きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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「あっちこっち」参戦おめでとうございました(過去形)。
伊御がいないのは残念ですが……まぁ、いずれ男子が参戦することに期待しましょうか。

伊御「音無伊御。つみきはいるか?」
タカヒロ「香風タカヒロ。ラビットハウスのバーのマスターをしている。娘が世話になっているようだね」
ディーノ「ワタシはディーノと申しマス。普段はスティーレの店長として頑張っていマスが、ここに来たからには苺香サンの為に頑張りマス!!!」




“いつもの明るすぎる星のような目を真っ赤な怒りに染めて、彼女は云った。『小さな女の子一人救えないで、女神様など救えない』…と。”
 …ランプの日記帳(後の聖典・きららファンタジア)より抜粋



第66話:三人の舞台裏

 

 

 フェンネルときららちゃん、そしてオッサンを伴い、監視の男を厳重かつ強固に縛り上げて連行しながら椎奈ちゃんらの所へ戻ると、なんとそこでくっしーちゃんが武器を構えてオッサンに向けたのだ。

 きららちゃんが事情を話すと、構えを解いてくれた。

 

「……そういえば、ナットが関あやめを刺したことを忘れたわけではないでしょう? 許されると思っているのですか?」

 

「…あぁ、そのことね。―――あやめちゃん、()()()()()ー!」

 

 俺がそう呼び掛ける。すると……

 

 

 

「―――やっと終わったのか、ローリエさん。あとちょっと遅かったら誤魔化せなかったよ?」

 

「「「「!?!?!?!?」」」」

 

「あ、あやめ様…!?」

「まだ動いちゃ駄目!! 傷口が開くわ!」

「あやめちゃん、何、どういう事!?」

 

 そう答えたあやめちゃんが椎奈ちゃんの手を離れて悠々と立ち上がった。

 SNS部の皆が心配の声を上げる。……が、心配には及ばないのだ。

 

 ……そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「あー…ゴメン、これには深い事情があってだね………」

 

「良いか、ちょっと時系列を整えて説明するぞ。

 アレは裕美音ちゃんを見つける前のことだ―――」

 

 俺は、皆がこれ以上混乱する前に説明を始めることにした。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 俺が異変に気付いたのは、オッサンがあやめちゃんに渡した詩集と「殿がオッサンの本音だ」という言葉を照らし合わせた時だ。時系列で言うと裕美音ちゃんへの聞き込みの真っ最中だ。

 まずは、問題の詩集の下線部を以下に列挙してみよう。

 

筆頭神官は女

神官の頭の意

誰が

悪人

欲望を閉じ

思慮深い賢者は智

朝に夕なに

信徒

調停をもたら

照らされ

敵をたおし

勇猛果敢

全てに等し

日を斬り拓く

八つの

 

 これらとオッサンの「殿がオッサンの本音だ」という言葉―――これを照らし合わせ、下線部の一番後ろを読むと……

 

【女意が人じ智に徒られた敢し明光】

 

 もちろん、このままでは意味が通じない。そこで、読み方を工夫する必要がある。

 「女」は女神(めがみ)の「め」、「明」は明日(あす)の「あ」なのでそれぞれそう読み、最後の「光」は「ひかり」とひらがなで読んで一番後ろの「り」を読む。そして、全部ひらがなに直すと……

 

【めいがひとじちにとられたかんしあり】

 

 ……そして、これを別の漢字に直すと。

 

()()()()()()()()() ()()()()

 

 

 ……となる。

 そう。ナットは詩集と言動を使ってSOSを出していたのだ。

 そして俺がこのことに気づいて……

 

『オッサン………マジか? マジに言ってんのコレ?』

 

 ―――そう口にした時、オッサンは小さなメモを差し出してきた。そこには、こう書いてあった。

 

 

お前さんが読み取った通り、エイダが人質に取られたのは事実だ。

 俺は、エイダを返してもらうことを条件にお前さんらの討伐を依頼された。ご丁寧に監視付きでな。

 だが俺はなんとかして監視を無力化したい。協力を頼めるか?

 

 

 オッサンのその行為で、俺は周囲を見回したい衝動を我慢した。

 ナットは、監視の人間に「監視されていることに気づかれた」と悟られたくないのだと。

 それ以降、ナットとはフェイクで日常会話から女の趣味談義までの話をしながら、()()()監視を無力化する作戦を練っていた。

 

 

「オッサン、そっちの壁、何か仕掛けとかあったか?」

監視を倒す時の合言葉を決めるべきじゃないか。俺がオッサンの名前を呼んで「お前を殺す」と言うのが合言葉とかどうだろ

 

「んー……いや、なんもなかったねぇ。お前さんが見つけられないモンなら、オッサンにも分からんよ」

合言葉自体は良い発想だ。だが、監視を倒す時はどうする? 武器を直接向けるのは絶対ナシだぞ。下手に感づかれたらオシマイだ

 

「そっかぁ。じゃあ仕方ない。他を探すとしますか」

俺の飛び道具の跳弾で倒す。腕は信じてほしい

 

 

 ……とまぁこんな感じで二人で色々と決めていたのだ。

 

 オッサンが敵対するタイミング。

 それに対するきららちゃん達とフェンネルの行動。

 監視を見つけるタイミング、そしてソイツを倒すタイミングも。

 

「―――どうだった、オッサン? ()()?」

「……あぁ。ローリエが()()()()を出した途端に動揺したヤツが一人。ほぼ確定だろうな」

 

 ちなみに、裕美音ちゃんをド派手に救出した上にドリア―テの名前を出したのも、多くの腐った町民や腐ってない町民の中から監視の男・ジュド・モナスを炙り出すための作戦でもあったりする。

 

 だが、そこでちょっとしたイレギュラーが発生した。

 

 

「なぁ、何してんだー?」

 

「「!!」」

 

 

 それは、あやめちゃんがオッサンからメモをぱっと攫いながら聞いてきたのである。完全に不意打ちだったため、俺もオッサンも反応出来なかった。そして、彼女はメモの内容を―――オッサンの姪っ子が人質にされている事を知ってしまう。

 

「お…おい、これって―――むぐっ!?」

 

「(それ以上は絶対に言うな。悟られたらお終いだ)」

 

 あやめちゃんは頭が良い方ではないが、その一言で事の重大さをある程度理解したようだ。そして、少し動きが止まったかと思うと……

 

「…なぁ、書くもの貸してくれ」

 

「はい?」

 

 言う通りに鉛筆を貸せば、彼女はメモに何かを書いていく。そして、見せてきたメモには、こう書いてあった。

 

 

オッサンの姪っ子を助けるために、あたしに何ができる?

 

 

 ……と。

 

 俺は感心した。会って間もないオッサンの、見たこともない姪っ子のためにこんなことが出来る子だとは思っていなかったのだ。その事を含めて彼女に「どうしてそう思った」と訊けば、「本田さんに似ているとあっちゃあ一度見てみたいからだ」とのこと(もちろん筆談だ)。これにはオッサンも苦笑いだった。

 だが、オッサンの苦笑いはすぐに『笑い』が取れ、『苦さ』だけが残ることになった。

 

気持ちだけ受け取っておこう。お前さんは何も知らないフリだけしてくれればいい。

 

 そうなのだ。

 あやめちゃんは、現在オーダー中のクリエメイト。きららちゃんに『コール』されているクリエメイトとは違い、戦うことはできない。

 オッサンが提示したベストアンサーに、あやめちゃんは唇を噛む。まぁ実質的な戦力外通告だし、事実なんだけど納得いく訳ないよなぁ。

 

 

 だが、俺は思いついた。

 あやめちゃんに作戦の協力ができ、かつ監視に怪しまれずに騙す方法を。

 それが、あの恐るべき『あやめちゃん、オッサンに襲われたフリ作戦』だったのだ。俺考案のケチャップ味血糊とマジックジャックナイフ(宴会芸で良くある引っ込むヤツ)を使えば実現できるものだ。

 

 敵を騙すには味方からとは言うが、この作戦なら、二人の演技力と血糊次第できららちゃん以外全員を騙せるだろう。

 残りのきららちゃんも問題ない。あやめちゃんのパスを感じ取れれば、違和感を抱かせて俺とオッサンの戦いの場に割り込ませることができるのだから。その時に監視を始末して、事情を説明すれば良い。

 

 問題は、あやめちゃんがこの作戦を行う際に生まれる罪悪感や良心の呵責に勝てるかどうかだった。

 

……という手もある。やってもいいしやらなくても良いが、仮にやるなら終わるまで貫き通して貰う

 

 俺はこの作戦を事細かにあやめちゃんとオッサンに説明し、判断を委ねた。オッサンは『まぁそう使うならアリにはアリかな』という顔と雰囲気を出す。

 そして、肝心のあやめちゃんは………

 

オッサンは、姪っ子さんを救う為に覚悟決めてるんだろ?ならあたしだって覚悟決めなきゃな

 

 ……どうやら、後で椎奈ちゃんに泣かれる覚悟を決めたようであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「……ということがあったんだ」

 

 

 ローリエさんの説明が終わった後のあたしの気持ちは、例えるなら判決を待つ被告人のようだった。

 だってそうだろ? 口と胸から血ノリを吹き出すマネまでして、しーや他の皆を心配させた挙句、騙したんだ。もしあたしが、しーに同じ事をやられたら「ふざけんな」って怒鳴る自信がある。

 覚悟を決めたとはいえ、血ノリに沈むあたしの周りで号泣する皆を薄目で見たあたしは、何度もすぐに立ち上がって「冗談だよ」と言ってしまいそうになった。でも……それじゃあ、オッサンの姪っ子が助けられないのだと言う。だったら、と皆を騙している罪悪感を飲み込んででも重傷者を演じ続けた。

 喉のどうしようもない苦味は、血ノリのケチャップ味では到底紛らわせそうになかった。

 

 

「そう………だったんですか……」

 

 しーがこっちに近づいてくる。表情は、読めない。あたしは口を噛み締めた。

 怒ってる……よな。騙したんだから。

 

『あや……ごめんなさい…! 私が、最後の最後で油断していたばっかりに……!』

『違います、部長さん! 私です!私がおじさまを前に舞い上がってしまったから………!!』

『……よそう、二人とも。あやめちゃんの傷を治すのが最優先だ』

 

 

 しーが一歩、こっちに向かって足を踏み出す。部の皆の心配する声が蘇る。

 

 

みんな…ありがとな………あと、ごめんよ……

『―――!! 謝らないでっ!!!』

私…もうちょっと、皆でゲーム…作りたかったな……

『そんな言い方はやめて……わたしだっで、こんな中途半端は嫌ッ!!!』

あれ……春馬?信人?きてたんだぁ

『…あや?何を言ってるの…?』

 

 

 そして、もう一歩。しーがこっちに近づく。思い出されるのは、あたしの偽の遺言。自分の精一杯の演技にして―――許されない嘘。

 

 

 そして、ついに。

 しーが目の前まで来た。普通に手が届く。殴られたりビンタされたりするならこの距離だろう。

 あたしは、来るであろうほっぺへの衝撃と痛みに耐えるべく、ぎゅっと目を瞑った―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かった―――!!」

 

 瞬間、あたしが感じたのは痛みじゃなかった。

 自分の胸の中に、人ひとりが飛び込んでくる感覚。背中に手を回され、掴まれる感覚。あたしが想像したようなものは、全く来なかった。

 そこで初めて、自分の状況に気づく。

 

「……………え?」

 

 

 ……なんで?

 だって、あ、あたしは……しーを、みんなを、だまして―――

 

「良かった…もう、会えないかと思った……あやが……死んじゃうがど、思゛っだぁ…!!!」

 

 私の胸に顔を埋めて、凄い勢いで涙を流すしー。今までコイツと付き合ってきた中で、初めて見る彼女の一面だった。

 しーを泣かせる覚悟こそしてたものの、ここまでとは思っていなかった。

 だから、かな。

 

 ―――目の前が、だんだん滲んできたのは。

 

 

「…しー。あたしは、エイダちゃんを…オッサンの姪っ子を助けたかった。

 本田さんがあそこまで必死になるきっかけになったエイダちゃんを見てみたかった。そんな子が人質になってると知って、いてもたってもいられなかった。」

 

「水臭いじゃないか、あやめちゃん。私達に教えてくれたって……いや、ダメだったんだっけ。」

「でも! ちょっとは話してくれてもいいじゃありませんか!!」

「そうですよー。ぶっちゃけ、超肝が冷えたんですからね」

「……まったくよ。私達がどれだけあやのこと心配したと思ってるの?」

 

 

 藤川さんも、本田さんも、布田さんも、しーも、そう言う表情にあたしを責める様子とか、そんな感じはしない。

 

 

「それに……ローリエさんの言う事が確かなら、監視の目を騙して、エイダさんを救う手助けをしたのはあやなんでしょ? ……それはすごいことだと思うわ」

「しー……」

「でも――もう二度とあんなマネはしないで」

 

 しーが再び顔をうずめる。

 あぁ……あたしって、バカだなぁ…

 

「―――っ、……ぅぅ…」

 

 こんなことなら、焦って一人で参加しないで皆に一言相談すりゃ良かった……っ!

 

 

「………ごめん、しー、みんな………」

 

 大声が出そうになったので、その代わりにしーを強く抱きしめた。

 

 

 

 

 

「…ところで、これからどうするんだ?

 ナットはどうやら、戦う理由がなくなっちゃったみたいだけど」

 

 収拾がついたところで、マッチが口を開いた。

 薄々考えていたことであって、避けて通れない話でもあった。

 ……そういや、あたしが重傷者のフリをしていた時にオッサンを監視してた奴は倒したんだよな?

 

「……今ぐるぐる巻きにされてるソイツなんだろ? オッサンを監視してたのって」

 

「あ!そうだよ!

 ナットさん、人質取られてたそうじゃあないか!!」

 

「おじさま、エイダさんは見つかりましたか!?」

 

「………」

 

「……おじさま?」

 

 

 オッサンの表情はものすごく暗かった。

 言葉を聞かずとも、その顔に張り付いた絶望の表情と、周りが見えておらず考え込むような雰囲気でオッサンの答えが分かってしまった私が……どうしようもなく嫌だった。

 

 

「………いない。どこかに幽閉されているのか…?

 まさか、あの女…最初からエイダを返すつもり……

 いや、違う。だとしたら、なんでいない……!?」

 

「そんな……!」

 

 

 それは、誰が言ったか。

 オッサンの見たことのない弱りように、あたしたちは言葉をかけられずにいた。…今のオッサンに何を言っても気休めにもならないと察してしまったからだろう。オッサンとは直接関係ないフェンネルさんまで黙ってしまって、あたしたちは途方に暮れてしまった。

 

 ―――ただ一人を除いて。

 

 

「大丈夫です、ナットさん。エイダさんは生きています」

 

「「「「「!!!!」」」」」

 

「……証拠は?

 言っておくが、根拠がねーのはただの楽観って言うんだぞ」

 

「……()()、です。」

 

()()…?」

 

「簡単に言えばナットさんの絆の事です。

 エイダさんとの絆はまだ切れていません。少なくとも、命は無事です」

 

「ちょっ、きららさん!?」

「なっ―――馬鹿!!!」

 

 

 きららさんがオッサンに姪っ子が生きていると告げた。

 理由を言えば、なぜかランプとマッチがうろたえだしたけど……なんなんだ?

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 こんなことを言うのは今更だけど―――私は、パスを感じることができる。

 パスっていうのは、人と人との間に存在する「つながり」や「結びつき」……そして「絆」のこと。

 それは人が生まれながらに持っているもので…いろんな形がある。

 今まで私はそれでクリエメイトの皆さんを探してきたけど、その気になれば、パスを使って色んな事ができると知った。

 

 それで試しにナットさんに「パスを感じることが出来る能力」を使ったら―――なんと、エイダさんの命があることを知ることができた。

 私は躊躇いなくそれをナットさんに教えたんだけど―――

 

 

「何を考えているんだ、きららッ!!? フェンネルの前では内緒にしようとあれほど―――」

「そっ、そうですよ、きららさん!! いくらナットさんが人質を取られてたとはいえ―――」

 

 

 ……まぁ、こうなるよね。

 フェンネルさんと会った時、この能力は秘密にしておくと決めておいたんだ。二人からすれば、いきなり私が約束を破ったみたいに見えるかも、だけど。

 私のこの行動にも、ちゃんと理由がある。

 

 

「………ランプ、マッチ。

 私ね…今、()()()()()()()

 

「…へ?」

「きらら、さん?」

 

「もともとこの戦いって、私達と神殿の賢者のクリエメイトを巡った戦いだったでしょ?」

 

「…確かに、そうですね。私は『オーダー』をなんとかしたくて、偶然きららさんと出会って……」

 

「でも、なんでいまその話を?」

 

「分からない、マッチ?

 ――砂漠の盗賊やビブリオ、セレウスやドリア―テみたいに戦いに乱入するのはまだいい。クリエメイトの皆さんの命を狙うなんて許せることじゃないけど。

 でもね。それ以上に、彼らは……ううん。きっとドリアーテだろうけど―――許せないことをした。」

 

 

 怒鳴りそうな激情を深呼吸で落ち着かせようとする。でも……その程度じゃ、私の怒りは収まらなかったみたいで。

 

 

「どうして―――何の関係もないナットさんやエイダさんが巻き込まれなきゃいけないの……!!?」

 

「「!!!」」

 

 

 そう言った私の声は、震えていた。

 だってそうでしょ? ナットさんは傭兵だったみたいだけど、もう昔の話みたいだし…エイダさんに至っては、私達の戦いに巻き込まれる理由なんてひとつもなかったはずなのに。

 現に、エイダさんは人質にとられ、ナットさんはそれを開放するためにさっきまでフェンネルさんやローリエさんと戦っていた。

 ローリエさんとあやめさんの機転で監視の存在が明らかになったからこれ以上戦わなくてもよくなったけど、もしナットさんのメッセージにローリエさんが気づかなかったら、私達は今もナットさんと戦い続けていたかもしれないんだよ?

 

 

 そう考えると―――お腹の底あたりが、ぐつぐつと煮えていくのを感じたんだ。

 ナットさんとエイダさんを戦いから解放したい……その為なら、マッチが話した戦略が、とてもちっぽけなものに感じたんだ。

 別にマッチが悪い訳じゃない。でも、ナットさんとエイダさんの事を知ってしまった以上―――私はエイダさんをナットさんの手に取り戻したくなったんだ。

 

 

「特にエイダさんは戦いに関係ないのに……これ以上巻き込みたくないんだ。

 だから、ナットさんに協力したいの。」

 

「きららさん……!」

 

「…悪いねぇ、若いのに巻き込んじまってよ」

 

「いいえ。今の話が事実なのであれば、巻き込まれたのは貴方がたの方ですわ」

 

「―――フェンネルさん!?」

 

 

 私がナットさんにそう言えば、フェンネルさんまで前に進み出た。

 

 

「ずっと疑問だったのです。面倒なことを嫌い、私達に仕事を押し付けるような超のつくダメ人間の貴方が、なぜ急に関あやめを刺したのか。なぜ急に仕事の話を持ち出したのか」

 

「……フェンネル、お前さん何気に酷いぞ?」

 

「『大地の神兵』であったことには驚きでしたが、それにしたって怠惰な性根が急変するなら訳がある。

 先程はアルシーヴ様の『クリエメイトを傷つけずに捕獲』を破られたと思って冷静さを欠いてしまいましたし、戦闘中は疑問どころではありませんでしたが………今になって考えれば…成る程、ローリエの説明とも辻褄が会いますわね。」

 

「おい、オッサンの反論は無視か?」

 

「いくらアルシーヴ様やその盾たるわたくしとて、無関係の人間を巻き込むほど節操を無くしたつもりはありませんわ。勿論、アルシーヴ様の命があればその限りではありませんが………あの方がそのような命令を下すとは思えませんので」

 

 

 フェンネルさん……!

 手を貸してくれるんですね。心強いです。

 

「…みんな揃ってお人よしだな。オッサン、ちょっと泣きそうだよ」

 

「勘違いしないでくださいまし。

 別に貴方のためではありませんわ。怠惰で退廃的な人間など不摂生の祟りを受ければいいのです。

 ただ、エイダさんのような一般人の少女の身の危険を見過ごす八賢者などいないだけですわ」

 

「………違う意味で泣きそうだよ、オッサン」

 

「…フェンネル。そこら辺にしとけよ、オッサンをイジんの。

 慣れないツンデレをぶっつけ本番で使ってまで建前つくる必要ないだろうに」

 

「あ、あはは……」

 

 

 みんながみんな、エイダさんを助ける方向で決まったみたいだ。

 

 

「……ところで、エイダさんはどこにいるとか心当たりはないんですか?」

 

「…あるにはある。おそらく、ドリアーテの手の中だろう。監視の野郎が連れてないってことはおそらくそこだ。

 あの手の輩は…とにかく人を信用しない。そういう奴の奪われたくないモンは手元にあるものさ」

 

「そうですか……しかし、ドリアーテという人をどうやって連れてくるのですか?」

 

 ナットさんが言うには、そのドリアーテっていう人がエイダさんを攫っているのは確定みたいだ。

 だったら、エイダさんを取り戻すために必要なのは………

 

「…嘘の報告……」

 

「きららさん、今なんて?」

 

「嘘の報告です。『ナットさんが依頼を達成した』と嘘をつけば……エイダさんを連れてやってくると思います!」

 

「なるほどね。俺もそれには賛成だ、きららちゃん」

 

「でも、そのためには準備が必要です。相手が信用しない性格だというなら、簡単に見破られてはいけない気がします……」

 

 

 私の意見に、頷いて賛成したローリエさんと相手に警戒されてはいけないと言う椎奈さん。

 確かに、「私達を倒した」って報告を受けたのに、敵を倒した跡とかがないと流石に怪しむかな……?

 

 

「椎奈ちゃんの言う通りだ。相手がどんなバカでも『敵を倒した』って聞きながら血とか倒した証拠とかがねェと怪しむってもんだ。ドリアーテみたいな人を信用しない奴なら猶更だ」

「そこは、リスクを考えると偽物を使った方が良いかもしれませんが……それならそれで、高い精度が欲しいですわね。いざ呼びつけて、エイダさんとドリアーテが離れる前に見破られたら目も当てられませんし…」

 

 

 椎奈さんの意見に賛成する形で懸念したのはナットさんとフェンネルさんだ。

 一番に優先するのはエイダさんの救出。もし、ドリアーテを騙せなかったら、エイダさんの身に危険が及びます。

 でも、私もランプもソルトみたいな変身魔法なんて使えませんし……

 

 

「―――問題ない。高度な偽装を使える人間ならアテがある」

 

「ろ、ローリエさん!?」

 

「……ローリエ。もしや、ソルトに協力を仰ぐのですか?」

 

「…あ!確かに、ソルトはローリエ先生やフェンネルと同じ八賢者だし―――」

 

「――違う。あの女を騙すのにそもそも変身魔法なんて使わない。

 ガワを真似るだけの魔法に、防御力などないに等しいからな」

 

 

 ローリエさんの「アテがある」発言と「変身魔法は使わない」宣言に皆が驚いた。

 ソルトの「変身魔法」を使わないで、人を騙す……!?

 

 

「変身魔法っていうのは……?」

 

「…あ、そっか。たまちゃん達には説明しなきゃね。

 変身魔法は、その名の通り誰かに変身する魔法だ。忍者の変化の術みたいなモンさ。ただ……中身までは変身できないから、相当上手くやらないとすぐにバレる」

 

「なら、どうやってドリアーテ?を騙すんですか?」

 

「待ってろ。今からソイツに連絡する」

 

 

 ローリエさんは薄い四角形の箱のような何かを取り出すと、ソレを耳元に当て始めた。

 

 

「もしもしィーコリアンダーくん? 今暇? ちょっと言ノ葉の樹の根本の町まで転移できる?

 …………ドリアーテの顔を拝めるって言ってもか? …おう。 ……あー、まぁ、詳しくは来てから話すわ。」

 

「ありゃあ、通信の道具か?」

「携帯、ですね…私たちの世界の道具のはずなのに……」

「………にしてもなんか、ダチを飲みに誘うノリだな……オッサンいつもああ誘われるぞ」

「だ、大丈夫なんでしょうか……?」

「いきなり先行きが不安ですわ……」

 

「―――おー。じゃ、待ってるぜー。

 ……良し。これでオッケー」

 

「…何がオッケーなんですか……?」

 

 

 椎奈さんの呟きは、今ここにいる私たちのほとんどの総意だったと思います。

 

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 ナットの事情を察知した上で、監視の男を倒すナットの提案に全面的に協力した主人公。筆談による作戦会議の過程であやめにメモを見られてしまったが、咄嗟に犠牲者を演じる作戦を思いついた。なお、あやめが恐れていた罪悪感や良心の呵責についてもしっかりと彼女に説明し、ダメだったら彼女を巻き込まずにローリエとナット二人だけで激闘をしつつ、どさくさに紛れて監視の男を再起不能にするつもりだった。
 また、ナットの姪・エイダを取り戻すためにコリアンダーに助力を要請する。

関あやめ
 ローリエとナットの筆談を見て、ナットが姪を人質に取られていることを一足先に知ってしまったクリエメイト。おかげでローリエから『襲われたフリ大作戦』を提案される。下手に情報を漏らせば人の命が危なくなるこの状況で他の部員に相談できるはずもなく、また珠輝がナットの姪について心配していたこともあり、作戦の参加を希望した。

ナット
 姪・エイダが実は人質にされていた大地の神兵たるオッサン。最初から彼は姪を取り戻すために動いていた。SOSを出したこともその一例だが、もし最初の暗号で誰も気づかなかったとしたらもっと直接的な筆談でローリエかきららにヘルプを出していただろう。

きらら&フェンネル
 それぞれの思いでエイダを救出する手伝いを申し出た八賢者と召喚士。きららは純粋に「救う」決意で今まで戦ってきたため、エイダを助けようとすることに異論はない。むしろ「珠輝さんくらいの女の子一人救えないでソラ様を救えない」くらい思っていてもおかしくない。
 フェンネルはアルシーヴ命であるがゆえに、彼女の執政のスタンスもなお知っているので、無関係な非戦闘員の少女を本人の意志を無視して巻き込むような真似を良しとしない。彼女自身の騎士道を行く性格もまた、表立って反対しない理由だ。ただ、正直ではないので色々建前をたてているが。




△▼△▼△▼
きらら「エイダさんを取り戻す。その為に、私達はもう一度手を組みます。」

フェンネル「ローリエが呼び出した助っ人に、木刀に仕込まれた魔法。それらが、ドリア―テを騙すカギになると彼は言いました。」

きらら「そしてついに、嘘の依頼報告から始まるエイダさん奪還作戦が動き出します。」

フェンネル「サルモネラやビブリオ、セレウス……賊を操り、クリエメイトを害そうとした痴れ者・ドリアーテが―――ついに、わたくし達の前に現れます。」

次回『アダマンタイトは(ヒビ)割れない』
きらら&フェンネル「「次回もおた……あっ」」

きらら&フェンネル「「…………」」

ローリエ「オイイイイィィィィィィィ!!!? 最後の最後でトチんな!色々台無しだろうが!?」
▲▽▲▽▲▽

きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?(決戦投票編)

  • がっこうぐらし!
  • きんいろモザイク
  • 夢喰いメリー
  • ゆるキャン△
  • まちカドまぞく
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