朝凪を迎えに   作:藤城陸月

3 / 3
 3月……!辛うじて3月……!
 お待たせして、大変申し訳ありません。

 お久しぶり。あるいは初めまして(、一気読みお疲れ様です)。
 3話です。ハンター試験ダイジェスト(前半)。
 非常に難産でした。就活とか教職とかもあったけどね☆
 ──────ん?他作品に浮気?いや、スランプで(言い訳)……。

 タイトルについては聞かないでください。本当はカッコイイ感じにしようとは思ったんです。

 えー……タイトルを含めて、今回は色々と悩むところが多かったです。原作キャラとの絡みが特に。ゴンがひたすらに癒し。

 長々と、愚痴のような物を失礼しました。それではどうぞ──────



 クラピカ強化(カストロに次ぐ二人目)。


3話 ビーチフラッグしようぜ!お前だけカバディな!

 ドキドキ……

 

 ……。

 

 ドキドキ、ビックリ2択ク~~~イズ!

 

 ……………………。

 

 ──────父親と恋人のどちらを助ける?

 ──────恋人、だ。

 ──────理由を聞いても良いかの?

 ──────答えは沈黙なのだろう?だが、私の両親はもういないのだ。

 ──────そうかい、悪い事を聞いたね。

 

 両側を高い壁に仕切られた細い路地の内、片方の壁の一部が開き、小さな道が作られる。

 

 ──────問題の方が悪かったようだね。先に進むといいさね。

 ──────ありがとう、おばあ様。ところで、道が多いのは挑戦者が多いからか?

 ──────そこまでお見通しかい……そうだよ。まったく、察しが良すぎるのも考え物だよ。

 ──────それは済まないな……。さて、目印などはあるのか?

 ──────ああ、湖の側の一軒家を訪ねればいい。まぁ、頑張りな。

 ──────改めてありがとう。心から感謝する。

 ──────はっ……。さっさとお行き。後は……そうさね、恋人の事を大切にするんだよ。

 ──────いや、ローズは恋人というか、その……私が勝手に好意を抱いているだけというか……。

 ──────やれやれ、可愛げのない小娘かと思ったら、随分と可愛らしいトコロがあるじゃないか。

 

 

 

 湖畔にある一軒家にて。

 

 ──────手を放せ。演技だと分かっていても、見ていて気持ちの良いものではない。

 ──────……どうして分かった?

 ──────試しているのが丸わかりだ。貴方たちなら、もっと手際が良いはずだ。

 ──────ふむ……成る程な。これは一本取られたようだ。

 ──────それに、嬲り方に違和感がある。

       死ぬことが──────殺すことが決まっている相手に、外傷が残らないように気を遣う加虐趣味者が何処に居る。

 ──────……そうか。

 ──────嫌な事を言って済まなかったな。たが、仲間に気を遣う貴方たちの目はアイツ等とは違ったんだ。

       全く……心配し過ぎだ。その目線は温かすぎる。

 

 

 

「──────弱火でじっくり」

 

 

  †

 

 

「──────ごちそうさまでした」

 

 なかなかに美味しかった。

 強いて言えば、ライスが足りなかった、くらいだろうか。

 

 手持ち無沙汰になり、何と無しに天井を眺める。

 試験開始の一日前に、何とかここまでたどり着くことが出来た。

 過酷なスケジュールではあったが余裕がなかったわけではない。

 しかし、無駄な時間があったわけでもない。

 飛行艇の中でも、何かしらの作業があった。

 久しぶりの、何もすることが無い暇な時間──────。

 しかも、いつ終わるかが全く分からない、と来た。

 

 ──────ローズは今、何をしているのだろうか?

 

 そんな、考えても仕方がない事を思いつくのは当然なのかもしれない。

 今回のハンター試験へ向けての一人旅──────とは言え、連絡をしてはいけない、などのルールはない。

 彼の行動を知りたいのなら、メールをするなりすればいいのだ。

 つまるところ、何となく心細い、程度の感傷なのだろう。

 試験の前に不安になる事は、精神的にあまり良くないとされる。

 それならば、試験が終わった後の自分へのご褒美を考えた方が、よほど建築的だろう。

 さて、自分へのご褒美──────。

 一体、何が良いだろうか?

 私にとっては、ハンターになることよりも、なった後の活動の方が大切なのだ。

 正直、今まで私はハンター試験合格を通過地点としか考えていなかった。

 それならば、私以外の人はどのような反応をするのだろうか?

 

 ──────ローズは喜んでくれるだろうか?

 

 ……なんだ、そういう理由か。

 自分でもあっけに取られてしまう程の、あからさまな理由付け。

 単純な自分に呆れると共に、どこか納得してしまう。

 

 ──────それならば仕方がない。すんなりと合格して、ローズに褒めてもらおう。

 

 全く、我ながら欲のない事だ。

 

 

 

 ──────。

 

 不意に、重い振動。

 エレベーターが止まる。

 

 体の芯に響くようなソレに意識を切り替える。

 

 部屋の中心にあったコンロの火は既に消えている。

 その炎と熱は体の中に──────心に宿っている。

 

 そして、唐突に開いた扉に足を進める。

 

 

 1999年1月6日18:33。

 

 試験開始まで、あと──────。

 

 

  †

 

 

 あれは──────新人だな。

 

 キョロキョロと周りを見渡す、露出した白い肌以外は黒一色の少女。

 常連にとっては何時ものことである、プレートを受け取る時の反応も、いかにも初々しい。

 

 間違いない。

 というか、間違いようがない。

 もし仮に、自然にあの仕草が出来るのならば──────まぁ、その時はその時だ。

 

 ──────さぁ、お立合い。

 

 楽しませて貰おうじゃないの。

 

 

  †

 

 

 貰ったプレートの番号を確認し(361番だった)、コートの上に着ける。

 何となく達成感──────いやいや、ここからなのだから気を引き締めなくては。

 

「──────やぁ、新人さんかい?」

 

 そんな中、不意に話しかけられる。

 ……何処かで視たような顔の男。

 

「ああ、そうだが」

「そんなに警戒しないでくれよ。俺は──────まぁ所謂ベテランでな。分からない事があったら聞いてくれよ」

「……そんなに、警戒しているように見えたか?」

 

 怪しまれただろうか?

 何となくだが、この男は警戒しなくてはならない──────そんな気がする。

 そして───こちらも気のせいかもしれないが───先ほどから周りからの視線が気になる。

 

「ま、分かるよ。俺も、35年前はそう思った」

「35年前?」

「そうそう35年前。10歳の頃だっだなぁ」

 

 独り言つ男に胡散臭さを感じる。

 怪訝そうな顔をしていたのがバレたのか、男は誤魔化し笑いをしながら「ま、これはお近づきの印に」そう言って、ジュースの缶を差し出す「緊張しすぎだ新人(ルーキー)。これでも飲んで、ちょっとは落ち着くと良い」

 こちらを気遣う様な言葉で差し出された缶を受け取る。

 この男を警戒していたが、単純に心配してくれていただけで杞憂だったのかもしれない。

 

 そんな事を思いながら、プルタブを開け──────失敗。

 ──────あれ?

 もう一度試すが、手が強張っていて上手くいかない。

 深呼吸をしてもう一回。成功。

 

「緊張しすぎだぜ、嬢ちゃん」

「どうやら、そのようだな」ジュースの缶を口元に「言葉に甘えて、一杯いただこう」中身を一気にあお──────

 

 ──────Alart(警告)

 

「ごふ──────」

「おわァ──────!」

 

 思わず、そのまま吐き出した。

 

「ど、どうした!?き、緊張の余り、むせでもしたのか」

 

 咳き込む私に、心配したかのように声を掛ける男。

 甘かった。コイツは警戒が必要だ。

 

 これは──────毒、か?

 

 ジュースは吐き出したが、僅かに飲み込んでしまった。

 体内に残ったジュースを体外に出すことは諦め、分解を促すことにする。

 

「ああ、済まない」警戒心をかくして「折角もらったのに、悪い事をしたな」

 

 床に落ちたジュースは、その中身を出しつつある。

 

「いや、こちらこそ悪かったよ。若い子にさせたらマズい事をしちまったな」

 

 本当に申し訳なさそうに男は言う。

 だが、胡散臭さは隠しきれていない。

 

「まぁ、ジュースはまだある。気が向いたら飲めばいい」

 

 そう言って、ジュースの缶を差し出してくる男。

 この期に及んで、と思わなくもない。だが、コイツは私がジュースの中身に気付いたことに気がついていない、と考えると納得できる。

 突然目の前でむせ、思い切りジュースを吐き出したことで、気が動転しているのかもしれない。

 不幸中の幸い、なのだろうか?……真に遺憾ながら。

 

「ああ、受け取っておこう」ジュースを受け取りながら「そうだ、名を聞いても良いだろうか?この礼はキチンと返したい」

 

「俺か?ああ、まだ名前を言ってなかったか」今気づいたように「俺はトンパ。35回ほど試験に落ち続けた、ただのベテランさ」

「そうか、トンパか」思い出した「私はサクラ。改めてだが、この礼はさせてもらう」

 

 期待しないで待ってるぜ、と言いながら離れていくトンパ。

 とんでもない、期待させてもらうさ──────新人潰し。

 

 

  †

 

 

 壁にもたれ、床に座り込む。

 

 色々と疲れた。

 まさか、あのトンパに下剤入りジュースを飲まされるとは。

 ほとんど接種していないとは言え、油断は禁物だ。

 幸い、スタート地点にはある程度の設備があるので問題はないのだが……。

 

 しかし、緊張しすぎていたのは事実。

 このままでは、始まる前に潰れてしまう。

 全く、質の悪い──────。

 

 それに加えて、周りの視線も気になる。

 彼らも新人潰しの仲間だろうか?

 気配と視線の向かって来る先を、何となく察知する。

 

 彼らの中に、一人だけ違和感を感じた。

 私を試している気配は同じなのだが、質が大きく異なる。

 移動しているソレは気配がほとんどしない。

 

 ──────目線を合わせる。

 

 銀髪の少年。

 彼は、ほんの少し目を見開き、面白そうに笑う。

 

 ──────キルア=ゾルディック。

 

 流石に彼の名前は分かる。

 伝説の暗殺一家ゾルディック家の次世代を担うであろう天才児。

 

 何となく、口元に笑みが浮かぶ。

 立ち上がり──────

 

「やあ」

 

 キルアが目の前に現れる。

 まぁ、これくらいは出来るよね。

 

「こんにちは──────こんばんは、かな?」

「どっちでも良いよ、そんなの」

 

 気ままな猫を思わせるツリ目は私よりも少し下にある。

 イタズラ好きそうな彼の年齢は12歳(11だったかな?)。

 

「私はサクラ。君の名を聞いてもいいだろうか?」

「キルア。短い付き合いだろうけどヨロシク」

 

 先程の反省と後々の矛盾(名前を知っている等)を消すために自己紹介。

 自己紹介は大事。記紀どころかマハーバーラタにもそう書いてある。

 この世界に『それら』があるかは知らないけど。

 

 何と言うか──────ものすごく可愛らしい。

 握手のために右手を差し出して──────。

 

「──────頭撫でないでくれる?」

「──────はッ」

 

 おっと、いけない。

 つい、封印したはずの腐女子が。

 

「済まないな。可愛らしくて、つい」

「──────へえ」

 

 少し怒っているのだろうか?

 ──────益々可愛らしい。

 

「そこら辺はキョーミないけど──────どこら辺が可愛いのか聞いても良い?」

 

 冥土の土産に、という言葉が付きそうな言葉。

 それに私は──────

 

「おもちゃ屋を物色する子供に似ていてね」

 

 ──────そんな風に素直に返す。

 

「自分が殺せそるかどうか、探ってたんでしょ」

 

 小声で返す。

 

「──────へえ」

 

 少年の──────キルアの気配が変わる。

 どこにでも良そうな少年から、稀代の暗殺者。正確にはその卵に──────。

 

「おっと」その喉元に氷のナイフを突きつけながら「オイタはいけないよ」

 

「な──────」

「私みたいな──────私たちみたいな、常識が通用しない相手もいるからね」

 

 ナイフを消し、笑みを見せる。

 

「気を付けなさい。私より強い奴は、この中に山ほど──────はいないけど、そこそこはいるんだから」

 

 柔らかい銀髪に、もう一度だけ手を乗せて立ち去る。

 

 

 強い視線に目線を合わせる。

 顔に多数の針を刺した長身の男──────イルミ=ゾルディック。いや、ここではギタラクル、か。

 

 私より強い奴。その1。

 

「(可愛い弟さんですね。ですが、目が行き届いていないのでは?)」

 

 読唇術くらい使えるだろう、()()()そんな感じ投げやりに。

 

 

 何より危険なのは──────その隣にいる男。

 

 ヒソカ。

 自称、奇術師。ピエロを思わせるメイクをした正真正銘の危険人物。

 

 私より強い奴。その2。

 この男に至っては、私どころかローズより強いかも知れない。能力の相性が良い(ローズの能力は大抵の念能力者に対して有利)とはいえ、確実にローズが勝てるとは言えない。

 

 私を見る。その顔に張り付くのは、お道化た表情では断じてない。

 そこから感じ取れるのは──────純粋さ。誰よりも純粋な狂気。

 

 ──────狂気のピエロは、誰かを健全に楽しませることでは笑わせない。

       それを楽しみ、笑うは同類のみ。手段と目的が入れ替わった者。

       彼らは戦うことに喜びを覚えた、戦うために戦う生粋の戦闘狂。

 

 自分の興味の対象に対して、誰よりも純粋な感情を抱く。

 それは、紛れもなくハンターである事の必要条件。

 私の目指すべきハンター像とは異なるが、或いは──────或いは彼こそがハンターなのかもしれない。

 

 

 この二人には関わりたくはなかったが、ヒソカは天空闘技場で何度か会ってしまっている。

 

 この一瞬、私を殺さんとばかりのイルミ。そんな彼を私と遊びたいヒソカが抑えている。

 

 私は、目線をズラさずに距離をとり、ある程度離れてから”絶”を使って人込みに隠れることにした。

 

 

 さて──────ハンター試験を穏便に済ます方法を思いついた。

 

 

  †

 

 

「ぎゃあぁ~~~っ」

 

 ──────!!

 

 人込みの向こうから叫び声が聞こえる。

 両手を失った男と、薄く笑う奇妙な男。

 

「ア───ラ不思議♥ 腕が消えちゃった♠」

 

 意味をなさない悲鳴を上げる被害者の前で「タネもしかけも御座いません♠」とピエロのメイクをした男はお道化る。

 

 トンパ、という(自称)ベテランの受験生によると、ヒソカという危険人物らしい。

 危険人物という紹介には納得だ。ヒソカは明かに禍々しい。

 

 それは余りに物騒なパフォーマンス。

 あの男は目立ちたがり屋なのだろう。

 

 そして、幸悦の表情で立ち去るヒソカは唐突に真顔になり、何事もなかったかのように──────

 

 ──────拍手。

 静まり返った空間に響くソレは、集団に紛れ込もうとしていたヒソカの足を止めた。

 

「──────面白い手品をありがとう。ピエロさん」

 

 可憐な声。

 黒ずくめの少女だった。

 

 白い肌、華奢な手足。腰まである濡れ羽。

 闇を集めたかのようなワンピースと外套。

 それらはハンター試験の受験生とは思えない、まるで令嬢のような雰囲気を与える。

 

「おや♥ 嬉しいね♣️」

「いやいや……こちらこそ、素晴らしい物を見せて貰ったよ」

 

 本当に嬉しいのだろう。満円の笑みを浮かべる奇術師。

 対する少女は──────感心しているように見える。

 

「ところで、消した腕は何処に行ったのかな?」

「腕?」

「そう腕──────おっと、凄腕のマジシャンに種明かしを要求するのはマナー違反かな?」

「いやぁ♦ 構わないよ───っと♠」

 

 そう言って、何処からかヒソカの手に腕が現れ──────

 

「はい」

 

 ソレを少女に手渡す。

 

「熱心なファンの娘への特別サービスさ♥」

「ありがとう、ピエロさん」

 

 それを平然と受け取った少女は──────先ほど両手を失った男の下に。

 

「両腕を出してくれ」

「え?あ、ああ」

 

 茫然自失としている男に、腕を出すように指示する。

 そして──────

 

「──────よいしょ」

 

 そして、()()()()()

 

「え?あ、腕。オレの腕が──────」

「──────今度からは気を付けるように」

 

 何のことなし、とばかりに、そのまま立ち去る少女。

 その姿を舌なめずりするかのように見つめる奇術師。

 

「──────なんだったんだろう?」

「気にするんな、気味の悪いパフォーマンスだろう。関わらないほうが良いぜ」

 

 傍らの二人の言葉で我に返る。

 

「──────ああ、そうだな。少女はともかく、ヒソカは危険すぎる」

 

 二人──────ゴンとレオリオが頷くのを尻目に、私はあの二人について思いを巡らせていた。

 

 

 あの二人は何かが違う。

 彼らと接触することで、コレの正体が掴めるかもしれない、と。

 

 

  †

 

 

 一次試験の内容は持久走。

 距離は不明。ただ、ただひたすらに試験官の後を付ければいい。

 

 

  †

 

 

 集団が走った距離は既に百キロを超えていた。

 今までは平たんな、コンクリートの地下道を進んでいた。

 そして今、受験者の目の前には──────終わりの見えない階段が、彼らに絶望を伝えていた。

 

 そんな中、階段を上っている先頭集団。

 彼らは、もうじき出口───を示す光───が見える直前まで来ていた。

 

 そして、その更に先頭にて。

 

「──────おや、また会ったね」

「いや、絶対ワザとだろ」

「知り合いなの?キルア」

 

 黒髪の少年と金髪の少年。

 試験官の真後ろに居た、その二人に後ろから話しかける。

 

「知り合いたくはなかったけどな」

「ツンデレだなぁ、キルア君は。 黒髪の少年。私はサクラだ、よろしく頼む」

「オレはゴン。よろしく」

「平然と挨拶するなよな」

 

 やはり、名前を知っていても自己紹介は大事。

 こちらが一方的にプロフィールを知っていると齟齬が生じる。

 

「ふふ、嫉妬させてしまったかな?キルア君」

「いや、そんなんじゃないから」

「と言いつつも?」

「どういう事だよ」

「二人は仲いいんだね」

「は? こいつが一方的に絡んでくるだけなんだけど」

「えーそんなー。おねーさん、傷ついちゃうなー」

「本当にそう思ってるんなら、棒読みで言うなよな」

 

 そんなことを言い合いながら、試験官の後に続いて階段を上って行く。

 暫く話し合っていると、当然ながら『その質問』が来た。

 

「そういえば、さっきのはどうやったの?」

 

 ゴンからの質問に対して──────

 

「そうだな──────ひとまずは手品、という事にしてくれないかな?」

 

 ──────先の事を考え、ヒソカを出汁にして応じる。

 

「うーん……分かった。そういう事にしとくね」

「──────ふーん……ひとまずは、ね」

 

 順にゴン、キルア。

 返って来た反応はほぼ同じ。強いて言えば、先ほど警告したキルアの方が疑いが強いだろうか。まぁ、当然だが。

 そして、先の警告を除外して考えると──────

 

「ひとまずは成功、ってところか?」

 

 そんな私の思考をキルアが途絶えさせる。

 

「バレていたか」わざとらしく肩をすくめる「具体的に聞いても良いかな?」

 

「いや、バレバレだろ。ヒソカを出汁にして、周りに警戒させる。要するに、邪魔されたくないんだろ」

「正解。ヒソカのような戦闘狂から狙われるよりも、トンパのような連中から狙われる方が厄介だからな」

 

 まぁ、キルア君にはバレるか。

 

「そういう事か。オレは単に、サクラがお人好しだと思ってたんだけど」

 

 そして、君は素直だな。ゴン君。おそらくだが、君以上のお人好しキャラはまずいないだろう。君にお人好しと指摘されるとは……。基本的に、私は簡単に他人を見捨てるような冷酷な人間なのだ。全く、私がお人好しな筈がないだろう。君のような、素直で、人の事を直ぐに信じてしまうような、お人好しとは一緒にしないで欲しいものだよ。

 

 

  †

 

 

「君って、お人好しって言われない♦」

 

 …………。

 

 濃霧の中。

 変質者と交戦しながら。

 

「はて、何のことかな?」

 

 ふざけるな変態!お前と比べたら誰だってお人好しだろうが!

 ──────と言いたい、が堪える。

 

 落ち着け、クールになるんだ。

 これは作戦。ヒソカと関わり合いたくない(常識的な)挑戦者からの妨害を防ぐために仕方なく戦っているのだ。

 ヒソカの餌食になるであろう人を逃がす為ではない。

 

 

 運動係数制御(ラグランジュ)で運動速度と知覚速度を底上げ。

 常駐している短期未来予測(ラプラス)による「未来予測」と現実の視界に映る「今」が二重写しのように認識できる。

 

 それでも尚、遥か格上。

 このままでは不利になる一方である。

 とは言え、打開策が無いワケではない。。

 例えば、電磁気学制御(ファラデー)による超音速の電磁投射砲(レールガン)

 これならば”堅”あるいは”硬”による防御すら打ち破るだろう。

 ただし、予備動作で軌道が読まれる。

 また、近接高速戦闘を行っている以上、短期未来予測(ラプラス)運動係数制御(ラグランジュ)を解除することは戦闘経験で劣る以上、則敗北である。

 

 

 ──────ならば、奥の手を見せるしかない。

 

 

 左腰に佩いている細剣(レイピア)──────騎士剣「氷柱」を抜く。

 右手に細剣、左手に投擲用の短剣を構え、二刀流。

 

 ──────騎士剣「氷柱」接続。騎士剣「氷柱」内フォルダより、物質低温移行デーモン「カメルリング」常駐。

 

 短期未来予測(ラプラス)運動係数制御(ラグランジュ)物質低温移行(カメルリング)

 本来、容量不足で三つのデーモンを同時に常駐させることは出来ないが、騎士剣を『賢者の石』のように使う事で限定的に行使できる。

 限定的、と書いたことからも分かるように、この裏技には制限がある。

 一言で言うと、計算速度が足りなくなるのだ。

 計算補助に騎士剣を使って、物理現象に干渉しない短期未来予測(ラプラス)と計算の軽い運動係数制御(ラグランジュ)を常駐させることで辛うじてカバーしているに過ぎないのだ。

 もちろんだが、負担も大きい。その上で、騎士剣に内蔵されているのは──────いや、内蔵できたのは物質低温移行(カメルリング)だけなのだ。

 

 私が使う騎士剣は特殊な念能力で作られた氷を素材として創られている。

 本来、想定される騎士剣とは性能が大きく乖離している(前提として計算機能を持った武器が作れたことが驚きなのだが)機能が限定されるのは仕方ないだろう。

 この世界では情報制御理論が確立していない以上、情報解体は成立しない。その上、本体の計算処理能力が理想を下回る以上、計算の補助以外の本来の騎士剣としての機能──────自己領域の展開は出来ない。

 本来の性能を発揮できないのならば、他の機能で帯びなうしかない。そこで、変わりに内蔵したデーモンが物質低温移行(カメルリング)。これは氷を作った念能力者───ローズ───の能力をデチューンしたモノ。

 即ち──────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()能力である。

 

 長々と説明してしまったが、要するに負担が重いと言いたいのだ。

 だから、私が引き付けている間に逃げて欲しいのだが。

 

 

 そんな心の声も虚しく、背後からヒソカに飛び掛かったレオリオが一発ノックアウト。

 ある程度、距離を取って二刀流を構えるクラピカ──────()()()()()()()()()()だ。何らかのバタフライエフェクトか?

 

 一瞬だけ、頭によぎった疑問が大きな隙となる。

 当然、それを逃すヒソカではない。

 そして。

 そして──────。

 

「やっぱり、お人好しなんだね」

 

 そして、ヒソカの顔に釣り竿のウキがめり込んだ。

 

 

  †

 

 

「楽しいダンスだったよ♥」

「私にとっては恐ろしいだけだったがな」

「ええ……ひどいなァ♣ さっきまでアレほど情熱的だったのに♠」

「おぞましい事を言わないでくれ。 二度と戦いたくない」

「ファンだって言ってくれたのになぁ♦」

「記憶を捏造しないでくれ。 凄腕のピエロだとは言ったがファンだとは言っていない」

「そうだっけ?」

「仮にファンになるのならば、その技量にだ。 性格や劇術性に関しては趣向が違い過ぎる」

「そっかぁ……まぁいいや♣ はい、お礼にコレ上げる♠」

「カードを真っ直ぐに投げて渡すな。危ないだろう。 スペードのQ──────剣の女王か」

「そういう事。 君に相応しいと思ってね♦」

「お礼にカードか。お前らしいよ」

「気に入ってくれたかな?」

「及第点。 女王よりもお姫様と呼ばれたいのでな」

「……なるほどね♥ クク、君の王子様と戦ってみたいものだ☠」

「──────!」

 

 

  †

 

 

 レオリオを担いで奇術師は去った。

 殺していない、合格だから大丈夫、などと言っていたが心配だ。

 

 そして──────

 

「はじめまして、かな?」

 

 そして、先ほどの黒染めの少女。

 華奢な見た目からは想像できないが、ヒソカと渡り合っていた実力者。

 私は、彼女に聞かなくてはならない事がある。

 

 

 簡単な自己紹介を終え、ヒソカの後を追う。

 

 サクラ、と名乗った少女を見て思うのはハンター試験の参加者についてだ。

 まだハンター試験の最中だというのに目を疑う様な人間が多すぎる。

 ヒソカやサクラといった、異様な戦闘能力を持っている者。

 目の前を走るゴンのように、一般人離れした身体を持つ者。

 ハンター試験を受験した目的はハンターになる事。そして、()()()()()()()

 

 力が必要だった。

 その為には、持っている者と出会う必要が有った。

 この機会をふいにしていいはずがない。

 

「君は使えるのか?」

 

 その質問は、ほとんど無意識に口から出ていた。

 

「勿論」

 

 返った来たのは肯定。

 

「ほら」袖から無数の青い小鳥が飛び立つ「手品だろう?」

 

 無数の鳥に「すごいなー」と素直に感心しているゴン。

 湯気のような膜を微かにを纏った氷の小鳥に戦慄すると共に確信する。

 

「興味があったら、後で教えてあげるよ」

「後でって、いつ?」

「取り敢えずはハンター試験が終わった後で」でも、と一言挟んで「プロに教わった方が良いだろうけどね」

 

 何処か得意げなサクラと目を輝かせているゴンとの会話。

 このやり取りから、コレは本来秘匿すべきモノであり、例外的にハンター試験を突破することで手に入るのだろうと推測できる。

 

 何としてもハンター試験を突破しなくてはならない。

 サクラやヒソカといった、真の実力者が使いこなしている技術について詳しく知らなくてはならない。

 その為には、これからの試験行程を軽々と突破していくであろう彼らに追いつく必要が有る。

 決意を新たにする。目指すべきものはすぐそこにあるのだから──────。

 

 

 

「ところで、先ほどとは服装が変わっているが、それも手品なのか?」

「ダメだよクラピカ。女の子にそんな事を聞いたら」

「別に私は構わないが、確かにその通りだな。ゴン君はそのまま素直に成長すると良い」

 

 

 

「メンチ試験官。やはり男性は、料理が上手な女性の方が好きなのだろうか」

「場合に依るわね。当たり前だけど、相手に依るだろうし」

 

 先ほど、これからの試験行程を軽々と突破していくであろう、と思ったサクラが膝を屈していた。

 哀愁すら感じる程激しく落ち込むサクラと彼女からの相談をバッサリと切り捨てる二次試験の試験官メンチ。

 

 

 

 ハンター試験とは無常であった。

 

 

  †

 

 

 電気水道などの設備が整った個室。

 ハンター試験の試験官に宛がわれた部屋の一つ。

 

 その部屋の中でローズはいた。

 

 試験官の部屋があるのは雲の上を行く飛行船の中。

 現在、二次試験の内容の変更に伴い、大量の受験生を収容しようとしていた。

 その受験生の中に、彼が執心している少女がいるのだが、ここにいるとバレてしまうわけにはいかないのであった。

 

 ローズは予め準備しておいたソレ──────ジョイステーションを起動させた。

 




 という訳で3話でした。長くしてしまったと後悔中。
 ダイジェストでも十分長い。これでも結構削ったんですけどね。
 説明会を兼ねていたのでクドイ所が何か所か……。修行不足を痛感します。
 読みづらい個所が多かったと思うので、ここまで読んでいただいたことに多大なる感謝を──────。


 因みに騎士剣の名前一覧は

 長剣……「雪花(せっか)」
 短剣……「雪月(せつげつ)」
 細剣……「氷柱(ひょうちゅう)」

 こんな感じで氷雪系で縛っています。


 改めて、ここまで読んでいただいてありがとうございました。
 前回、今作で初めて感想を貰いました。創作の励みになります。これからも評価、お気に入り登録、感想などをお待ちしています。
 次回更新は(も、ですが)何時になるか分かりません。恐らくですが、内容はハンター試験ダイジェスト(後半)になるかと思います。気長にお待ちしていただく事をお願いします。
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