転生者が奇妙な日記を書くのは間違ってるだろうか 作:柚子檸檬
待たせてしまった人も「待ってるわけねえだろうこのクサレ遅筆野郎がァーーッ」な人も良かったら見てってください
!月〇日
新しい団員が入って気が引き締まる気分だ。
ちょいと嫉妬もしたが、身近に競争相手が出来るのは良い事だろう。
俺だって年頃の男児だから身近に美少女が増えるのははっきり言って嬉しい。
でも女性だから色々と気をつけない事も増えて複雑。
伊織さんはよく食う。
成長期の俺よりも食う。
一番新参なのに平気で五杯目をよそう。
その分稼ぐからそこに関しては特に何も言うまい。
それに美女が美味しそうに食事するのは目の保養だ。
お姉さんも作るのが楽しそうだ。
そんな神経が図太い伊織さんの好物はうどんだそうだ。
遠回しに食べたいとアピールする程度には好きらしい。
しかし、オラリオにパスタを出す店はあれど、うどんを出す店は無い。
俺も食いたいけど、小麦粉から作ったことなんて無いし、まあ無理よね。
白米があるだけまだマシだと思ってくれ。
それで伊織さんがリューさんとの修練に混ざってきたんだが、二人仲良くコテンパンにされた。
レベル2が二人になったところでレベル5には勝てないよね。
俺と伊織さんでジョセフとシーザーのような息の合ったコンビプレーが出来るわけじゃあないし。
伊織さんもこんなに惨敗したのは姉さん以来だと世界の広さを実感したようだ。
でも、これより上がまだ何人もいるんだよな。
世界のてっぺんは遠いな。
!月△日
今日はリューさん無しで
伊織さんも今度は火精霊の護布を使った外套を着ていざ参らん。
装備の加護のお陰でヘルハウンドの炎がドライヤーの熱風のようだ。
でも鋭い爪や牙も持っているから放火を克服しても油断できない相手だ。
そしてアルミラージ。
一部冒険者達からはクソウサギと呼ばれている。
見た目はカワイイウサギ型モンスターだが天然武器のトマホークを持っていて、しかも集団で襲い掛かってくる恐ろしいモンスターだ。
伊織さん、二刀流なだけに素早く、そして片っ端からモンスターを切り捨てていく。
俺も負けじとシルバーバックを真っ二つに切り裂いた。
背中を任せられる相手がいるのは頼もしい、安心して戦う事が出来る。
でも、やっぱり矢や魔法のような後方支援は欲しい。
他のパーティが先に進む中、ウチは14階層へは行かずに適当なところで切り上げた。
人数も二人しかいないし、予定通りじっくりと攻略するつもりだからだ。
帰りの体力配分も計算しないといけないしな。
帰り道、またフィルヴィスさんと新人ズのパーティに遭遇。
普通に挨拶でもして通り過ぎようとしたんだが、世間話の途中で伊織さんがフィルヴィスさんを見てカチャカチャと鯉口を鳴らし始めた。
やべえ、もしかして喧嘩売ってる?
この人お世話になった人だから止めてよね。
マジでお願いだから止めろ。
フィルヴィスさんは『ず、随分と変わったのを仲間にしたな』と苦笑いしてた。
俺は平謝りした。
彼女が喧嘩っ早い人じゃなくて本当に良かった。
フィルヴィスさん強いよー。
実はレベル3だったと聞いたし、短詠唱で雷魔法バンバン撃ってくるよー、おまけに防御魔法もある。
雷なら『レッドホット・チリペッパー』のカモだけど。
でも剣の打ち合いに持ち込まれたら無理。
レッチリは給電に際限は無いけど、際限無いって言われるとなんか限界に挑戦したくなる。
ゼウスやトールのような神の雷なんかも完全吸収出来たりするんだろうか。
伊織さんがあんなにも戦闘狂気質だったなんて、そんなに強いやつと戦けえてえサイヤ人精神ならこの前みたいにもっとリューさんとの特訓に混ざればいいのに。一回やってコテンパンにされてから混ざらなくなっちゃったんだから。
それ聞いたら『そりゃあ100手やって100手負ける相手に喧嘩売るほど命知らずじゃあありませんし』と笑って返された。
つまり勝ち目のない勝負は基本しない性質なのね。
今日は新メンバーの意外な一面が見れた一日だった。
!月@日
カシマがランクアップしたらしい。
この前は6階層で手古摺ってたかと思いきや大したもんだ。
なんでもオークの強化種と一対一で戦って見事勝利を捥ぎ取ったそうだ。
フルーツの詰め合わせを持ってお見舞いに行ったら包帯だらけのカシマが『追いついてやったぞ!』と大喜びだった。
怪我を治してやった時も思ったが、タフなヤツだ。
なんならジョナサンみたいに横隔膜でも突いて治してやろうか。
成功率は低いからおススメは出来ないけどな。
実際村の友達にやってみてと言われてやった結果成功率はお察しレベルだったからな。
カシマとは年齢が近く(向こうの方が年上だが)男同士なだけあってラウルさん並みに話しやすい。
オーク強化種との戦いについて散々語られた。
それを言ったら俺がランクアップした時に戦ったのはインファント・ドラゴンの強化種だぜと言ったら『インファント・ドラゴンだろうと強化種だろうと、それくらいすぐに倒せるようになってやる!』と息巻いていた。
倒したのか俺じゃないし、インファント・ドラゴンの強化種なんてそうそう出ないだろうけどな、でも高い目標を持つのは良い事だ。
タケミカヅチさんは気さくな神様で、以前カシマを治した事に改めて深く礼を言った。
神様に、しかも日本でも有名な神に頭を下げられるというのは元日本人としては複雑な気分だ。
お姉さんと同じように眷属達を本当の我が子のように想っている良い神様なんだろね。
ウチといいココといい、良い神様程お金に余裕がないのな。
現実は非常である。
でもなんで
雷神なんだからもっと荒々しさを出すような髪型の方が似合うんじゃあないか?
極東で思い出したけど、ゴジョウノ家は娘2人出奔してお家騒動とかになってやしないだろうか。
家督を継ぐのは基本男だろうけど、女だって政略結婚とか色々あるだろ。
浅井三姉妹とかその辺有名だな。
本人はそういう『女だから』とか『名家だから』みたいな理由で自分のしたい事である剣の道を極める事が出来ないのが嫌で出奔したって言っていた。
どうなんだろうね、そういうの。
俺は前世も今世もそういう家系で面倒な事が無くて良かったと心から思う。
!月*日
伊織さんが武器を見に行ってくると言ってから帰ってこない。
ここらで有名な武器屋といえば『ヘファイストス・ファミリア』と『ゴブニュ・ファミリア』系列の店だが見当たらなかった。
ミアおばさんの店でも見かけないと聞いたしどこ行ったんだろ?
!月/日
伊織さんが「ぬ」と「ね」の区別がつかなそうな顔をして帰ってきた。
おまけに腰に差してた二本の刀がなくなってた。
ギャンブルして全部スッたと自白した。
やっちまったなこの女。
お姉さんも頭抱えてた。
倍にして返すからお金貸してとお願いされたけどギャンカスに金を貸す趣味はないので断った。
これ以上被害拡大させるなよ。
胸触ってもいいからとか言い出してとうとうお姉さんがキレた。
嫁入り前の女性がそういう事言うもんじゃないぞ。
言い分を聞いてみたらは武器を見てたけど高いのからどうしようかと悩んでたら声をかけられてギャンブルに誘われて一山当てて武器を買おうとしたけど、その結果素寒貧になって刀も取り上げられたって話。
カモにされてるじゃん。
しかも話を聞く限りじゃ初犯とは思えない用意周到っぷりな気がしてきた。
明日にでも伊織さんが連れていかれたギャンブル会場とやらにでも行ってみようか。
多分いないだろうけど、何かしら手がかりはあるだろ。
なければ『リプレイ』するだけだ。
!月&日
今日は伊織さんの案内でギャンブル会場を襲撃することになった。
伊織さんは武器ないし素手で行くのは心もとなかったんでリューさんの小太刀(仰々しい名前がついてた気がしたけど忘れた)を貸して貰った。
試しに小太刀振ってたけどすっごい微妙な顔してたな。
いい武器でなんかムカつくと言っていた。
元はアンタの姉の武器じゃなかったか?
予想通りだけど伊織さんを嵌めた連中はいなかったけど、その代わりに短髪無精ひげのいかにもな悪人顔のチンピラとその取り巻き達に出会った。
お目当ての連中かと思って先手必勝と出会い頭に
その無精ひげのおっさんはモルドっていうおっさんでどうやら伊織さんと同じく詐欺集団のギャンブルで素寒貧にされたから仲間を集めて乗り込もうとしていたらしい。
俺もやっちまったな。
勿論謝罪はした。
ギャンブル会場になってた都市の外れにある目立たない小屋には誰もいないし勿論大したものは残っていなかった。
とりあえずモルドのおっさんとその取り巻きたちとは同じく被害者の会として共同戦線を張ることになった。
おっさんは他にも被害者がいるらしいのでその連中をかき集めて虱潰しに探すそうだけど、俺は一先ず被害者を集めるだけに留めてくれと頼んだ。
虱潰しに探していたら向こうにも感づかれてやり辛くなるかもしれないしね。
俺はもう少し小屋を調べてみると言って一人でその場に残り『ムーディー・ブルース』でその場にいた人物何名かの記録を
主犯格らしき角刈りの男の言葉から分かったのは、
・この詐欺集団はレベル1~2の冒険者をターゲットにしている。
・『ヘファイストス・ファミリア』の武器屋でカモを探している。
・ギャンブルはイカサマだらけの出来レース。
・いざとなったら集団で脅しをかけるからレベル3以上の強い冒険者は絶対に連れてこない。
・バカを騙して金を巻き上げることほど楽で笑える商売はない。
・レベル1の女だったら『イシュタル・ファミリア』にでも売り飛ばしてマージンを貰えばいい。
・今度は『剣姫』の記録を更新していい気になってるクソガキを騙して金を巻き上げてやろうと画策している。
と、まあまあの収穫だった。
伊織さんはレベル2だから身売り対象から外れてたのか、危なかったな。
そのクソガキってのはまさかと思うが俺のことか?
別に俺はいい気になってた記憶はないし、記録なんていつか塗り替えられるもんだし、詐欺をするための免罪符にはなりえないと思うんだけどな。
その辺はどうでもいいや、向こうから来てくれるんだったらこちらとしても好都合。
似顔絵も全員分描き終えた。
その上で色々と作戦を立てればいい。
!月〒日
『ヘファイストス・ファミリア』で似顔絵片手に軽く聞き込み調査をしてみたら売り子の女性が詐欺集団のうちの一人の顔を何度か見ているらしくて、事情を話したら詳しい情報を教えてくれた。
三日に一度のペースで来店しては商品を見ている客と少し話をして連れて行くらしく、ついさっきまで来ていたらしい。
入れ違いになったのは残念だが、ぶっつけ本番にならなかったと思えばいいか。
『ヘファイストス・ファミリア』からしたら真っ当に商売やっている店内が詐欺行為の温床になっていたとなると、向こうとしても然るべき対応をしないといけなくなるだろうな。
この件は伊織さんやモルドのおっさんと共有した。
そして囮は勿論俺が行く。
一回搾取されてる人たちだと警戒されるかもしれんからな。
!月¥日
今日はスカった。
『ヘファイストス・ファミリア』の武器たっけぇなァ…確かレベル2以上じゃないとヘファイストスブランドを背負えないらしいな。
それだけに価格も相当なもんだ。
最上級鍛冶師の作った武器防具じゃなくても平気でウン十万とかしやがる。
こんなの俺の稼ぎじゃ買えねぇ
!月=日
今日もスカった。
流石に向こうもバカじゃないか。
リューさんは「焦らないのが大切です。これでも食べて落ち着きなさい」となんかの残骸を差し出した。
本人曰くクッキーらしい。
クッキーに謝ってください。
!月[日
やーっと餌に食らいついてくれた。
手口としては聞いてた通り、武器を見ていた俺に「誰でも簡単に儲けられる上手い話がある」と、ちょっと意外だが女が話しかけてきた。
てっきり男が来るかと思ってたんだが、よくよく考えてみたら俺くらいの年齢なら厳ついおっさんよりも女性の方が警戒され辛いと思ってたのかもしれないな。
連れてこられたのは場末の酒場、周りにいる連中は全員グルだと思っていいだろう。
作戦としては俺が詐欺集団に連れて行かれたのを伊織さんとモルドのおっさんたちがつけて、タイミングを見計らって突撃(タイミングに関しては向こうに任せた)して包囲し一網打尽にするという単純かつ戦いは数だよプロシュート兄貴的なものだ。
生ハム食いてぇ。
ギャンブルっていうんで念のため『ドラゴンズ・ドリーム』を発現させておいたが、『ドラゴンズ・ドリーム』が賭けの相手を「マジかヨ。あいつの方角は大凶ダゼ」とゲラゲラ笑っていた。
どうせイカサマだしどうやって暴いてやろうかと幾つかプランを練ってたんだが、結局のところ一つも使わなかった。
手が滑って落としたサイコロが割れて、中には重りが張り付いてたんだ。
バレたらイカサマは重罪なんだぜ?
連中は一瞬凍りついた後、発狂&逆ギレして襲いかかってきた。
負けじと俺も避けて、襲いかかってくる内の一人を入り口に投げ飛ばした。
それが合図になって待機してたメンバーが一気に押し寄せてきた。
裏口にも人を回して詐欺集団の逃げ場を奪いつつ大乱戦になった。
最終的に詐欺集団は全員ボコられて捕縛した。
金の方もかなりの額を貯め込んでいたようだったので全額没収して参戦した全員で山分けにしたし、武器や防具なんかも換金が終わってないものは戻ってきた。
伊織さんなんか刀を頬擦りしてたよ。
連中の身柄についてはとりあえず『ガネーシャ・ファミリア』に渡しておいたんだが、『ガネーシャ・ファミリア』以外に警察的な組織って無いんだろうか?
その後は豊穣の女主人を貸し切って打ち上げ。
なんか泡銭が入った俺が奢る事になったよ。
この中じゃ被害受けてないの俺だけだしな。
まぁ、飯は美味かったし、ノリに乗って熱唱してのどんちゃん騒ぎは楽しかったよ。
この世界にカラオケが無いのが悔やまれるな。
その後、店員にウザがらみした連中はのされて追い出された。
俺も歌い過ぎて喉が痛い。
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