きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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明けましておめでとうございます。
まちカドまぞくに恋する小惑星……2020も面白いきらら漫画がいっぱいですね。
今年も、拙作のきらファン八賢者をよろしくお願いします。


第42話:ぼなぺてぃーとD

 ドラクエ5において、ビアンカとフローラ、どっちが嫁としていい女か。

 その論争は、アリサの乱入……もとい助っ人参戦によって終結させざるを得なくなった。何故なら、アリサが今潜入中の建物についての情報を持ってきたから。

 

 

「一度しか言わないから、よく聞いてよね?」

 

 

 そうして、アリサは話しだした。

 

「この建物の名前は、『イモルト・ドーロ』。4年前に取り壊された、エトワリアのカジノだった場所よ」

 

「カジノ?」

 

 エトワリアにカジノ……そんな話は、前世の記憶にはなかった。原因に心当たりは、ある。

 なんてったって、俺の知らない名前の人物が、このエトワリアにはわんさかいるのだ。ペッパーにコリアンダー、デトリアにサルモネラ、ソウマにアリサ。そして―――この俺、ローリエさえも。そういった人物たちがエトワリアに影響を及ぼしている可能性は大きい。

 

 

「そして、このカジノの元支配人だったのは……『ビブリオ』という男よ。この男は元々、『イモルト・ドーロ』が取り壊されたのと同じタイミングで逮捕された、って筆頭神官さまが言ってたわ」

 

「容疑は汚い金稼ぎが祟ったから、って所か」

 

「ええ」

 

「なるほど……で、今はそいつがここにいる可能性がデカいと?」

 

「うん。収監されてからわずか1年で女神交代の恩赦で釈放されてたことが分かったの」

 

「はぁ!?」

 

 いやいや、明らかにおかしい。

 ビブリオ釈放の時期が、収監されてから時間が経ってなさすぎる上に、女神がソラちゃんに代わる時期……そして、元女神が亡くなった時期と一致している。

 そのビブリオとかいう輩の仲間が神殿内にいて、女神交代及び元女神死亡のどさくさに紛れて脱出の手引きをしたと考えた方がいいかもしれない。

 

 神殿ヤベェな。内通者誰だ。

 気になる所ではあるが、全てはこのオーダーを引き起こした野郎―――おそらくビブリオだろうが―――をとっちめれば分かる話だ。

 そのためにも、俺達は一刻も早くクリエメイト達を保護しなければならない。幸い、()()()()()()()()()()()

 

 

 俺はアリサに現在の状況を話した。

 

 

「アリサ、夏帆ちゃん。今から、スティーレの店員たちを助けに向かう。俺について来てくれないか?」

 

 そして、二人に改めて確認する。

 スティーレのメンバーから信頼を得るには、他のメンバーから信頼を得ている事を証明するのが一番良い。そのためにも、多少危険でも夏帆ちゃんにはついて来て貰いたい。

 また、彼女や他のスティーレのメンバーを守る為に人数は多いほうが良い。アリサは、見た目に反してなかなか強い。助っ人と名乗らせるには不安はあるが、ついて来させない手はない。

 

 

「うん! 苺香ちゃん達を助けに行こう!」

「当然です! ローリエさんの助っ人なんだから!」

 

 二人とも、いい返事を返してくれた。さて、動くとしますか。

 

 

「まず、作戦開始に至って、鍵を握ることになるだろう人達を紹介しておくよ。」

 

 部屋から出て、移動しながらモニターを二人に見せる。

 そこには、メルヘンチックな部屋を移動しているきららちゃん、ランプ、マッチ………そして、麻冬さんがいた。

 

 

「あっ! 麻冬さんだっ!」

 

「きららちゃんご一行だ。彼女達もまた、クリエメイトを守ろうとしている。」

 

 

現在きららちゃん達御一行は、西側の1階から2階へ向かう長い階段の途中だ。ちなみに俺達は、東側1階・階段前の小部屋にいる。

 東側と西側は分断されており、合流するには4階まで登る必要がある。

 

 

 実は夏帆ちゃんとビアンカ・フローラ論争をしている最中、なにも無策だった訳じゃあない。ルーンドローンとG型魔道具を展開し、クリエメイトを探すだけじゃなく、『赤い目の魔物から逃げられるよう、護衛しろ』と命令しておいたのだ。

 

 アリサの報告が入るまでドラクエ談義をしていたのも、スティーレのメンバーが全員見つかるのを待っていたからだ。

 

 さっきも、麻冬さんが赤い目の魔物に囲まれていた所をステルス迷彩タイプのルーンドローンが見つけていたのだ。すぐさまルーンドローンの一斉掃射でクロモンだけをぶっ飛ばしてやるつもりだった。寸前できららちゃん達が助けに入ったから、援護射撃モードに切り替えたが。

 

 

「彼女達はこのまま、次の階へ行くだろう。そして、その階には、()()()がいる」

 

 俺はモニターを切り替える。

 するとカメラは、イタリアン・レストランを彷彿とさせるようなテーブル席やカウンター、キッチンが映し出した。動くものは、正面付近に映る、金髪で背の高い男性だけである。彫りの深さからして、外国人……いや、()()()()()だろう。

 属性喫茶店スティーレ。その店長の、ディーノさんだ。

 

 

「店長!!」

 

「この人がいることには驚きだが……」

 

『苺香サ~~~ン!! どこデスか~~!!!?』

 

「……相変わらず聖典通りだな、この人」

「あぁ~………」

 

 さっきから画面上のディーノさんは、両手をメガホンのように口に当て、そう叫んでいる。そんな事をしたら苺香さんより先に魔物達が集まって来ちゃうでしょうが、このおバカ。

 

 

「このままだと魔物が集まりそうなんで、早いところきららちゃん達と合流させよう」

 

「どうやって?」

 

「こうするのさ」

 

 俺がパチンと指を鳴らすと、画面越しに指示が聞こえたかのように、俺のG型魔道具たちが現れ、ディーノさんににじりよっている。

 ディーノさんは、それを見るなり、顔面蒼白になりながら逃げ出した。

 

『ギャアアアアアアアアアーーーーーーッ!!!? ごっ、ご、ゴキっ、ゴキ―――ッ!!!!!!』

 

 これぞ、『Gの逆誘導作戦』だ。Gの生理的嫌悪感を利用して、きららちゃんの元へ誘い込む作戦だ。ひでりくんには効かないのが難点だが。

 

「………ねぇ、これ逆効果なんじゃないの?」

 

「逃げ道の先にはきららちゃん達がいる。一応ドローンの援護射撃もあるが、彼女達なら大丈夫さ」

 

「「…………………………」」

 

 

 そう言うが、夏帆ちゃんもアリサも、目のハイライトが消えている気がする。二人とも、そのネイティみたいなジト目でこっちを見るな。

 

 

「………オホン。で、だ。俺達は今から、この子を―――苺香ちゃんを救いに行く」

 

「苺香ちゃんを?」

 

「そう。モニターを見せるが……ちょっとショッキングだぞ」

 

 

 モニターに映し出されたのは、江戸が舞台の時代劇に出てきそうな木製のクリエケージモドキに、両手を繋がれて閉じ込められている、白鳥のようなドレス姿の苺香だった。

 彼女を見つけた時には既にこうなっていた。おそらく、俺が夏帆ちゃんを助けるまでの間に敵の手中に落ちてしまったのだろうか?

 

 

「苺香ちゃんッ!!!?」

 

「息はドローンで確認した。それに、ウッカリ見つけたGにも反応していたから、まだ生きている」

 

「どうして? 私は死にかけたと思ったんだけど、なんで苺香ちゃんが無事なの?」

 

「わからん。多分、この子がビブリオとやらの何かに触れたんじゃあないのか」

 

 と、夏帆ちゃんにはオブラートに包んだが、見目麗しかったから気に入られたとか、そんな気持ち悪い想像しかつかない。ビブリオがどんなヤツかは知らないが、苺香ちゃんを好きにしていいのはディーノさんだけだ。俺が見つけた以上、これ以上好きにはさせんぞ。

 

「作戦は分かった。それで、ローリエさんはどうするの?」

 

「いいか、アリサ。今から、最上階に捕われている苺香ちゃんの元へ向かうつもりだが、その道中で最初に()()()と合流する」

 

 アリサに答えてモニターを切り替えると、二人ともジト目をやめてモニターに視線を戻した。

 そこの部屋には女の子同志がイチャイチャしているポスターやらタペストリーやらがそこら中に飾ってある。更に、さっきのディーノさんよりもやや背の低い、俺より濃い()()()()がチラチラとこっちを見ている様子が映っていた。

 

 

「おお! 秋月くんか!」

 

「その通り! 行くぞ、二人とも!」

 

 

 秋月くんを確認した俺達三人は、急いで階段を駆けのぼった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「……?」

 

「麻冬様? きららさん? どうかしたのですか?」

 

「あのねランプ、さっきから、何かに見られてる気がするの。」

 

「……奇遇ね、私もよ。……あと様付けはやめて」

 

 階段をのぼっている最中、ランプに尋ねられ、思ったことを口にする。麻冬さんも、妙な違和感を覚えているみたい。

 気のせいじゃなければ、さっきから私達の上空が揺らいでるような気がする。………パスも感じないし、十中八九見間違いだと思うけど。

 

「………敵の手先がついているかもしれない。気を付けるに越したことはない―――」

 

 マッチがそう言って注意を促そうとした時。

 わずかに、前方から騒音を感じた。

 

 

「………サ〜〜イ……」

 

「……なんの音だ?」

「……聞き覚えのある声ね」

 

 それと同時に……パスがこっちにやって来るのを感じる!

 

 

「クリエメイトがこっちに向かってきてる!!」

 

「「「!!!」」」

 

 間違いのない感覚を頼りにして、皆に知らせる。

 そうして、また一人のクリエメイトが無事にやって来たという安心感と何が出てくるか分からない微かな不安を胸に抱いている時にやって来たのは。

 

 

「ヒヤアアアアアアアアーーーーーーッ!! 助けてくだ……あ、あれ? ま、麻冬サン!? とりあえず、逃げて下さいィィィィーーーっ!!」

 

「ディーノ様!!?」

「……店長?」

 

 半べそをかきながらこっちへ走ってくる、彫りがちょっと深く背の高い、銀の鎧姿をした金髪の男性と。

 

 

「なっ―――!!?」

 

「い、いやあああああああああああああああああああああああっ!!!!? きららさん、あれっ、ごっ、ゴ、ゴゴゴゴゴキッ、ゴっ―――!!」

 

「「―――っ!?!?!?!?」」

 

 その男性を追いかける、ゆのさん達を助けた後に見かけた黒光りする虫の大群でした。

 

 

「きららさん!きららさん!無敵の『コール』で何とかしてくださいっ!」

 

「ええっ!!? そんな事言われても―――」

 

「で、でも、いっ、いいいい今戦えるのは、きららしかいないッ! だから―――」

 

「待って」

 

 

 ランプとマッチにしがみつかれ、身動きが取れず、「コールは別に無敵ってわけじゃない」と言おうとした時に、真っ青になっている麻冬さんが私達を呼んだ。

 

 

「店長とゴキ以外で何かが来てない?」

 

 そのひとことで、私はハッとし、前を見る。

 すると。

 

「くー!!」

「グギャ!」

 

「―――っ! 魔物が!」

 

 クロモンやリザーといった魔物が数匹、こちらに向かってきている。そいつらは漏れなく、目が赤い。きっと、逃げ回るさっきの男性を見つけて、追いかけてきたのだ。

 

「あの……麻冬サン? どうしてここに? 彼女達は一体………?」

 

「落ち着いて。ひとまず彼女達は味方よ。」

 

「詳しい話は後だ! まずは魔物を何とかしないと―――」

 

 

 戸惑う男性に、麻冬さんが要点を伝え、マッチが魔物の相手を優先する。

 魔物と虫達を退ける為に、戦いの態勢に入る。

 

 ―――その時、不思議な事が起こった。

 

「くーーーーーーーーーーーー!?!?!?」

「グワーーーーーーーーーーッ!?!?!?」

 

「「「「「!!!!?」」」」」

 

 どこからともなく放たれた直線上の何かが、クロモン達を貫いた。

 

「な…………!?」

 

「これは……!?」

 

「レーザー……?」

 

 突然のレーザービームのような攻撃に、咄嗟に体が動かない。雨のような攻撃に、魔物達は一人も耐えることなく消滅していく。

 

「一体……これは、どういう……!?」

 

「……っ!! みんな、アレ!」

 

「麻冬サン、どうしたんで――――!!?」

 

 麻冬さんが最初に空を見上げ、男性も続いて空を仰いで言葉を失う。二人にならって私も空を見上げた。

 天井付近にいたそいつは、小さな4つのプロペラを回し、砲台にも見える筒をクロモン達に向け、そこからレーザーのような魔法の砲撃を放っていた。

 

 

「ランプ、マッチ、これは……!!」

「トオルに攻撃していた機械だ! こんなものを使いこなせるのは一人しかいないっ!!」

 

「なぜ……あんなものが、異世界にあるのよ…!?」

「ドローン、ですよね…アレ……!?」

 

 私達に見られている事に気づいた空飛ぶ物体は、まるで景色に溶け込むかのように自身の色を変え、姿を消していったが、私達は誰一人見逃すことなくその姿を視界に収めていた。

 その中、私は一向に襲ってくる気配がないどころかいつの間にかいなくなってしまっていた黒光りする虫と、麻冬さんとディーノさんの言葉が微妙に引っかかっていた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 私達は、新たに合流したクリエメイト・ディーノさんに、麻冬さんに説明したように異世界エトワリアと今起こっている事件を説明した。しかし、あの機械について、麻冬さんとディーノさんに説明したところ……

 

 

「知ってますよ。アレはドローンという小型飛行機です」

 

「小型、飛行機……!?」

 

「元々私達の世界で開発されていたもののはずよ。それがどうして、エトワリアにあるのかは知らないけど。」

 

「それについては検討がついている。神殿の中に一人だけ、あんなものを造れる人物に心当たりがある。」

 

「ローリエ………八賢者の一人にして、賢者唯一の男です……!」

 

 

 ローリエ………その名前を聞いて、表情が固まりました。

 忘れるはずもない―――山道での戦いで、召喚したクリエメイトを次々と破り、私を謎の武器で倒した男。実際に経験した今でも、何であんな事が起こったのか、半分以上もわからない。

 

 そんな男が、今回のオーダーに関わっているというのだろうか………?

 

 

「……アルシーヴのやつ、見境がなくなったか……? 気を引き締めよう、きらら。こんな状況を生み出した奴を、放ってはおけないよ。」

 

「うん、そうだね………!」

 

「さっきから見る魔物の赤い目……どこかで聞いたことがあると思ったんですけど……」

 

 今までとはまるで違うやり方。麻冬さんやディーノさんが知る『ドローン』という機械。そして、赤い目について、ランプも何かを思い出そうとしている。

 一刻も早く次のクリエメイトを見つけ出すため、すぐに新たなパスの探知を始めた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 仕込みをしている最中で、キッチンの様子がいつもとは違うなと思った瞬間、全てがあっという間に変わった。

 壁に百合もののポスターやタペストリーが貼りめぐらされ、床も知らない大理石のような高級感に溢れる。何より、鏡でみた俺の格好は、見覚えがなさすぎてビックリした。

 赤と黒、金で彩られた和服と袴を身に着けていて、腰にはデカく細長い出刃包丁が差さっている。手を見ると、袴に合ったデザインの武士の小手がはめられていた。

 

 

 あまりに現実離れした事態に、ハッキリ言ってフリーズした。5分かそこいらの時間、固まった後、俺は周囲がどれだけ変わったかの観察を始めた。

 その最中で空中に浮かぶ機械―――ドローンを見つけ、これはいよいよ何かあると思い距離を取りながらドローンの様子を見ていると、聞き慣れた声がした。

 

 

「いたいた! 秋月くーん!!」

 

「……日向? どうしてここに――って!! 何だその格好は!!?」

 

 振り向くと、そこにいたのは、バニーガールを彷彿とさせる、子供がしちゃいけない服装をした日向と。

 

「おぉっ、相変わらず秋月君はヘタ……じゃない、ウブですな、アハハ」

 

「彼が……クリエメイト、秋月紅葉……?」

 

 なんか当たり前のように俺の名前を言い当てたライトグリーンの髪の男と小さな茶髪の女だった。

 

 

 

 男と女はそれぞれ、ローリエとアリサと名乗った。彼らから聞いた話によると、俺は『オーダー』という魔法によってエトワリアという俺達の世界とは別の世界に召喚されてしまったのだという。『聖典』という書物が重要視されているようだ。ちなみに、俺が見つけたドローンは、ローリエが造ったものらしい。

 実際に聖典なるものを見たが、俺達スティーレのメンバーが書かれている部分は流石にちょっと引いた。

 

「質問は?」

 

 その一言で、俺達を気遣っているのがわかる。突然召喚された俺達は、この世界・エトワリアについて何も知らないからだ。だったら、こっちも遠慮なく質問させてもらおう。

 

「……何が目的だ?」

 

「ちょっと秋月くん……!」

 

 日向が宥めようとする。でもこの質問に答えられないようでは、悪いが信用できない。

 その意図を知ってか知らずか、さっきまで笑みを浮かべていたローリエは、俺の質問を聞いた瞬間笑うのをやめ、まっすぐこちらを向く。そして、こう答えたのだ。

 

 

「スティーレの皆に、元の世界へ帰ってもらうこと。それだけだ。」

 

「!!?」

 

 

 迷う様子もなく、男ローリエは続ける。

 

 

「君達は、いつも通り接客して、いつも通り料理を振る舞って、いつも通りの日常を過ごして欲しいんだ。」

 

「……それなら何で俺達を召喚したんだ?」

 

「俺達神殿の人間は、『オーダー』する場所を予め決めておき、召喚されるクリエメイトを予測し、実際に召喚したらすぐに命の危険のないように保護する。だが……今回の『オーダー』は、第三者が勝手に行ったもの。神殿も把握しきれていないし、危険もある。だから……今の危険な状態で呼ばれた君達を、早めに帰すのが、今の俺達の仕事であり……使命なんだ。」

 

 

 つまり、ローリエは、俺達を勝手に召喚した奴を見つけて捕らえ、俺達は帰そうとしているというのか。

 俺から見た賢者を名乗るこの男は、純粋に良いやつには見えない。だが、ひとまず背中から襲われることはなさそうだ。

 

「あ、ちょっと待って秋月君、夏帆ちゃん、その物陰に隠れて」

「…? 一体何を……」

「あそこの魔物どもを掃除する」

「えっ!!? どうして分かったん……ってそれ、拳銃―――」

 

 

「くーー!!?」「アバーーッ!?」「ウボァー!」

 

 

「よし。ターゲット、クリア」

「……マジか。拳銃まで持ってんのかよ」

 

 ………安心して良いんだよな?

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 カジノ『イモルト・ドーロ』の最奥、最上階にて。

 白鳥のようなドレスをした、整った黒髪と顔立ちをした少女・苺香を木製の檻ごしに見下(みお)ろす、一人の男がいた。

 

 彼の名はビブリオ。身長だけでなく、恰幅が良すぎて不健康さを感じるほどの肥満な体が特徴的だ。

 

 彼は己が仕える主に、クリエメイトや召喚士、賢者の始末を頼まれていた。それなのに、クリエメイトであるはずの苺香を捕えて、檻に閉じ込めている。それはなぜか?

 

 ローリエの予想は、ニアピンどころか大正解といっていいほど当たっていた。彼は、端正な顔立ちと美しい黒髪、バランスのいい体型を持つ苺香を気に入ったのだ。そして、こう思ったのだ。

 

(この女は商品価値が高いんだぁな……!! どれだけ高値をつけたとしても、闇に生きる客の需要を間違いなく得られるんだぁぁな!!)

 

 

 最初は、ビブリオとてクリエメイトを始末するつもりだった。しかし、一番最初に、召喚されたばかりの苺香を見つけた途端、彼に雷光が迸ったのだ。

 すぐさま苺香を捕え、木の檻に繋げたところまでは良かった。しかし、すぐに問題が発覚することになる。

 

 

「な、何が目的なんですか……? 怖いので近寄らないでください……」

 

「……っ!! その目! 今すぐやめるんだぁな!! 腹が立つんだぁな!!!」

 

「ひぃっ!?」

 

 

 それは―――苺香の目つきが、非常に悪いこと。

 普段、苺香はその目つきを利用して(?)ドS接客を行っている。需要はちゃんと生まれているし、それなりに指名は入っているのだが………それは元いた世界での話。

 ビブリオは、苺香の養豚場の豚を見るような目つきを求めるようなMではなかった。むしろ、その逆であった。故に、苺香の瞳から放たれる冷たい視線は、ビブリオにとってはプライドを傷つけるばかりである。

 

 しかし、彼は苺香に手を上げない。商品価値が下がるからである。とはいえ、苺香の見下(みくだ)すような目に、堪忍袋の緒が切れそうであった。

 もちろん、苺香に蔑む意図はまったくない。彼女はただ、見知らぬ場所に召喚された上、見知らぬ男に捕らえられた不安と緊張が顔に出てしまっているだけである。だが、ビブリオにはそんな事など知る由もない。

 

 

「いいか娘! お前はオラの商会の()()なんだぁな!!! わかるか?……売り手に歯向かう商品なんぞいなぁい!! 商品は! 黙って!! 商品棚に並んでればいいんだぁぁな!!!

 オラが上! お前が下なんだぁな!! 分かったらオラの事をそんな目で見るのはやめて愛想よく―――む?」

 

 

 苺香の悪い目つきをやめさせるべく、怒鳴り散らそうとしたビブリオの視界にふと、素早く動く黒い影が映る。

 

 足元を見てみると―――なんと、ビブリオの丸太のような足を、黒い虫の………ゴキブリの群れが、登っているではないか。

 

 

「ひぃぃぃいいいいいいいっ!!!!?

 な、なんっ、どこから、入り込んで来たんだぁぁな!!!?」

 

 ビブリオはすぐさま足の虫を手で払い落とそうとするも、それが分かっているかのように虫達は飛び立ち、今度はビブリオの周りを旋回し始めた。

 

「ぬわああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!?」

 

 忌むべき虫にたかられるビブリオはただ、虫を殺そうとこっちへジタバタ、あっちへジタバタと暴れまわる。しかし、虫達はビブリオで遊んでいるかのように飛び回り、ひっつき、服の中へ潜入して動き回る。

 

 

「こんの、虫ケラどもが!! このビブリオ様の崇高な『イモルト・ドーロ』の中に、入ってくるんじゃあ―――ギャアァ!? ふ、服の中に虫がああああああ!!?」

 

 わめくビブリオを好き放題する虫のしぶとさに、音を上げまくる。

 実はこの虫一匹一匹の全てが、厳密には虫ではない。

 ローリエが開発した、G型魔道具という、れっきとした自律行動型の偵察機なのだ。ビブリオの攻撃をかわすように組まれている思考回路と、本物のGに勝るとも劣らないほどのしぶとさが組み合わさったこの魔道具が、しぶとくて当然である。

 

 ビブリオは、あまりに突然の虫の襲撃に、苺香への調教のことなど、頭からすっぽ抜けてしまっていた。

 

 

 なお、この様子を目にした苺香はというと……

 

(ごっ、ごき、Gが、男の人にたかっ、て………………………………!!!)

 

 ゴキブリの群れが人を襲う光景のビジュアルがあまりに恐ろしかったため、次は自分の番だ、と勘違いし、15年ほどの走馬灯を目にしながら、しめやかに意識を手放した。

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ&アリサ&日向夏帆
 魔道具を使ってクリエメイトを守っていた八賢者と彼と同行している女性達。ディーノと秋月が呼ばれたことに驚きながらも、彼らに無事に帰って貰うために魔道具を操る。苺香の異変を察知し、救出するためにカジノの最上階へ急ぐ。その道中で秋月を拾う。

きらら&ランプ&マッチ&星川麻冬
 原作主人公勢。今回のオーダーでは、ローリエは彼女達と戦う意志はなく、サポートに回っているが、彼女達はまだローリエが犯人側に関わっていると思っている。この誤解は、ローリエときららが再び出会うまで続く。

ディーノ&秋月紅葉
 「ブレンド・S」からまさかまさかの参戦を果たしたスティーレのキッチンを担う男性陣。扱いは女性のクリエメイトとほぼ同じで、オーダーによる影響もある。ディーノの召喚への影響は内装のイタリアンキッチン化、秋月の召喚への影響は百合ものの量産。エトワリアスタイルのイメージとしては、ディーノは中世の重戦士=ナイト、秋月は派手な和服の武士=せんしといったところ。

桜ノ宮苺香
 「ブレンド・S」の主人公にして、「ドS属性」のホールスタッフ。今回は、敵に囚われの身となっているポジションに。ひだまりスケッチ編のゆのっちやNew game編のコウりん、がっこうぐらし編のみーくんやAチャンネル編のるんちゃんと同じ立ち位置だが、危険度はトップクラス。その為、緊張と不安によるドSフェイスはいつもよりも強烈となっており、ディーノにそれを見られようものなら、彼は鼻血の出血多量で死ぬ。

ビブリオ
 謎の女の配下にして、苺香の見た目の良さに奴隷としてこれほどまでにない価値を見出したメタボ男。言いつけは守るつもりだったのに、苺香を見た途端に野心が溢れ出て、ただ始末するよりも有効(だと本人は思っている)な活用方法を実践しようとした。苺香の目つきの悪さだけがお気に召さず、調教しようとした所でGの群れに襲われる。




△▼△▼△▼
ローリエ「秋月君を確保した俺達は、更に上へと突き進む。そこに広がっていたのは、あらゆる同人誌の販売ブースがところ狭しと並ぶ空間だった。」
秋月「それ絶対天野がいるだろ……」
ローリエ「ああ。だとしたらマズい。」
秋月「何だ? 天野の命を狙う奴がいるとか!!?」
ローリエ「いや、アリサはまだ子供だ。それに大人が歪んだ知識を教えて良いものか……」
秋月「何の心配してんだ!! で、桜ノ宮は!?」
ローリエ「俺のG型にかかってる。時間稼ぎを無駄にしない為にも、早く美雨さんを連れてくぞ!!」

次回『花園フォルダは知を授ける』
秋月「次回もお楽しみに〜」
▲▽▲▽▲▽

次のうち、もっとも皆さんが好きな人は?

  • 大宮勇
  • 佐倉恵
  • 二条臣
  • 飯野水葉
  • タイキックさん(♀)
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