きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

90 / 131
“BLこそが世界の正道。みんなの心に新たなる光をもたらしてくれるものとなるでしょう”
 …布田裕美音改め教祖ユミーネ


第63話:教祖ユミーネに会いに行こう その②

 根本の町の中心からやや外れた場所にあった、地下へと続く遺跡。それは、地下への階段を降りるとレンガを重ねて掘り進めた迷路のように入り組んでおり、数多く道が分岐していた。それこそ、手分けして探そうものなら道に迷ってしまいそうなレベルだ。

 

 こりゃ、探すのも一苦労だな。

 

 

「この地下道のどこかにいらっしゃる筈なのですが…」

 

「ひとしきり探しましたが…ここが最後の突き当たりですわね。」

 

「脇道も、扉もありませんでしたね」

 

「やっぱり、クリエメイトがいるというのは間違いだったのではないかしら。」

 

 

 難航した捜索の果てに辿り着いた最後の道は、フェンネルや椎奈ちゃんの言うとおりただの行き止まりにしか見えない。だが俺は、ソレがユミーネ派がアンチの目を欺く仕掛けだということを知っている。

 その上でよ〜く観察してみれば、行き止まりであるはずのその壁は、壁を映し出して入口を隠蔽する魔法―――否、魔道具が使われている痕跡があった。流石原作では誰も気づかなかっただけあって、なかなか巧妙に隠されているな。スゴく解析したい。

 

 

「で、でも入口近くでアサシン部隊の方々を見かけましたよ?」

 

「アサシン部隊を混乱させる為の偽情報だったかもしれませんわ」

 

 ランプとフェンネルの話し声が聞こえる。フェンネルの推測もいい線をいっているが、今回ばかりはランプの方が正しい。

 

 

「なぁオッサン、どう思う?この行き止まり」

 

 俺はメモを渡しながらオッサンにそう尋ねる。

 

「ん? オッサンに聞くまでもなく、お前さんなら分かるだろう、こんなモン」

 

 オッサンの答えと共に返ってきたメモに目を通し、それを懐にしまうと今度はきららちゃんに声をかけられる。

 

 

「あの…分かるんですか、ローリエさん?」

 

「ん? ………あー、まぁ教えてもいいか。

 ここな、すごーく上手に入口が隠されてるんだよ。この先にクリエメイトがいるかどうかまでは分からんけどな」

 

「流石、ローリエだね。じゃあ行ってみようか」

 

「おい待てマッチ」

 

「グエッ」

 

 

 マッチは俺ときららちゃんの会話を聞いて先を急ごうとする。大方、きららちゃんのパス探知を隠したいとするが故の行動なんだろうが、そうは問屋が卸さない。俺は、先へ行こうとするマッチのしっぽをマスコット停止ヒモとして掴んで止める。

 

 

「何をするんだ!? しっぽを引っ張るのは痛いからやめてくれないかな!!」

 

「常に飛行形態のお前には分からないだろうけど、こういうのって一歩先が断崖絶壁だったり罠のバーゲンセールだったりするのよ。迂闊に踏み入ると危険だぜ。

 それとも、そういう類の危険が無いって確信でもあるのか?」

 

 続きは、言うかどうか迷った。「―――例えば、クリエメイトのパス探知とか」とここで囁くのは簡単だ。しかし、おそらくその必要はない。ここまで言えば、きららちゃんが反論するからだ。

 

「いいえ……その心配はありません。ランプも間違ってません。この先に裕美音さんがいます!」

 

「随分と自信たっぷりじゃあないか。この先に道がある事を見破ったのは俺だけど、その先に誰かがいるとまでは言ってないぜ?」

 

「そ、それは………なんというか、上手く説明できないんですけど、分かるんです。」

 

 きららちゃんの説明は、思った通りに要領を得ないものだった。流石に、フェンネルの耳があるところで「パス探知」のことはあんまし言いたくないか。俺自身のことも八賢者として見ているのかもしれない。まぁ俺は知ってるけどな。

 

「よし。じゃあ、デバッグと行きますかね」

 

「え、ちょっと先生?

 いきなりデバッグって―――ちょっ!? 待ってください先生!!」

「おい、二人揃って壁に向かって走るやつがい―――あれ?」

 

 

 俺は壁に向かって走った。壁がどんどん近づいていき、ゼロ距離になっても岩壁にぶつかる気配はない。

 振り返ると、そこにはやっぱり岩壁しか見当たらない。しばらくしていると、ランプが壁から飛び出してきた。

 

 

「わあぁっ!!」

 

「お、来たようだな」

 

「先生! いきなりどうして……」

 

「俺の教える教科を忘れたのか? あの壁には、行き止まりと誤認させる仕掛けがあったのさ。超ハイレベルだったから、俺以外だと初見じゃ気づかなかったんじゃないか?」

 

「あっ、そうか………!」

 

「おーい、大丈夫かー?」

「ランプちゃーん、ローリエさーん! 聞こえたら返事をきてー!」

 

 おっと、まだ来ていない人達に安否を知らせてなかったな。あやめちゃんと歌夜ちゃんの声が聞こえる。すぐに無事を知らせないと。

 

 

「俺達は今、いしのなかにいるー!!」

 

「い…今石の中って…!」

「大丈夫じゃねぇ!!? な、なんとかして助けないと…!」

 

「ローリエ先生! ふざけている場合ですか!

 あやめ様、歌夜様ー! こちら問題ないですー!!」

 

 

 おおう、意外と通じたわ、このネタ。

 俺とランプの無事を確認できた皆は、次々とこちらに向かってくる。一列に並んで壁から透明化した幽霊のように出てくるさまはなかなかシュールだった。

 

 

「こんな空間が壁の向こうに広がってなんて……驚きましたわね。」

 

「あっ! 裕美音様があそこに!」

 

 

 ランプが指をさした方向を見る。そこには黒山の人だかりがわらわらと集まっており、その中心である祭壇に一人の少女が立っているのが確認できた。

 薔薇があしらわれたマリアヴェールをかぶり、白と赤の修道服を身にまとった少女――――――あー、間違いなく裕美音だわ、アレ。

 

 

「「「「BL万歳ー! ユミーネ様万歳ー!! ヒコ攻め万歳ー!!!」」」」

 

 

「さて………問題はアレをどうするかだけど……」

 

「あの中に入っていくのは嫌だなぁ……」

 

 

 マッチとあやめちゃんが呟く。

 裕美音が目の前にいるのに、周りの取り巻きたる腐男女の群れがイヤすぎる。目標まであと一歩だというのに、最後の砦が強固すぎる場面に出くわしたかのようだ。だが、このまま帰るわけにはいかない。帰りたいけど。

 

 

「うぅん…………あ」

 

「「「あ?」」」

 

 良い事思いついた。

 

「たまちゃん、一筆お願い出来ないか?」

 

「はい???」

 

 作戦を始める第一歩として、たまちゃんに紙と鉛筆を渡す。オイみんな揃ってその顔はなんだ。ちゃんと説明するから、「絶対やらかしそうだ」って目でこっちを見んな。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「さぁ……信じるのです。」

 

 ―――そこは、理想の世界だった。

 最初は、やけにリアルな夢だな〜くらいにしか考えていなかった。壁にぶつかった筈なのに痛くなかったし、その先に部屋まで見つけちゃったからね。

 そこに出入りする人たちは、全員が普段接しない人たちで、全員が普段見ない服装をしていた。珍しく、豊富なネタが集まれば、「fudafuda(ふだふだ)」としてインスピレーションが湧かないわけがない。

 

 

純白なるBL(イノセント・ボーイズラブ)に導かれし者たちよ………何も恥じることはありません。」

 

 

 私は、勇気を持って一人の女の人に私の話を聞かせてみた。………すると、彼女は私を肯定してくれたのだ。しかも、友人を呼ぶというリピーター付きで。

 しばらくすると、本当にその女の人がお友達二人を連れてやって来た。私がさっきの話をすると今度は最初の女の人含む三人に絶賛される。

 

 

「間もなく男の人がみんな男の人と付き合う世界が訪れます。」

 

 やがて三人が10人に、10人が20人に、20人が50人に………と集まった結果、私はいつの間にか「ユミーネ様」と呼ばれるようになった。

 

「すなわちBLこそが世界の正道。みんなの心に新たなる光をもたらしてくれるものとなるでしょう―――」

 

 驚くべきことに、ここまで来たというのに、私の解釈に異議を唱える人が誰もいなかった。皆が私の解釈を支持してくれた。こんなこと、即売会の打ち上げですら滅多にない凄いことなんだよ!

 

 

 ……そんな都合のいい世界なんて、ある訳ないんだけどね。

 でも、夢の世界なら、夢らしく自由でいたいじゃない?

 

 

「皆の者ー!! BLは好きですかー?」

 

「「「「BL万歳ー! ユミーネ様万歳ー!! ヒコ攻め万歳ー!!!」」」」

 

「「「「BL万歳ー! BLこそが世界の真理ー!! 珠輝様は攻めー!!!」」」」

 

 

 嗚呼、なんて最高な世界。

 このままずっと、覚めなければいいのにな―――なんてね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「異議あり!!」

 

 

「「「「「「「!?!?!?」」」」」」」

 

 

 それは、機械で出した音声だった。

 まるで、刑事ドラマとかで良く見かけるタイプのボイスチェンジャーを使った声が部屋中に響いた。さっきまでの皆の熱狂が、水を打ったように静まり返る。

 声の主は、意外と近くにいた。全身をマントで包み、顔もサングラスと布で隠れていてほぼその人の特徴を見いだせない。

 

 

「誰だお前は!」

「ユミーネ様の教えに異議ですって!?」

「アンチだ! きっとアンチ派だわ!」

「万死に値する!」

 

 

 信者の皆が口々にそう言うのを気にも止めずに、私に近づき、あっという間に動きを止められた。信者に対して、私を盾にする形だ。

 

 

「さぁ…信者ども。異教徒と共に教祖を打ちのめす覚悟を持った者から石を投げるといい」

 

「ゆ、ユミーネ様を人質に!」

「汚いぞ!!」

 

 

 ひ、人質? それってあの人質??

 突然のことで混乱が収まらない。襲撃者に力一杯抵抗しても動かない。

 このままじゃどうなるかわからない。どうしよう………と思った時。

 

「これを」

 

「え?」

 

 まさかの襲撃者から何かを手渡された。ボイスチェンジャー越しの声ではなく、素の声でボソリと言いながら。

 それは小さな紙だった。しかも、そこには見慣れた字でこう書いてあった。

 

 

『裕美音へ

 その人と私達を信じて、合わせて 珠輝』

 

 

 たまちゃんの字!? こ、これって一体どういう事なの……!!? よく分からないけど…たまちゃんが信じてって言うなら、信じて合わせてみよう……!!

 

 

「BLが世界の正道だと? そんな世迷言は、『薔薇の間に割り込み隊長』のドリアーテが許さんッ!!」

 

「なんですって!!? そんな横暴が…許されると思っているのですか……!!」

 

「そうだそうだ!」

「ユミーネ様を離しなさい!」

「この異教徒め!」

 

「異教徒…? そう言ってられるのも今のうちだ…世は間もなく、第三勢力の我らの教え『割り込みNL』以外認めない風潮となる…その世界に貴様らは不要ッ!! そして、このドリアーテこそが………エトワリアの女王となるのだーーーッ!!!」

 

「「「な、なにィィィーーーーーッ!!!?」」」

 

 

 ごめんね、たまちゃん。早速だけどもう限界が来そうです。

 この機械音声の人、なんでここまで腐女子の地雷をことごとく的確に踏めるの? いくら信じて合わせてって言っても限度があると思うの。最終的にはキレるよ?

 

 

「そ、そこまでです!」

 

 

 ――! こ、この声は!

 祭壇の袖から別の人々が現れる。そこにいたのは、思った通り、たまちゃんがいた。あとたまちゃんの所属している部活の人達。あと、見慣れない赤髪の女の子と星の髪飾りとツインテが特徴的な女の子。あと、兵隊の鎧が似合うカッコイイ系の女の子も。

 

 

「ドリアーテ! 貴女の野望もここまでです!」

「自分の好みをおしつけるなんて、ぜったいにゆるしませんー!」

「逃しはしませんわ! ここの人達の夢と命は、このフェンネルが守ります!」

 

 

 ……あれ、ちょっと待って。星の髪飾りのあの女の子、演技力がアレすぎない?? 今の台詞、途中から棒読みだったよ!?

 でも、なんか安心してきた。今の棒読みのお陰で、さっきのが演技であり、たまちゃんの手紙が事実だって確信が持てたから。信者の人達にはまだ見抜かれてないのか、たまちゃん率いる突然の乱入者その②を応援しだしている。

 

 

「また来やがったな! だが、ユミーネがここにいる限り、私には手も足も出せまい!」

 

「それはどうかな?食らえー!」

 

 たまちゃんが指をふる。次の瞬間、謎の人物の背中が爆発した。もちろん、その人物だけを攻撃するかのような規模の小ささだ。

 その爆発を受けた途端、腕の拘束がゆるくなったのですぐさま脱出する。たまちゃんの大活躍(?)に信者達は大盛況だ。

 

「グワアァァァァァァーーーーーー!!!! し、しまった!ユミーネが!」

 

「ひとじちをかいほーしました!」

 

「次は貴女ですわ!」

 

「クソ! これで勝ったと思うなよ〜!!」

 

 

 小爆発にしては派手なリアクションをとり、わざとらしく私を解放した怪人は、煙玉をばら撒く。煙が立ち込めて、消えた時にはもう怪しい人はどこにもいなかった。

 ―――なんだろう、この子供向けのヒーローショーみたいな寸劇は。

 

 

「裕美音!!」

 

 と、とりあえずこっちに駆け寄ってきたたまちゃんを抱き止めた。最後の最後まで付いていくことは出来なかったけど、これも夢ならでは、って事で良いのかな??

 

 

「無事で良かった! ユミーネ様なんて言われて……裕美音はここで何をしてたの?」

 

「勿論、BLを広めてたんだよ〜。

 皆私の解釈に賛成してくれてさ。凄いことなんだ。

 まぁ、夢の世界とは分かってるけど、こういう時くらいは自由に―――」

 

「あのね、裕美音。ここは夢の世界じゃないんだよ。」

 

「あはは、夢の中でもたまちゃんは優しいなぁ。」

 

「ち、違うの! 本当に夢じゃあないの!!」

 

「え、まさか……まさかそんなわけ………

 …………ほ、本当に夢じゃあないの!?」

 

「だから、そうだって言ってるでしょ!!」

 

 

 信者の人達の「珠輝様万歳!」「攻めの珠輝様万歳!!」の拍手喝采の中、たまちゃんは皆を集めてこの世界の事を―――エトワリアの事を説明しだした。

 その時に知ったことだけど、ここまでBLが浸透したのも、私達を呼び出す魔法「オーダー」の影響なのだという。ううっ、BLで世界を変えるとか、始祖になるとかそんなつもりはなかったのに…………

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 どさくさに紛れて体を覆い隠すマントとサングラスを脱ぎ捨てて、ボイスチェンジャーをしまう。クリエメイト達の後ろに回り込む。そしてナットを見つけて小声で確認を行った。

 

 

「―――どうだった、オッサン? ()()?」

 

「……あぁ。ローリエが()()()()を出した途端に動揺したヤツが一人。ほぼ確定だろうな」

 

 

 ―――うん。作戦は成功だな。

 俺が立てた作戦。それは、俺が姿を隠してユミーネを攫う人になりすまし、きららちゃんとフェンネル、そしてたまちゃんがユミーネ拉致を阻止する()()をする。それをもってユミーネ教徒をきららちゃんと神殿の味方に引き込む作戦だ。勿論、敵役が己を「()()()()()」と名乗ることも忘れない。

 この作戦は危険がない故に、ほぼ賛成票を得て実現した。いちおう、ランプに「煽りすぎには気を付けてください。裕美音様の怒りを買ったら大変です」というありがたいアドバイスは貰ったが。

 

 ……この作戦には、他の狙いもあったけど、それも達成できたようでなによりだ。裕美音に「サングラスの女(暫定)=俺」と気づかれていないようなので完璧である。

 

 

「よし。これで裕美音ちゃんとも合流できたな。しかし、クリエケージの在処がまだ掴めていないみたいだけども。」

 

「そのクリエケージってやつを壊して、私達が元の世界に帰ればいいんですよね?

 んーそうだ! それなら、皆に聞いてきますね」

 

 

 聞くって何を―――と誰かが言う前に裕美音は近くの人から何かを尋ねはじめた。あっという間に人が集まり、数分会話すると裕美音が戻ってくる。

 

 

「クリエケージの場所が分かりましたよ〜!」

 

「この一瞬で、ですか!?」

 

「うん。蛇の道は蛇ってね。町のBL仲間に聞いたら、裏情報も手に取るように集まっちゃった。」

 

「……その情報網に感謝せねばなりませんわね。アサシン部隊の動きを察知してここに移動したのも、ソレのお陰でしょう」

 

 何たることぞ。裕美音のBL仲間の情報網、ハンパなさすぎません? ジンジャーの金髪メイド部隊と引けを取らない情報収集スピードってどういうことなの。

 

 

「あぁ……それと―――

 

「!!?」

 

 

 ゾクリ、と背筋が凍りつく。裕美音のこっちを見る目は墨を垂らしたように真っ黒だ。なぜだ…どうしてそんな目でこっちを見る? 嫌な予感しかしない。

 

 

「さっきの発言について…色々と聞かせて貰いますね、ローリエさん???」

 

「え……いや、何のことだか―――」

 

「BL仲間が教えてくれましたよ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を」

 

「………………………」

 

 

 バレテーラ。最悪だ。

 ユミーネ教徒のヘイトを買うために「ドリアーテ」の名を借りて散々悪口に等しい過激な発言をしてきたが、どうやら一番裕美音の怒りを買ってしまったらしい。あの発言の数々が演技であり、本心じゃあないことは分かっている筈なんだが、「それはそれ」ってことなのか!!?

 

「ほら!だから言ったじゃあないですか! 裕美音様を怒らせるなって!!」

「作戦を立てたローリエの自業自得だね」

「ですわね。反省してもらういい機会かと」

「あ、あははは………」

 

 皆がみんな「あーあ…(呆)」みたいな雰囲気になっている。助けはまず望めない。

 と……とりあえず! こういう状況になったら、取れる手は一つしかないッ!!

 

 

「このことはどうかご内密に………」

 

 

 平謝りである。ここでユミーネを拉致ろうとしたドリアーテの正体がバレたら作戦が一気に瓦解してしまう! フェンネルを中心に俺を見る目が一気に冷めるが命より重いモノはない。

 

 

「……じゃあ、エトワリアにおけるBLの保護。宜しくお願いしますね♪」

 

 

 これが……後にエトワリア創作界の一大勢力を担うことになる、BL勢力の始まりであった。…心が挫けそうです、ハイ。

 

 

「あ、あの……裕美音さん、クリエケージは…?」

 

「あ、そうそう。それなら案内できると思うよ。

 ここからちょっと離れてるから歩くことになるけどね」

 

「とにかく、クリエケージが見つかったのなら向かうとしよう。早く神殿に進まないとね」

 

 

 先を行く皆の中、唯一凹んでいる俺を励ましてくれたのは、なんとナットだった。何も言わずにポンポンと肩を撫でるだけだったが、それでもいくらか心が軽くなったのである。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 こうして、BLという(エトワリアにとっては)新しい概念を巡ったユミーネ騒動は終わりを告げた。これによって今回、『オーダー』によって呼び出されたクリエメイトは全員きらら一行withフェンネル&ローリエ&ナットによって保護されたことになる。

 

 ―――だが、まだ戦いは終わっていない。むしろここからが本番だ。

 

 

 

 

 ナットはひとり、少し過去のことを思い出していた。内容は…ドリアーテの依頼の事。

 

 

『もし私の依頼をこなせれば、貴方の大切なもの……それが二度と誰かに奪われない事を保証します。

 此度(こたび)は頼みますよ、ナット――――――()()()()()……或いは()()()()()と呼ばれた男よ。私の依頼を必ずやこなしてほしい』

 

『どの口が言ってんだか………』

 

 珠輝には言葉を濁して誤魔化したが、ナットはかつて傭兵だった。ドリアーテは、その頃のナットの実力を頼りにして依頼したのだ。

 その依頼内容とは―――

 

 

『召喚士きららと八賢者ローリエ。それらに組する人間。そして、「オーダー」で呼び出されるクリエメイト。

 ―――ソイツらの()()()()さ』

 

 

 ナットは、反論したかった。お前は傭兵を殺し屋か何かと勘違いしているのかと。依頼の難易度が高すぎると。だが……彼はそうしなかった。()()()()()でドリアーテの機嫌を損ねるのを避けたかったのだ。

 

 

『…………………………しゃーねぇな、わかったよ。オッサンは()()をこなす。お前さんは()()を渡す。そこはしっかり守ってくれよ?』

 

『あぁ。必ずな』

 

『頼むぜ…? 傭兵と依頼人を繋ぐ唯一の信頼の証だからな』

 

 故に、こう答えざるを得なかったのだ。

 ナットも、ここまで来たら覚悟を既に決めていた。

 

 

(……あとは、オッサンの覚悟とタイミング次第、か。

 メンドくせぇが、俺にも譲れないモンがある……

 …………恨むなよ)

 

 

 だが、ぐうたらで怠惰なオッサンはそれを口にすることはない。

 ただひたすらに、己のタイミングを測るのみである。

 

 

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 壁の魔法を見破り、裕美音救出のためにひと芝居打って悪役をこなした八賢者。作戦は功を奏し、BL勢力の人間の殆どは八賢者フェンネル所属の神殿や召喚士きららに良感情を持つようになり、またドリアーテと第三勢力を敵視するようになった。ただし、ヘイトスピーチが度を越していたため、裕美音にバレた時は思い切り叱られた。ナットと秘密裏になにか話していたようだが……?

布田裕美音
 エトワリアに召喚された事態を「夢を見ている」と勘違いしたせいで欲望のままにBLを広め、あっという間に教祖ユミーネとなったたまちゃんのお友達。ドリアーテ(仮)に乱入された時は動揺しまくったが、たまちゃんの一筆ときららの演技()で落ち着きを取り戻す。ただし、演技と分かっていてもドリアーテ(仮)のBLを侮辱する発言は許さなかった。

ナット
 来たるべき依頼を前に、覚悟を決めるダメなオッサン。その覚悟を胸にどんな行動を取るのか、次回に乞うご期待。

きらら&ランプ&マッチ&フェンネル&本田珠輝
 裕美音を救出する役を演じた方々。裕美音とローリエ曰く、きららは演劇素人よりもヒドかったが、それ以外はなかなかサマになっていたという。なお、ランプだけは裕美音が後で恐ろしいほど怒るだろう事は察知していた。



行き止まりに見える通路
 原作ではデバッグと称して「オーダー」で生まれた場所のような言い方をしていたが、拙作はもともとあった地下教会の跡地への入口として登場。壁にしかみえない魔法or魔道具は、弾圧から逃れる為に有用であることから元々あったのではないかと考えた。魔道具にしたのは、フェンネルですら気づかない高度な偽装魔法を一般ピープルは覚えられないだろうと考えての事。これなら、かつての遺物を整備することで使うことができる。

いしのなかにいる
 元ネタはロールプレイングゲーム『Wizardry』に登場する最も悲惨な全滅の状態を表す文言。宝箱に仕掛けられているテレポーターのトラップで壁の中に閉じ込められた時にこうなる。今後一切の行動ができなくなり、死亡するだけでなく、デスペナルティとしてそのキャラがロストするという、昨今のゲームでは考えられない重罰が課されるという、プレイヤーのトラウマである。

薔薇の間に割り込み隊長
 万死に値する隊長の亜種。おそらく女隊長。ちなみにオリジナルは『百合の間に割り込み隊長』であるが、やっぱりこっちも万死に値する隊長である。
 元ネタは、2019年9月頃流行った「カードゲームのカードの名前を組み合わせる大喜利」の作品の一つ。当時は多くのカードゲーマーを笑わせてきたが、百合の間に割り込むのは当然許されない。



△▼△▼△▼
椎奈「布田さんとの合流を果たし…もうすぐクリエケージの元へ辿り着く……そう思ったのが、私の油断だったんでしょうか…」

珠輝「いいえ、部長さん…私がいけなかったんです。異世界のおじさまを前に舞い上がってしまった私が…!」

歌夜「その辺に…しよう、二人とも。普通、アレは予想できない。」

裕美音「ぐうたらなおじさんにしか見えなかったナットさんが、かつては伝説の傭兵だったなんて……嘘ですよね、フェンネルさん!?」

次回『大地の神兵』
フェンネル「次回もお楽しみに、ですわ!」
▲▽▲▽▲▽

きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?(決戦投票編)

  • がっこうぐらし!
  • きんいろモザイク
  • 夢喰いメリー
  • ゆるキャン△
  • まちカドまぞく
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。