きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者 作:伝説の超三毛猫
…ランプの日記帳(後の聖典・きららファンタジア)より抜粋
アリサは走っていた。
ローリエと別れた後、一刻でも早くクリエメイトを見つけて、あの神出鬼没な暗殺者から彼女達を守らねばならないと考えていた。
アリサの目的は、兄を殺した仇への復讐。その為には、ローリエと組み「第三勢力」の力を削ぐ必要があると踏んでいた。彼の指示に従うのもこのためである。クリエメイトの情報も、既にローリエから貰っていた。
「どこ……クリエメイト………!!」
一刻も早く、彼女達の元へ辿り着く。
先程の不意打ちがアリサだけで防げるとは限らないが、クリエメイト単体の時に不意打ちを受けたら確実に防げない。
霧の中に逃げていったあの男よりも先にクリエメイトを見つけるべく、足を動かし魔力で速度を上げながら都市中の屋根を跳びながら歩き回り、クリエメイトを探し回るアリサである。
ただでさえ霧の中で視界が悪くなっているというのに、多くの市場の人だかりの中から指定の女性を見つけるなど至難の業である。
だが、天はほんの少しだけ、アリサに味方したようだ。
人混みから少し離れた、人の少ない場所にアリサがたまたま目を移したところ、二人組の少女を見つけたのだ。濃い青色のツインテールの少女と、茶に近い赤髪のショートヘアの少女の二人組。アリサがローリエから聞いたクリエメイトの特徴と一致する。
しかし、
「いた、けどっ―――!!」
二人の周辺の
アリサは、焦った。魔法で加速してまで都市を走り回った苦労が水の泡になりかけている。目的の人を見つけたと思ったら、襲われる5秒前だったのである。
「――ソニック、レイド……っ!!!」
自身の風魔法の加速をトップギアに無理やり切り上げる。反動が来そうなスピードでクリエメイトの二人と男の間に割り込むと、すぐさま魔力で男の凶刃を弾いた。
「なっ……!?」
「えっ……!?」
「チッ……!」
突然の出来事に驚き目を見開く濃青色ツインテの少女と赤茶髪ショートヘアの少女の二人に、舌打ちをして近くの路地裏に走り去っていく男。
アリサは、去っていく男を睨みつけ、追撃が来ないことを確認すると、初撃を防げたことに安心し、二人の少女―――ともに、クリエメイトだ―――に声をかけた。
「大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!」
「え? まぁ……ないけど、君は?」
「アリサといいます! お二人はコミチ・アヤさんとイノクマ・ヨーコさんで合ってますか?」
コミチ・アヤとイノクマ・ヨーコ改め小路綾と猪熊陽子は衝撃を受けた。なにせ、茶髪で見慣れない異世界ファッションに身を包んだ少女が初対面にして自分たちの名前をぴたりと言い当てたからである。もしローリエのような大人の男性がこれをやっていたら確実に通報されていた。
「えっ、と……確かに私達は陽子と綾だけど……どうして知ってるの?」
陽子が綾を背中で庇いながらアリサに問いかける。
さらりと行われた彼氏ムーブが、綾の心を掴んで離さない遠因であるのだが、当の陽子本人は全く気づいていない。鈍感すぎて綾が可哀想だ。
陽子と綾の関係を分かりきっていないアリサは話を進める。
「勝手ながら私、お二人の護衛に来ました!
お名前のことも含めて事情を説明しますので、信じてくださいますか?」
突然の申し出に、綾と陽子は顔を見合わせた。いきなり名前を知られた人間に「守らせてくれ」と言われたのだ。驚くなという方が無理な話である。
ただ、さきほどのアリサの行動は雄弁に信頼性を語っていた。不審者の攻撃を受け止めた技量を格好いいと言う陽子といまだ不安がぬぐいきれない綾……散々悩んで二人で相談した結果、陽子と綾はアリサを受け入れたのである。
かくして小路綾と猪熊陽子は、自分たちが迷い込んだ世界がどのようなものかを、自分たちの世界が聖典として描かれていることを知ることとなる。
◇◆◇◆◇
大きな門をくぐって街に入った時、正直私は圧倒された。
当然だ。私は今まで、拾われた村でしか生活していなかったから。港町も人が多くて驚いたし、好きになれた。砂漠もこの目で見れたし、渓谷を渡った時もある意味楽しかった。
でも、この都市で見かける人の多さは、それまでの比ではない。あちこちからパスを感じ、クリエメイトを探すのでひと苦労もふた苦労もしそうなほどに、多くの人々で溢れかえっていた。
ここまで人が多いと、クリエメイトを探すためにパスを辿る方法は使えない。地道に聞き込みをするしかないと思っていた。しかし―――
「金! 髪!
金髪! 金髪! 金髪!」
「アリース、これは一体なんのお祭りデスか?」
「お祭りじゃあないと思うよ。それに―――」
「あぁ……金髪様だ……金髪様がいらっしゃるぞ………!!」
「「「金髪! 金髪! 金髪! 金髪!」」」
「なんで拝まれてるのー!!? それにここどこー!!」
市場の異様な光景が目に飛び込んできた。
都市の住人だろう人々が、二人の金髪少女を拝んでいる。そして……その金髪少女から、クリエメイトのパスを感じた。
「ここがどこかはわかりまセンが、似たような状況を見たことがありマス。クラス替えの時、アリスとホノカがこけしを拝んでマシタ!」
「ええっ、あれが!? 端から見ると、こんなに異様だったの……?」
「でも、皆から崇められるのってちょっといい気分デース! みなのものー、ひかえおろー!!」
「「「「「ははーーーっ!!!」」」」」
「ははーーーっ!!」
「ランプ、何してるの!?」
「間違いありません! あの金髪!喋り方!
アリス様とカレン様です!!」
ロングの金髪少女の「ひかえおろー」に街の人たちと一緒に跪き、直後人混みの中に突っ込んでいくランプ。クリエメイトと仲良くなるためならなんでもしそうだから、意外だとは思わないけれど、ちょっと遠慮くらいした方がいいんじゃ……
「アリス様ァー! わたくしめにお任せください!!
必ずこの人混みから救い出して―――」
「うわぁーーー!?」
「アリスが襲われたデス!?」
「こ、こいつは……いきなり飛びかかるとか、あれの一体どこが普通の接し方なんだ!」
私もそう思う。私の言った通りかしこまってはないんだけどね…
金髪少女は、背の低い方と高い方。それぞれ、アリスさんとカレンさんと名乗った(というよりランプが紹介してくれた)。いつものようにこうこう?にいたらここにいたのだという。
私達は、アリスさんとカレンさんにこのエトワリアについて尋ねる前に尋ねておく。
「それで、どうしてこんな状況に?」
「多分…この立て札のせいかな?」
「……金髪令?」
立て札には、確かにそう書いてあった。
なんでも金髪に生まれた者を崇め奉るように、というお触れらしい。
このお触れがあったからさっきアリスさんとカレンさんが拝まれていたんだなと納得した。
「それで…その、あんまり状況が分かってないんだけど、金髪令って普通じゃないよね?」
「そうですね……金髪令は、普通じゃないです。」
「可能性として考えられるのはオーダーの影響だろうけど、こんなのが出るのがな……」
マッチが推察する。
今までのオーダーの影響は、いずれも普通ではなかった。空の色が消え、人々がやる気をなくす。ゾンビの群れが現れ、村人が引きこもったり臆病になったりした。果ては巨大な建物がまるまる一軒出来上がる、など。
確かにオーダーの影響が一番可能性が高いんだろうけど……
「オーダー? 誰かが注文したデスか?」
「えっとですね、ここはカレン様がいた世界とは違う世界なんです。」
ランプがお二人にエトワリアのことを説明しだしたので、私も説明に加わり、マッチも加わる。マッチの説明が一番わかりやすく、私とランプが補足に回る。アリスさんもカレンさんも相槌を打って、ここの事を理解したようでした。
「ナルホド……つまり私たちは召喚されてここに連れてこられたという訳デスか。シロモンの説明はわかりやすいデス。」
「僕をクロモンの仲間みたいな呼び方しないでくれるかな!?」
「それで、オーダーっていうのでわたしたちが連れてこられた影響が出ると……
この影響、心当たりが……」
「アリスさん?」
「ううん、なんでもない。」
「とにかく、シノ達もこの世界に来ているのなら、早く見つけないとデス。」
そう言うカレンさんとアリスさんの他にも、クリエメイトがいる可能性が高いけど、やはりパスの場所までは絞り込めない。そもそも、ここは人が多すぎる。2つずつが離れてあることくらいしか分からない。
「なら、まずは色んな人に聞きこまないといけないね。きっとシノたちを見かけた人もいるはずだよ。」
「僕も賛成、いい考えだと思う。
まったくアリスは小さいのにしっかりしてるね」
「アリス様はこの中で一番のお姉ちゃんですから!」
「え、そんな麻冬さんみたいなこと……あるの?」
「あるよー!!!」
「麻冬の時も思ったけど……アリスの世界には、身長が伸びない呪いでもあるのかい?」
「呪いじゃないよ! というか、そのマフユさんって誰なの!?」
「アリス様、麻冬様というのはですね……」
先導するアリスさんを中心に、ランプとマッチが和気あいあいと話が広がる。私達はこれまでの冒険を語りながら人の多い市場へ聞き込みに向かうことにした。
「……?」
「キララ、どうしたデース? 後ろに何かいまシタか?」
「あ、いえ。何でもありません、カレンさん。」
後ろの方にいる気配が一つ、何かが散るように消えたのを感じ取ったけれど、この時は賑わう都市の人々の誰かが家に帰るとか眠りにつくとかしたのだろうと思い特段気にはしなかった。
聞き込みは、最初はつまづいた。なぜなら、アリスさんやカレンさんが話をしようとした途端、尋ねた少女達がオーダーの影響からか、金髪に感動して話にならなかったからだ。
聞く人を私とランプに切り替えて話を始めると、早速こんな情報が耳に入ってきた。
『八賢者のローリエ様が、茶髪の見かけない少女を連れて市長官邸の方に向かっていった』
「アイツ……賢者としての自覚はあるのか?」
初めてこの情報を耳にした時、マッチは呆れた。またローリエが女の子を口説いたのかと。ランプもアリスさんもカレンさんも苦笑いするだけだった。
でも、私は妙に引っかかったのだ。
いや、ローリエさんが女の人にちょっとだらしない点は否定しないんだけど、行き先がおかしいと思ったの。
「ねぇマッチ、市長官邸ってなに?」
「ん? あぁ、きららはここが初めてだったね。
市長官邸っていうのは、この都市の市長がいて、都市の行政をしている建物だよ。」
「じゃあどうしてローリエさんは市長官邸に向かったのかな? 市長って確か、ジンジャーさんっていう……」
ローリエさんのお話とは別で聞いた、ジンジャーさんについてのやり取りを思い出す。
『ジンジャー様のはからいのお陰でこの都市で生活が出来ている』
『金髪令もきっと街のことを考えた結果出したものだろう』
八賢者のひとりでありながら、都市を統治する存在。様々な政策を出しあらゆる問題に対しても先頭に立って街を守る人。
街の西で火事になりかけた際も、パンチの拳圧で火を消し建物を崩して延焼を防ぎ、事後処理や住宅の再建も自らが指揮を取ったという。
そんな立派な人がローリエさんのナンパを見たら間違いなくたしなめるだろう。
そう考えた時、ランプが閃いた。
「そっか! ローリエもそうだけど、ジンジャーも八賢者のひとり……!」
「えっ! 八賢者ってさっき話してた八賢者だよね。
私達を狙っている……」
「八賢者が同じ八賢者のいる市長官邸へ連れてった茶髪ガール……そして、金髪が集まる屋敷…………
―――名探偵カレンの出番デスね!!」
「推理の必要もなく、そこにクリエメイトがいるだろうね」
脱線しかけていた話を一気に戻すあたりマッチらしいと思う。クリエメイトはそこにいると考えてもいいだろう。遠目に見える、ちょっと大きな屋敷に向かって、私達は歩を進めた。
◇◇◇◇◇
ジンジャーがいるという屋敷―――市長官邸は、街の中心と言うに相応しく、広さと高さ、そして華麗さを兼ね備えていた。派手さを押しすぎて悪趣味に感じたイモルト・ドーロとはまた違う。
「さすがに、正面からは無理だよね……」
「そうだね。八賢者の屋敷となると当然、警備くらいあるだろうし……」
できる事なら、誰にも見つかることなく中にいるであろうクリエメイトを助け出したい。おそらくあるであろうクリエケージも壊せるなら壊してアリスさん達を帰してあげたい。
ただし、ジンジャーはそれを阻むだろう。ローリエさんも、一時期は協力したけど今回はどう出るか分からない。だから、警備との戦闘で消耗は出来るだけ避けたい。
「ンー、中がよく見えまセン。」
「もーあんまり動くと見つかっちゃうよ?」
「なら、僕の出番かな。」
マッチが得意げに飛び上がる。すぐさまカレンさんが「飛行ユニットのマッチを装備してフライングデスね!!」と言ってマッチを困らせる。カレンさんの世界には、空を飛べるユニットがあるのかな? エトワリアにも空を飛べる魔法がないわけでもないらしいけど……
「お前ら、騒がしいぞ。」
「「「「「!!!!」」」」」
門から出てきたその人は、私達がうるさかったのか、そう言ってくる。
学帽と学ランらしき服を身に着けている。短冊が連なったようなモフモフの長い髪をした頭には猫の耳がついている。そんな女性がなんだかワイルドな口調で出てくる。
「…誰デショウ? とってもモフモフしてマス……」
「………ジンジャー…!」
「えっ、この人がそうなの!?」
「いきなりボスの登場デスね。」
……! この人が、ジンジャー……!!
「クロモン達から話は聞いていたが、本当にランプ達も来てるとはな。何が折れただよ。根性ついてんじゃあねぇか。
……そっちの金髪二人はアリス・カータレットと九条カレンだな。」
「私達のことも知られてマス!?」
ジンジャーは、もうクリエメイトの情報を持っている。苺香さん達がオーダーされた時も、「神殿は入念に準備をする」と聞いたし、きっと今回も情報を仕入れたんだろう。
「当然だ。
でもそっちから来てくれるなんて、出向く手間が省けたな。
一応、挨拶しとくぜ。私はジンジャー、この『言ノ葉の都市』の統治者だ。ランプから聞いているだろうが、私は八賢者でもあるからな。
クリエメイトは当然―――奪うぜ?」
……!
突然の「奪う」宣言。思わず身構える。
「慌てるな。何もいきなり取って食おうってわけじゃあねえよ。ただ……そこのクリエメイト、置いてってはくれねぇか? そうすりゃ、私としては穏便に済ませられる。
今は結構立て込んでてな。面倒ごとは手早く片付けたいところなんだが………」
「お二人を渡すわけにはいきません!
わたしたちにも、皆様を必ず無事に帰すって約束がありますから―――!」
「まーそうだよな。お前たちにもお前たちなりの目的というものがあって当然ってことだ。
―――けど、それは私も同じ……はいそうですかと
「………っ。」
「………!!」
闘気がどんどん増していく。
これからぶつかってくるであろうジンジャーのそれに、息を呑み、冷や汗が流れた。
この人……間違いない。今までの八賢者の中で一番強い……!!!
「構えろ、召喚士。
……私の拳は、少しばかり重いぞ?」
霧が濃くなる市長官邸の前で、私達の戦いは突然、始まった。
キャラクター紹介&解説
きらら&ランプ&マッチ
アリスとカレンと合流した原作主人公一行。原作との違いとしては、聞き込みでジンジャーのことに加えて、穂乃花とデートしたローリエを目撃した人からその手の情報を得ることが出来たこと。しかし、それでも名探偵カレンの出番は回ってこなかった。さすが最終兵器。
アリサ
きんモザ公式百合CPを守り今回MVP候補に上がった八賢者助手の呪術師。クリエメイトを広範囲から探すため、忍者のように屋根を跳びまわる。間一髪で霧の男の凶刃から二人を守った。なお、陽子と綾の百合具合はローリエから知らされていない。
アリス・カータレット&九条カレン
きらら一行に出会ったイギリス人金髪コンビ。忍の分身かと疑われるレベルの金髪狂信者に囲まれ困惑していたが、ランプに救出される。麻冬という前列がありながらも、やはり背の小ささからお姉ちゃんと認識されなかった。なお、ランプから麻冬の話を聞いたアリスは、彼女と仲良くなれそうだからコールして欲しいなと密かに思っていたりする。
猪熊陽子&小路綾
アリサのお陰で事なきを得た百合CP。突然召喚されて戸惑うところに不審者からナイフの一撃。普通なら参ってしまう。特に綾は陽子しか知るもののいない状況についてこれず、不安になりまくっている。そんな不安定な乙女心に陽子の彼氏ムーブが直撃した。結果、陽綾が流行る。
霧の男
霧に包まれた言ノ葉の都市に神出鬼没に現れ、ナイフで攻撃していく通り魔。一撃しか攻撃しないと決めているのか、失敗したらすぐさま逃げていく。正体はいまの所は不明。
△▼△▼△▼
アリス「突然始まったきららさんとジンジャーの戦い。ジンジャーのとてつもないパワーにきららさんは防戦一方で………」
アリス「そう思ったのもつかの間、周りを包んでいた霧が男の人の形になって襲いかかってきた!おまけに攻撃が通じない!? い、いくら異世界だからってそんなのアリなの!!?」
次回『慇懃無礼な横槍』
アリス「See you next time!!」
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