転生者が奇妙な日記を書くのは間違ってるだろうか 作:柚子檸檬
€月μ日
シャボンランチャー用の石鹸水が切れたので波紋を通しやすくするための油や小道具等のその他諸々と一緒に雑貨店で買い漁った帰りにこの前助けてくれた血みどろエルフさんを発見。
というかあの血みどろエルフさん、血みどろ姿がショッキングでド忘れしてたけど、『
あの時は血で赤黒かったけど今は全身白の戦闘衣でカッチリと身を包んでいて首から上以外には肌色が見えない。
すかさず彼女に声を掛けてたら、シャリアさんはさわやかイケメンの兄ちゃんと一緒にいた。
へえ、デートかよ。
あんなに美人なら彼氏なり婚約者なりいてもおかしくないけどね。
何か、美男美女のカップルって傍から見てるとなんか自分が惨めな気分になる。
もう一回人生やり直してもあんな美女とお付き合いするのは無理だろうなぁ。
俺が礼を言ったら困惑しているイケメン兄ちゃんにシャリアさんが事情を話した。
イケメン兄ちゃんはディオニュソスっていう神でシャリアさんのファミリアの主神だったようだ。
ディオニュソスって確かオリュンポスの神様だっけ?
確か酒の神様だったと思うけど、それしか覚えてない。
俺の神話知識が少なすぎる、北欧神話とか日本神話とかクトゥルフ神話とかなら割と知ってるのに。
そんな事考えてた罰が当たったのか、ディオニュソスさんに「どこのファミリアに所属しているのかな?」と聞かれてさあ大変。
神様相手に嘘は通じないし、不信感を煽る形になるけど事情があって言えないとはっきり言った。
納得はしてないようだったけど、これ以上言っても話す気はないと分かってくれたのか追及は無くて助かった。
そんで次に4階層とはいえ何故一人でダンジョンに潜ってたのかって話になった。
俺子ども扱いされてんな。
実際子どもだけど。
事情を話したら少し考える素振りを見せた後、なんと「うちのフィルヴィスをつけよう」とか宣い出した。
何でそんな話になった。
当の本人も寝耳に水って顔してるし。
「団長としての仕事が―」とか「ディオニュソス様の護衛がー」とか言って全力で断ろうとしている。
当たり前だよね、他所のファミリアの駆け出しの教育なんてしたくはないよね。
でも、目の前でめっちゃ嫌がられてるとちょっと傷ついた。
心の傷が浅い内に断って帰ろうとしたらディオニュソスさんに引き留められた。
何があんたをそんなに駆り立ててるんだ。
結局、ラウルさんが戻ってくるまでの期間限定でシャリアさんが付いてくるのを押し切られるような形で決められてしまった。
口約束だし本人嫌がってたからどうせバックレるだろう。
お姉さんにその事を言ったら「『
詳しく知りたければ当人に聞いてくれの一点張り。
何か不安になってきたぞ。
€月γ日
死ぬかと思った。
ダンジョンに行ったらシャリアさんは律儀に待ってくれていた。
お姉さんの言う通り不真面目な人物では無さそうだ。
どっちかというと超がつくレベルで真面目かもしれない。
問題は会話が続かない事。
ダンジョンについての質問とかには普通に答えてくれるけど、雑談とかに関しては「ああ」とか「そうだな」みたいに最低限の一言を返して終了する。
この人と比べるとリオンさんがフレンドリーに思えてきた。
いつものように4階層で魔物を倒している最中にエライ事が起こった。
一言で言えば魔物の大群が出てきたんだよね。
下層では『
魔物を倒した数は10から先は数えていない。
ゴブリン数匹にしがみつかれた時は冷や汗かいた。
咄嗟に『
銃の訓練はほぼ自己流だったけど、流石に至近距離では外さない。
でも、本当に嫌な汗が出た。
最終的には二人一緒に魔物の群れから抜け出した後にシャリアさんがフルパワーの雷魔法を発射。
そして俺は後で火炎瓶でも作ろうかと思って買ったスピリトゥスとかいうスピリタスのパチモンみたいな度数の高い酒を放り投げて『
酒って電気を通しやすいって何処かで聞いた事あったから雷魔法の威力が増加するかと思ってやったら火花に引火でもしたのか魔物の群れは大炎上。
燃えなかった連中はそれにビビったのか蜘蛛の子散らすかの如く逃走した。
そして魔石やドロップアイテムも一緒に炎上した。
経費を差っ引くと少ない稼ぎになった。
悲しい。
魔法初めて見たけど格好良かったな。
あんな状況じゃあ無けりゃもっと感動できてた。
今まで一番稼げたけど、今までで一番危険なダンジョンアタックになってしまった。
『ステイタス』を更新して貰ったら熟練度がガッツリ上がって、新しいスキルも発現してた。
『
・逆境時に全アビリティ及び精神力に超高補正。
・戦闘時の相手の強さが自分より強い程効果上昇。
・自身の精神力が尽きるまで効果持続。
何でジョジョ一部のタイトルがスキル名になってるのかは置いといて、これってジョースター特有の『爆発力』がスキルになってるって考えればいいのか。
もしかしたらゴブリンに絡まれた時、咄嗟の判断が出来たのもこのスキルのお陰かもしれない。
でも、あんなのは二度と御免だね。
€月Δ日
どうしてイレギュラーは発生するんだろう?
今日は魔物の大群こそ無かったけど全身青っぽくて二回りくらい大きいダンジョンリザードが5体も現れた。
今まで倒したダンジョンリザードって茶色っぽかったからもしかして前にラウルさんが言ってた強化種って奴だろうか。
魔物は時々魔石を喰らってパワーアップして強化種という特別な個体になるらしい。
魔石の味を覚えた魔物はそのまま他の魔物の魔石も食べてさらにパワーアップし、より凶悪な個体になる事もあるそうだ。
共食いしてパワーアップだなんてまるで『蟲毒』だな、もしかしたらこのダンジョンってより強い魔物を生み出すための実験場の跡地だったりして、とか妄想してみたり。
そんでもって何でそれが4階層で、しかも一度に5体も出てくるんですかねぇ?
苦戦はしたけどシャリアさんの援護もあってか何とか勝利。
パワーもスピードもノーマルとは段違いだ。
実際半分以上シャリアさんが倒したようなもんだけど。
シャリアさん強えぇな。
魔法もそうだけど剣裁きも達人レベル。
こんだけ強いならレベル3に昇格出来る日も近いだろう。
でも鬱屈してるというか暗いというか思い悩んでいるというか。
帰り際に付き合ってくれてるお礼にと『ザ・キュアー』で吸い取ってみたらあっという間に許容量の8割を超えてしまったので慌てて解除。
おせっかいが原因で暴走でもされたらたまったもんじゃないよ。
多少機嫌が良くなったようには見えたけど根本的な解決にはならなかったみたいだ。
ただ単に俺の『ザ・キュアー』の容量が少ないだけか、それともシャリアさんの闇が俺の想像以上に深いからなのか。
€月ζ日
流石にそう何度もイレギュラーは起こらない。
『二度ある事は三度ある』なんて諺はあれど、今回は『三度目の正直』の方が採用されたようだ。
あれ、4階層ってこんなに楽チンだったっけ? とおもわず思ってしまったくらいだ。
そんな事を道中で喋ってたら、シャリアさんは何か言いたげなように見えて何も言わない。
何か言ってくれよともどかしくはあるけど、本人が言いたくないんだったら無理に聞こうとするのもね。
換金が終わってシャリアさんと別れた直後に変な奴らに遭遇。
変な奴らというか、いつぞやにシャリアさんに瞬殺された三人組だった。
タイミングが良過ぎて待ち伏せしてたとしか思えない。
こいつら暇なのか。
そんな事してる暇あるんなら素振りでもしてればいいのに。
前みたいに追い剥ぎ紛いの事でもするつもりなのかと身構えたら、俺がシャリアさんとパーティを組んでることに対して口を挟んできた。
連中が言ってることをマイルドに纏めるとこんな感じ。
「やめとけ! やめとけ!
あいつは不幸を呼ぶバンシーなんだ。
せっかく『あの惨劇』から生き残ったのに嬉しいんだか嬉しくないんだか。
『フィルヴィス・シャリア』レベル2 ディオニュソス・ファミリア団長。
任務は真面目でそつなくこなすがニコリとも笑わない今一つ面白みのない女。
なんかエリートっぽい気品ただよう顔と物腰をしているため、男女ともにもてるが、ファミリア内じゃあ孤立していてパーティすら組めないって話だぜ。
エルフらしく気取っちゃあいるが、若い身空で死神に魅入られちまった悲しい女さ」
はて、バンシーって何だろうか?
ユニコーンガンダム?
連中の口ぶりから察するに決して良い意味で使われてる名詞では無いというのは容易に想像出来る。
ぶっちゃけシャリアさんの過去に何があろうと今現在12歳の子どもに対してイキってる連中何ぞと比べるのさえ失礼な気がする。
本人目の前にして言えないから子どもの俺に言ってるっていうのも卑劣というか狡いというか。
俺は態々相手にする必要も義理も無いと無視して歩き去った。
だが、それが逆に連中の逆鱗に触れた。
俺に無視された事にキレたのか、連中の内の一人が掴み掛ってきた。
俺は、それを叩いて弾いてやった。
リオンさん見てるせいかこいつらの挙動が眠っちまいそうにノロく見える。
躱すのも弾くのも大して苦じゃない。
連中を見ていて魔物程恐怖を感じない事に妙な違和感があったけど、気が付いた。
それよりも凄い人達を見て来たんだ。
リオンさんのように速くも無ければ鋭くも無い。
ラウルさんのような優しさも無ければ積み重ねで生まれた熟練度も感じられない。
こいつらが貶しているシャリアさん程実力があるわけでも無い。
連中は俺に反抗されると思っていなかったのか怒りを露わにしていた。
そういえば俺は穏便に済まそうと思ってこいつらに対して一度も反撃したことが無かったな。
無抵抗で殴られてやるなんて発想が出る程マゾじゃあないし、逃げたら逃げたでまた似たような目に合う可能性が高い。
こういう時に『ヘブンズ・ドアー』が自在に使えれば楽なのに、生憎
『スター・プラチナ』や『ザ・ワールド』のような近距離パワー型のスタンドお得意のラッシュで叩きのめすのは簡単だが、暴力で全てを解決しようとするのはこいつらのやっている事と同じような気がして後味の悪いものを残す。
でもすっごくムカつくし、一発ずつくらいはいいよね?
骨をへし折るより精神をへし折る方が効果的だと判断した結果、『ヴードゥー・チャイルド』を使って骨が折れない程度に一発ずつ殴ってやった。
このスタンドの恐ろしいところは『唇』を憑けられる事。
そして『唇』を憑けた対象の深層心理を読み取って罵倒を行う事だ。
いくつも憑けてやれば耐えきれずショック死するだろうが、一つだけだったから
精神的なショックで人が気絶するのは初めて見た。
別に見たかったわけじゃあ無いけどね。
ここまでの恐怖を植え付ければ記憶が消えない限り、同じような事は起こらないだろう。
俺は絶対にああはならない。
なってたまるか。
€月Θ日
シャリアさんが来なかった。
調子が悪いのか、それとも都合がつかなかったのか。
確認しようにも『ディオニュソス・ファミリア』の拠点の場所なんて知らないし、知ってたとしてもそこにいるとは限らない。
とはいえパーティ解散するならするでなんか言って貰わないと困るので担当のティフィさんに『ディオニュソス・ファミリア』の場所を聞いて行ってみた。
行ってみたはいいけど本人は留守中でデュオニュソスさんも忙しいからと突っ返されてしまった。
伝言くらい聞いてくれてもいいじゃあないか。
結構長い間誰かがついてくれてただけに一人でダンジョンに潜っているとなんだか調子が出ない。
仲間って大事なんだな、早く団員増えないかな。
€月’日
シャリアさんもう来ないんかなァ。
元々乗り気じゃあなかったから無理もないか。
稽古がてらリオンさんに相談してみたら、
リオンさん曰くシャリアさんと自分は似た境遇にあるそうだ。
具体的な事こそ言わなかったけど、そこまで言われればある程度予想はつく。
シャリアさんはリオンさんと同じ闇派閥の被害者なんだろう。
何とかしてあげたいとは思う。
けど何も出来る事が無いのが現実。
俺はカウンセラーでも無ければジャンプ主人公でもない。
おまけに『ザ・キュアー』は発散しきるのにしばらく時間がかかるからそれまでは使えない。
そもそも『何で団長なのにファミリア内で孤立してるの?』とか『主神のディオニュソスさんは解決に動いたりとかしてないの?』とか色々疑問がある。
ちょっと前の俺みたいに自分で溜め込んじゃうタイプなのかな。
エルフも精神面は人間と変わらないんだろうか。
まあ、リンゴォみたいな精神構造してたらそれはそれで恐いけどね。
仮に出来る事があるとすれば、次会った時も今までと変わらない態度で接するようにするくらいだろう。
簡単な補足
デュオニュソス「新人教育はフィルヴィスの気分転換になるだろう。フィルヴィスを忌避してる様子は無いし、なにより4階層なら大事にはならないだろうしね」
次回、別視点