転生者が奇妙な日記を書くのは間違ってるだろうか   作:柚子檸檬

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ダンメモの周年イベントは毎回ヤバい爆弾落として来てヤバい。


十三頁目

 〒月×日

 

 アーニャさんの買い出しを手伝っていたら、そこに見ず知らずのアマゾネスが。

 何も言っていなし、そもそも会った事も無い赤の他人なのに物凄く血走った目で詰め寄られ。

 『すいませぇええん!ちょっと種馬になって貰えませんかぁああ!』

 そう言った。

 あなたならどうする……?

 最悪だった……。

 

 マジでどうなってんだろうな、前世で女っ気無かったのにこの歳で二度目の貞操の危機……この女運の半分、いや3割でいいから欲しかったな。

 アーニャさんも買い出しくらい一人で行ってくれと思ったが、アーニャさんが俺を担いで逃げなかったらと思うと何とも言えん。

 しかし、ニ回に一回は買うものを忘れる記憶力はどうにかした方がいいよ。

 

そして、その喧しいアマゾネスは『イシュタル・ファミリア』の『騒音娘(ハウリンガール)』で有名らしい。娼婦兼戦闘員の戦闘娼婦(バーベラ)と呼ばれる役職に就いてるそうなのだが、喧しいせいで萎えると評判で、リピーターがついたことがないらしい。

 あの音量はデフォルトだったのかよ。

 

 〒月÷日

 

 オラリオニ来たばかりの頃に俺に焼き鳥奢ってくれた兄ちゃんが美人秘書を連れて訪ねてきた。

 しかもその人はあのギリシャ神話の一柱であるヘルメスだった。

 ヘルメスさんはオラリオの外でとある届け物をするために『アストレア・ファミリア』に警護を依頼したいと言って、少なくない額の依頼料まで提示して来た。

 

 さて、普通に怪しいぞ。

 ヘルメスさんは「自分のところの団員たちは都合がつかないから」とヘラヘラ笑ってたし、その横で秘書さんは不機嫌さを全く隠していなかった。

 そしてヘルメス神で思い出すのが『筋肉の神』と呼ばれる点、そして露伴先生曰く「橋本陽馬はヘルメス神にとり憑かれている」らしい。

 橋本陽馬は単純な危険度なら基本的綺麗な手の女性しか狙わない吉良吉影よりも上だ。

 何せ本人が気に食わなかった時点で殺害対象になるんだからな。

 

 ヘルメス神がわざわざまだ二人しかいないファミリアに仕事を頼む理由は何だ?

 リューさんも訝しんで受けるべきではないと言い張っていた。

 だが、お姉さんがこの依頼を受ける気だったのが意外だった。

 

 最終的な決定権は俺に委ねられる事になって、結局はその依頼を受ける事になった。

 依頼料が高いのは魅力的だし、何よりもヘルメス神の目的が気になるから、敢えてそれにのってそれを知りたいと思う。

 お姉さんからも「ヘルメスから目を離さないように」「出来ればヘルメスの真意を探るように」と言われた。

 なんかテンション上がってきた。

 

 

 〒月=日

 

 ヘルメスさんの警護するのに色々と手続きがあったようだが、秘書さんが大体やってくれたみたいで、ティフィさんにも話が通っていた。

 ティフィさんに言われて初めて知ったんだけど、高レベルの冒険者は中々オラリオの外に出るためには手続きがとんでもなく面倒くさくて長期間かかるらしい。

 うーん、よく分からんが外にはあんまり高レベルの冒険者はいないらしいし、『その辺の川にブラックバスを放流したら生態系が壊れるからダメ』みたいな感覚だろうか?

 それとも『オンラインゲームにおける上級者の初心者狩り禁止』みたいなものか?

 

 行き先自体は知らないが警護は俺と伊織さんの二人、移動方法は馬車で行くらしい。

 「大体5日間程度を想定してるからちょっとした旅行気分で行くといいよ」とヘルメスさんは言っていた。

 本当にそんな生温い旅で終わるといいんだけどな。

 『祈って』て貰おうかな……ウチの女神様に、この旅の無事を……。

 

 

 〒月-日

 

 今のところやる事といえば馬車に揺られながら談笑。

 たまに道中でモンスターが出てきたらそれを倒すくらいしかやる事がない。

 しかもそのモンスターもそこまで歯応えのあるモンスターは出て来ない。

 話には聞いてたけど、ダンジョンから産まれるモンスターと外の世界のモンスターとじゃ同じ種類のモンスターでもここまで差があるんだな。

 

 ヘルメスさんは初めて会った瞬間はフレンドリーで段々となんか胡散臭いなぁとか思うようになってきて、名前が判明してから信用していいのかはっきりしなくなったな。

 少なくともスタンドは見せない方が良さそうだ。

 

 どうでもいいけど、伊織さんはヘルメスさんを見て「もうちょい小柄で痩せ気味だったらなぁ」とボヤいていた。

 

 

 〒月%日

 

 ヘルメスさんの真意って何なんだろうなぁ。

 ヘルメス神といえばゴルゴーン退治に行くペルセウスに空をかけるサンダルとか諸々を貸したって話が有名だけど、まさか何かを退治させるつもりだったり……?

 なら何か貸してくれよぉ~ッ。

 

 後、親父…というかジョースターの一族についてどう思うかと聞かれた。

 どう思うかと聞かれても、ジョースターの一族は昔は貴族だったらしいとしか親父から聞いたことがない。

 そして、何か役割があったとか何とか。

 その役割については親父も母さんもよく知らないから何とも言えないな。

 

 そしたらヘルメスさんが「ジョースターはかつて『星守りの一族』と呼ばれていたんだよ」と教えてくれた。

 星守り……何かを守護する一族だったのか。

 星が指し示すものとは一体何なのか。

 こんかいの件とは多分全然関係ないけど、新事実を知れたのは思わぬ収穫だった。

 

 ふむ、そういえば親父の冒険者時代の武勇伝はどっからどこまでが真実なのか。

 

 

 〒月♪日

 

 途中で馬車を降りて歩いて行く事になった。

 どうやらこの先はモンスターの数も強さも今までの比じゃないから馬車で行けないらしい。

 とはいえ、レベル2が二人もいたら問題が無いそうだ。

 

 言うだけあって今までよりも数も強さも確実に上だけど、最初の死線(ファーストライン)と比べれば屁でもない。

 俺も伊織さんもいい運動になる程度だ。

 

 暫く進むと、モンスターの死骸がそこら辺に散らばっていた。

 不気味に思いながらも警戒を強めて先へ行くと、巨大なマンモスのようなモンスターが倒れていて、それを椅子にするかのように謎の男が座っていた。

 簡素な服だが、その肉体は細身ながらもしっかりと鍛え上げられていて美しい。

 そのすぐ側にはその男の得物であろう巨大で白いハンマーが地面に減り込むように置いてあった。

 どこかのファミリアに所属する冒険者かと思って尋ねてみたらそういうわけではないらしい。

 フリーならば勧誘してみようかと名前を聞いてみたが彼は自分の武器の名前以外、自分の事は名前すら知らないらしい。

 そして自分が一体誰なのかを知るために旅をしながらモンスターを倒して生計を立てているんだとか。

 

 何を言ってんだ………………? ……こいつ……。

 

 まるでミストさんの苦し紛れ言い訳みたいな明らかに疑わしさ満載の発言だ。

 せめて壁の目から全裸で出てきて金〇4つついてたら信じたかもしれないが、正直言って信じられない。

 しかし、ヘルメスさんの言葉を信じるなら彼はガチで自分の名前を知らないらしい。

 それならオラリオ行けば何か分かるかもよ、ついでにウチのファミリアの拠点もオラリオにあるからどうかと勧誘してみた。

 

 結果的に「ウチのファミリア来る?」という提案には乗ってくれたが名前無しの人間なんて現実では初めて会ったからどう対応していいか分からん。

 自分の名前すら知らないのに、武器の名前は覚えてるっていうのはどういう理屈なんだろうな。

 

 武器の名前はミョルニル。

 

 そう、北欧の最強と言われる戦神トールの持つ武器と同じ名前だ。

 これにはヘルメスさんも俺も眉をひそめた。

 ヘルメスさんに再度聞いても、彼はやはり嘘は言っていない

 そして彼があのトールなのかと聞けば、神であるヘルメスさんが彼の言ってる事を嘘か本当か判別出来ている以上、彼が神である筈がないという結論にしかならない。

 どちらにせよ放置するわけにもいかず、そのまま連れて行くことにした。

 それに恩恵刻んでもらう際に名前も一緒に刻まれるからそれで本名が判明するかもしれんしな。

 

 その後は特に何事も無く村に着いたんだが、ヘルメスさんだけ村に入って俺たちは村の外で待っている事になったから暇だった。

 待ってる間に彼について色々と話していた。

 まずは本名が判明するまでに、彼を呼称するための名前が欲しいな。

 そうだな……アメコミでも有名なスーパーヒーローの名前を貰って「ソー」というのはどうかな!

 彼は「そうだな」と受け入れていたが、あれはひょっとしてギャグで言ってたのか!?

 

 待ってる間にコッソリと見に行くかという話になって、本当にコッソリと遠目から見たら髭生やした爺さんと何かを話していた。

 はて、あの爺さんは何者だろうか?

 あんまり近寄ってバレたりしたら面倒かなと思って結局何もしなかったけど、今更になってあの爺さんが何者か気になって夜にしか寝られなくなっちまったよ。

 こんな事ならスタンド使ってでも会話を盗み聞きするべきだったか。

 

 そういえば、ヘルメス神って元々はあの主神ゼウスが自分の伝令役を作るために産ませた神様だったな。

 つーことはあれがゼウス?

 ぱっと見、普通の爺さんだな。

 ダンブルドア校長みたいなのを想像してたけど、全然違う。

 そもそもあれがゼウスっていう証拠も根拠も無いわけで、後はお姉さんの判断に任せるしか無いしな。

 

 何はともあれ後は帰るだけだが、あんな巨大モンスターがいた後だから何が起こるか分からんし、気を抜くのはオラリオに帰ってからにしようか。

 

 勿体ないからと魔石の回収はしたけど、あんまり大した額にはならなそうだな。

 

 

 〒月○日

 

 オラリオよ! 私は帰って来た!

 

 ほんの五日間の旅だったけど、オラリオのこの騒がしさが懐かしい。

 吉良吉影は植物のように何の抑揚も無い人生を望んでいたけど、やっぱり人間は適度なメリハリが必要だと思うぞ。

 

 関門で『ガネーシャ・ファミリア』の兄ちゃんに呼び止められて何事かと思ったが、例の詐欺師集団を牢屋に放り込んだ事について教えてくれただけだった。

 仮面被って分かり辛かったが、「お手柄だったな」と笑って誉めてくれたのが印象的だったよ。

 

 報酬に関してはギルドを通して支払うからとヘルメスさんはそのまま何処かへ去って行ってしまった。

 やけに上機嫌だった気がするが、あのゼウス疑惑のある爺さんに会えたのがそんなにも嬉しかったのか、それとも俺の知らない間に何か新しい発見でもしたのか。

 気にはなるが、今は考えても仕方ないと思ってそのままソーをお姉さんの元に連れて行った。

 

 お姉さんはそりゃあ驚いてた。

 何せ郊外に仕事に行って、帰ってきたらデカい武器持った歴戦の勇士みたいなの連れて来たんだからな。

 誰だってそうなる、俺だってそうなる。

 とりあえず事情を話して恩恵を刻んで貰う事になった。

 

 それで、恩恵は刻んで貰ったんだが……何か色々とおかしい。

 まずは、名前の欄には「ソー」と俺が勝手に付けた筈のものが表記されていて、レベルの欄もバグっていて見る事が出来ないそうだ。

 お姉さんは「神の恩恵《ファルナ》が彼に上手く機能していないか、それともシステムに何かしらの異常が発生しているのかもしれません」とかなり深刻そうな顔をしていた。

 

 武器の鑑定に関してはお姉さんは専門外だから鍛冶神の誰かに鑑定してもらわないと真偽の程は分からないそうだ。

 

 つまり、何も分からなかったというのが分かったんだな。

 結構な厄ネタ拾って来ちゃったのかもしれないけど、ここで放り出すのも後味の悪いものを残すし、あの大型モンスターを単騎で撃破してるから即戦力になりそうなんだよね。

 何よりも、もうお姉さんが恩恵刻んじゃったから、記憶喪失のソーをお姉さんが見捨てない。

 変わった仲間が出来たと思えばいいか。

  

 リューさんに事情を話したらなんか形容し難い顔をされた。

 「何で仕事から帰って来たと思ったら野良犬感覚で変なの拾ってくるんだお前は」って感じの!

 そんな事言ったってしょうがないじゃないか!

 

 

 〒月/日

 

 ソーにオラリオ案内でもと思ったんだけど、本人がオラリオのダンジョンがどんなものか知っておきたいと強く希望してたんで、ティフィさんに冒険者登録をして貰ってそのままダンジョンへGO。

 元々外で冒険者としてモンスターを退治していたと言ったら、筒が無く登録も終了してそのままダンジョン行きOKのサインも出して貰った。

 

 分かっていた事だけど、いくらダンジョンでもゴブリンやコボルドではまるで相手にならず、一撃で魔石ごと砕け散っていたのがグロッキーだ。

 本人はダンジョンと外でモンスターの強さが違うからと力を入れ過ぎて調整を誤ったと言っていたが、それでも圧倒的なパワーだった。

 伊織さんは刀によるキレ味と二刀流特有の手数の多さがウリだが、ソーは一発一発の威力が桁違いなのが特徴なんだな。

 その後は5階層辺りでソーのパワー調節のためにモンスターたちがミンチになり続けて、そこを通りかかる冒険者たちがドン引きしている有様だ。

 この調子ならキラー・アントも煎餅感覚で粉々に出来そうだ。

 

 新メンバーもゴリゴリの前衛アタッカーで攻め重視のパーティーになって来た。

 そろそろサポートが出来る後方支援が欲しい。

 

 

 〒月?日

 

 ウォーシャドウすらワンパンとか、お前はサイタマかと言いたい。

 どっちかといえば、ジェノス似だけどな。

 これが年季の違いというやつか。

 

 本人のパワーもさる事ながら、あんだけ乱暴に扱ってるのに欠けるどころかヒビすら入らないハンマーもスゲェな。

 本当にミョルニルかもしれないと思ってしまうくらいだ。

 ミョルニルの実物なんて見た事無いけど。

 ちょっと持たせて貰ったけど、重過ぎて振るどころかまともに持ち上げられなかった。

 ミョルニルといえば雷だけど、雷らしいものは出てなくて寂しい。

 

 気になるのが、モンスターを倒しても感情の動きがぴくちりも感じられないところだ。

 俺だってモンスターとはいえ生き物をこの手で殺すっていう事に拒否感があって気分が悪くなってたのに、そういったのが全く見られない。

 ならばモンスターを倒した時に得られる達成感がそれに勝っているのかとも思ったのだが、達成感を得てるようにも見えない。

 まるで作業のように淡々とやってるように見える。

 そう見えるだけだよね?

 感情が表に出ないタイプってだけだよね?

 

 ソーの得物の件とレベル表記の件についてはお姉さんも動き出しているようだ。

 

 武器についてはお姉さんの知り合いの女神ヘファイストスが鑑定してくれると言っていた。

 ……ヘファイストスって男神だよね?

 確か美の女神アフロディーテと結婚してたし。

 

 レベル表記についてはロキさん、そしてオラリオの外にいる知り合いの女神アルテミスに手紙を書いたそうだ。

 もう手紙をヘルメスに届けるように脅……頼んで配達に行かせたと言っていたよ。

 ヘルメスさん、この前帰ってきたばっかりなのに忙しいね。

 

 ロキさんはああ見えて結構義理堅いし、面白がって周りに言いふらしたりしないだろう。

 しかし、月の女神アルテミスについては会った事無いから何とも言えない。

 お姉さん曰く「ちょっと堅物だけど、真面目で信頼出来る女神だから大丈夫」だそうだ。

 すまない……スイーツ脳のイメージしか無くて本当にすまない……。




仲間はこれからどんどん増やしていきたい

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