転生者が奇妙な日記を書くのは間違ってるだろうか   作:柚子檸檬

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〇月×日 

 

 突然だが両親からノートと筆を買ってもらったので日記をつける事にした。親父には「三日坊主になるなよ」とからかわれたが、文字を書くのに慣れるという意味合いもあるからしばらくは続けるつもりだ。

 何を書いて良いか分からないし、まずは自分自身の事を書くことから始めよう。

 俺の名前はジョシュア・ジョースター、両親やご近所さんからは愛称でジョジョなんて呼ばれている。ちなみに今年で11歳になる。

 いや、前世を含めたらもう30過ぎのおっさんになるのか。

 ピッチピチの20歳だった俺はバイト帰りに車に撥ねられて死亡。彼女もいなかった。成人式にも出られなかった。両親にも碌に孝行してやれなかった俺は失意の内に死んだはずなのだが、そんな俺を神は見捨てなかった。

 何か可哀想だからという理由で特典つけてファンタジー世界へと転生させてくれるそうだ。

 ぶっちゃけ特典いらないからそのまま元の世界に送り返してくれてと頼んでみたものの無理と言われてあえなく断念。

 このまま死んで無に帰るよりはマシかと考えた俺は妥協してファンタジー世界へと転生する事になった。

 ちなみに貰ったのは生前に好きだった漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する幽波紋(スタンド)全部。

 せめて一つに絞れと言われるかと思ったが、何も言わずにポンとくれた。

 こいつは怪しい臭いがプンプンするぜーーッ。ゼウスとかインドラみたいに軽く世界を滅ぼせるようなヤバいのが当たり前のように闊歩していても驚かんぞ。

 などと思いつつもう10年以上経過したけど別に世界が危機に見舞われるようなことは無い。精々ゴブリンが村の野菜や家畜を奪おうとやってくる程度が関の山。そのゴブリンも村の力自慢の男達によって追い払える程度の力しかない。

 別にバーン様みたいなやべーのに世界を混沌に陥れて欲しいわけじゃないけど、せっかくファンタジーな世界にいるんだし英雄譚に出てくる登場人物達がするような冒険とかしてみたい。

 スタンドを使った実戦をしてみたくてゴブリン退治を手伝いたいと頼んでみたら子どもにはまだ早いと断られる始末。

 これじゃあ自主練をひたすら繰り返すしかないじゃあないか。

 スタンドについてこの10年間色々と試してみて分かったのは

 

 1、スタンドは他の人間には見る事が出来ない。

 2、ノトーリアスBIGやチープトリックのように未確認のスタンドはあるものの、おそらくすべてのスタンドを使用する事は出来ると思われる。例外はエコーズやタスクのような成長するタイプのスタンド。あれらは自身が成長する、もしくは条件を満たさなければ使えないだろう。

 3、スタンドは一度につき一体までの制約がある模様。別のスタンドを使う場合は今使っているスタンドを引っ込める必要がある。つまりシルバーチャリオッツとアヌビス神のコラボは実現不可。現実は非情である。

 4、ホリイさんの時のように暴走はしないものの、スタンドパワーが不足しているせいか本来の持ち主程の力はまだ発揮できないし、強力なスタンド程使い続ければ精神力の消耗は激しくなる。例をあげると、ザ・ワールドであれば時間停止は0.1秒が限界で連続での使用は不可能。D4Cに至っては次元の壁を越えられない。

 

 こんな感じだ。

 実際に使ってみたらボス連中のスタンドヤバい。全くと言っていい程力を引き出せていない。ホワイトスネイクは割と使えるけど多分C-MOON以上になる事は無いと思う。

 果たしてこんなんでやっていけるのか、不安で不安で昼と夜しか眠れない。

 

 〇月△日 

 

 健全な精神は健全な肉体に宿ると言われている。鍛えた肉体を使って悪事を働く連中もいるから必ずしも的を射ている言い方とは言えないが、力がつけばそれは確かな自信となってより精神力(スタンドパワー)を強化する事が出来るかもしれない。

 前世では格闘技なんてやったことが無い俺じゃあランニングや筋トレくらいしか出来る事が無い。

 母さんにこの村に拳法の達人みたいな人がいないかどうか聞いてみたら母さんが武道やら拳法やらを齧ってるそうで、良かったら教えてあげようかと言ってきた。

 色々やっているそうだが、メインは『波紋法』という呼吸から力を生み出す変わった技術らしい。

 波紋かよ。

 ここはチベットか何かかよ。

 既に40前の母さんが20代のように若々しいのは波紋が原因だったのか。

 波紋はスタンドとも相性がいいし習っていて損はないな。

 是非習得しておきたい。

 

 〇月〇日

 

 死ぬ。

 こんな特訓続けてたら死ぬ。

気軽に頼んだ俺が間違っていた。

 母さんはリサリサ先生ばりにスパルタ師匠だった。

 拳法に関しても齧ってるってレベルじゃない。素人目からしても熟練者っていうのが分かってしまうレベルで美しい動きをしている。世紀末でもやっていけるんじゃあなかろうか。

 原作のツェペリさんみたく横隔膜をついて強制的に波紋の呼吸にしてきたり、ジョセフがつけてた強制的に波紋の呼吸をさせるマスクをつけてきたりと10歳の子どもに対してやらせるような難易度の特訓じゃないだろ。

 こういうのって普通基礎体力をつけるところから始まるだろ。後、超回復とか。

 別にジョセフみたく死のウェディングリング埋め込まれたわけじゃあないんでもうちょっと難易度を落としてはくれないでしょうか。

 

 

 〇月Э日

 

 頼んでみたが母さんの特訓の難易度は下がらなかった。

 親父は叩きのめされている俺を、ただ憐れむような眼で見てくる。

 助けて欲しいけど親父は母さんに頭が上がらないから期待しない方が良さそう。

 そういえば昔、母さんと親父の馴れ初めを聞いた事があった。何でも二人はそれなりに名の知れた冒険者だったらしい。でも引退して片田舎に引っ込んで今こうして暮らしているそうだ。

 引退して全盛期がとっくに過ぎてるのにあんなに強いのかよ。全盛期なら魔王とかワンパンで倒せそうだ。

 

 〇月Ω日

 

 イヤッホーッ!

 うちの母さんの特訓は世界一ーッ!

 

 〇月α日

 

 休み?

 そんなもの、俺には無いよ。

 

 〇月β日

 

 (妙な文字と絵が描かれていて解読不能)

 

 

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 〇月μ日

 

 何故だろうか、ここ2週間くらいの記憶が曖昧で何だか怖い。

 親父は「よく頑張った」と涙目になりながら褒めてくれるし、母さんは「この短期間で覚醒するとは流石私の息子!」とメッチャ喜んでくれた。

 はっきり言ってすっごく恐い。日記を見直してみても支離滅裂だったり何も書いてなかったりでよく分からない。この期間のうちに一体何があったんだ。

 まさか俺はドラゴンボールとかでよくある限界突破ってやつをしてしまったんじゃあないだろうか。俺まだ11歳だし別に壁にぶち当たってたわけでも無いのに。

 二人に聞いてみても何も教えてはもらえなかった。

 ただ親父は『世の中には知らなくていい事もあるんだぜ』と言っていた。

 11歳の息子に対して言う言葉じゃあないね。

 

 〇月▽日

 

 最近日記に書くことが減ってきた。

 母さんの特訓も段々ネタにすることが無くなってきたし(キツイ事に変わりはない)、俺もジョジョなんて言われてるんだから少しでいいから奇妙な冒険ってやつがしてみたい。

 そうはいっても11歳のガキが村の外に出るなんて危険な真似はさせてくれそうにないし、しばらくは村の外れにある洞窟や幽霊屋敷でも見に行くくらいしか出来る事が無いよ。

 この村にも杜王町みたいな奇怪な現象でも起きてくれないものか。

 早く大人になりたいな。

 でも大人になったらなったでまた子どもの頃に戻りたいなと思ってしまうジレンマ。

 そういえばいつになったらこの波紋マスクを取っていいんだろ。事情を知らないご近所さんから奇異の目で見られるし遊び仲間から「暗殺者だーッ!」とからかわれるしで散々なんだよ。

 誓って殺しはやっていない。

 

 〇月☆日

 

 毎日やっていた特訓が母さんの用事で休みになってしまった。暇になった俺は自主練もそこそこに日記に書く事へのネタ探しのために村外れにある幽霊屋敷にやってきた。

 幽霊屋敷だから誰もいないんだけどね。

 とか思ってたら誰かいた。

 思わず目が奪われてしまう程の美貌。母さんも美人だがそこにいた美女は次元が違う。人の領域を超えていてもう女神級と言ってしまっても過言ではない。

 そんな女性が幽霊屋敷のテラスから椅子に座って空を眺めている。しかし眺めているといってもぼーっと眺めているようで生気を感じられない。

 なんというか見ていて痛々しい。

 世捨て人という言葉が彼女に当て嵌まってしまう。

 とりあえず挨拶してみたら驚かれたが、ニッコリと笑って『可愛いお客さんね、こんにちは』と挨拶を返してくれた。

 美人のお姉さんに言われると何だかすっごく嬉しい気分になった。

 その後はクッキーをご馳走になったり世間話をしたりと話が盛り上がって気が付いたら空が薄暗くなっていた。

 また行こう。

 

 〇月✾日

 

 今日の特訓が終わった後にまた幽霊屋敷にやってきた。

 お姉さんは優しく笑いながら迎えてくれた。

 昨日名前を聞くのを忘れていたが、お姉さんの名前はアストレアと言うらしい。惑星にそんな名前のがあった気がするが、別にどうでもいいか。

 お姉さんの話は面白い、この村から出たことが無い俺にとっては未知の物語だった。

 冒険者、モンスター、魔法、ファミリアなどなどまるでドラクエやFFのような心躍るストーリーだった。

 前世と合わせて30年生きていても俺の中から未知への好奇心が無くなる事はなかったようだ。

 しかし、こんな話を知っている筈のお姉さんは何でこんな片田舎の幽霊屋敷に籠っているんだろうか。

 聞いてみたら『全部ダメになっちゃったから』らしい。

 その時の悲痛な表情を見て気軽に聞いた事を後悔した。

 

 〇月?日

 

 ちょっと気になったのでお姉さんについて村で聞いてみた。

 聞いた話だと食料品を買いに来ることはあるそうだが、それ以外の用事で村に来たことが無いらしい。

 村八分にされてるのかと思いきや、一年くらい前に引っ越してきてからずっと自分から村人と距離を取るスタンスを貫いて暮らしているそうだ。

 何か事情があるのかと村人もお姉さんに深入りする事は無かった。

 話してみた感じ人付き合いが苦手とか嫌いとかいうわけでもなさそうなのに。

 きっと村の大人たちが言うように何か事情があるんだろう。例えば危険人物に命を狙われていて、そいつから身を隠しているとか。

 でもなー、あのお姉さんが自身が危険人物でってパターンもあるんだよな。

 付き合いはまだ浅いけどあんまり悪人のようには見えないし、出来れば前者であって欲しい。

 

 〇月@日

 

 お姉さんの家に通っているのが母さんにバレた。

 別に隠してたわけじゃないし、幽霊屋敷のお姉さんについて村で聞いてたから、それが母さんの耳に入るのは当然の帰結だった。

 母さんには『行くなとは言わないけど、これからも関わるつもりなら一応覚悟はしておきなさい』とだけ言われた。

 意味が分からない。

 お姉さんにその事を言ってみたら「私の所にはもう来ない方がいいかもしれない」と言われてしまった。

 近いうちに遊び仲間も一緒に連れていこうかと思っていたのに、どうしようか。

 

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