きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

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こんにちは。ラパンがまったく引けなくてブチ切れそうな作者でございます。今回のお話でローリエの前世がかなり明らかになります。地味にフラグ回収回でもあります。これまでに撒いたフラグを確認しながら見てみると良いかもしれませんよ。




“大きな何かをを為すには、別の何かを切り捨てる覚悟と準備が必要だ。覚悟と準備をしていた人だけが、犠牲を最小限に出来るし最善な結果を出せる。”
 …木月桂一


第69話:女神と前世(むかし)のおはなし

 木月桂一とは、エトワリアに生まれた八賢者ローリエの―――いわゆる前世である。

 この事実を公表したら次に大多数が気になるのは「その木月桂一ってどんな人だったの?」という点である。

 そこで、その疑問に答える為、しばし時間を頂戴して木月桂一の人生を……振り返りながら話していきたいと思う。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 木月桂一は、東京都郊外の、とある中間層の家庭に生まれた。

 小さな企業の代表取締役であり家庭も顧みれる父と気立ての良い母、そしてかわいい弟・妹に恵まれ、桂一は幸せであった。

 

 公明正大で勤勉で、慈悲深い性格に育った彼は人を惹きつけ、小学校では人気者であった。

 だが……とある事件をきっかけに、彼は変わってしまった。

 

 

 中学生の頃、気の置けない親友であった少女が、いじめを苦に自殺してしまったのだ。

 彼はとても悲しんだ。そして、後悔した。彼女の苦しみにどうして気づけなかったんだと。どうしていじめを止めることができなかったんだろうと。

 桂一はすぐさま教師や自身の両親に法による徹底抗戦を訴えた。だが、二人や教師達の反応は芳しくなかった。

 

『桂一。彼女の件は心苦しいが……訴えても、勝てそうにないんだ。』

 

『いじめの主犯だった子たちね、政治家や弁護士や警視総監が身内にいるんですって。○○さんちは訴状を出すつもりらしいけど、受理されるかどうか……』

 

『木月君。君の親友を失って悲しい気持ちはなんとなく想像できる。でもね…これは、○○さん家の問題なんだ。交友関係には間違いなく君がいるが、それ以上じゃあない。ここは、大人たちに

任せなさい』

 

 そして、悲しいことに、両親の読み通りとなった。

 司法は、いじめの主犯になった女子生徒やそれに加担した生徒たちを、全て証拠不十分かつ未成年ということで不起訴としたのだ。不起訴になった生徒は、みな権力者の身内であった。

 

 ―――事の顛末を知った時、木月桂一は決意した。

 

 

『いつか必ず、親友を手にかけた連中を後悔させてやる』

 

 

 その日から桂一は、政治・経済・司法………それらを中心とした学問にのめり込んだ。暴力に出ることには限界があるし、何より法を捻じ曲げる手段を取った時点で復讐相手と同じであることを知っていたからだ。

 父の経営戦略にも関心を持ち、15歳から父の仕事を手伝う形で経営を実際に学び始めた。

 

 桂一は何かの才能に恵まれるような人間ではなかったが、人一倍の努力家であった。父親から教わった事や失敗をもって身に着けた教訓は決して忘れなかったし、日々の政治経済の勉強も怠らなかった。彼が打ち出した、長期を見据えた非道なまでな合理的経営に反して給与や保障はしっかりする体制で社員や一定層からの大きな人望を得ることとなった。

 父の会社はあっという間に功績をあげて…3年後には、海外から商売で莫大な金をぶん取れるほどに成長していったのだった。父はここまで成長できた息子の功績を認め、幹部の席を用意したが、桂一はこれを拒否。彼は、政治家を志すことになる。

 

『桂一。ずっと会社にいて欲しかったが…やはり、政治家になるんだな』

 

『ごめんなさい。でも、俺が決めた道だから』

 

 

 桂一の政治家デビュー自体は順調だった。父の企業を成長させる過程で得たコネクションが役に立ったのだ。

 だが、議員として当選する段階までは上手く行かなかった。もともと政治には無関心で怠惰な国民性のツケだ。新進気鋭の木月には、やや逆風だったのかもしれない。

 しかし、それ以上に厄介なのはライバルの妨害だった。自身の立場にしがみつき、甘い汁をすするためだけに、法に触れず、かつ悪質な妨害工作を平気な顔をして行える国会議員に、流石の桂一も辟易とした。

 

 

『こんなのがいるから、国は乱れるし国民の信用がなくなるんだな…』

 

 

 だが、木月桂一は至って冷静だった。

 妨害してくるのはどれも立場が上の議員たちばかり。無視を決め込んだらエスカレートするのが分かり切っている以上、どうやって反撃するべきか? それをひたすらに考え、煮詰めた。

 彼が選んだのは『予測による失脚』だった。つまり、相手の行動スケジュールを手に入れて予測し、誰にも気づかれないように失脚ねらいの工作を施したのだ。幸い、彼には海外の知り合いがたくさんいたから、情報戦ではアドバンテージがあった。

 

 例えば、個別のいち執務室の時計の針を一時間遅くした。

 その執務室を使っていた大物国会議員は、会食の時間に遅れ、焦って速度違反を犯した結果、5人が事故死する大事故を引き起こした。彼は最高裁で有罪判決を受けた。

 

 例えば、クリスマスの日に国道の工事を発注し、裏路地の数をしぼった。

 その国道をよく通る権力者の一人が、迂回した裏路地で浮浪者に刺殺される事件が発生した。被害者の男性は国会議員とコネのある弁護士だった。

 

 例えば、とある医者の薬の中身を一日分、すり替えた。

 その医者にかかっていた老年の男性が、心臓発作でこの世を去る不幸な事故が発生した。その男性は警視総監で、死後に数々の事件の隠蔽が発覚した。

 

 ちなみに、隠蔽された事件――中学生のイジメが少女を殺したという悲しい事件だ――が明るみに出た際、過激なマスコミによってイジメ加害者の名前と顔が報道され、彼ら彼女らの人生が破滅した事は言うまでもない。

 

 ……先に断っておくが、桂一とその一派は()()()()()()()

 ただ、時計のチェックをしたり、経費で仕事を発注したり、医療現場を視察しただけである。後ろめたい事は一切していない。

 

 ……ともあれ、ライバルを消し去―――否、ライバルがいなくなった木月桂一は、これまで立てていた復讐の目標以外に明確な目標を立てようと考えた。

 その時に思いついたのが………中学時代に親友に勧められてからというもの読み続けていた、『まんがタイムきらら』の漫画と、そこに住まう輝かしいばかりの少女たちであった。学生時代は細々と読んでいただけの趣味だったが、大人になって時間に余裕が出来たからこそこの趣味を嗜めたし、新たな発想に繋がったのだ。

 

『そうだ。どうせなら……あの子達が暮らしている世界のような、「優しい世界」を目指してみよう!』

 

 桂一は「優しい世界」を作るべく、すぐさま行動に移した。

 廃れた教育を見直して整備する事でイジメの温床を減らした。

 雇用の増加を目指すべく労働と家庭のバランスが取れるようにした。もちろん…雇用の数字確認だけではなく実態として生活できてるかを確認しながら。

 国や地方自治体を挙げて結婚を支援することもした。

 

 そういった成績が認められ、ついに木月桂一は、総理大臣の座まで手に入れた。……ちなみに、その頃には対立候補はもうほとんど牢獄か鬼籍に入っていたが、蛇足でしかない。

 

 国のトップの座を手に入れた木月桂一は教育と雇用といった、未来を担う若年層の育成に精一杯の力を注いだ。日本という国を、より良くするために。

 結果、かつて低迷していたGDPはめざましく成長した。人の行き交いは活発になり、人々は希望を持てるようになった。……今まで通り政治家の汚職発覚や恐ろしい殺人事件は後を立たなかったが、それでも昔よりはかなりマシになったものだ。汚職が発覚した政治家や殺人事件の被害者が尽く反木月派の人間達だったが、ただの偶然でしかないし、日本経済の復活という偉業に比べればこんなもの些事である。

 

 そうして、首相就任から2年。

 桂一の政策で希望の光が見え、そこへ向かう道に目処が立ち始めた………そんな時期に。

 

 

 

 

 ―――木月桂一は、とある悲劇に巻き込まれた。

 

 演説中の狙撃という、現代日本にしては物騒すぎる手口で重傷を負い、すぐさま病院に運ばれ………しかし、手術もむなしく帰らぬ人となってしまった。父親を失ったと言う青年が、『殺された親父の仇討ちだ』という逆恨みも甚だしい動機で起こした事件だった。

 

 ―――享年37歳。

 『優しい世界』を目指した桂一は―――皮肉な事に、冷酷かつ非情な人生を送った、誰よりも優しさに欠けた男であった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「………といったところです」

 

 場面を女神の墓地へと戻して。

 幽霊と化したユニ様は、俺とアリサを前にその人生を――――――俺の前世・木月桂一の人生を語っていた。

 

 ……そう。()()()()、だ。

 いやなんで知ってんのお前。名前のこともそうだけど、桂一(おれ)の人生知りすぎだろ。俺が俺自身の意思で話すってんならまだしも、赤の他人にここまで知られてるとは思わんだろーが。

 前世のことは、一度も、独り言でさえ呟いたことが……無いわけではないが、声量と場所くらい選んでたぞ。なのに何故そこまでバレている?……ま、まさか。

 

「あー……ユニ様? ちょっと思ってたことなんだけど、ユニ様ってもしかしてス……スのつく、ちょっと危ない人だったりするんですカルヴァンっ!!?

 

「誰がストーカーですか!失礼ですね!!」

 

 再び質量のあるビンタを貰い、俺の頬に紅葉の跡が出来たのを確認してから、ユニ様とアリサは話し始めたのである。

 

 

「それにしたって、おかしいですよ。

 その…ローリエさんの前世?をなんで知っているんですか?」

 

「……女神が異世界を観察していることはご存じですね?」

 

「「え?」」

 

 いきなり当たり前のことを言う女神様。

 そもそも聖典ってのは、女神による『異世界観察記録~物語風味~』なのだ。

 ……ん? いや、ちょっと待て。いまその話が出てきたってことはつまり―――

 

「…覗いてたのか? 俺の人生を…」

 

「はい。といっても、女神候補生の頃、異世界を観察する練習中にたまたま見てしまった光景でしたが……」

 

 なるほど。それなら納得だ。

 確かに、『きららファンタジア』にはその設定はあるし、何もおかしくはない。

 エトワリアと観察中の世界の時間の流れの問題も、あんまり気にしなくてもいいだろう。

 

「でも、俺みたいなヤツの人生覗いてても楽しくないと思うぞ?」

 

「はじめはただの偶然でした。でも、確かに生前、この目で見たのです。

 あなたが、私生活で聖典を愛でる姿を。

 …そして、己の理想の為に他者を排除する姿も」

 

「ひ、ヒトを独裁者みたいに言わないでくれないかな~。

 俺はただ、国をよりよくする仕事をしてただけだぜ?」

 

「その結果、ライバルを逮捕に追いやったり死の原因を作ったりしたのですから、それは嵌めているのと何ら変わりません」

「下手な独裁者よりタチ悪そうな感じでしたけど」

 

「うっ………!」

 

 そ、そんなにイヤな手段だったかな?

 嵌める…っつたって、ちょっと道端に小石を撒くようなモンだろうに。

 小石に躓いた結果、どこへ転がり落ちようが知ったこっちゃないってだけで。

 ………ダメっぽいなぁ。日本では許されたんだけど。

 

「……仕事中の貴方は褒められるものではありませんでした。

 でも……聖典たちへ向けられる貴方の熱意もまた、本物だったのです」

 

「!」

 

「だから私は…もっと昔に貴方と話したかった。

 貴方のような人なら、反対する人間を排除することなく、上手く折り合う道もあったはずです。

 ……聖典のような『優しい世界』を作るためなら、尚更…」

 

「そこについては言い訳はしない。

 何を言おうが、決めたのは俺だ。

 暗殺されたのだって、俺の注意と人徳が欠けていたからだ」

 

 自分の生き方に責任を持つのは当然のことだ。仮に責任を満足に持てなかったとしても、批判を恐れて逃げてはいけない。……それこそ、今世の幼少期みたいなことは二度とあってはならないんだ。

 

 

「その心意気だけは立派だと思います……話を戻しますね。

 私は木月桂一さんを観察していましたが……

 ちょっと目を離してる間に桂一さんが殺された事を知って、焦りました。

 貴方が死んでしまえば、二度と会話の機会はなくなってしまうから」

 

「ユニ様、『コール』なら、死んだ人間でも呼べるんじゃ……?」

 

「アリサ、『コール』を使えるのは召喚士だけだ。そして、ユニ様が生きていた頃、召喚士は現れなかった……そうだな?」

 

「はい。

 どうしても桂一さんと話がしたかった私は……許されざる禁忌に手を染めたのです…」

 

「まさか……『オーダー』…!?」

 

「…………そうです。私は極秘裏に『オーダー』を使いました。

 呼び出す対象はもちろん、木月桂一さんです」

 

 

 何たることぞ。この先代の女神…ユニ様が、まさか『オーダー』に手を染めていたとは。

 俺でさえ知りえなかった事実だ。もちろん、『きららファンタジア』にもそんな設定はない。

 

 

「……でも、ユニ様が『オーダー』を使った時、桂一…つまり前世の俺は死んでいたハズだ。

 そんな状態の人間を……死んだヤツを呼び寄せることなんて、できたのか?」

 

「結果は半々、といったところです。

 木月桂一さんの魂を呼び出すこと自体には成功しましたが…それは半壊した魂で、とても会話できる状態ではありませんでした」

 

「それで、どうしたんですか?」

 

「元の世界に戻すことも魂の状況からしてほぼ不可能だろうと思った私は―――その日、たまたま参拝に来ていた妊婦さんのお腹に触れて半壊の桂一さんの魂と赤ちゃんを融合させました」

 

「!!」

 

「その妊婦さんの名前は『オリーブ・ベルベット』。覚えがあるんじゃないかしら?」

 

「オリーブ……?」

「俺の母親だ……!!」

 

 

 つまり、ユニ様が木月桂一の魂を融合させた結果、俺と言う前世の記憶持ちの転生者に生まれたってことだったのか。

 なんだか、思わぬところで思わぬ秘密を知ってしまったなぁ。

 

 

「しかし、『オーダー』の代償が、無視できるものであるわけがなかったのです」

 

「……あぁ、『オーダー』はエトワリアに異変を起こしてきたし、術者のクリエを大幅に削る。命を縮めるといっても過言じゃあない」

 

「はい。木月桂一さんを呼び出した代償は……私自身の体が脆くなること以外にも出ていました。

 例えば……貴方の魔力が封印されていたこと」

 

 

 封印? イヤイヤちと待ってくれ。

 

「俺自身が魔力を十分に扱えないのは、俺の属性が安定していないからだぜ。

 魔力総量ばっかりは、ここではどうにもならない問題だろう?

 だから俺は、前世の世界の武器を再現したし、戦略で敵の裏をかいて戦ってきた」

 

 そう。生まれてこのかた、純粋な魔法は苦手だったのだ。だからこそ魔法工学に力を入れて、『パイソン』や『イーグル』、ニトロアントやルーンドローンまで作り上げた。

 この選択に間違いはないはずだ。あったら結構凹むぞ。

 

「あぁ、別に今までの貴方を責めてる訳じゃあないのです。

 ただ、あの女と……ドリア―テと再び戦うのでしょう?

 だったら、手札は多いほど良い、という話なんです」

 

 ようやく弱点のヒントは掴めてきたが、確かに文字通りの不死身は厄介なことこの上ない。

 だが、手札とは? と考えているとユニ様が言葉を続ける。

 

「そもそも、ローリエさんは『魔人族』という単語を知っていますか?」

 

「知ってる……普通の人間よりも、使える魔法の属性が多い人種をそう呼んだそうだ。感情で目の色が変わるのが特徴らしい。そんな特徴や、多くの魔法が使えることを恐れられて迫害された、とか」

 

「あなたはその魔人族の血を引いている。というのに、使える魔力が明らかに低い。

 コレは矛盾しています。魔人族が、魔法に適性がない訳がない。

 ……その理由は、もうなんとなく分かりますか?」

 

 ユニ様のそんな言葉にハッとする。

 今までは、「まあそんなこともあるのかな」って思ってたし、そもそも魔人族について知らなかったけれども、今は違う。

 さっきの話を聞かされて、思い当たる節がないわけがない。

 

「日本人の魂を混ぜたから……!」

 

「おそらく。少なくとも、純粋な魔法発動の大きな枷になっているのは間違いありません」

 

 

 なるほど。前世で住んでいた日本には、当然ながら魔法なんてシロモノはなかった。

 37年間で培われていた価値観が、今なんらかの形で足を引っ張っていてもおかしくはない!

 

 

「ちなみに、その『大きな枷』を、外すことはできないのか……?

 ドリアーテと決着つける時にそれに振り回されるとか嫌だぞ」

 

「今すぐに、とはいかないと思います。

 魔法の実感を掴みながら、実践を積むしかない……ですが、そろそろ外れると思いますよ」

 

「そうか?」

 

「今まで、戦闘経験は積みましたか?」

 

「ジンジャーとカルダモン、フェンネル相手に山ほど。

 ガチの戦いでとなると、アリサときららちゃん、ビブリオにオッサン、ドリアーテの時くらいか。あ、あと盗賊どもを薙ぎ倒した事もあったっけ。

 サルモネラとセレウスとの戦いは微妙だな。狙撃しただけだし」

 

「なら、限界突破まであと一歩のところまで来ているかもしれません。

 油断せずに努力を続ければ、応えてくれます」

 

 

 あと一歩、ねぇ。

 まあ、油断せずに行こう。

 急ごしらえだが、アリサあたりに見てもらうのも悪くないかもな。

 

 

「あの………ローリエ、さん?

 それとも……桂一さん? もしくは、総理とお呼びした方が良いですか?」

 

「アリサ?」

 

 アリサに呼ばれたと思ったら、なんだか距離感がおかしい言動になっている。

 おい、本当にどうした。目が泳いでるし、敬語が変だぞ。

 

「いや、なんだか知られたくないことまで知ってしまったと言いますか。

 まさか貴方が、かつては偉い人だったとか知りませんでしたから……」

 

「総理って知ってるのか?」

 

「日本を統治するトップってことは…」

 

「………間違ってないけどな」

 

 

 だからって、そんな対応されたら困る。

 確かにそりゃ、前世の話なんて積極的にしなかったさ。

 でもそれは、『言ったところでまず信じないだろう』し、『証明する手段が俺の証言以外にない』し、なにより『もう終わったこと』だからだ。

 仮に言ったとしても『ハハッ、嘘乙』みたいな反応しか想像してなかった。

 今のアリサみたいに、思いきり信じられて変に畏まられると、逆にどうすりゃいいか分からん。

 

 

「……なぁ、アリサ。

 今、お前の前にいるのは誰だ?」

 

「え? あの、どういう意味―――」

 

「『ローリエ・ベルベット』か?『木月桂一』か?

 今の俺はどっちに見える? って聞いてんの」

 

「え………それはもちろん、ローリエさんですけど」

 

「なら、それでいいじゃあないか。

 そもそも、木月桂一はもう死んでるんだぜ? 今の俺は、八賢者ローリエだ。

 だから、変に畏まるのはやめてくれ」

 

 

 ありのままの心を、アリサに伝える。

 それを聞いていたアリサは、距離感を掴みきれていないような戸惑いがなくなり、表情が晴れた……ような気がする。

 

 

「……分かりました。そういう事でしたら、これまで通りの接し方をさせていただきます!」

 

「ありがとう、アリサ」

 

 

 アリサの気持ちの整理が終わったところで、俺は彼女にある「お願い」をした。

 その内容はもちろん、俺の足を引っ張る『枷』を外す手伝い。アリサは、喜んで了承してくれた。

 しばらく修業の時間の都合上、神殿には戻れないかもしれないが……来るべき決戦のためだ。

 

 きっときららちゃん一行は、間違いなく神殿に着くだろう。

 アルシーヴちゃん達も、『オーダー』は諦めない。

 だが……ドリアーテは、間違いなくその戦いに首を突っ込むハズだ。それも―――漁夫の利を得られるタイミングで。すべて上手くいった暁には、彼女は躊躇なくエトワリアを滅ぼすだろう。

 

 しかし。そう上手くいくと思うなよ?

 首を洗って待っていな、ドリアーテ。

 

 




キャラクター紹介&解説

ローリエ/木月桂一
 転生者:オリジンを知り、そこでまさかの強化フラグを得た拙作主人公。前世は褒められた仕事はしていなかったが、聖典への熱い想いをユニに気に入られ、エトワリアに『オーダー』される。だがそもそも、『オーダー』は負担の大きい魔法。死にたてホヤホヤで魂オンリーの桂一が耐えきれるはずもなく魂は半壊。ユニの手によってエトワリア人の妊婦の中の、赤ちゃんと融合され、今に至る。
 幼少期に盗賊相手に逃げたのは、ローリエにとっても桂一にとっても正面切って戦う経験がなかったから。

アリサ
 元女神のアウティングによってローリエの前世の存在を知ってしまった呪術師の少女。彼女としてはオカルトには耐性があり、なおかつ魂に関わる天職(呪術師)であるためある程度はオカルト話は信じるが、前世となると流石に鵜呑みにはしない。元女神の幽霊がマジメに話したからこそ彼女は信じたのである。

ユニ
 アウティングという、情報社会においてあんまりよろしくない真似をしてローリエの前世&誕生裏話を披露したCV早見沙○の元女神。だが、ローリエの魔術起動に枷がかかっていることを予想立てて彼の強化を齎したり、()()()()()()()()()()()()()と、ローリエにとっては利益になる情報も与えた。今回では死の状況について書けていないが、この先にて必ず書くだろう。少なくとも、この物語では女神ユニの死はアッサリ終わらせていい話題ではない。



木月桂一の人生
 木月桂一は、恵まれた才こそなかったが幼い頃から努力を続けた男であった。
 血族が経営していたとある企業の代表取締役にわずか20歳で着任。画期的な発明と経営戦略で外国から資産をこれでもかと巻き上げ、あっという間に企業をトップ入りさせた。長期を見据えた非道なまでな合理的経営に反して給与や保障はしっかりしたので社員や一定層からの人望はあった。私生活では、まんがタイムきららの漫画と『きららファンタジア』を好んだ。
 30歳ごろから企業を兄妹に任せて政治に進出。きらら漫画のような『優しい世界』を作るため、腐敗の温床たる環境を正し、腐敗政治家を片っ端から牢屋に放り込むか闇に葬ってきたが、あまりに非道とも言うべき合理的手段が一部の反感を生む。だが反論の余地なきド正論を武器についに総理大臣にまで登りつめる。政治が軌道に乗るかと思ったところで過激で向こう見ずな活動家の凶弾に倒れてしまう。享年37歳。
 木月桂一の功績は、腐敗していた日本政治を一新させたという点では評価が出来るだろう。反対派の暗殺によって長期政権こそ叶わなかったが、もし彼がトップの座を握り続けていたならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()多くの日本国民の生活水準や日本自体の国際的地位が大いに上がっていた事には間違いない。現代版織田信長。

木月桂一と『オーダー』
 波乱万丈ともいうべき木月の人生を人知れず覗く存在がいた。女神ソラの前任女神ユニ(当時の女神候補生)である。ユニはたまたま観測した世界にいた人間・木月桂一の人生について複雑な感情を持っていた。自分のように聖典を愛しているのは良いのだが、反対派の人間には容赦のない木月と話がしたかった。しかし、ユニが目を離している間に木月は殺されてしまう。「このままでは木月と話す機会が永久に失われてしまう」そう思ったユニは大慌てで極秘裏にオーダーを行った。しかし、呼び出されたのは肉体から離れ半壊状態の木月の魂のみ。壊れた魂だけでは会話さえもできず、元の世界に帰す事も不可能なので、仕方なくユニはその日に参拝していたローリエの母に宿る新たな命と木月の魂をこっそり融合させたのである。これが『転生者ローリエ』誕生の経緯である。



△▼△▼△▼
ローリエ「…知らなかったなぁ、俺誕生の経緯。まあ思えば神様なんかには会ってないしな」
ユニ「エトワリアには女神しかいませんからね」
ローリエ「うわあああああああ!!!? ユニ様!? なんで出てきてるんですかねぇ!!!」
ユニ「あら、死んでちゃなにか問題でしたか?」
ローリエ「問題しかねーだろ!! オバケは大人しく俺以外の誰かを呪っててください!」
ユニ「誰が怨霊ですか! …とにかく、次は貴方の生徒さんの出番ですよ!」
ローリエ「え、ランプの?」

次回『わたしがいる意味』
ユニ「楽しみに待っててくださいね!」
▲▽▲▽▲▽

きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?(決戦投票編)

  • がっこうぐらし!
  • きんいろモザイク
  • 夢喰いメリー
  • ゆるキャン△
  • まちカドまぞく
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