きららファンタジア 魔法工学教師は八賢者   作:伝説の超三毛猫

99 / 131
ま、間に合ったー! コレが正真正銘、2020最後の投稿です!
今年も拙作を読んでいただき、ありがとうございます。
節目の年にしては暗い話題も多い年ではありましたが、暗さに負けないニュースもありました。300億にして日本一の男、煉獄さんのおかげですね(笑)! 私も、執筆を続けてきたつもりです!
それでは皆様、良いお年をお過ごしください!そして、2021年も頑張っていきましょう!


エピソード9:エトワリア学園情報処理部~寝込みを襲うのは紳士のやる事じゃない編~
第72話:ハッカ始動


 

 フェンネルによって、召喚士との戦いは中断を余儀なくされた。

 そして私達は今、転移魔法によって神殿へと戻ってきていた。

 

 

『申し訳ございません、アルシーヴ様……これ以上はお身体が持ちません!

 私の役目はアルシーヴ様をお守りすること。叱責は覚悟の上です。

 ここは、どうか退いてください!』

 

 

 …別に叱責するつもりはない。私の身を案じてくれたなら猶更だ。フェンネルはフェンネルの為すべきを為したまで。

 フェンネルから一通り言ノ葉の樹内で起こったことの報告を受けた後は、彼女に待機命令を出して一旦下がらせる。

 

 それよりも私が気になるのは……ローリエについてだ。

 フェンネルによると、戦いに巻き込まれたという傭兵のナットとその姪エイダの護送の為、港町方面に向かったとのこと。もし転移魔法を使用したのならば、アイツが帰ってくるのが翌日になる。だが、それでは遅いのだ。

 

 もうすぐ、召喚士たちが頂上の街へやってくる。その際にローリエを向かわせるつもりだった。

 アイツなら……一度召喚士たちを退けた彼ならば、必ずや邪魔者を排除してくれるだろうと。だが、肝心のアイツは今港町にいる。現地調達で魔力を回復させてでも戻ってこさせる必要があるのだ。でも、彼との通信手段は一つしかない。

 仕方ない。コリアンダーを探して、ローリエに繋がる通信機を借りるしかない。

 

 

 

「コリアンダー、いたか。」

 

「!? アルシーヴ様!!? どうしてここに……」

 

「通信機を貸してくれ。ローリエに連絡がしたい」

 

 

 ローリエとコリアンダーの部屋に向かい、部屋内にいたコリアンダーから通信機を借り、周りに誰もいない場所まで移動してスイッチを入れる。

 

 

『はい、こちらアリサです。』

 

 アリサ、だと? 確かローリエと共に行動することを志願した呪術師だったか。

 しかし、なぜ彼女が通信機に出てくるんだ?

 

「アルシーヴだ。ローリエはいるか? 至急頼みたいことができた。お前たちが今どこにいるか教えてくれ」

 

『え、えー、と………女神の共同聖墓、です……』

 

「なんだって?」

 

 

 女神の共同聖墓……なぜ今そんなところにいる?

 あそこは言ノ葉の樹の隅にある、かつて神殿にて世界の為に尽くした筆頭神官や女神の方々が眠る墓地だぞ。今この状況で墓参りに行っている訳ではあるまいし、それ以外の目的など考えられない。

 

「……少し、状況を説明してくれるか?」

 

『わかりま―――あっ、ローリエさん……』

『こうなった状況は俺から話すよ』

 

 アリサから通信を変わったローリエが話し始める。

 神殿への転移の途中で『オーダー』の影響が出たからか、アリサは聖墓に、ローリエは樹の中に分断された事。

 フェンネルや召喚士たちと行動を共にしたこと。

 そこで出会った刺客・傭兵ナットと、その事情のこと。

 人質を取り返すため、不燃の魂術を用いた謎の女ドリアーテと戦ったこと。

 ナットと人質を護送したあと、共同聖墓に転移されたこと。

 そこで―――先代女神ユニ様と出会い、魔法の稽古を付けてもらっていること。

 

 

 ………『オーダー』の影響がそんな所に出ていたとは予想外だったが、ナットと人質を贈り届けた辺りまでは信じても良いかもしれない。フェンネルからの報告とも一致するしな。

 だが、先代女神ユニ様とは……? 彼女は既にお亡くなりになっている筈だが……?

 

 

「…お前の帰りが遅い理由は理解した。

 だが、ユニ様にお会いしただと? 私がそんな言葉を信じると思ったのか?」

 

『嘘じゃないんです! 現に、そこにいて、筆頭神官さまに話しかけてるのに…!』

『アルシーヴ、お久しぶりでーす! 葬式で人魂取っちゃったぶりだけど、元気ですか?』

 

『え゛ッッ!!? ユニ様そんなことしてたの!? 何故ッ!!?』

 

「……お前達は何を言っている?」

 

 

 切羽が詰まりつつあるこの状況で、冗談を言っているのか?

 仮にローリエだけならそう断じて今すぐ戻ってこいと叱りつけていたが、アリサまでローリエの悪ふざけに乗るとは考えにくい。しかし……

 

 

『ユニ様のことは置いておくにしても、だが。俺自身の魔法の稽古だけじゃあない。……ユニ様の死が事件性を帯びてきてな。事情聴取…もとい詳しく調査を行う必要が出てきたんだ。』

 

「どういうことだ?」

 

『ユニ様が病気で崩御したんじゃなくって誰かに殺害された可能性が出てきたんだよ』

 

「!!?」

 

 

 ゆ、ユニ様が殺されたかもしれない、だと!?

 あり得ない! ソラ様が就任した直後に亡くなられたからといって、ちょっとやそっとで殺人を疑うなんて、話が飛躍しすぎている。

 

 

「アリサ、本当か?」

 

『え、あ…は、はい。』

『ユニ様が残したものの中にね、明らかに重要な証拠があったんだ。「病気で崩御した」って事実が覆るレベルのものがな』

 

 

 そういうことならば、すぐに戻ってこれないと言う理由も分かる気がする。「魔法の稽古」云々はその空いた時間で行うついでのようなものだったんだろう。まさかユニ様が霊になっているとかではないだろうが。

 だが、それでもローリエ達には戻ってきて欲しいのだ。

 

 

「………その重要な証拠については分かった。だが……それは、『例の件』とは関係ないだろう」

 

『!』

 

 

 『例の件』―――それは、ソラ様が呪われてしまった事件のことだ。私が封印しなければ、とうの昔に命を落としていたことだろう。そして、ローリエにはこの件の捜査を依頼していた。

 そして……ソラ様を呪った実行犯を突き止めてくれた。その後起こったビブリオによる『オーダー』も、ビブリオを生け捕りに出来なかったものの、証拠を大量に持ち帰る金星を挙げた。そして、ジンジャーの協力のもと、それらの証拠を裏付ける作業も終わっている。

 故ソウマ氏の発言に出ていた脅迫者の女の謎が残っている以上、捜査は終わっていない。こう言えば……戻ってきてくれる、ハズだ。

 

 

「その証拠、持って帰ってきて欲しい。もちろん持って帰れる代物ならば。

 今は何よりも、『オーダー』とその障害となる召喚士を排除するのが最優先だ」

 

『…ユニ様殺害事件と「例の件」に()()()()()()()()()()()()、と言ったら?』

 

なっ!!?

 

 

 ローリエの二度目の衝撃発言に声が出てしまい、咄嗟に周りを確認してしまう。

 ………よし、誰もいない。コリアンダーにも話はまったく聞かれていないな。し、しかし…!

 

 

「どういうことだ…!?」

 

『アリサのお兄さんの事はビブリオのオーダーの時に聞いたはずだ。彼に女神を呪えって指示したヤツと今回襲ってきたヤツの共通点があったから怪しいと思ってたんだが………確証が持てる証拠を掴んだんだ。』

 

 

 なんだか、話がだんだん壮大になっている気がするぞ……

 ソウマ氏を脅した者とフェンネルの報告にあった襲撃者に共通点があって、怪しいと踏んでいた? つ、つまり………

 

 

「…フェンネルから傭兵ナットの人質奪還戦のことは聞いている。脅迫者と思われるドリアーテという女の事も、そいつが不燃の魂術(禁忌)を身に宿していたことも。

 ソウマ氏の最期の言葉と照らし合わせるに、ソウマ氏を脅した人物とナットを脅した人物が同一である可能性は考えられるが………」

 

『そうだ。

 アリサのお兄さんに殺人教唆した奴、オッサンを人質取って脅した奴―――そして、先代女神ユニ様を殺した奴。

 俺達二人は………この三つが同一人物による犯行だと見ている。』

 

「なんということだ………」

 

 

 完全に予想外だ。どうやってどんな証拠を掴んだのかは分からないが、もし事実だとするならばそいつは完全にこのエトワリアを滅ぼしに来ているではないか。

 ソラ様にした事を初め、ソウマ氏やナットへの脅迫、殺害の唆し、ソウマ氏の口封じ。ビブリオや下手するとサルモネラやセレウスとの繋がりもありそうだ。

 これらの罪、生半可では償えないぞ………!

 

 

『だから、最後の調査のためにすぐさま神殿に転移、って事はできないかな』

 

「仕方ないな。そういう事なら、彼女に頼むしかないか……」

 

『ハッカちゃんを動員する、ってんなら俺とアリサが補佐に入ってもいいか?』

 

 ?? なんだか、奇妙な提案だな。神殿にはすぐ転移できないと言った筈なのに、ハッカの補佐には入る……証拠はどうしたんだ?

 

 

『証拠の事なら問題ない。持ち運べるものだからな。ただ時間が欲しいんだ』

 

「そ、そうなのか。しかしだな―――」

 

 

 それにしたって、ハッカの補佐になど………いや、待て。

 先程、黒幕の可能性が色濃くなったばかりではないか。その状況で、ハッカ一人……いささか、危ない気がしてきた。

 ハッカの夢幻魔法は強力だが術者の負担が大きい。それに、発動したら最後、解除するまで()()()()()()()()ために()()()()()()()()()

 もし召喚士達やクリエメイトの意識を夢幻魔法で閉じ込めている間に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()………??

 それを考えると―――誰か付けた方が良さそうだな。

 

 

「頂上の街にてオーダーと夢幻魔法を行う。巻き込まれないよう注意しつつ、彼女の護衛を頼めるか? ……コリアンダーもつけておくが、3人のほうが安心だろう」

 

『流石、話が分かるぜアルシーヴちゃん!! そういう所も大好きだよ』

 

「……………お前は何を言っているんだ、馬鹿者」

 

 

 ローリエの聞き飽きた口説き文句を流しながら通信を切り、彼女の部屋に向かう。無論、コリアンダーも一緒だ。

 さぁ、切り札を切る時だ。

 

 

「ハッカ、私だ」

 

「どうぞお入りを」

 

 

 許可を得て入れば、いつも通りの彼女が。

 ハッカの夢幻魔法。危険だから秘匿していたが、召喚士が神殿の目と鼻の先まで迫り、黒幕の女の謎が明らかになり始めた以上、ここが良いタイミングだろう。

 黒幕の方はもうしばらくローリエ達に頼ることとなる。まずは、邪魔をする召喚士を排除しようではないか………!!

 

 

「これより八賢者ハッカ、神殿事務員コリアンダー両名に指令を言い渡す」

 

「――何なりと。」

「―――えっ!? お、俺もですか!!? は、はい!!」

 

「ハッカ、夢幻魔法の使用を許可する。その力を以って、召喚士を排除せよ。

 コリアンダー、お前はハッカの補佐につくように。あらゆる手を使い、ローリエとアリサの力を借りて、召喚士を始めとした脅威を退けよ。」

 

「「―――はっ!!」」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 ……通信が切れる。

 さっきまで魔法の枷を外す修行(3時間で終わる超極悪コース)が終わって間もなくの通信だったためにビックリしたけど、なんとかなったぜ。

 

 アルシーヴちゃんから帰還命令が下った時はかなりビビったが、「女神ソラ呪殺未遂・ナットの脅迫者及び先代女神ユニ殺害事件の犯人が同一人物である証拠を見つけた」と伝えることで許しを得られてホッとした。

 

 ……ウソじゃあないぞ。肝心のその証拠というのは、ユニ様(亡霊)の証言だ。彼女の許可も取って録音も完了している。

 アルシーヴちゃんへの報告だって『ユニ様が残したもの(本人の魂を含む)の中に、明らかに重要な証拠(証言)があった。「病気で崩御した」って事実が覆るレベルのものが』と言ったのだ。

 

 

 ユニ様の証言。内容はこうだ。

 

『ある日、お昼寝中に呪いをかけられた感覚で目を覚ましたの。

 起きると同時に攻撃したら、そこにいたのはオレンジの長髪の女が炎で防御している姿だった。翼を広げた鳥と紅宝石(ルビー)が特徴的な杖で放出した炎を消すと、どこかへ転移してしまった。

 誰かの助けを呼ぼうとしたけど、そこで声が出せないように魔法をかけられていて、直後に力尽きたわ。』

 

 この証言、ユニ様が呪われてから力尽きるまでの死の間際を的確に証言した決定的なものだ。ぶっちゃけ、この事を聞いて二人ともぶったまげたからな。

 これが事実なら(というかこんな物騒な嘘をつくメリットなど一切ないだろうが)、ユニ様の死因が病気ではなく他殺であることが証明される。「炎で防御した」と証言していたが、或いは直撃こそしたものの、『不燃の魂術』で治癒している最中を見たのかもしれない。

 そして、俺の記憶を元に描いたドリアーテの人相書を見たユニ様が「私を襲った人です!」と言っていたことから、先ほどの三つの容疑が同じヤツに向くに至ったのだ。

 

 

 ……とにかく、俺達の行動方針は決まった。

 頂上の街に向かい、ハッカちゃんと合流する。

 その後は……まぁ、アリサと上手くコミュニケーション取りながら、ハッカちゃんに無理をさせないこと、かな。彼女、原作ではきららちゃんに自分の記憶を見せようとしてアルシーヴちゃんに当て身されてたし。

 

 

「アリサ、これからの方針は決まった。頂上の街に行って、八賢者ハッカと合流する。」

 

「分かりました。ドリアーテの出方が分からない以上、賢者といえども二人以上で行動する、ってことですね」

 

「……あぁ、そうだな。その通りだ」

 

 

 前回はオッサンを人質取って『依頼』したドリアーテだけども、アレが最後の手と考えるのは、ちょっと違うだろう。

 確かにナットは強かった。俺とフェンネル相手に余裕で立ち回ってみせた。だが……信頼関係というものに欠けていた。エイダという人質を取って脅迫していたんだ。皆無といってもいい。人を信用しないドリアーテの奥の手―――すなわち『もっとも信頼できる手下』かなにかがまだいるのかもしれない。セレウスかもとは考えたが、アレはドローン越しにも我が強すぎると思ったしな。

 

 それに、もし、だが。ハッカちゃんが夢幻魔法できららちゃん達を閉じ込めてる最中に現実世界でドリアーテの残った配下に襲われたらシャレにならねーしな。

 もっとも、必ずしも襲ってくるとは思えないし、ドリアーテにどれだけ手が残されてるか分かんねーが、念は入れておいた方が良い。

 

 

「…そろそろ、行くのですね。」

 

「ユニ様」

 

 

 墓石の隣のユニ様の霊は、さっきの俺達の通話と会話を聞き、うっすらと微笑む。

 

 

「私は、ずっと待っていました。私の声を生きてる人に届けることを。そして…あの者を倒してくれる者を。

 ……必ず、ドリアーテを討ち取ってきてください」

 

 信じています、とはやみんボイスでそう願う彼女が、日光に照らされて光り輝く。

 天の川のような綺麗な光の数々を陽が昇った時間帯に見れる事に言葉を失いつつも、かろうじて我を取り戻した俺は、ユニ様の手を取って文字通り透き通り輝く手に唇を落とした。

 

 

「…約束します」

 

 

 それだけ言って、アリサを引き連れ、頂上の街へと進んでいく。

 振り返りはしなかったが、亡霊となった元女神様が手を振って健闘を祈ってくれているだろうと、確信していた。

 

 

「……ローリエさん、歩けるんですか?」

「歩くだけで超激痛だけど大丈夫だ」

「…途中で倒れられたら困るんですけど」

 

 やめろ、修行を思い出させるな。




キャラクター紹介&解説

ローリエ
 元女神ユニの証言を録音し、アルシーヴから猶予を貰ってユニ様と約束をした主人公。また背負うものが増えたが、本人はそれを苦とも思わない。この後、ハッカ&コリアンダーと合流するようだが…?

アルシーヴ
 ローリエの有能さと先代女神の死の真相に衝撃を受ける筆頭神官。ソラ襲撃犯に裏がいたことは既に知っていたし、ナットの件はフェンネルから報告を受けていたが、先代女神の死が殺人事件で、しかもうっすらと見えていた黒幕が繋がっていると知り、動揺を隠せなかったようだ。原作とは違い、第三勢力を警戒してハッカにコリアンダーをつける。

ユニ
 実は他殺によって死んでいた先代女神。幽霊になってでも自分の言葉を誰かに届けようとしていた。自分の死の間際のことをローリエに証言し、必ず罪を暴くように約束をもちかけた。最後に消えていくような演出があったが、ただ陽の光に照らされていただけである。



△▼△▼△▼
ハッカ「始まった我が任務。それは……ローリエとの共同任務であった。」

ハッカ「彼は、私の人生を救ってくれた人。そして―――」

ハッカ「―――己の罪の象徴。」

次回『少女ハッカのこゝろ』
ハッカ「………次回を待たれよ。」
▲▽▲▽▲▽

きららファンタジアに登場する作品群の中の、次の作品の中で、最も皆様が好きな作品は?(決戦投票編)

  • がっこうぐらし!
  • きんいろモザイク
  • 夢喰いメリー
  • ゆるキャン△
  • まちカドまぞく
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。