きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
“いつかトップアイドルになるのが夢なんです!ボクの可愛さは、その為に神様が与えてくれたものなんです!”
…神崎ひでり
ローリエさんが「私達を守ろうとしている助っ人」と言っていたきららちゃん達のリアクションは、助っ人と呼ぶにはあまりに不信感に満ちていた。
特に「ランプ」って呼ばれてた子の不信感がすごくて、本当に助っ人なのかと思ってしまった。秋月くんや美雨さんもそう思ったんじゃないかな。
口を挟まなかったのは……まぁ、魔物達に襲われている緊急事態だったからで。
「後で色々聞くからね!!」
この言葉は、私と秋月くんと美雨さんの総意でもあった。
「あの、三人もディーノさんや麻冬さんと同じ店で働いてるのですか?」
きららちゃんが、私達に聞いてくる。ランプちゃんが遠目に空飛ぶ猫っぽい何かや麻冬さんに捕まってるのが見えた。
「あぁ。俺はキッチン担当。日向と天野が星川と同じホールスタッフだ。担当はそれぞれツンデレとお姉さんだ」
今は急ぐべき時なのか、秋月くんが簡単に私達を紹介する。
「離してください、麻冬さん!」
「駄目よランプ、一回落ち着きなさい。」
赤目の髪をおさげにしたランプちゃんと麻冬さんの言い争う声が聞こえてくる。二人とも背が同じくらいだからか、子供のケンカにしか見えない。こんな事言おうものならまた麻冬さんに怒られそうだなぁ。
「ランプ!」
きららちゃんの呼びかけに二人とも動きを止める。そこでようやく私達が追いつくと、ランプちゃんが慌ててきららちゃんに近寄った。
「き……きららさん!? ローリエは……ローリエはどうしたんですかっ!!?」
「このクリエメイト3人を私に預けて、女の子とクロモン達の中へ突っ込んでいったんだけど……
私は、ランプがいきなり走っていっちゃったから追いかけてきたの。」
「元はといえばランプが勝手に行動したからだろう?」
「ご…ごめんなさい、マッチ……」
マッチと呼ばれた空飛ぶ猫がランプちゃんの行動を諌める。でも、ランプちゃんが飛び出した理由の方が私的には気になる。「ローリエさんが信用できない」って一体……
「そもそもランプ、あなたとあのローリエって男とはどういう関係で、なんで信用できないのか教えてくれるかしら?」
「……そう、ですね。スティーレの皆さまにも改めて説明した方が良いかもしれません」
私の代わりに麻冬さんが尋ねると、ランプちゃんは話しだした。
ローリエさんが、ランプちゃんの先生であること。
筆頭神官って役職の、アルシーヴという人が女神ソラを封印したこと。
アルシーヴは、「オーダー」で私達のようなクリエメイトを呼び出し、クリエを集めようとしていること。
そのアルシーヴの直属の部下の賢者という八人の中に、ローリエさんがいること。
今まで敵対していた賢者が、今になって掌を返してきたとしても、信用するに値しないこと。
それを聞いた私は、正直驚いた。あのローリエさんが、世界を乱す側の人間だったなんて。
「………まぁ、おおむね予想通りってトコか」
ランプちゃんの説明が終わり、最初にそんなことを口にしたのは秋月くんだった。
「秋月サン、予想通りとは………?」
「俺、あいつに『何が目的だ』って聞いたんだ。あいつは『勝手にオーダーを使用した奴を捕らえて、俺達を帰す事が目的』って答えた。でも、あいつは『神殿は入念に準備してからオーダーを使う』とも言っていた。『今回は不測の事態だ』って事もな。
つまり……本来なら、俺達を呼び出す立場は神殿であって、ローリエさんは俺達と敵対するはずだったんだろう」
確かに秋月くんは最初ローリエさんを疑ってかかっていた。でもローリエさんは、それに真摯に答えた。秋月くんは信用したと思ったのに。
「つまり……予定通り神殿が『オーダー』していたとしたなら、ワタシ達は、ローリエさんに命を狙われてたかもしれないって事デスか!?」
「いいえ………流石にそれはないと思います。アルシーヴの目的はクリエメイトの皆さんのクリエです。クリエは絆の力にして命の源。命を奪ってしまっては、クリエを得られません」
ローリエさんに命を狙われるという店長の懸念はきららさんが否定したものの、ローリエさんへの疑心は強まっていく。それが、なんか納得いかない。
「でも………私は信じられないなぁ」
「夏帆さん?」
「それは、どういうことですか?」
「ローリエさんを、ってことじゃなくてね………ローリエさんがそんな事をする人間とは思えない、って意味でさ」
「……理由があるのね、夏帆」
「うん。
………私ね、この世界に呼び出されてすぐに殺されかけたんだ」
私はローリエさんと出会った数時間前を思い出す。私の恐ろしい告白に、聞いてた皆が一斉に血相を変えた。
「なっ………んなこと聞いてねぇぞ、日向……!」
「そうデスよ夏帆さん!! こ、殺されかけたって……!!!」
「簡単に言える事じゃあなかったからね。」
クロモンに攻撃された時のことはしっかりと思い出せる。ゲームとはまったく違う、ダメージを受けたあのリアルな経験は。
怖かった。全身が痛くて、血を吐くって経験をして。もう駄目だって思った。死にたくないって本気で思った。
「夏帆の身にそんな事が起こってたなんて……」
「大丈夫だったんですか?」
「うん。その時にね、ローリエさんに助けて貰ったから。」
あの人は、私に「もう大丈夫」って声をかけてくれた。
傷の治療と、軽食の用意をしてくれた。
この世界の……エトワリアのことについても、色々と教えてくれたし、魔法も見せてくれた。
「ローリエが、夏帆様を………
いやでも、それは―――」
「だから信じてって訳じゃあないんだけどね。
ただ…ゲーム談義をしたときのローリエさんは―――全然悪い人には見えなかったからさ………私は、信じたいかな、って思ったの。」
彼の知識量にはビックリしたけど、私達が聖典に載ってるくらいなんだし、私達がプレイしてたゲームも載ってたりしたのかな。私が見たのは私達のページだけだったから断定できないけど。
とにかく、私がローリエさんとアリサさんと共に秋月くんを見つけるまでの一連の出来事を話すと、皆言葉を失っていた。
「それにね、いま上の階で苺香ちゃんが捕まってるんだって。ローリエさんは苺香ちゃんを助けようとしてるんだ。」
「捕まった苺香様を、助けようとしてる……?」
「それは本当かい、夏帆!?」
「あぁ。それなら俺と天野も見た。映像越しだけど、桜ノ宮が木の檻の中に捕まってたのをな」
マッチの質問に秋月くんが答え、それに美雨さんも頷く。ランプちゃんとマッチがそれを信じる決め手になったのは、きららちゃんのこんな言葉だった。
「捕まってる………それなら、パスの不安定さも、納得がいくね……!」
「わかるの?」
なんでも、きららちゃんは「パス」を使ってクリエメイトがどこにいるのか、どんな感情でそこにいるのかをなんとなく察知することができるみたい。例えば、心細さや寂しさの感情がクリエメイトにあると、感じるパスにも多少影響が出るらしい。
「―――きららさんがそう言うなら、そうなんでしょう。苺香様の危機ならば尚更行かなければなりませんね……!
……マッチ、きららさん、さっきはごめんなさい。」
「無理もない。いきなり先生に出くわしたんだから」
「私なら平気だよ。それよりも、ランプは大丈夫なの?」
「……正直、ローリエの言動には不可解な事が多すぎます。でも……少なくとも、夏帆様を助けたことは本当のようですから。
色々聞くのは、全てが終わってからにしたいと思います。」
どうやら、いま一気に解決するのは難しそうだけど。
いつか、和解できる日がくるといいなぁと。そう思いながら、ステージ脇へと進むきららちゃん達の後へ続いた。
「……なぁ、日向」
私の少し後ろを歩く、秋月くんが話しかけてくる。
「なに? 秋月くん」
「お前が無事で良かったよ、ほんとに」
「なに〜〜? 秋月くん、異世界初のデレモード?」
「うっせぇ、スティーレのメンバー全員で帰れねぇと意味ねーだろ? 店長も星川も天野もみんなそう思ってる。それだけだ」
相変わらず、秋月くんはツンデレだなぁ。こんな時まで、徹底しなくてもいいのにね。
◇◆◇◆◇
―――気がつけば、一面猫のような生き物がいっぱいで。
ボクはステージの上に立っていた。猫達みんなが、スポットライトに照らされたボクを見ていた。
神様からアイドルの可愛さを授かり、ナンバーワンアイドルを目指すボクにとって、その状況が意味することを察するのはカンタンだ。
―――そう! ボクだけのステージ!!!
ボクの格好を見たら、赤と黒と白をベースに、フリフリがかわいくあしらわれているアイドルコーデでした。これならイケる!
武道館を満員にした伝説のアイドルグループ達のように、ボクを見に来てくれた萌え豚さん達に、サイッコーの時間をお届けするッ!!
「みーんなー!! 今日はボクのライブ、めいっぱい楽しんでいってね?♡♡」
「「「「「「「くーーーーーー!!!」」」」」」」
歌はオリジナル、カバー、隔てなくやった。猫達は、ボクに魅力されて、うちわやらサイリウムやらを振る。モチロン、『撃って♡』と書かれたうちわを撃つみたいなサービスもアイドルとして忘れません!
人間のお客さんは一人も見えませんでしたが、それでも猫達は人間のお客さんのように熱狂している。萌え豚に種族の境はなかったんですね!!
そして、何曲やったか分からないくらいに歌い踊って、そろそろ休憩したいなーって思った時。
ふと横を見たら、何故か苺香さん以外のスティーレのメンバーがいました。数人知らない顔がいますけど。
―――しかも、美雨さんが拳を振り上げている。あ、あれはまさか……腹パンの構え!!
美雨さんのイイ笑顔が、「このままライブを続けてたら、
「い、以上をもちまして、『神崎ひでり・ウルトラフェスタライブ 午前の部』を終了します! 午後の部も、ひでりんの魅力に集まってね♡」
「「「「「「「くーーーーーー!!!」」」」」」」
よし! 我ながら上手く行った!
あとは、舞台袖に一目散に走っていって―――
「ぐふぅっ」
そして、ボクのおなかに美雨さんの拳がポスンと。
「あっ………腹パン……腹パンやめてください……っ
あっ……………うっ……………」
「なにが『午前の部』なんですか? 午後もやるつもりでしたか? ひでりちゃん???」
「ご、ごめんなさい……!」
仕方ないじゃないですか! 区切りをつけるって形で舞台からいなくならないと、アイドルとしては不祥事なんですよ!
そういう『ステージ上のミス』は熱愛報道や裏接待みたいなスキャンダルほど致命的じゃあありませんが、時にはイメージダウンにも繋がるんですよ!!
「はううううう〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!
さ、流石はひでり様………サービス精神半端ないです………!!
ひでり様の生ライブですぅ〜〜〜………………!!!!!!!!!!!!!!」
ほら、イメージを大事にした結果がこれです! ボクのファンと思われる赤い髪の女の子すら悩殺できるんです! 萌え豚野郎なんてイチコロですよ!!
……だから美雨さん、腹パンをやめてくださいお願いします。
ボクが赤髪の女の子の日記にサインをあげて、場が一段落ついたところで、星の髪飾りをつけた女の子―――きららさんが、自己紹介と共に今のボクの状況について教えてくれました。
「エトワリアに…オーダー、ですか。
どうりで、ボクのライブに人間のお客さんがいなかったワケです。」
「……他のメンバーは敵に囲まれたり殺されかけたり捕まったりしてる中で、一面の敵相手にライブなんてイチバンたくましいわね」
麻冬さんが呆れたジト目でこっちを見ています。まぁまぁ、夏帆さんも麻冬さんも無事で良かったじゃないですか! そりゃ、日本よりも治安が悪いのはひでりん怖いけど……
「それで……ひでりさん。皆さんを元の世界へ帰すためについて来てくれませんか?」
きららさんはボクに手を差し出す。こっちの世界でもう少しアイドル活動したかったんですが、仕方ありませんね。
「ボクだって、世界が壊れるのは望みません。それに、苺香さんがまだ捕まってるんでしょう? ボク達全員が元の世界へ帰れないと、色々心配ですからね」
特に店長が。店長は苺香さんの事が大好きですからね。今でもかなり心配なんじゃないですかね?
店長に目を向けると、どういう訳か目をそらす。そんなゴマカさなくってもボクにはわかってますってー。
「……これで6人。あとは苺香さんだけですね。」
「はい。そして、苺香様は捕らわれている、らしいですね……」
「そうだね。後は、苺香と一緒にいる可能性の高いビブリオだけど………」
ビブリオ。ボク達スティーレの店員全員を「オーダー」したと思われる、悪徳商人と聞きました。豪華な服を身にまとい、膝で猫を撫でている太ったオジサンをイメージさせられますね。
「―――ああいう手合いは思いつく中で一番汚い手を想定するべきだ。実際は更に上をいくことが往々にしてあるからな」
「「「「「!!!!!」」」」」
突然会話に割って入ってきたのは、黒いスーツに見を包んだ、ライトグリーンのはねっ毛にオレンジとゴールドのオッドアイの男性でした。顔は黙ったままの店長並に整っています! イケメンです!
「ローリエさん、クロモン達は?」
「大方片付いたよ。助っ人が頼もしすぎた」
「それはどうも」
ローリエさん、謎多き賢者とさっきの説明で聞きました。このイケメンさんがそうなのか、と顔と名前を一致させてると、彼の後ろから小柄な茶髪少女が現れました。ボクより背が低いのに出るとこ出てます。ズルいです。
「そっちの女の子は誰だ?」
「初めまして、八賢者ローリエ助手を勤めています、アリサと申します」
「アリサさんとローリエさんですね。ボクはスティーレのアイドル、神崎ひでりです。ひでりんって呼んでね?♡」
ボクも初対面なので自己紹介をしておく。萌え豚どもを落とす研究をし尽くしたこの動き・声色・アイコンタクト。イケメンなローリエさんもこれで流石に―――
「おうっふ」
返事はソフト腹パンでした。
「あっ………腹パン…やめてください………
腹パンはやめてください………………」
「やかましい。黒髪女子に生まれ直して髪型ツインテにして『にっこにっこにー』を習得してから出直しな」
チクショウ!! 黒髪ツインテとか「にっこにっこにー」とかよく分からないけど、男だって見抜かれてやがる! ボクのどこが駄目だったんだ!!?
「ローリエさん、そのくらいに」
「わ、悪い。さっきの自己紹介、ちょっとイラッとしちゃったからつい」
「分かります。ローリエさんがやってなかったら私がやってました〜」
「美雨さん!!?」
そこまでダメだったんですか!? ううん、異世界に来て、ライブを終えた後だから調子狂ってるのかなぁ?
考え事をしているうちに脱線しかかってた話が戻ったみたいだ。なんでも、汚い手を予想しておけって話だったけど……
「汚い手を想定しておく……?」
「例えば、ヤツは苺香ちゃんが手元にいるから、彼女を人質に取る事が出来る。それで動きを封じられたら十分にピンチだ。」
「そうですね。人質を取られた時の対処法を考えておくなら、それがいいかもしれませんね」
「苺香サンが人質とか考えたくありまセンが………」
なるほど。ボクのイメージしていたビブリオって、案外正解に近かったりするのかな……
人質もそうだけど、エトワリアには魔法があるんですから何でもアリなんじゃあないですか? 例を挙げるなら―――
「人質を利用して攻撃してくるとか、ですかね?」
「もっと考えたくありまセン!!!」
「いいぞひでりくん、その調子だ」
「ローリエサン!!?」
どうせならこんなことよりも容姿の可愛さやダンスの振り付けとかを褒めて欲しかったです………!
このことを振り返った感想ですけど……正直、思いついた事は何でも言ってみるものだな、って思いました。
キャラクター紹介&解説
日向夏帆
ローリエの立場に困惑しつつも、自分が体感したローリエの優しさを信じたいと決意する女子高生兼前半の語り手。最初はローリエに戸惑っていたものの、救ってくれた事を彼女なりに恩義を感じている。
ランプ
夏帆の体験談と秋月のやり取りを聞き、苺香の危機がきららのパス反応によって確実なものと知って、苺香を救うべく前を向いて清濁合わせ飲む事を知るきっかけを得た女神候補生。今回は問題が解決するまで先送りという形になっていて、いちおう今回はローリエを敵じゃないと認めたが、スティーレの皆様を帰した直後にローリエを質問攻めにするつもりでいる。ちなみに、ひでりの直筆サインが書かれた日記帳は、のちに聖典的価値が急騰する。
神崎ひでり
他のスティーレのメンバーがことごとくピンチに陥る中、そんな事はつゆ知らずに個人ライブと称して好き放題やっていた男の娘。その結果、持ちネタのソフト腹パンを美雨とローリエから貰うことになる。ライブで歌っていた曲名の元ネタはひでりんの中の人が歌うシングルから。
天野美雨
腹パン担当お姉さん。彼女がひでりんを腹パンするくだりは「ブレンド・S」を愛する者として必須と考えた。つまり書きたかっただけ。
黒髪ツインテ&「にっこにっこにー」
元ネタは言わずと知れた初代「ラブライブ!」の矢澤にこ。彼女の中の人がひでりんと同じであることから、リアルイベント「ブレンド・FES」でも秋月君の中の人にイジられていた。
△▼△▼△▼
ローリエ「ひでりくんもきららちゃんたちによって回収された。あとは……囚われの苺香ちゃんを残すのみ。」
きらら「私達は、苺香さんのパスの場所―――『イモルト・ドーロ』の最上階へ向かいます。」
ローリエ「そこには、果たして苺香ちゃんとドデカいデブ男―――ビブリオがいた。」
きらら「そしてやってきた私達に、ビブリオの悪意が向けられる。」
次回『悪徳商人ビブリオ』
ローリエ「決して、見逃すな。」
きらら「次回を…お楽しみに。」
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次のうち、もっとも皆さんが好きな人は?
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大宮勇
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佐倉恵
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二条臣
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飯野水葉
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タイキックさん(♀)