を持つような素振りをしだしたんだ。」
『落とし穴におちたあの状況から判別して見せた、あなたの力―――
あなたには何が見えているのか……それをソルトは知りたいのです。』
『……あなたに教えるわけにはいきません。』
ソルトの質問にきららはそう答えた。
至極当然のことである。敵に有利かつ自身が不利になる情報を教えることは、誰がどう考えても愚策であることは明らかだ。
『当然ですね。ソルトもあっさり教えてもらえるとは思っていません。
しかし―――今の口振り、ランプたちは知っているということですね。そして何より、あなたは否定しませんでした。クリエメイトを見抜く力を持っていることを。これは大きな収穫です。』
「ソルトはカマをかけたんだ。『きららのクリエメイトを見抜く力を知っているかのように振舞って、その力を持っていることを確認させる』という手を使ってね。……まったく、捕まえたあとも厄介なんて、本当に面倒な相手だよ、ソルトは。」
パスの力を知っているのは、きららとランプとマッチだけ。それを知られたら、間違いなくきららが狙われる。そうでなくとも、きららがクリエメイトを見つけ出す要を思われれば一緒である。
コールがなければ、彼女たちは戦えない。
ソルトの言う通り、きららを押さえられたら、ランプもマッチも何もできないのだ。
その危うさを、村から離れた、言ノ葉の都市方面へ続く下りの山道で再確認したところで。
『っ!!?』
『きららさん?』
『誰が……来るの…!? このパスは…!』
「このタイミングできららがパスを感じたのは、いわば異常だった。るん達は帰った後だし、オーダーは新たに使われていない。しかも、きららは『ぐちゃぐちゃで無理矢理繋げたようなパス』だと言ったんだ。僕には、すぐに分かったよ。繋がりのない相手を無理矢理呼び出す魔法を知ってたんだから。
―――オーダー。誰であろうと関係なく、世界を歪めて召喚する魔法だよ。」
『………』
『アルシーヴ…!』
『この人が、そうなんだね。』
きらら達が目指していた敵、オーダーを使っている元凶であるアルシーヴは、きらら達の前に現れると、まずランプを見、感情のない声で言った。
『ランプ。お前は神殿に帰っていろ。』
『嫌です! あなたのやっていることは、絶対に間違っている!』
『私のいうことが、聞けぬというのだな。』
『当たり前です!』
『……馬鹿者が。』
ランプが反発し続けているのを一瞥し、今度はきららに目を向けるアルシーヴ。
『……お前が、召喚士か。』
『…あなたを、止めます。』
『ランプに請われたからか?』
『最初はそうでした。でも今は……私の意志です!』
『大人しく言うことを聞けば、赦すつもりだったが…………そうか。刃向かうのならば、容赦はしない。』
きららの意志を聞いたアルシーヴは、目の前の敵を薙ぎ払うべく、魔力を高める。
「そうして、桁違いの魔力を高めてきたアルシーヴが、コールを発動させるきららに襲いかかろうとしたその時―――声がかかったんだ。
この緊迫した空気に似合わない、おちゃらけた声だった。」
『ちょ~~~っと待った!!』
『『『『!!?』』』』
『アルシーヴちゃん……君はまだ戦うべきじゃあない。』
『なに……!? それは、どういう意味だ――――――ローリエ?』
「声の主……ローリエは、黒いローブの少女を伴って、こっちへ歩いてくると、まるでナンパでも始めるかのようにアルシーヴの肩に手を乗せた。
……あんな空気で、筆頭神官のアルシーヴに、よくそんな事が出来たと思うよ。自分の上司の筈なのにさ。」
ローリエ自身、神殿内では上下関係に頓着しない傾向があり、ある程度は認識されている。部下であろうと上司であろうと、見目麗しい女性を口説いて回る姿が目撃されているからだ。
とはいえ、こんなタイミングでローリエに水を差されたアルシーヴの機嫌が、悪くならないはずがない。押し潰されそうなプレッシャーを更に強めて、アルシーヴはこう言った。
『私の邪魔をするつもりか……ローリエ?』
『違ぇよ、だからおっかねぇ顔すんな。美人が台無しだぜ? ただな…………』
「怒りを滲ませたアルシーヴを宥めるローリエは、こう……アルシーヴに何かを耳打ちしたんだ。すると―――それだけでさっきまでのプレッシャーが嘘のように霧散していった。そして……こう言ったんだ。」
『……なら、お前が代わりに召喚士達を倒せ。ソルトの救出までの時間を稼ぐだけでも構わん。ただし少しでも失態を晒したら私に交代だからな』
『りょーかいっと』
「ローリエがアルシーヴに何を言ったかは分からない。でも………全く油断は出来なかった。黒いローブの少女もさっきから動かなかったしね。アルシーヴを逃がすわけにはいかなかったけど、きららは黒いローブの少女とローリエを警戒して動けなかったんだ。」
アルシーヴが転移で消えてもなお、ローリエは両手をポケットに突っこんだまま動かない。敵の目の前であるはずなのに、彼はリラックスしていた。まるで、ピクニックにでも来ているかのようだ。
『きららちゃん、か。こんな状況じゃなけりゃ、君をお茶にでも誘いたかったがな……』
『へ………? お、お茶……?』
『無視で大丈夫です、きららさん。』
『ローリエは神殿いちの女好きだからね。』
むしろ、敵であるはずのきららを前にこんな事を言う始末である。
「いつまでたっても向こうから攻撃してこないと思ったきららは、『コール』を使用した。
呼びかけに応じたのは、さっきまで『オーダー』によってエトワリアに召喚されていた、るん・トオル・ナギ・ユー子の四人だ。」
きららの召喚に応じ、魂の写し身に『コール』によって力を与えられた四人は、それぞれの個性に応じた会話をきららとしながら、ピリピリとし始めた戦いの雰囲気に備え始めた。
『ランプちゃん! ずいぶんと早い再会やったなぁ!』
『よーし! 冒険の始まりだ!』
『そうは言ってられないみたいだよ、るんちゃん、ユー子。』
『だな。私たちが「コール」で呼ばれたってことは……寒ッ!?』
『皆様!!』
「呼び出されたクリエメイトも、いつでも戦える―――ってなったその時だ。
ありのままを……本当にありのまま僕の目の前で起こったことを説明するならば………『クリエメイト達が各々の武器を構えたと思ったら、その武器が何かの破裂音と共に
何を言っているのか分からないと思うけど、僕も何が起こったのか分からなかったよ。」
『『『―――っ!!?』』』
『―――次は、体に当てるぜ?』
『ユー子、ナギ、るんちゃん! ……アイツ、なんであんなモノを…!』
『え? え? え???』
『今のは……攻撃、なの……??』
戦闘は、ナギのフラスコとユー子のクリスタル、そしてるんの杖が弾き飛ばされる所から始まった。きららもランプもマッチも、何が起こったのか全く理解できてない状況で、ローリエを冷静に分析できたのは、唯一持っている
ユー子たちの武器を弾き飛ばしたもの。それは、ローリエが持っていた
『気を付けて、きららさん。アイツの持ってる武器、ヤバいよ…!』
『あーら、トオルちゃん。もう教えちゃうの? 無粋だねぇ』
『るんちゃんに
「トオルは、ローリエの持っていた物について、何かを知っている様子だった。しかし、ローリエがトオルに持っていた物を向けると、トオルはジグザグに動きながらローリエへ突撃していった。
トオルはローリエにバットを振り下ろしたり、ぶん回したりしていたけど、それにローリエは格闘技の技で危なげなく躱したり受け流したりしていたんだ。」
『るんちゃんにそんな危ない物を向けて……ただで済むと思わない方がいい。』
るんを攻撃された怒りをオーラにしながら、ローリエに攻撃し続けるトオル。バットを振るいまくり、ローリエが舞うように避け続ける応酬の中………トオルは確かに聞いた。
『なるほど、強いな……でも、
『このまま順調に強くなったとして、
―――ローリエのその呟きを。
『……何の話?』
『いんや、こっちの話さ』
気になったトオルは言葉をかけるも、ローリエはそれをはぐらかす。その一言でさっきの言葉の意味を教える気はないと踏んだトオルが、再びバットによる攻撃を仕掛けようとする。
『皆さん…今のうちに、武器を拾ってください。』
『『『!』』』
「トオルがローリエと戦っている時、他の三人も棒立ちだったわけじゃない。それぞれ、弾き飛ばされた武器を広いに行こうとした。それも、きららの指示だ。でも……それも、ローリエには予測されていたんだろうな。」
『いやあああああああああああああああああ!!?』
『『『『ユー子(さん)!!?』』』』
「武器を拾いに行ったユー子の悲鳴が響き渡ったんだ。何事かと思って彼女を見てみると………おぞましい程の数の、その……ご、ゴキ……虫にまとわりつかれていたんだ。」
『ひいいいいいいいい! 何でウチにひっついてくるん!!? 堪忍してやーーーーっ!!!』
ユー子はゴキブリに追いつかれそうになる度に逃げるスピードを上げて、振りきろうとするも、ゴキブリ達はユー子について回り、追い縋ろうとする。まるで、ユー子を狙っているかのように。
『ユー子(ちゃん)!』
ナギとるんがユー子を追いかけて救出するべく、走り出したその瞬間である。
「虫に追われるユー子めがけて走り出すナギとるんの足元が突然、爆発したんだ。モロに爆発に巻き込まれた二人は、立ち上がることすら困難なダメージを受けてしまった。」
『きゃあああああああああ!!?』
『わああああああああああ!!?』
『ナギさん! るんさん!』
『……ローリエの発明品だ! あいつ、爆弾も作っていたのか!?』
『二人とも、大丈夫ですか!? 無理そうなら戻ってください。私達なら大丈夫ですから』
吹き飛ばされるるんとナギに駆け寄るランプときらら。マッチは爆発の原因を分析していた。
―――そして、彼女・一井透はというと。
『るんちゃんだけじゃ飽き足らず、ユー子とナギまで……!! 絶対に許さない…!』
るんやナギ、ユー子への仕打ちを行ったローリエにこれ以上無い程の怒りを露わにし、それを目の前にいる男にぶつけんとしていた。
そのプレッシャーは、ソルトを震え上がらせた時とは比べ物にならないだろう。
『おぉ〜、怖い怖い。』
『……ッ!! はあああぁぁぁぁぁっ!!』
それすらも、口先だけで怖がりまったく歯牙にかけないローリエにトオルが再び突っ込んで行こうとした、その時に、戦況は変化した。
『待って、トオルさんっ!!』
「るんとナギ、ユー子が撤退し、トオルが今まで以上の怒気を放ち始めたその時だ。きららがそう叫んだ。」
『うわあああっ!!?』
『と、トオルさんっ!?』
「その次の瞬間、トオルにレーザーのような直線状の魔法が降り注いだんだ。何事かと思って空を仰いだら……そこに、何がいたと思う?
四つ足の小さな魔道具のようなもの? が大量に空を飛んでいて、小さな大砲のような物をトオルに向けていたんだ。正体は全く分からない。でも、ローリエが作った事だけは確かだ…と思う。」
トオルは怒りでパワーアップしている状態であった。しかし、怒りは時に、人の視界を狭めてしまう。
目の前のローリエに集中するあまり、上空を浮遊していた魔道具―――ルーンドローンの砲撃にまるで対応出来なかったのだ。
ローリエとトオルの戦いを距離を取って見ていたきららが気づいたが、忠告が間に合わなかったのだ。
「そして、レーザーの雨を食らったトオルに向かってね……ローリエは持っている何かを向けた。ユー子達の武器を弾き飛ばした時とおんなじ破裂音が響いたと思ったら、トオルの体がぐらついて………煙と共に消えてしまった。
『コール』で呼び出したクリエメイトの、ダメージ超過だ。きらら曰く、戦闘不能になったクリエメイトがそうやって消えて、復活には時間がかかるらしい。」
クリエメイトを退けたローリエは、パイソンの弾を込め直す。それが終わると、銃口を向けたきらら達に問うた。
『まだ続けるかい? その、「コール」の力で。』
『当然です。この力で、あなたやアルシーヴを止めます。そして……世界を救ってみせます!』
「きららの即答に、ローリエが見せた表情は………怒りでも敵意でも、憐れみでもなかった。あれは……焦燥。きらら達の力を確かめて、何かマズい事態を予見した時のような……そんな雰囲気を、ほんの僅かながら感じたんだ。」
『……だとしたら、足りなすぎる。力も、知恵も、知識も―――情報さえも。』
『足りるから、足りないからで決めたりしません!
自分が出来ることを……皆の為にしたいんです!!』
『……やめときな。本当に守りたいものが、指の間からこぼれ落ちるだけだ。』
ローリエのその言葉には、重みがあった。まるで、過去に何度も経験し、魂に刻みつけた教訓であるかのように。
その言葉が風に流されるや否や、ローリエはパイソンを発砲。きららはすぐに魔法で防壁を張るが、その構築速度が
『ぐうぅっ!!?』
『きららさんっ!?』
放たれたぷにぷに石の弾丸は、きららの脇腹を捉えた。抉るような痛みが、きららの全身を走っていく。
『敵は強い。この程度で遅れを取るようじゃあ、殺されるだけだ。』
『何を、言われようと……私は……!!』
「激痛に支配されても、ローリエに弾丸を浴びせられ続けても防御を崩さなかったきららに対して、ローリエは親指だけを立てて、人差し指の付け根に向かって倒す動作をした。そう―――そこにあるスイッチを押すかのような、そんな動作だ。
次の瞬間、きららの足元にいた、虫か何かが急に光りだし、爆発を巻き起こした。」
『きゃああああああああああああああああっ!!!』
きららの体が空を舞い、地面に叩きつけられる。
『きららさん、きららさんっ……!』
『うっ…………………』
『きららさん! しっかりしてください、きららさん!きららさんッ!!』
『「コール」じゃ何も得られない………だっけ? アルシーヴちゃん』
『……あぁ。ローリエ、よくやった。』
『…ありがとうございます、ローリエさん、アルシーヴ様……』
「きららが倒れ、ランプがそれに縋る姿に呆然としたよ。負ける姿が想像出来なかったんだ。アルシーヴなら兎も角、いち賢者にね。
……思えば、僕は甘かったんだ。既に四回、賢者達を退けている。なら八賢者ローリエくらい、なんてことないと心の何処かで思っていたんだ。―――その結果がこれだよ。」
己の慢心と無力を自嘲するようにため息をついたマッチは、ローリエがきららに向けた言葉に何の意味を持つのか、それにはまだ気づかなかった。
◆◆◆◆◆
―――はぁ。死にたい。
ユー子を怖がらせちゃった。
ナギとるんちゃんをぶっ飛ばしちゃった。
トオルを撃っちゃった。
ランプを泣かせちゃった。
何より、きららちゃんに酷いことしちゃったなぁ。
これだからきららちゃんとは戦いたくなかった。
でも、そうも言ってられなくなったんだ。
ソウマをソラちゃんへの呪いに利用し、その後口封じに現れた、オレンジの長髪の女。ヤツの目的は―――エトワリアの滅亡。
これからはきららちゃんとアルシーヴちゃんの戦いに横槍を入れてくるだろう。それも―――漁夫の利を得られるタイミングで。
それに対抗するべく、アルシーヴちゃんには早く真実を伝えて力の消耗をおさえ、きららちゃん達も時間をかけて説得する必要がある。モチロン、ソラちゃんの呪いを解除することも忘れちゃならないが。
そこで思いついたのが、きららちゃん達の実力を測ること。アルシーヴちゃんにソラちゃんの事件の犯人が分かったと言えば、矛を収めてくれるだろうと思ったから、耳打ちで報告した。そしたら代わりに戦えとか言われた。その結果がこのズルい戦いである。
アルシーヴちゃんは既にソルトを助けた。もうこの山道に用はない。
まぁ、このままじゃあ可哀相だし、ランプにちょっと助言してから帰りますか。
「ランプ。英雄気取りの時間は終わりだ。」
「まだ…まだ終わりじゃない! これから……これから……!」
と、思ったらアルシーヴちゃんがランプを言葉責めしようとしてるんだけど。
「じゃ、次は君が戦う? 言っとくけど、超痛いよ?」
「……っ!!」
「……自ら何も為し得ない者が未来を語るなど、笑わせる。もう一度言う。私の邪魔をするな。」
俺の言葉に言い返せないランプにアルシーヴちゃんはそれだけ言うと、背を向け歩き始める。俺からも何か伝えておくか。ランプが立ち直る取っ掛かりになることを。
「ランプ。じゃあ俺は…先生らしく宿題を出して帰ろうかな。」
「何を……」
「問題。君は、
「………っ!」
「ヒントは、
「ローリエ、何をしている。置いていくぞ?」
「ワリぃワリぃ。ちょっと待ってよ。……それじゃあね〜」
今言うべき事は言った。あとは、きららちゃんとマッチが何とかするだろ。
◇◇◇◇◇
帰りの道中、ソルトが呟いた。
「お二人とも、申し訳ございません。」
「んあ?」
「ソルト?」
「ランプ程度に遅れを取るなんて……八賢者失格です。」
あらら、これは結構ダメージ入ってるな。自分じゃ勝てなかったきららちゃん達を俺が倒しちゃったのを見ていたのかな?
黒ローブのアリサについて言及するより先に謝罪が出るとは、相当だ。
とはいえ、だ。
「なんだ、ンな事気にしてたのか? 大丈夫だって。アルシーヴちゃんはそんなの気にしないイイ女なんだぜ?」
「うわっぷ、ろ、ローリエ、手を…手を離してください!」
ソルトをちょいとわしわし撫でてあげると、口でそんな事を言いつつすぐに手をどかそうとしない。ソルトはシュガーちゃんと違って大人っぽいけど、やっぱりこういう所はまだ子供だ。
「ローリエ、手を離してやれ。ソルト、それを決めるのはお前じゃあない。次のオーダーの準備を進める。戻るぞ。」
転移魔法を展開するアルシーヴちゃんの指示に返事をしようとしたその時。
俺の視界に、
「はぁっ!!?」
目をこすり、その方向をよく見る。それは、見間違いなどではなかった。
「な……なぁ、アルシーヴちゃん? お前も人が悪いぜ? 既にやったならやったって言えよ………なぁ?」
「い…イヤ違うッ! アレは………私のオーダーではないッ!!」
「アルシーヴ様以外の……オーダー………!?」
「た、建物が……凄い勢いで出来上がっていく……!?」
俺達四人の視線の先には、山道を降りた麓から、遠目に見える言ノ葉の樹と周囲の都市。その2つを結ぶように繋がっている街道。その、中間地点で。
―――ひときわ大きな、写真で見たラスベガスのカジノのような建物が、超スピードで出来上がっていく光景だった。
俺もアルシーヴちゃんも、ソルトもアリサも、しばし言葉を失っていた。
キャラクター紹介&解説
ローリエ
きらら達を下した八賢者。ソウマとの共闘を経て、味方のパワーアップと対策を練ろうと考え続けていた。ランプに『宿題』を出して帰ろうとした所、異常な現象を見つける。
アルシーヴ
原作とは違い、ダークマター無双をしなかった筆頭神官。原作四章でも、あの時点で物凄く腹が立ってたと考え、ローリエの報告でソルトの救出に向かう形に。
きらら&ランプ&マッチ
アルシーヴの代わりにローリエに敗北した主人公一行。ローリエの言葉は、ただの敵ではないと思うような言動を意識して書いた。ランプが最後にローリエから課された『宿題』は、一体どんな意味を持つのだろうか?
アリサ
ほとんどただのカカシだった呪術師の女の子。格好はローリエと戦った時の黒いローブに金の装飾具のままで、見た目は不気味だったこともあり、きららがアルシーヴを深追いするのを防ぐ役割を無自覚に果たしている。
ローリエVS.トオル&るん&ナギ&ユー子
コールの力で強化されたクリエメイトとはいえ、現代兵器と属性相性を熟知していたこともあり、ローリエが勝利。るんとナギは爆発に巻き込まれ、ユー子はG型魔道具になすすべもなく、トオルは隙を突かれて土属性魔法弾を撃ち込まれた結果、一回休みに。
△▼△▼△▼
アルシーヴ「突然行われた私以外のオーダー……これは、ローリエの報告が現実味を帯びてきたか。謎のオーダーに即時対応してくれたローリエ。仕方なく私は、呪術師だという、アリサという少女から話を聞くことにした……」
次回『呪いの裏の不死鳥』
アルシーヴ「次回もお楽しみに。」
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あとがき
まちカドまぞくの二次小説を書いてたり八賢者のクリスマス特別編を書いているうちに、ちょっとペースが落ちてしまったかと思います。
でもまぁ、クリスマス特別編は完成しました!12/24の11時以降に予約投稿なるものをしてみましたが、新しい試みが上手く行くか心配です。
では皆様、体に気をつけて〜
先日のフェンネルのイベクエにて、フェンネルの出自に公式と拙作で違いが出ました。公式は流浪の剣士。拙作は騎士の家の令嬢です。この違いはもうこのままでいきたいと思います。それは兎も角、皆様はどっちのフェンネルがお好みでしょうか?
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流浪の剣士フェンネル(公式設定)
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騎士の家の令嬢フェンネル(拙作設定)
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どっちも好き。上下などない。
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むしろ差を作りまくれ!