きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
兎秤さんがローリエを描いてくれました。なかなかカッコいいです。
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“不燃の魂術、という魔法は、マッチによると思った以上にヤッカイな魔法みたいです。”
…ランプの日記帳(のちの聖典・きららファンタジア)より抜粋
苺香さん達をもとの世界へ帰し、マッチに促されビブリオから避難する形でイモルト・ドーロを後にした私達は、『オーダー』が解けて崩れていく大きなカジノの崩壊音を背に言ノ葉の都市へ足を進める。
その途中で、私はランプのクリエメイトに対する態度を、もっと普通にしても良いんじゃないかなと伝える。私達に接するみたいに、普通に元気に明るく、ね。
「あんまりかしこまっちゃうと、クリエメイトの皆さんもどう接していいか分からないから……きゃっ!?」
「きららさん!?」
「ご、ごめん、ランプ……ちょっと、転んじゃった。」
膝に擦り傷ができてないかを確かめて立ち上がる。普段だったら、こんなふうに会話中に
「……きらら。
やっぱり、気になるのかい? あの、ローリエの態度が。」
「……うん。正直ものすごく気がかりだよ。」
そう。原因なんて分かりきっていた。
八賢者ローリエの、情報提供の数々。その内容。
『さて……スティーレの皆が帰ったことだし。
――色々聞きたいこと、あるんじゃあないの?』
確かに、私達が苺香さんを助ける際、ローリエとその助手だといったアリサさんの手を借りたのは事実。ランプもまた、ビブリオを倒しスティーレの皆さんを帰した後でローリエに聞きたいことを尋ねるつもりだったのも事実。ただ、自ら質問を受け入れて答えたあの態度があまりに予想外だった。
しかも、そこで明らかになったのは―――喚び出されたクリエメイトの命を狙う『第三勢力』の存在。私達にとっては……本当に、青天の霹靂といってもいいくらいの衝撃だった。
「気付くきっかけはあった。一番最初は、砂漠で出会った、あの男盗賊。」
「……! 確かに、あの盗賊はゆき様や悠里様を狙っていました。しかも…直撃したら大ケガになるレベルの箇所を狙って……」
「決定的になったのは、『イモルト・ドーロ』内で出会った魔物やビブリオだね。」
ローリエを除いた賢者4人とその部下は、クリエメイトを捕まえることはあっても、怪我をするような攻撃をすることはなかった。今思えば、ビブリオが苺香さんを人質にしてしてきた要求もアルシーヴの配下とは思えないものだった。
『この小娘に傷をつけられたくなかったら、武器を捨てて大人しくするんだぁぁな!!
そう。ビブリオが警戒したのは私とローリエの二人。アルシーヴの配下であるならば、少なくともローリエの命を狙う必要はない。私達が追い込まれたあの状況ならば、ローリエと手を組めばいい。でもビブリオはそうしなかった。むしろ、ローリエさんの命を狙った。…理由は一つ。
「ローリエの……ローリエさんの言っていた、『第三勢力』が動いていて…なおかつ、エトワリアを滅ぼそうとする女の人がいるって話。―――本当なんじゃないかな」
ローリエさんの所属する神殿。
砂漠の盗賊やビブリオの所属する組織。
それらが別物で、かつ対立しているから。そう考えるのが自然だ、と思う。
「アルシーヴだけじゃなくて、他にもエトワリアを滅ぼそうとする人がいるなんて……!」
「これからは、おそらく三つ巴の戦いになるね。前途多難だよ、まったく。」
「しかも、その第三勢力のリーダーは『不燃の魂術』を施している、とか。」
ローリエさんから告げられた「不燃の魂術」を宿している女性の情報。これが、一番の衝撃だ。
不燃の魂術。ひとことで言ってしまえば、不老不死になる魔法。どんな怪我もたちどころに治るといわれている。しかも、肉体年齢を操作することで変装もできるって言ってたけど……
「不老不死はともかく、『肉体年齢の操作』ってピンと来ないね……」
「どういうことなんでしょう? マッチはすぐに察してたっぽいですけど。」
「えーとだね…すごく簡単に言うと、3歳の姿から90歳以上の姿まで、どんな状態にも変身出来るって事だよ。」
「それじゃ、本当の姿が分からないじゃないですか!」
ランプの言うとおりだ。人は徐々に年をとっていくもの。とはいえ、5歳と15歳ではもう別人だ。例えば10年刻みで姿を使い分ければ、もうどれが本当の姿かなんて分かるはずありません。
でも私は、ローリエさんが言っていたその『女』の特徴に聞き覚えがあります。
「……本当の姿が分からなくても、手がかりはあります。ローリエさんが言っていた、彼女の特徴で思い出したんです。『オーダー』されたるんさんを探している時のことを。」
「るんのことを? それは、どうして?」
「村の女の子が言っていました。『オレンジの長髪の、ユー子さんみたいなすらっとしたお姉さんに会った』と」
「あっ……!!」
私がその時の状況を整理するように言えば、ランプが突然声を上げた。何かを思い出したみたい。おそらく、私と同じことだろうけど。
「確か、わたしの名前を知っていました…!!」
「そう。『ランプと名乗る子に会ったら手助けしてあげて』と、そう伝言していた……」
「………言われてみればそうだ…!
でも、ランプはそんな人の事なんて知らない………」
ランプには、女の子を通して手助けをし、クリエメイトの命は狙う。私達側でも神殿側でもありえないこの行動のギャップ。しかも、ランプのことを一方的に知っている。
「……考えられるのは、ランプに近しい人が『不燃の魂術』の副次効果で変装している可能性だ。」
「えっ……つ、つまり…わたしの身近にいた人で、『不燃の魂術』を使ってる人がいたって事ですか……?」
私とほぼ同じようなマッチの推理に、ランプはただ戸惑う。無理もないだろう。自分に関わっていた女性の誰かが、『不燃の魂術』という禁忌を使っているだなんて。
「でも……わたしを知ってそうな女性って結構いますよ!? 女神候補生はわたし意外にもいますし、神殿で働いてる女性神官の方は多いです!」
「……まぁ、ランプはある意味有名だからね」
「うぅ…ご迷惑おかけします……」
ランプはそもそも、アルシーヴがソラ様を封印したと告発し、皆に信用されなかったからここにいる。アルシーヴがオーダーを行うと言った時、人を集めて発表したので、その時呼び集められた神殿の人間ならランプを知る機会は十分にある。とはいえ、ランプを利用するには、ある程度ランプと仲良くないといけないかもだけど。
「ねぇ、ランプ。もし、ランプの知り合いがその『不燃の魂術』を施してる第三勢力の人だったとしたら、一緒に戦える?」
つまり、その女性は、今までランプと親しい立場…例えば、親友等を演じていた可能性もあるということ。もし、『不燃の魂術』の人の正体が明らかになった時が来たら、例え今まで仲が良くても、戦わなければいけなくなるかもしれないのだ。
「…正直、大丈夫だと断言できません。わたし以外の女神候補生とも親交はある程度ありましたし、他にもお世話になった人がたくさんいます。そんな人達の誰かが『不燃の魂術』を使ったなんて考えたくもありません。」
ランプはまだ完全には心を決めてないみたい。不老不死になり、姿も変えられる禁忌に対して、まだ整理ができていないみたいだ。当然といえば当然かもしれないけど。
「大丈夫さ、きらら。ランプはいざという時にはクリエメイトの為に動けるだろう。」
「マッチ……ランプを信頼してるんだね。」
「まぁね。ランプがクリエメイトを好きすぎるのを知っているだけとも言えるけど。」
マッチがこう言うのは、ランプへの保護者としての信頼から来るものなのだろう。マッチ自身がクールな性格だからか、それを口にはしないけれど。
でも、とマッチは続ける。
「不燃の魂術を相手が使っているのは、かなり厄介だ。
『死なない』という事は相当のアドバンテージだぞ。」
猫のような見た目からは想像つかないほどの神妙な態度でそう言うマッチは、こんな状況でも前を見据えている。いずれ私達と「不燃の魂術」を宿した人が戦うことを予見しているかのようだ。
「どうして? 死なないしどんな傷も治るって言ってたけど、それなら動けなくすればいいじゃん」
「ランプ。満身創痍の敵なら兎も角、傷一つついてない敵を捕まえる場合は、余程の力量差がないと出来ないんだぞ。ローリエに『運良く逃げられた』って言わしめるような相手だ。まず強いと考えた方が良い」
「再生に魔力を使うのなら、その魔力が尽きるまで攻撃すれば再生出来なくなる……という可能性はないのかな?」
「……僕もそこまでは分からない。なにせ、『不燃の魂術』について、持ってる情報がなさすぎる。
とにかく、これからは神殿に向かってアルシーヴの企みを阻止するだけじゃなく、不燃の魂術の情報を集めるべきじゃないかな」
マッチはそこまで言うと「ほら、街が見えてきたぞ」と話を切り上げる。
「きららさん、こっちです!」
ランプに手を引かれて、マッチが示した方向を見てみれば、城壁に囲まれた、言ノ葉の樹の周りに建ち並ぶ都市が見えてきた。
「ここが、言ノ葉の樹なんだね。」
「そうです! わたし達はここを目指していたんです。
ようやくここまで戻ってこられました……」
「まぁ、ここからがスタートとも言えるけどね。さぁ、まずは街に入るとしよう。」
今まで見たことのないような広い街。ここでは、どんな出会いがあるのかな。
気になる事は色々出来たけど、まずはこの街に入って異変や情報がないか探してみることにしよう。
◇◆◇◆◇
言ノ葉の都市。とある建物の高層階の部屋にて。
背の高いオレンジ髪の女・ドリアーテが、狭く魔術書で散らかった部屋の中央に座している男に声をかけた。男は、部屋から出ていないためか、まだ年若いというのに髭はいい年した壮年のように生え、服装からも見た目の無頓着さが伺える。幸い、風呂に入る・髭をある程度切りそろえるなどの最低限の清潔感はあるようだ。
「仕事の時間だ、セレウス。」
セレウスと呼ばれた若き男は、振り返ることなくドリアーテの呼びかけに答える。
「分かりました、
この時点で、ドリアーテは目眩がしそうだった。仮にも自分が上司の筈なのだ。なのに、跪くどころかこっちを向かないのはどうなんだ、と思った。「御嬢」とはなんだ、あと「申し上げて」じゃなく「おっしゃって」だろうとも。
「………召喚士と女神候補生、賢者とクリエメイトの暗殺だ。」
しかし、ドリアーテはツッコまないことにしている。いちいち口を挟むと、面倒くさい言い訳が先程の敬っているようで敬っていない失礼極まりない敬語と共に炸裂すると知っているからだ。「これが人物の情報だ」とリストを渡せば、「拝見いたそう」と言う。
暗殺対象の特徴が綴られたリストにしばし目を泳がせると、セレウスはそれを目の前に広げて並べた。
「召喚士きららにランプ、マッチ、賢者ローリエに助手のアリサ。それに、市長のジンジャー殿も暗殺対象ですか。そして、クリエメイトは詳しくは不明、と。」
「召喚士がクリエメイトを探す力を持っている。彼女らと共に行動している者はほぼ確実にクリエメイトだと言ってもいい」
「解った。このセレウス、役目を果たしになろうではないか。御嬢は静かに果報をお待ちしていてくだされ」
そう表面上は恭しく了承する間も、セレウスは立ち上がることも振り向く事もしない。世界が世界なら、確実に上司の反感を買いパワハラの対象になっていた事だろう。
ドリアーテはこの面倒くさい存在とこれ以上会話することなどないと言わんばかりに部屋を後にする。態度は
マントを翻して彼女が立ち去るその際もセレウスは微動だにしなかった。
―――故に、その翻したマントに何かがついていたとしても、誰も気づくことすらないだろう。
「……さて。久しぶりにこの力を振るえる事、恐悦至極であるが。
…召喚士、賢者、そしてクリエメイトの諸君。その命、私に献上させて貰おう。我が魔法から逃れられると思わぬ事だ。」
ただ一人部屋に残った男は、まるでそこにいるかのように、笑みを浮かべて虚空に語りかけた。
言ノ葉の都市では珍しい、霧が立ちこめる天候がしばらく観測される。その裏では、召喚士と賢者、そして謎の暗殺者による戦いが勃発していたという。
キャラクター紹介&解説
きらら
ローリエが話していた、『第三勢力』がいることを確認し、オーダーだけでなく不燃の魂術にも関わりだした本家主人公。クリエメイトを守る為にランプやマッチと都市に入る訳だが、並び立つ背の高い建物群に感動する田舎者ムーブを見せる。
ランプ
自分の親しい人の誰かが不燃の魂術を宿していることを知って、内心ショックな女神候補生。先生二人に裏切られた上、親しい誰かが『第三勢力』に属しているこの状況、折れてもおかしくないのに心構えが出来ないと正直に語り、それでも抗おうとしている。ここでも既にある程度の心の強さが見え隠れしている。
マッチ
不燃の魂術と戦うことを見据えているマスコット。しかし、情報不足が否めず、情報を集めようと考えている。もちろん、本来の目的の神殿に向かいアルシーヴの企てを阻止することも忘れてはいない。
ドリアーテ
不燃の魂術をその身に宿す女。ビブリオからの連絡が途絶えたことで失敗したと薄々感じたので、新たな刺客を動かすことにした。
セレウス
ボロい服を身にまとい、壮年のようにヒゲを生え揃えた若者。慇懃無礼な性格。ドリアーテが用意した新たな刺客のようだ。魔法に相当の自身があるようだが……?
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ローリエ「えー、○田渚のモノマネをしまーす………ジンジャーが」
ジンジャー「ちょっと待てェ! 何だその雑なフリは! あと潮○渚って誰だよ!」
ローリエ「このカンペの台詞を少年っぽく言えばいいだけだから。さ、やってみよ」
ジンジャー「はぁ? 一体どういう……おい、この台詞を言うのか? 人として大丈夫なのかよ潮田○って」
ローリエ「行くぞジンジャー、スリーツーワンアクション」
ジンジャー「だぁぁぁ早い!! えっと…………こ、『殺せるといいね、卒業までに』」
次回『金髪同盟はきんいろの瞳に惹かれる』
ローリエ「次回もお楽しみに〜」
ジンジャー「おい! なんか反応しろよ、ローリエッ!!!」
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あとがき
今回はちょっと短めです。
あと連絡になりますが、4月からは社会人として投稿していきます。
きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?
-
まちカドまぞく
-
球詠
-
アニマエール!
-
幸腹グラフィティ
-
落ちこぼれフルーツタルト