きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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“絶対に私を頼れ! 必ず力になってやる!
 ……一人で抱え込んだら、許さねぇからな”
  …ジンジャー・ヴェーラ


第58話:ドリアーテ

 俺達が資料室にて拾った『ドリアーテ』という住民票。本来ならば、捨てられるはずだったものだ。

 だってそうだろう。死んだと思われる人物の住民票ほど、必要ないものはない。死亡扱いされたのならば、そういった人間の住民票などすぐさま処分されて当然だ。

 

 だが今、なんの因果か……その住民票が、手の中にある。

 

「年代はざっと100年前。普通なら、老衰あたりで死んでて、処分されてもおかしくない」

 

「では、どうしてこんなものがあるのでしょうか?」

 

「今はそれより、コレに書いてある事の方が重要だ」

 

 

 おおかた、かつての賢者兼市長が紛失したとかそこらだろう。それで100年近くもつのもなかなかすごいけどな。

 

 

「名前は―――ドリアーテ。

 ここは、偽名でもなんでもないみたいだな。苗字が…『……グ……テ』か? ほとんど掠れてて読めないな…」

 

「………!」

 

「アリサ、どうした?」

 

「い、いえ……」

 

「誤魔化さないで良い。今は少しでも情報が欲しい」

 

「そうではありません。『私の姓と同じかと思ったけど、ただの見間違いだった』と思っただけですので」

 

「そうか」

 

 

 アリサが引っかかったことに納得しながら住民票を読み進めていく。

 アリサの苗字と同じ……ねぇ。まぁ確かに掠れてない部分からそう読めなくもないがほぼ読めないこの状況でそう断じるのは尚早すぎるか。

 

 ここに記載されているのを見る限り、ドリアーテは元は普通の人間だったようだ。当たり前の事だが、ここ出身だと分かるだけでかなりの御の字だろう。

 しかも―――

 

 

「……! この人昔、神殿に所属していたな………」

 

「!? し、神殿に!? どうして……」

 

 ドリアーテは、どうやらかつて神殿の人間だったらしい。住民票に所属が載っていたのだ。神殿が管轄している以上、捏造の余地はない。肝心のドリアーテはこの時点では管轄されている側。そこは確実だ。

 そして、彼女が神殿に所属していた以降の書き込みはない。

 

「ドリアーテは、神殿に新人神官か女神候補生として入り………そしてそこから先の記述がない。コレの意味する所は………」

 

「……行方不明になった、って事ですか?」

 

「惜しい。『行方不明になったことにした』んだろう」

 

「それ、何が違うんです?」

 

「考えてもみろ。そもそも、『不燃の魂術』は禁忌に指定されているんだ。『オーダー』を使ったアルシーヴちゃんみたいな特例でもない限り、禁忌は『使ったら即アウト・重罪確定』のシロモノだ」

 

「えーと…つまり―――」

 

「ドリアーテは何らかの理由で『不燃の魂術』を行使。それが当時の女神か筆頭神官あたりにバレて神殿を追われたんだろう」

 

「!!!」

 

 

 もっとも、コレは数ある推理の一つに過ぎないけどな。なにせ住民票に顔写真が乗ってないから証明のしようがない。ただでさえ俺がインスタントカメラを生み出す前のカメラは壊滅的に低レベルだったんだ。100年前となっちゃあ、そもそもカメラがあったのか怪しくなってくる。

 

 それを話せば、アリサは難しそうな顔をして「ドリアーテが『不燃の魂術』を使っている事や第三勢力のトップである事を証明できるんでしょうか」と呟く。

 

「そこに関しては問題ない。サルモネラとビブリオが重大な証拠を残してくれた。更に必要ならば、サルモネラとセレウス(治療後裁判予定)からもなにか引き出そう。

 『不燃の魂術』の証明についても、あまり問題ではない」

 

「どうするんですか?」

 

「彼女達の前で、ドリアーテを殺す」

 

「ちょ!!?」

 

 耳にしたら、間違いなく正気を疑われる提案に動揺するアリサ。だがコレは頭がおかしくなった末の投げ槍ではないし、間違いなく有効打ではある。

 

「意識してなくても負った傷が炎と共に治る。たとえそれがどれだけ深くても。

 そんな特徴は『不燃の魂術』そのもの以外にはない。また、不死身になる魔法ということだから、死ぬことさえあり得ない。

 つまり―――致命傷が炎と共に再生する所を見せる事ができれば、何よりも雄弁にソイツの『不燃の魂術』を証明できる」

 

 

 ……とはいえ、この作戦に大きな欠点がある事も確かだ。

 そのうちの一つが『失敗が許されないこと・取り返しがつかないこと』―――これである。実際に攻撃してみた所、傷が治らずそのまま死んでしまいました、となった際『不燃の魂術を使っていると思った。だが予想が外れた』では済まされないのだ。当たり前だが殺人は重罪である。

 そんな事はアリサも分かっているのか、凄まじく複雑な苦い表情をしている。

 

 

「分かっている。この案は細すぎる綱渡りに等しい博打だ。情報を集めに集め、100%黒幕だって確信出来なきゃ恐ろしくて実行できない」

 

「……出来れば、博打以外の証明が出来れば良いんですけれど」

 

「最終的にはどれも博打になるよ。まぁ、博打の勝率を上げることは出来る。今俺達がやっているのもそうだしな」

 

 

 とりあえず、情報を整理するとしよう。

 

 まず、かつてドリアーテは、神殿に所属している神官か女神候補生だった。

 だが、何らかの理由で禁忌『不燃の魂術』を行使。老衰や死とは無縁の肉体を手に入れるが、その代償に神殿内での立場を無くし、追われる立場となる。

 そして、ドリアーテは逃走した…と思われる。少なくとも、己を捕まえて罰しようとしたであろう神殿の追手に対して神妙に降伏したなどという殊勝な真似はしていまい。この時期に死亡扱いされ、ドリアーテの住民票が不要になったはず。

 

 その後、100年にわたり潜伏。この時期にビブリオとセレウスを味方に加え、盗賊たちやサルモネラを雇ったに違いない。また、改造兵士計画を立てたり、ソウマ氏を脅してソラちゃんを呪わせる準備もしてきたのだろう。

 

 でだ。

 今のドリアーテがどこにいるか、だが…………おそらく『オーダー』の情報をある程度掴める立場に化けているのだろう。

 そうでなければ、サルモネラやセレウスに的確な指示を出せるものか。

 

 

 ま、こんなところか。

 細かいところがいまだ不明だが、アイツの辿ってきた過去は大体分かった。

 

「次は如何しますか?」

 

「ジンジャーに聞き込みだな。ビブリオの商会と……ついでにセレウスの素性について聞こう。

 その後は一旦転移で神殿へ直行だ」

 

 

 

 

 

「おーいジンジャー! 任務は終わったかい?」

「おう……失敗しちまったから、理由でも考えねーとな…あとローリエ、一発殴らせろ」

「何故ェ!!!!!?」

 

 ジンジャーに声をかけたと思ったら返事が右ストレートだった。かろうじて躱すも、俺じゃあなかったら即死だったぞ。

 

「あっぶねぇ!? なにすんだイキナリ!!

 『ローリエが死んだ!』『この人でなし!』をリアルで実行する気かこらァ!!」

 

「うちのメイド長が世話になったお返しって言ったはずだよな?」

 

「おいィ!? 俺はちょっとリリアンちゃんと同行しただけだぞ!!? その過程でちょっとリリアンちゃんの名前を街のおばちゃん達に教えたくらいしか……」

 

「おもっきし有罪じゃねーかこの野郎!

 大体お前は私に対しても悪ふざけしまくりやがって!!」

 

「……?」

 

「自覚ナシかコラァ!!」

 

「わーっ!! 違う違う!!!」

 

 拳の雨から逃れながら弁明する。ジンジャーにやった悪ふざけって言われても、心当たりが多すぎてどれだか特定出来ないだけなんだ! それだけじゃない。俺の自覚ナシでジンジャーを不快にさせた可能性もいくらかある。まぁ、故意でやった方の確率がデカいけど……

 

「悪ふざけって言われても……

 ジンジャーに鰹節を預けたことか? ネズミの玩具を作ってネコ釣りをやったことか? 修行後の料理メニューを鶏ササミとマグロだけにしたこと? それともやっぱり、マタタビでうっかり発情させちまったことか?

 ………どれだ?」

 

「ハッハッハッハッハッ………敢えていうなら全部だ。その罪状に『ウチのメイド長を口説いた事』も加わるだけだ…!!」

 

「…………ローリエさん、あなたいい加減にジンジャーさんに謝った方が良いですよ?」

 

 アリサまでジンジャーの味方に回りおる。おのれ、男友達がもっと欲しい…! え、コリアンダー? あいつはカタブツだからこういう類の状況では頼りにならん事は分かっている。

 とりあえず、だ。

 

「そ…それよりもだ!

 一緒に探して欲しいモンがあるんだ!! 頼むから手伝ってくれないか!?」

 

「…? なにを探すんだよ」

 

「ビブリオの商会とセレウスの素性についてなんだがな―――」

 

 

 この時にジンジャーにはビブリオのオーダー事件とセレウスが潜んでいた部屋から出てきた物品について話しておく。さっきまで俺を死なない程度に面白くボコる雰囲気が、至極真面目なそれへと変化していくのに時間はかからなかった。

 

 

 場所を移動すること数分。

 俺達は、ジンジャーの仕事場であろう市長官邸の事務員達の仕事場に入った。現代社会のデスクがまとまったような、前世で見慣れた無味乾燥な所ではなく、もっとゴシックなデザインが施された、イギリス風のゴージャスな仕事場だ。せっせと働くのは、メガネにスーツ姿の表情が固まった人々ではなく、メイド服姿の金髪美人達であった。

 入れ食い状態かよ……最高だな。モブも可愛いとかエトワリア最高。最高すぎてサイコクラッシャー(という名のルパンダイブ)しそう。

 ―――と、思ったらジンジャーに手招きされ……椅子に縄でぐるぐる巻きに縛られた。「お前はそこで大人しくしてろ」との事……………何故だ。

 

 

「なぁ、ちょっといいか」

 

 俺を縛った後、ジンジャーが忙しなく動くメイドの一人(ひんぬー…もといスレンダーなロングヘアのキリッとした女性。勿論金髪だ)を捕まえて声をかける。一言二言会話を交わすと、そのメイドさんはリーダーだったのか他のメイドに指示を出して回る。すると指示されたメイドがビデオの早送りのような速度で動き………なにかの書類を指示を出した人の元へ手渡した。そして、それを受け取ったメイドリーダーさんがジンジャーに書類を手渡す。

 ………え、まさかもう終わったのか?

 

「ローリエ、アリサ! 頼まれていた書類の候補が見つかったぞ。コレだ」

 

「え、うそ!!? いくらなんでも早すぎませんか……!?」

 

「ローリエが邪魔さえしなければこんなモンだ」

 

 アリサが俺の心境を代弁すれば、ジンジャーは俺が邪魔すること前提とかいうストレートに失礼な事を言ってのける。俺が仕事の邪魔なんてする訳ないでしょーが。金髪メイドハーレムは互いの時間があった時にやるっつーの。

 

 

 ちなみに、ビブリオの商会とセレウスの素性について調べていく作業中においても、ジンジャーは俺を縛る縄は解いてくれなかった。

 

「なぁジンジャー、そろそろ解いてくれよ〜!

 誰かに持って貰わないと資料すら見れないって何の拷問よ。せめて片腕だけでも―――」

「駄目だ。自由になった手でウチのメイドにセクハラすんのが目に見えている。私の職場でそれはノーサンキューだ。本来なら目隠しもしたかったが…」

「目隠ししたら資料読むことすらできねーだろうがよ!!!」

「私が代読しても良いんですよ?」

「おいやめろアリサ。非効率的かつ非合理的だ。ジンジャーもその手があったかみたいな顔すんな」

 

 はー泣きそう。

 でもこの後滅茶苦茶資料を読み漁った。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ローリエに頼まれ、優秀なメイド事務たちに日々集めさせた様々な記録から、ビブリオの商会と今回の襲撃者・セレウスについての情報を集めさせた。

 

 ―――判明したのは、セレウスの経歴。

 こっちは大した情報はなかった。アルシーヴとローリエを嵌めるために違法行為を働き、神殿を追われ……以降、日雇い労働者みたいな生活をしていたが、ドリアーテとやらに魔法の才を見出された……みたいな感じだ。

 ちなみにローリエに魔法工学生だった頃にセレウスに会ったか聞いてみるが、「知らね。おおかたアルシーヴちゃんと一緒に殴り倒した連中の中の誰かだろ」との事。地味にセレウスが哀れに思えてきた。

 

 それより……ビブリオの商会が、アルシーヴに逮捕されるまで神殿に異常なほどの上納金を納めていた事が判明したことが衝撃的だった。ヒドいものには『衛兵に金を握らせてた』なんて証言書も出てくる。そしてその裏で……()()()()()()()()()()()()をしていた事も。

 

 許せねぇ……私が市長になる前の都市で、こんな事が横行していただと!?

 

 

「ドリアーテ……未だに姿は見えねぇが、許しちゃいけねぇ奴だってことは分かったよ。

 ローリエ、アリサ。私はしばらく、都市からは動けない。」

 

「え、ど、どうして―――あ、そうか。

 ジンジャーさんは市長なんですよね……」

 

「そういうこった。街の混乱を元通りにしなきゃなんねぇし、ビブリオの商会がしでかしやがった違法を取り締まれるよう法改正も必要だからな。

 だが、助けが必要になったら、いつでも呼んでくれ。必ずや駆けつけよう」

 

「ありがとう、ジンジャー。

 しかし……赤子攫いか。嫌な予感がするぜ」

 

「あぁ。その子の未来が悲惨になるのはモチロン、攫われた子の家族も悲しんでることだろう。如何なる理由があれども、厳しく罰せられて然るべきだ」

 

 ローリエは一拍おいて「その通りだな」と答える。地味に間があったのは気になるが、嘘はついている感じじゃあねぇな。まぁ問いただすまでもねぇだろ。

 あ、そうだ。

 

「ローリエ、ちょっといいか?」

 

「なに〜?」

 

「お前、神殿に入学する前に―――嫌な事でもあったのか?」

 

 

 ピシリ、とローリエが固まる。

 そんな擬音が似合うくらいに、ローリエが動揺したのだ。

 私としては、特に理由なく尋ねたつもりだったんだが……こりゃ地雷だったか?

 

 

「あー………すまん。脈絡なかったし、言いたくねぇんなら、別に言わなくても―――」

「……うん。あったよ、嫌な事」

 

 意外な事に、ローリエは答えてくれた。

 しかも、今まで見たことがないくらいに真面目で…かつ悲壮な雰囲気で。

 

「昔、二人の少女を守れなかった事があるんだ。

 俺はそれを、どうしても忘れることができない。」

 

 やがて、ぽつりぽつりと話し始めた。幼かったローリエの、悲しいくらいに『嫌な事』を。

 

「知ってるかい? アルシーヴちゃんのお腹には、まだ傷跡が残っているんだ。ソラちゃんは、未だに男とスムーズに会話ができないんだ。

 ―――2つとも、俺のせいだよ。俺が、弱かったからだ」

 

 聞いて後悔しなかった、と言ったら嘘になる。

 だがそれと同時に…私は、「どうして今まで私達に黙っていたんだ」という気持ちで一杯になった。

 そばで聞いていたアリサも同じ表情だ。頼ってくれなかった悲しさが顔に描いてある。

 

 ローリエは、多くは語らなかった。

 だが、何となく察してしまった。

 コイツは、アルシーヴを、ソラ様を、賢者のみんなを、クリエメイトを、大切に思っているんだ。そして――それが傷つく事がどれだけ絶望的で、悲しい事かも知っている。

 だから全力で守る。その為ならば手段は問わない―――文字通り。そういう奴なんだろう。

 セレウスが瀕死なのも、ローリエが全力で動いた結果なんだろう。

 

 ―――そうか。ローリエにもあったのか。こういうマトモな感情が。ちょいと過激なトコロもあるにはあるが……正直、女にモテたいから出世したのだと思ってたから、考えを改めねぇとな。

 

「―――ローリエ。ちょっと訂正したいことができた」

 

「?? なんだ?」

 

「絶対に私を頼れ! 必ず力になってやる!

 ……一人で抱え込んだら、許さねぇからな」

 

 

 ……ま、アイツの秘密主義が裏目に出ねぇことを祈るばかりだな。

 

 

「……ところで、なんでアルシーヴの腹の傷がまだ残ってることを知ってんだ?」

「実はここに来る前の夜にウッカリ脱衣所で出くわしちゃってだな………」

「…………………。」

「な、なんだその目は! わざと覗きにいったと思ってない!?」

「違うのか?」

「違うわ! …まぁ、ラッキーだったけど」

「はぁ………ローリエ、お前やっぱ殴るわ」

「結局ーーーーーーーー!!? ちょ、やめろジンジャー! やめるんDOOR!?!?

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ――――――エトワリアの某所・某時刻にて。

 

 ドリアーテは苛立っていた。

 ツヤのあるオレンジの長髪の生えた頭を片手で抱え、美しい顔だちをこれでもかと憤怒に歪め、歯を食いしばる。その怒りの矛先は、己の計画の邪魔をし続ける二人の人物である。

 

(おのれ……またしても、この私の邪魔をするか……!!

 召喚士きらら……そして賢者ローリエ……!!)

 

 まぁ当然ではある。ビブリオだけでなくセレウスという部下を失ってしまったのだ。それによって……己の目的を邪魔されているとハッキリ自覚しているのだから。その中心人物に怒りが向くのは不自然なことではない。

 

 

(許せぬ………たかが10年20年ぽっちしか生きていないガキ共の分際で……)

 

 気に食わない。頭に来て仕方がない。

 とある事情で女神ソラを呪い、聖典の力を封じ込めて……そして予想通り、現筆頭神官アルシーヴがオーダーを行う事を知り、チャンスととらえた。

 

 ―――これに乗じてクリエメイトや賢者を殺害すれば、エトワリアを滅ぼせる!!

 

 だが蓋を開けてみれば、今まで大失敗の連続だった。

 

 唆した盗賊団は、八賢者ローリエに一網打尽にされ。

 砂漠の盗賊サルモネラに依頼した時は、召喚士たちにサルモネラが返り討ち、そののち神殿に捕われ心を壊され。

 挙げ句の果てにはイモルト・ドーロでビブリオを、言ノ葉の都市でセレウスまでもが始末された。

 成果らしい成果は、ほとんど挙げられていない。強いて上げるならば女神の呪殺教唆と盗賊団の頭&ソラ襲撃犯のソウマを口封じすることに成功した程度。

 

 

 確かにビブリオは金にがめつく、セレウスは我が強かった。

 欠点こそあったものの、二人は二人なりに彼女への忠義を持った優秀な駒だった。それを潰されるという事は、彼女の戦力が落ちることと同義。

 

 結果、召喚士もクリエメイトも賢者も誰一人殺せていない。なんだこれは。なんだこのザマは。

 

(なにより……そんなガキ共に好き勝手されるほど軟弱な奴を部下にしていたのか、私は……!!!)

 

 なんて―――なんて使えない駒たちなのか!!!

 いくら忠義があろうと関係ない! 結果の出せない者達に価値などない!

 

 

 

「仕方あるまい………()()()の出番、といったところか。

 忠誠心しかなかった無能どもよりはいくらかマシだろう…!」

 

 だがしかし、怒りに奮えながらも、ドリアーテは次の手を打つ準備に入っていた。

 彼女の座っている席から、正面を見据える。そこには、一人の男がいた。

 

 

 赤黒い金属と深緑の毛皮が合わさって出来たようなバンデッドメイルを着込み、背には長槍を背負っている。己の身長の半分以上もある長いカイトシールドに若干寄りかかって、欠伸(あくび)をした。

 そして男の顔つきも色々とワケありだ。まず所々のシワからしてそれなりに年を食っている。現代的に言うとチョイ枯れというヤツだ。若かりし頃は豊かだったのだろう茶髪も、少し寂しいことになっている。何より―――額のど真ん中、斜めに刻まれた直線状の刃物による外傷跡(ケロイド)が目につく。歴戦の証というものだろう。

 

 

 そんなイイ年をしたオッサンがだらしなく欠伸を繰り返すのを見て、ドリアーテは口角を下弦の三日月のごとくつり上げた。

 

 

此度(こたび)は頼みますよ、ナット――――――()()()()()……或いは()()()()()と呼ばれた男よ。私の依頼を必ずやこなしてほしい」

 

「どの口が言ってんだか………」

 

 対するナットと呼ばれたオッサンは、ドリアーテに対して嫌悪感を顕わにする。ごくごく小さな舌打ちをし、並の小動物なら容易に射殺さんばかりの威圧で彼女を睨む。

 だが、暫く彼女を睨み続けて………余裕の表情が崩れないと分かると、やがて諦めたように溜息をつく。

 

 

「…………………………しゃーねぇな、わかったよ。オッサンは()()をこなす。お前さんは()()を渡す。そこはしっかり守ってくれよ?」

 

「あぁ。必ずな」

 

「頼むぜ…? 傭兵と依頼人を繋ぐ唯一の信頼の証だからな」

 

 

 ナットは彼女の返事にそう返し、気だるげにさっさとドリアーテの元を後にする。眠気に負けそうなだらしない目をこすると……

 

 

「……やるしかねぇか。

 俺も堕ちたモンだ。仕方ねぇとはいえ、()()()()()()()を引き受けちまうなんてよ」

 

 

 覚悟の決まった、鋭い目に切り替える。止まらぬ歩みの行く先は、言ノ葉の都市……その中央に(そび)え立つ、天をも貫かんとする大樹だ。彼の依頼の場所は―――その大樹の内部に形成された、自然の塔。その内部だ。

 ……もしこの場に鏡があったとしたら、その表情が戦い続けてきた今までより険しい表情になっている事に本人は気づけただろう。

 

 

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ&アリサ
 ドリアーテの謎を紐解く主人公&助手ポジガール。金髪メイド達に見惚れ、メイド長の名前を街のオバチャン達に教えて羞恥プレイを敢行し、アルシーヴの風呂上がり(直後)姿を脳裏に焼き付けつつも、黒幕を追うことをやめない。ちなみに、アリサはローリエの問題行動の数々に呆れ、ジンジャーの鉄拳制裁を求めていた。

ろーりえ「実はメイド長ちゃんの名前は―――」
おばちゃん軍団「あらあ!リリアンちゃんって言うの!? どうして今まで黙ってたのさ!」「そーよ!可愛いのに!勿体ないわよリリアンちゃん!」「素敵な名前だわリリアンちゃん!」
ろーりえ「カワイイ!」
オバチャン軍団「「「カワイイ!」」」
めいどちょー「や……やめてください…/////」
ろーりえ(ここまですっごいにやけるのを堪えながら照れるメイド長初めて見た)

ジンジャー
 ドリアーテの部下達がしでかした所業に怒りを募らせる八賢者兼市長。街の平穏を一刻でも早く取り戻すために暫くは都市を離れられないが、ローリエの救援には必ず答えることを約束する。
 しかし、ソラの封印や第三勢力の黒幕の正体(予想)についてはまだ知らないため、本当に街の政策を最優先するようだ。

ドリアーテ
 今回で彼女の大筋の過去が明らかになった。100年前は神殿で指導を受ける立場だったが、禁忌を犯すことで永遠を手に入れ、神殿を追われた。

ナット
 ドリアーテに雇われた傭兵。『大地の神兵』や『不敗の傭兵』と呼ばれていたようだ。依頼を受ける裏には何かがあるみたいで、彼自身は『依頼』の内容を知ってて受けたようだが……?





「ローリエが死んだ!」「この人でなし!」
 元ネタはFateシリーズの「ランサーが死んだ!」「この人でなし!」という、ある意味一種のお約束。リアルでもアニメでもゲームでもランサーの幸運値はEと低く、このお約束が生まれる一員となっている。その為、「Staynight」でも「Apocrypha」でも「Zero」でも憂き目に遭っており、「FGO」でも遂に「ランサーが死んだ!」事態が起こってしまったようだ。

サイコクラッシャー
 格闘ゲーム『ストリートファイター』シリーズの登場人物『ベガ』が使う、全身にサイコパワーを纏い、相手に突っ込む必殺技。亜種には更に強力なサイコパワーを纏った「メガ・サイコクラッシャー」、ベガワープで姿を消した直後に画面全体を薙ぎ払う「ファイナルサイコクラッシャー」「アルティメットサイコクラッシャー」などの上位版も登場した。CV.若○氏で行うと威力が倍増する。




△▼△▼△▼
椎奈「あ…ありのまま起こったことを話します……『いつも通りプログラミングをしてたら森の中で猫に囲まれてた』……な、なにを」
ローリエ「お、どうした椎奈レフ」
椎奈「誰が椎奈レフですか。どうすれば良いんですこんな状況」
ローリエ「俺も聞きたいよ。『次章に続くと思ったら初っ端のネタがシイナレフだった』とか」
椎奈「……………忘れてください…」

次回『死んだ魚の目・情けないオッサン・しょーもない変態部』
椎奈「次回もお楽しみに。」
▲▽▲▽▲▽

きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?

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  • 球詠
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  • 幸腹グラフィティ
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