この話はアニメ4話の内容に繋がるので恐らく3部編成になると思います
追記:はい、無理でした...内容的にほぼユニットごとに章編成することになると思います
『プロデューサーさん!明日っ、初音さんに一人で会いに行ってもいいですかっ!』
今日は特別大きなレッスンもなく、ユニット編成が着実と進んでいるとはいえ、まだ第1弾も発表する段階では無かった為に許可を出した。
私自身も再度初音さんにアプローチをかけるつもりではあったが『プロデューサーさんは待っててくださいっ!...私が個人的に話したいだけですから...ワガママですみません』と言われてしまっては動くことも出来ない。
自身の割り当てられたオフィスの中、備え付けのPCの前で背を椅子に深く預ける。
時刻はもう夕方近く、あと数時間で退社の時間がやってくるがほぼ確定している第1弾の出演その他諸々の調整が残っている時点で帰るという選択肢はない。
ふと耳をすませば、隣接したプロジェクトルームより女性特有の甲高く姦しい話し声が聞こえてくる。まぁ内容こそ聞こえないが、先日の宣材撮影で居なかった最後の15人目について話している事は容易に想像できた。
実際、島村さん渋谷さん本田さんの3人を宣材撮影時に紹介した時、残りのメンバーからもう1人は?としきりに聞かれたのだ。その時はまだ選考中であるとその場を濁したのだが...
...少し思考し過ぎていた、仕事に対して完全に手が止まっていては彼女達にも立つ瀬が無い。そう思い気合を入れる意味も兼ねて千川さんからの差し入れを飲み干そうと手を伸ばしたその時だった。
先程まで隣から聞こえていた話し声よりも大きな、廊下を靴が叩く音が聞こえてきた。美城の事務所はきちんと整備されており、決してドアが薄いといった欠陥は無いはずであるため、走っている本人が相当焦っているという事が考えついた。
「すみませんっ!島村卯月です!プロデューサーさんはまだいらっしゃいますかっ!!」
パタパタとなっていた駆け足の音は私の居るプロデューサーオフィスの前で止まり、焦ったようなノック4回と聞きなれたある少女の声がその向こうから聞こえてきた。彼女だ。
「はい、島村さんですね。どうぞ。」
先日には彼女ーーー初音未来さんと個人的に話してくると私に断りを入れて会いに行った島村さん。
そのため今日は彼女と付きっきりで、それこそ渋谷さんの時と同じように話している筈だった。それが夕方近くとはいえこの時間、休日故に家に帰る事も出来るのにわざわざ事務所まで、先程まで走っていた様子でこのオフィスを焦って尋ねてくる。何かしらの問題があったのだろう。
「はぁはぁ...よ、よかった〜っ!間に合いましたよミクちゃんっ!」
彼女の声にやけに耳に残る単語が紡がれていた。ミクちゃん...つまり初音未来さんのことだろう。と、言うことはつまり。
「お、お邪魔しまぁ〜す...」
おずおずと、扉の隙間から特徴的な浅葱色のツインテールのひと房が姿を見せる。
最初見た、一流のAクラス男性アイドル顔負けのクール系に纏まった着こなし...具体的に言うならばシンプルな白いワンポイントTシャツにジャケットとジーンズ、そしてサングラスを合わせた如何にもバスカー然とした服装、それを完璧に着こなした少女が怯えた様子で猫のように部屋へ身を滑り込ませるのは何だか滑稽に見えた。
「初音さん...でしたか」
「あー、はい...その、昨日はすみません」
「いえ、気にしないでください。」
バツの悪そうな彼女は入ってくるなり頭を下げた。彼女も言った通り、先日の話をぶった切った事を失礼な態度だったと考えてまず謝罪を行ったのだろう。しかし私としても断られるのは初めてではないし、それほど気にしているものでは無い。最もそれを口に出すほど野暮でもないが...
「所で今回はどう言ったご要件で...?」
「そうでしたっ!プロデューサーさん、まだプロジェクトの空席残ってますか?」
部屋に入る前に打ち合わせでもしていたのだろうか?突然の謝罪にも動揺せずに脇に寄っていた島村さんが声を上げる。プロジェクトの空席と言えば最後の15人目の事であることは明確だ。それならーーー
「それならまだ空いています。元より初音さん以外の人物を今からスカウトするつもりはありませんでしたから。」
これ以上始動が遅れると現実的にプロジェクトその物が立ち消えになる可能性もあったが、それでもこのプロジェクトに噛ませたかったが故に昨日今日と交渉して数日の猶予を貰っていた。その成果故に未だ席は空いていたし、受け入れに関しては何も問題はなかった。しかし
「しかし、初音さんは宜しいのですか?」
「...?宜しいって何が?」
「いえ、初音さんは現状に対して強いプライドを抱いていたように感じていたので」
実際、拒絶された昨日時点では己のスタンスに対して絶対の自信とそれを守ることに誇りすら感じている様だった。しかし今は打って変わって先日の事を水に流して、アイドルになりたいと今ここに立っている。何故か。
これがもし映画やドラマなら、卯月さんの言葉にこの数時間で感銘を受けて己の主張を曲げた...などと解釈できるだろうが、ここは現実だ。故に理由が不思議なのだ。
「うーん、卯月ちゃんに情熱的に誘われてね?それならちょっとだけ、条件があるけどそれで大丈夫ならやってみよっかなって思って...それじゃダメかな?」
少しだけ思考する。彼女の目を見つめ返すと、深い黒と髪と同じく鮮やかな虹彩が瞳を彩る。普段なら私がこうやって見つめると大体は目を逸らされるのだが、それでも彼女は儚げな、それでいて強さを感じる矛盾した笑顔を浮かべながらこちらを見ていた。それだけだった。
「...いえ、問題ありません。では『条件』と言うのは何の事でしょうか?」
彼女に対して深く考察する事を一旦打ち切り、現実的な話へとシフトする。
条件と言うのは彼女の曲げられなかった部分の事だろう。大体は予想がつくが、詳しくは聞いてみないことには分からないし、実現出来るかも不安ではある。しかし私としては出来る限り叶えたいとは思っていた。それが彼女の良さなのだから。
「取り敢えず...一部だけ持ってきたんだけどね?私がソロで歌う時は私自身の作詞作曲『だけ』歌わせて欲しいんだ」
古今東西、自身の曲ないしグループの曲を作詞作曲するアーティストと言うのは確かに存在し、一定数確保されている。然しながら、美城のアイドル部門内では、出来てから数年と短いながらもその両者を行うアイドルは存在したことが無かったと記憶している。
理由としては作詞作曲の両方の才能を持つ物が居なかったと言うのもあるが、その両者を鍛える前にVocalやDance、Visualを鍛えるのが第1である事。そして美城グループ内には作詞はアイドルにある程度任せているとはいえ、きちんとした作曲部門が設立されていると言ったある種の利権問題的な面を持ち合わせていたからだ。
「ありがとうございます。...すぐには答えが出せませんが、部門間の問題もありますので検討して結論を出させていただきます」
然しながら、今目の前の少女が作詞所か作曲の才能をも高い次元で持ち合わせて居ることは明らかである。それはたった今受け取った数曲の楽譜及び歌詞からも感じ取る事が出来る。
1人だけでここ迄の完成度の曲を書き出し、しかもパッションのみではなくクール系やキュートな曲など書き分ける事が出来るなど作曲家としても生きて行けるほどの力を持つ少女、初音未来。
この楽譜と共に彼女の別の曲を作曲部門に提出すれば容易に要望が通るであろう事を頭のどこかで感じてはいた。しかし確定はしていない、結論が出るまでは伝えない方が良いだろう。
「...えっと、大丈夫ですか?割と無茶苦茶を言ってるつもりだけど...」
返答に不安な点があったのか、彼女はその感情通りの声音と表情でこちらに問い訪ねる。確かに前代未聞の条件であるし、基本的にアイドルと言っても職業であり雇われる側だ。その雇われる側が雇用主に条件を突き付けるのは...と考えても仕方無い。
「はい、初音さんの作詞及び作曲センスはアイドル業界内でも屈指のアピールポイントになると考えています。ですので変更点はありません。」
事実を言ったつもりである。彼女の提案は願ったり叶ったりであるが故に変更点は文字通り存在しない。
少なくとも今の時点では私はそう考えていた。
「......ふぅ、ありがとうございます。それが大丈夫なら...改めて、そのスカウトをお受けしても良いですか?」
「是非、よろしくお願いします。」
実は書きたい事の1/5程度しかかけてないという謎
下手したらメンバー事に3000字消費する可能性もある、指がもれなく逝く。
執筆中、ランキングが最大16位まで行ってたのは確認しました
この拙作がそこまで評価されるとは正直夢のような思いでもあります。皆様の評価を一身に受けて、ここで満足せずにより良く楽しめるSSを目指して頑張ります!