きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
マスクはしてもウイルス素通りだと思ってるんで作者は手洗いうがいを徹底させてます。あとアルコールも。出かける前にガムを噛んで喉を湿らせるのも有効だそうです。皆様もお気をつけて。
追記:2020/3/13…日間ランキング30位を獲得しました。ご愛読ありがとうございます。
“とある国の古き兵法書にはこう書かれている。『勝敗というのは、戦う前に全て決定している』と。”
…ローリエ・ベルベット 著 自伝『月、空、太陽』
第9章より抜粋
第49話:黒幕を探れ その①
「―――ビブリオ本人も逮捕しようとしたが、激しく抵抗されたため、やむを得ず殺害した。そこは申し訳ない」
「いや、いい。むしろ、よくここまで証拠を集めてくれた。アリサも、ローリエの補佐、見事だった」
「ありがとうございます。」
転移魔法で神殿に戻った俺達は、まっすぐソラちゃんの展望室へ行きアルシーヴちゃんに事の顛末を(
そして、イモルト・ドーロで見つけた証拠資料についてもここで報告する。神殿の資料と比較して調べることで、情報の裏を取る考えだという事も。
「―――というワケで、手の空いている者をこちらに回して、至急調査がしたい」
「成る程……だったら、コリアンダーとハッカが手が空いているはずだ。セサミやジンジャーにも話を通しておこう。ただし、ジンジャーは市長官邸からは離れられないから、二人が出向いて欲しい」
「りょーかい」
「畏まりました」
アルシーヴちゃんからそう返事したことだし、協力は得られたと見て良さそうだ。
「あぁ、そうだローリエ。アリサの働きは
「魔法の才は半端ねーぞ。アルシーヴちゃんに勝るとも劣らない。精神的にも今のところ問題はない」
「そうか。アリサ、ローリエとの仕事はどうだった?」
「……ビアンカとかフローラとか言ってたし天野美雨や日向夏帆をナンパしてましたが戦闘面では彼は頼りになりました」
「おい」
「アリサぁ!? 余計なことを報告しなくていいだろォ!!?」
この後滅茶苦茶追いかけっこをした。
神殿側から資料の協力が貰えたところで、俺達は人を集めることにした。最初に声をかけるのはもちろんコリアンダー。続いてセサミ。そして……ハッカちゃん。
分かってる。10年前のあの事件があったとはいえ、いつまでも彼女から逃げ続けちゃいられない。
最初に声をかけるのは、俺の男友達・コリアンダーからの予定だった。
コリアンダーに会おうとしたところで、一人の老婆に出くわす。まとめた白髪、曲がった腰に縮んだ背、腹に
「お疲れさま。ローリエ君」
「……デトリアさん? 何してるんですかこんな所で」
「子供たちの様子を見たり、神殿の様子を確認したり……色々とね」
デトリアさんは、オーダーを行う事を知っても珍しいことに何も言っていないのだ。引退しているから、現役の神殿関係者の決断にはあまり口出ししようとしないのだろうか? しかし―――それはあまりに不自然だ。
「いま、アルシーヴちゃん忙しいじゃない? こんなばばあの手でも貸せればと思ったのよ」
「無理をされて途中で倒れでもされたら困る。御年を考えてほしい」
「ええ、分かってる。『悪い人を捕まえる』とかいった、体を動かすのは若い子に任せるわ。」
「最近は治安悪いからな」
例を挙げるならサルモネラやビブリオ。あいつらはエトワリアにいちゃダメだろって性格をしてたからな。サルモネラは人から奪うのを当然としてるし、ビブリオは人を見下す
「まぁ砂漠の盗賊も悪徳商会も捕まえた。治安が悪いといえども、やるべき仕事はしている。俺達賢者と筆頭神官を信頼して欲しい。あなたが指名しただろ、アルシーヴちゃんは」
「わたしも信じたいんだけどねぇ。砂漠の盗賊、変な依頼を受けてたそうじゃない。なんか、
「!!?」
アリサが信じられないくらいに動揺する。俺も、追及する声が荒くなる。
「デトリアさん!
「砂漠の盗賊と面会した時に錯乱しながら言ってたわ」
「……そうですか。アリサ、今の会話は可及的すぐに忘れろ。いいな?」
「はい。」
アリサは素直に返事する。とはいえ、後でサルモネラの件を混じえながら話をしつつフォローが必要だな。
「デトリアさん。今はとても大切な時期です。手伝ってくださるお気持ちは嬉しいですが、許可なく動かれると困ります。俺でもアルシーヴちゃんでも他の賢者でもいいから、話を通してください」
小さな背中をぽんと叩く。デトリアさんは、年相応の穏やかな表情でニコニコしたまま、何も言わずに去っていった。
ちょっとしたハプニングもあったが、予定通りコリアンダーとハッカちゃんとセサミの元に向かうとしようか。
「……帰ってきたかと思えば、誰だその少女は? どこで
「違うわァッ!! 子供の誘拐じゃねーよ俺の助手なの! 張り倒したろか!?」
……久しぶりに会ったと思ったら人をロリコン扱いしやがったコリアンダーこの野郎。
だがこういう場合、俺の意見はまず通らない。アリサ、君が弁明すんのが一番効果的なんだよ。さっさと事情を言えっての。言ってくださいお願いします。
「……あの、『かどわかす』とか、『ゆうかい』、って何ですか?」
「「…………………………」」
あ、そうだ忘れてた。この子超純粋っ娘だった。子供の作り方について、コウノトリを本気で信じてたくらいだ。その手の知識はまるでなかった。まぁ……誤解を解くには十分だったみたいだけど。
コリアンダーに変な知識を植え込むなと17回も忠告されたものの、事情を話せば快く引き受けてくれた。
コリアンダーを仲間に加えた後にセサミを探してみれば、彼女は自身の部屋にいた。
事情を話して、証拠を見せれば「よくここまで集められましたね」と一言。俺もそう思う。立場が違えば、その手の証拠は綺麗さっぱり焼き捨てるだろう。
そして調査してみれば、デトリアのビブリオ恩赦証明書や違法取引の通帳等などの裏を取ることができた。
「ビブリオという者が何をしていたのかはジンジャーの方がよく知っているでしょうが、デトリア様は何を思ってこの男を釈放したのでしょう」
「知らね。もう年なモンだから、耄碌してたんだろーよ」
とは言ったものの、それなりに疑う材料は揃いつつあるけどな。
「そんなことより、これだ。クリエメイトの殺害依頼に、改造兵士計画書。両方とも大変なものだぞ」
コリアンダーの言うとおり、オーダーを行ってクリエメイトを回収する筆頭神官と八賢者に、第三勢力は喧嘩を売った事が明らかになる。サルモネラの辺りから邪魔はしていたのだろうが、ビブリオのオーダーで決定的になった。
「クリエメイトを害する者たちの存在は、アルシーヴ様に報告して、全ての賢者にそれとなく伝えるべきだと思います」
「安心しろ、セサミ。その点は既に問題なく報告した。
あと……この計画書だが……『魔法による洗脳を行う事で、人間の感情を持たず、機械的に殺人ができる人間を育て上げる』って……ぶっちゃけどう思う?」
初めてこの計画書を見たときは、俺の目と計画書を書いた奴の精神を疑った。俺にとって感情のない兵器のような人間とかそういうのは、アニメの中だけの存在だったのだ。非人道的ゆえに現実でやることは
「……魔法は万能とは限りません。この計画書自体も、机上の空論部分が多くて成功出来るとは思えませんし。
仮にこれを本当に実行できたとしても、許されることではありません。人の尊厳を踏みにじる行為です。」
「だよなぁ。それこそ、心が未発達な幼い子供に、徹底して洗脳じみた教育でもしない限り、出来ないよな」
俺の言葉に、セサミもアリサもコリアンダーも静かになる。俺を信じられないものでも見るかのような目で見る。どったの?
「お、お前…そんな事よく思いつくな……」
「ローリエさん、やったことあるんですか………? ひょっとしてローリエさんの前世って、悪魔かなにかだったり……?」
「しねーよおバカ! れっきとした人間だったしンな非道なことしないわ!! これくらい普通に思いつくだろ? セサミもなにか言ってくれ!」
「……ノーコメントです」
「セサミ?」
三人は突き刺さるようなジト目で黙ったまま俺を見るだけであった。嘘だと言ってよ○ーニィ。
◇◇◇◇◇
セサミとの話が一段落つき、ハッカちゃんの部屋へと向かう。心臓の音が近づくたびにバクバク言ってうるさくなってきた。
「……ローリエさん、大丈夫ですか?
そんなにハッカさんとやらが苦手なのでしたら、私が―――」
「心配はいらない。俺がやるべき事だから」
手には土産代わりのお菓子に将棋盤。
「……ローリエに限って女が苦手なんてありえない………と言いたいが、彼女となにかあったのか?」
「…………まぁ、色々とね」
10年前のソラちゃんハッカちゃん救出の出来事は、話すには勇気と心の整理とハッカちゃんとの和解が要る。コリアンダーが知りたげに聞いてくるが、これは流石に二人の問題だ。
扉を開けたハッカちゃんのリアクションは怯えるでも嫌な顔をするでもなく、ただ少し憂いを帯びた無表情で、こちらを見つめるのみだった。
「やあ、ハッカちゃん」
「ローリエ」
お互いが名前を呼ぶだけで、会話が途切れる。
ヤベェ。黙っていても気まずくなるだけだ。なにか話さないと……
「お、お土産のドーナツだ。ハチミツ味と牛乳風味がある」
「感謝する。」
お土産のお菓子を広げても、特に表情の変化がないままモクモクとドーナツを食べていた。かわいいけど、もっと余裕のあるタイミングでそういう姿を愛でたかった。
「………ローリエ」
ハッカちゃんが俺に指をさす。その意味を一瞬考える。しなやかな指の先を追って見てみると、その延長線上には俺が持ってきていた将棋盤があった。
「………やりたいのか?」
ハッカちゃんは一度だけ頷いた。
―――パチン、パチンと音がし始める。
「………」
「………」
先程までと同じ無言の時間が流れるも、それは今までの気まずい空気ではなく、集中した沈黙が流れる心地良い無音の時間だった。こういう意味では、将棋やチェスなどの対局ゲームは人に良いものなのかもしれない。
将棋。俺が前世の記憶をもとにして編み出したボードゲームだ。というか前世の娯楽を輸入しただけなんだけどな。カルダモンの意見も取り入れ価値観をエトワリアに合わせる以上、泣く泣く「金将」や「銀将」、「香車」や「桂馬」などの駒には改名願った。そのおかげもあり、将棋の文化がエトワリアに根付きつつある。
賢者間でこういうゲームが流行りだした時は俺が一番強かったが、ルールを理解するやいなや、ソルトとカルダモンがあっという間に俺より強くなってしまった。ソルトは『戦略や計算の勉強になるのです』と、カルダモンは『面白いよね』と言いながら、何処かの名人もビックリの対局を繰り広げてきおる。
そして…………すぐに将棋が強くなっていった子がここにもひとり。
「………頂き」
「ぬあーーーーっ!!? やられたッ! その
「……ローリエは己の陣形で攻撃してくる方向が読みやすい」
―――そう。ハッカちゃんである。
秘蔵されてて表に出られず、こういうゲームに触れる機会が多かったためか、ボードゲーム系が得意な節がある。しかも、彼女は俺のイカサマを初見で破る程の思い込みに惑わされない観察力と考察力がある。それを最大限活用して強くなっていった。
おかげで俺のハッカちゃんとの戦歴は今や五分五分だ。流石魔人族の天才………それは関係ないか。
(くそ……このままじゃあ詰まされる……!
守ってばかりでも駄目だ! 攻めるしかないッ!!)
「―――っ!?」
(お? 動揺したッ! いける……いけるぞ……!!)
一進一退の攻防が盤上で繰り広げられる。
ハッカちゃんの打つ将棋は、変幻自在という言葉がよく似合う。相手の攻撃を把握し、状況に応じたカウンターを展開してくる。それがまた、彼女との対局が楽しくなる理由であり、この手のボードゲームが得意になる所以だと思う。
ちなみにこのあと何手番か回り、最終的には俺が負けた。
「いやぁ〜〜〜、ハッカちゃんまた強くなった?」
「それ程でも。
ローリエ…………楽しい対局であった。またやりたい」
ほんのりと顔が赤くなる。口角も僅かに上がっていることから、本気で楽しんでくれたようだ。その笑顔を見た途端、心の重しがほんの少し、軽くなった気がした。
「あぁ……ハッカちゃんが望むなら、喜んで」
ハッカちゃんの頭を撫でる。綺麗な黒髪が指を通る感覚が少し心地良かった。
肝心の10年前の謝罪はまだ出来そうにないけれど。
ほんの少しだけ事態が好転したような気がして、軽くなった足取りで部屋を出ようとしたところで。
「…しまった……最初の要件忘れてた…………」
「何やってるんですか……」
当初の目的を思い出してアリサやコリアンダーを伴ってハッカちゃんの部屋に戻った。恥ずかしくて死にそう。
ハッカちゃんの部屋に入って入口の扉をしっかり閉めると、俺は今まであった出来事―――主に第三勢力についての出来事を、順に話すことにした。
砂漠で出会った、サルモネラのこと。依頼されてクリエメイトを狙ったという事件。
ドリアーテと名乗るオレンジ髪の女性との遭遇戦。不燃の魂術について。そして彼女の目的も。
ビブリオという悪徳商人によるオーダーの事件。クリエメイト殺害依頼を出したと思われる張本人と黒幕との繋がりのこと。
コリアンダーがいるので、ソラちゃんの
「―――以上が今まで俺の任務中に起こったことだ」
そうまとめると、最初にコリアンダーが口を開いた。
「……言いたい事は色々あるが。
ローリエは俺に何を望むんだ?」
「………コリアンダーさん、どういうことですか?」
「コイツは何の目的もなしに俺達に今までの話はしないって事だよ」
疑り深い、というより、長年の友人としての信頼からくる発言だな。フェンネルに乱暴を働こうとした暴漢達を引っ捕える時も、コリアンダーには
「何を望む………というより、第三勢力と本格的に事を構える前に情報の共有をしたかったんだ。」
「情報はそれだけか、ローリエ。何故、他の者には伝えぬ」
ハッカちゃんに続きを促される。勿体ぶるつもりはないので、とっとと話してしまおう。
「ハッカちゃんの懸念は尤もだ。この情報は、他の賢者にも伝えた方が良い。現に、今までの話はアルシーヴちゃんにも伝えて、他の賢者にも伝えるよう頼んである」
「……つまり、どういうことですか?」
「これから話す事は、ぶっちゃけ俺の
アルシーヴちゃんにも伝えたかったが、
「じゃあ……話すぞ?
黒幕の―――ドリアーテの正体が、わかったかもしれない」
「「「!?!?!?!?!?」」」
俺が投下した特大の爆弾は、3人を間違いなく揺さぶった。
キャラクター紹介&解説
ローリエ
アリサを認め、セサミとコリアンダーと証拠裏付けをし、ハッカと一局打って秘密会議を開いた八賢者。事実と推察をしっかり分けて、事実のみを上司に報告し、推察を確かめようとしているその姿は、部下の鑑といっていい。最後に『黒幕の正体が分かった』と言っているが、これまでの話にいくつか伏線を散りばめてあるので探してみよう。「あ、もしかしてこの人かも」と思ったそこの推理力がカンストしている読者=サン。皆様が楽しめるようにする為、明言は避けていただけると助かります。
アリサ&コリアンダー&ハッカ
ローリエの推理と科学の実験劇場に付き合わされる羽目になったお三方。ハッカとアリサはソラ襲撃未遂事件の関係者であるのでまだ分からなくもないかも知れないが、コリアンダーは長年の友人としての付き合いや人柄、仕事への信頼や意外性などから抜擢される。彼からすればとんだとばっちりである。
セサミ
ローリエ達と共に、証拠の精査をした八賢者。今回調べた事もしっかりアルシーヴに報告して欲しいとローリエに後押しされている。
デトリア
神殿の慌ただしい雰囲気を感じとって善意でボランティアを行う元筆頭神官。ローリエやアルシーヴ、他の賢者達からすればいつ年寄りの冷水をしでかさないか不安だが、ローリエがしっかりと釘を刺すことで自重を促した。
将棋
ローリエが前世の知識から輸入した戦略型ボードゲーム。長年日本で愛されることもあり、エトワリアでも一定数の人気を勝ち取った。賢者やアルシーヴにも浸透し、中には輸入者よりも強くなった者もいる。
〜〜〜八賢者+筆頭神官+女神将棋の強さ格付け〜〜〜
1位:ソルト「戦略や計略の予行演習にピッタリです」
2位:カルダモン「ローリエのゲームって面白いよね」
3位:ハッカ「秘蔵されている故」
ローリエ「亀の甲より(前世を含めた)年の功ってね」
5位:セサミ「作戦の立案に役立ちそうです」
6位:アルシーヴ「やってる時間がない……」
7位:フェンネル「アルシーヴ様にお付き合いする位には嗜めます」
8位:ジンジャー「頭使うのあんま得意じゃねーんだけどな」
9位:シュガー「シュガーはオセロ派なの!」
ソラ「乗り遅れた! でも絶対強くなるからね!」
△▼△▼△▼
きらら「イモルト・ドーロにて八賢者ローリエから告げられた、『クリエメイトの命を狙う第三勢力』の存在。一体、どうしてそんな事を私に……?」
ランプ「撹乱を狙った嘘……って訳じゃないですよね」
マッチ「あぁ。現に、心当たりのある人間と何度か出会ってる。砂漠の盗賊しかり、ビブリオしかりだ。僕たちも、クリエメイトを守る時は気をつけないとな………」
次回『黒幕を探れ その②』
きらら「見てくださいね!」
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きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?
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まちカドまぞく
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球詠
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アニマエール!
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落ちこぼれフルーツタルト