転生者が奇妙な日記を書くのは間違ってるだろうか 作:柚子檸檬
目指せ100件
☆月〇日
いや~長い長い道のりだった。
母さんや親父や村の人達からから服とか装備とか軍資金とかを餞別に貰って村を出て早30日。
本当に、何て長い道のりだったのか。
この世界には飛行機も新幹線も電車も自動車も無いから交通面が本当に不便なんだよね。馬車も何回か乗り換えてとても面倒。
『ストレングス』や『ホウィール・オブ・フォーチュン』で乗り物作ってもいいけど未知の乗り物使ってたら目立ってお姉さんに迷惑掛かりそうだから止めた。
そもそも俺、前世でも運転免許持ってなかったしね。
お姉さんは人の目が増えてきた辺りからココ・ジャンボの中に入って貰った。
何処に誰の目があるか分かったもんじゃないし、お姉さん美神だから変なトラブルに巻き込まれそうだったから、妥当な判断だったと思う。
おまけに運賃が一人分浮くしね。
いつまでも あると思うな 親と金 by ジョシュア
そしてやってきました『迷宮都市オラリオ』。世界の中心だの今一番ホットな都市だの言われているだけあって人や建物が多くて圧倒される。
今の俺は田舎からやってきたおのぼりさんってわけだ。
まず始めに安い宿屋を探すためにそこら辺を調べたら素泊まりで一泊2000ヴァリスの宿屋があったからそこに決定。ベッドと机と椅子があるだけの殺風景な部屋だったけど、別に何の問題も無い。
リオンさん捜索は明日からでもいいかなぁと思ったけどまだ明るいし軽く聞き込みだけでもと宿屋の周辺を『豊穣の女主人』の写真片手に聞き込みを開始。お姉さんから手紙を託されたのでそれだけは絶対に無くさないようにと厳重に懐にしまった。
聞き込みをしても子どもだからか大人たちに碌に相手をして貰えず、いっそ『ペイズリー・パーク』でも使ってみようかと考えだしたところで、テンガロンハットをかぶったとっぽい兄ちゃんに絡まれた。
最初は強請りの類かと思ったが、どうやら『豊穣の女主人』の場所を知っているようで、「これからそこで飲みに行くんだけど一緒にどうだい? 奢るよ」と言われてしまった。
場所は知りたいけどこの兄ちゃんはどうも胡散臭い。
変な動きを見せたら即座に逃げるための逃走プランを10通り程思いついた頃には空はオレンジ色に染まり、俺と怪しい兄ちゃんは『豊穣の女主人』と看板のある店に到着していた。
マジで知ってたのかよ。
まだ夕方だからか客入りはまばらだった。
注目すべき点はそこじゃあなくて従業員が全員女性で美人が多い事だ。
おまけに母さんに色々教わったせいで何となくだが従業員のほとんどの戦闘力が高めっていうのが分かる。
もしかしてこの店は従業員が用心棒を兼任してるのか、それとも冒険者って駆け出しの声優や漫画家みたいにバイトしないとやってけないような職業なのか、オラリオにきたばかりの俺では判断に困った。
美女が多い従業員の中でも俺が探していた人は一際目立っていた。
写真で見るより数十倍は美人だったね、というかエルフをリアルでみるのってこれが初めてだろ。犬人や猫人なら村にもいたけど、エルフは基本他種族と関わろうとしないから普通は会う機会なんて無いし。
後、奥にいるドワーフのおばちゃんがこっちをじっと見てたのが何か気になった。
未成年は立ち入り禁止とか……じゃあないよな。
そんな事考えてたら「ぶっちゃけ、誰が好みだい?」と突然兄ちゃんが俺に話を振ってきた。
何か勘違いしてないか?
とりあえず「みんな美人で甲乙つけ難いですねハッハッハー」と適当に返したよ。
メニューを見たらどれも結構お高めでビックリ、しょっちゅう通うのは無理だな。
頃合いを見て『ザ・ワールド』で時を止めて手紙と今泊ってる宿屋の場所を走り描きしたメモ用紙をリオンさんのポケットに突っ込んだ。
精神力が鍛えられて止められる時間が0.5秒に増えたからそれくらいは出来るようになったよ。
あの地獄の一年は無駄じゃあ無かった。
俺が頼んだ焼き鳥の盛り合わせが無くなる頃だったか、機嫌悪そうな眼鏡のお姉さんが怪しい兄ちゃんを引き取りに来て、そのまま兄ちゃんを引きずって連れて帰っていった。
結局何だったんだ?
それにしても眼鏡のお姉さんは美人だった。
ザ・美人秘書みたいな感じ。
何はともあれリオンさんの捜索、及び手紙を渡すというミッション完了。
なるほど、完璧な一日だったっスねーーーっ、帰りに不審者につけられてたって点に目をつぶればよぉ~!
今日はもう疲れたから詳しい事は明日書く。
☆月×日
昨日の不審者はリオンさんだったでござる。
波紋を使った生命探知があったから気づけたけどビビったわ。
お姉さんの件で話がしたいんだったら普通に話しかけてくれよ。
人さらいか何かだと思って『グーグー・ドールズ』憑依させて小型化させちゃったよ。
話がある場合はどうぞーってかいたメモ用紙は一体何だったのか。
初対面の俺がどうこう言っても多分信じて貰えないだろうからココ・ジャンボの中に放り投げてスタンドを解除しておいた。
色々と積もる話もあるだろうし互いに腹を割って話してくださいな。
ここまでが昨日までの話。
今朝様子を見に行ったら泣き疲れて眠ってたっぽかったんで、お姉さんの希望もあってそのままにしておいた。
膝枕羨ましい。
俺は一人寂しく波紋の早朝稽古だよ。
シャボンランチャーとかもっと練習してものにしないとね。
戦える手段は多いに越したことない。
適当に広い場所でやってたら小さい女の子の目に留まって「シャボン玉だー」とテンション高めになってたから即興だけどくっつく波紋の応用でバルーンアートならぬシャボンアートを作ってみたらこれが大ウケ。
早朝稽古がいつの間にやら大道芸になってたでござる。
お捻りで約3000ヴァリスも貰ってしまった。
昼間は軽食を買った後にオラリオを見て廻っていた。
お姉さんは「まずはオラリオを見て廻りなさい。色々なファミリアを見てきなさい。それでもし、他に入りたいファミリアがあったなら、そこに決めなさい。でも、もし他のファミリアを見てそれでも私の眷属になりたいのなら、改めてあなたに『
お姉さんは俺に他の選択肢を見た上で俺に決めて欲しいようだ。
とりあえず探索系のファミリアがいいからそっちから見ていこう。
露店でアクセサリーを売ってたおっさんに有名なファミリアを聞いてみたら、探索系だと『ロキ・ファミリア』、『フレイヤ・ファミリア』、『ガネーシャ・ファミリア』、商業系だと『ヘルメス・ファミリア』、『デメテル・ファミリア』、『へファイストス・ファミリア』が有名だそうだ。
駄賃代わりに蒼い石のペンダントがついたネックレスをお姉さんの土産にと買った。
とりあえず一番近い『ロキ・ファミリア』の拠点である『黄昏の館』に行ってみたら既に長蛇の列が出来ていた。
そこに並んでたスキンヘッドのいかついおっさんに話を聞いてみたら「ここは天下の『ロキ・ファミリア』の入団試験の列だ。お前みたいな田舎者のモヤシ野郎が来る場所じゃあないんだよ!」と突き飛ばされた。
痛くは無いけどイラっとしたから『トーキング・ヘッド』をくっつけてやったよ。
俺はコケにされると結構根に持つタイプなんだ。
しばらくしたらスキンヘッドのおっさんは外に放り出されてたよ、ざまあ。
結局『ロキ・ファミリア』に関しては自己顕示欲の強い力自慢が入団試験を受けに来るって事しか分からなかった。
流石に団員はあんなんばっかりじゃあ無いと思うけど、というかどのファミリアにどんな奴がいるかも分からないんだったな。
明日はファミリアよりも冒険者について調べよう。
帰りにお姉さんに何か買ってこうかとしたら『じゃが丸くん』なるものを売っている屋台に遭遇。
見た目はコロッケに近いかな。
じゃがってつくくらいだからジャガイモが材料なんだろう。
前にいた俺と同じくらいの少女が小豆クリーム味とかいうゲテモノ臭がするものを20個も買っていったんだけど、美味いのか? どら焼きやシュークリームじゃあないんだぞ?
安定が好奇心を上回った俺はプレーン、カレー、挽肉、コーンを3つずつ買って帰った。
どれも一つ30ヴァリスで実にリーズナブル、小腹がすいたときにはいいだろう。
お姉さんにはアクセサリーは喜ばれ、小豆クリーム味を買って来なかった事を怒られた。
リオンさんは寝過ごして仕事に遅刻した。
☆月□日
早朝稽古の途中にリオンさんがやってきて頭を下げられた。
「誤解してすいません。それとアストレア様を守ってくれてありがとう」と深く深く頭を下げられた。
こっちもいきなり小型化させてからマフラーで拘束したのは悪かったしお互い様だと軽く流した。
というかそもそも俺のせいでお姉さんが村を出る羽目になったんだから守るのは当然では?
リオンさんは俺がスタンドという特殊な力を持っている事をお姉さんから少し聞いたらしい。
お姉さんが信頼出来ると思っている人だし別に良いか。
俺の先輩になるかもしれないし、知って貰って損はない。
その後、リオンさんは俺の稽古を興味深そうに眺めていた。
妖精とまで言われてるエルフ族にとっても波紋呼吸法は未知の領域なんかね。
「基礎がしっかり出来ている。良い師に鍛えられたようですね」と褒められてすっごく照れくさい。
いや~一年間の修行は地獄でしたね。
ついでに現在のファミリア事情について聞いてみた。
『ロキ・ファミリア』と『ガネーシャ・ファミリア』はともかく『フレイヤ・ファミリア』は入団試験をやる事は滅多に無いらしい。
団員は主に女神フレイヤが気に入った奴を自身の美貌で魅了して他所のファミリアから引き抜いてるそうだ。
何か『他球団の4番を引き抜いてドリームチーム作ろう』みたいな考えだな。
神々にはスタンドが見える可能性があるし、気を付けるか。
稽古の後はオラリオの冒険者について調べようと町へ繰り出したら早速丁度いいものに出くわした。
ブロマイド屋である。
人気のある、もしくはヒットしかけの冒険者たちのブロマイドがずらりと並んでいて値段も30ヴァリスくらいものもから10000ヴァリスもするものある。
買うかどうかは別にしても今の俺にはうってつけの店だった。
店主にこのオラリオ最強は誰かと聞けば、武力なら『猛者』オッタル、次点で『
『
そしてやっぱりというかまあ、この人達のブロマイド高いね。
他に有名な冒険者はいないかと聞けば『剣姫』がダントツだそうだ。
現在13歳という若さで既にレベル4。
おまけに7歳で冒険者になり、一年後にはレベル2になった最年少、最短の世界記録を所持している。
リオンさんが確かレベル4らしいからそれと同格って事か。
リオンさんはエルフなせいで見た目で実年齢が判断しづらいけど10代前半って事はあるまい。
やはり天才か。
ブロマイド見たらなんかどっかで見た様な……気のせいか?
店主は、散々答えてやったんだから何か買ってくれと言い出した。
『剣姫』のブロマイド2000ヴァリス也。
高いけどまあ買える値段なのが返って腹立つ。
ちょっと迷ったけど、最後の一枚でしばらく入荷は無いと言われたし、今後の活躍でプレミアつくかもしれないし買った。
もうここまで来たらちょいと散財しようと『
あくまで情報収集だからね、女の子のブロマイドばっかり買ってたら誤解されそうだしバランスとらなきゃ。
帰ろうとしたら黒いグラサンにマスクを付けた怪しいエルフ(耳が長いから多分エルフ)が入ってきた。
見るからに怪しいから関わり合いにならないようとっとと帰ろうとしたら『剣姫』のブロマイド最後の一枚を譲ってくれとせがまれた。
何が悲しくて変な格好した怪しいエルフに2000ヴァリスもしたブロマイドを譲らにゃならんのだ。
20000ヴァリスで売るって言ったらキレられたし、本当にやかましいエルフだ。
仕方ないから『ジェイル・ハウス・ロック』を使って混乱している内に逃げ出した。
いや~しつこかったな。
帰ったらリオンさんがレベル5になってた。
おめでとうございます。
新生アストレア・ファミリア団長はあなただ。
日記の補足
スキンのおっさんはリヴェリアに『若くて美人』とおべっか使ったら『年寄りの不細工』と口から出て怒りを買いぶっ飛ばされました。
次回、リュー視点