ホームズ家長男は家出中   作:太陽が嫌い

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家出少年はイ・ウーを卒業する

イ・ウー本部 ボストーク号にて

 

 

エレジー・ホームズは薄暗い艦内の廊下を歩いていた。目指す場所はイ・ウーのリーダー『教授』ことシャーロック・ホームズの自室だ。

部屋の前に立つと、コンコンとノックをして、

 

 

「入っていいか?教授」

 

 

「入りたまえエレジー君」

 

 

断りを入れてから入室しようとした時、タイミングを合わせたように部屋の主シャーロックが返事を返してきた。

 

 

「何の用かはわかっているさ・・・まあ、座りたまえ」

 

「だろうな」

 

エレジーは勧められた通りに、椅子に座る。

 

高級そうな椅子を回し、その姿が露になる。知的な顔立ちに、オールバックの髪。いつまで経っても容姿が変わらない。この男こそがシャーロック・ホームズ【イ・ウー】のリーダーであり、教授(プロフェシオン)と呼ばれている存在だ。史上最高の探偵シャーロック・ホームズ1世本人であり、『緋弾』の持つ延命効果によって150年以上の時を生きている。エレジーも最初に知ったときは驚いたものだ。まさか、自分の先祖が生きているとは思わないだろう。

 

「君がここに来て三年か・・・時間が経つのは早いね」

 

「年寄みたいなことを言いますね」

 

「ハハハハ、年寄りだからね」

 

屈託のない笑みを浮かべる教授と全く表情筋を働かせないエレジー。

 

「教授には感謝している。ホームズ家の落ちこぼれ、失敗作とまで言われた俺をここまで強くしてくれたこともあの力の使い方を授けてくれたことも。だけど、俺はもうここにいることに意味を感じない。俺の願いはここでは果たせない」

 

床に視線を向けたまま、少し顔をゆがめて告白するエレジー。

 

「別に分かっていたことだとも。君を拾ったあの日から、こうなることは推理できていた。それを承知で、僕は君を育てたんだ。たとえ、君が僕と敵対する可能性があるのだとしても・・・」

 

「・・・すまないな」

 

「エレジー君、英国紳士としてはここはありがとうというべき場面だよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・ありがとう」

 

気恥ずかしそうに、お礼を言うエレジーにシャーロックは満足げにうなずく。

 

「これは餞別だよ。受け取りたまえ」

 

そう言って、シャーロックはアダムズ1872・マークIIIを取り出した。

 

「これは・・・」

 

目を見張る、エレジーにシャーロックは微笑む。

 

「私と同じ銃だ。いつかきっと、使いたくなる時が来る」

 

「・・・ありがたく受け取っておく」

 

「そうだ、もう一つ助言だ。東京の武偵高を訪れてみるといい。きっといいことがある」

 

「・・・考えておく」

 

「ではね、エレジー君」

 

「ああ、またな。教授」

 

 

エレジーは背中を向け部屋から出て行った。

 

「結局、僕のことを曾おじい様とは呼んでくれなかったね」

 

悲し気な、老人のつぶやきは扉の閉まる音とともに掻き消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は部屋から出て、しばらく廊下を歩くことにした。多分この景色も見納めだろうしな。しばらく艦内を歩いてると、無骨な鉄の通路の向こう側に見慣れた人影が右から左へと通ったのを発見した。あれは、銀髪アホ毛娘ことセーラ。

 

こっちを見てた訳じゃないから、多分気づいてない。

 

悪戯心が働いて、脅かしてみたい衝動にかられた。きっといい反応をしてくれる。そう決めて静かにかかとから踏み込み、音が出ないようにして小走りする。

 

の通路を左に曲がると、目標の人物の背中をとらえた。ばれないように小走りじゃなく、早歩きで目標に近づく。

 

すぐにその距離は縮まり、腕が届く距離になった。

 

「よ、セーラ」

 

「わ、きゃ!?」

 

両肩を掴んで声を掛けるとセーラは肩を大きく跳ねあげる。

 

相変わらず、驚きに満ちた良い表情だ。悪戯心がくすぐられる。

 

「!? エジーィ・・・」

 

恨めしそうな顔を向けるセーラの頭をなでながら謝る。

 

「悪い、悪い、あんまりにも無警戒だからさ。」

 

「・・・風の超能力をくぐり抜けてくるのなんてエジーしかいない」

 

「いやいや、教授もできるぜ」

 

と、大袈裟なジェスチャーを加えながら話す。

 

すると、セーラはいじけたようにつぶやいた。

 

「あれは別格」

 

まあ、確かにあれは別格だろ。天才のセーラをもってしても意味不明な力の持ち主だ。あの人の血を継いでいるはずなのに俺は何でこんなに出来損ないなのだろうと何度考えたか・・・。

 

「ところで、私に何か用?」

 

 セーラが顔には出さないものの不機嫌そうな口調で聞いてきた。

 

「いや、別に?ただ見かけたから、驚かしてみたかっただけ」

 

そうあっけらかんに言うと、セーラは少しジト目になった。

 

「そう、不機嫌そうにするなよ。セーラみたいな美少女には、女神のような微笑みが似合うぞ」

 

 俺がそんなくさいセリフを言えたのは、セーラとの付き合いがこのイ・ウーでは一番長いからだろう。後は・・・そう、セーラだから。

 

「フン・・・」

 

「痛ってぇぇぇぇ」

 

思いっきり、ローキックを食らい悶絶する俺を見下ろしながらため息を吐く。

 

「何すんんだ!」

 

「今失礼なこと考えてた・・・」

 

ナチュラルに人の心を読むなよ。

 

「ここを出ていくってホント?」

 

と、突然真剣な表情で聞いてきた。

 

「そうだな、今日中に出ていくつもりだが・・・」

 

「じゃあ、私もついてく」

 

「はあ?」

 

いきなり何を言い出すんだ。

 

「今は暇だし、どうせこれからのために資金集めするんでしょ?」

 

「まあ、するけど」

 

「じゃあ、大丈夫。問題ない」

 

自信満々に言い切られても・・・

 

いや、こいつを連れていくのは嫌じゃない。ただ、問題があるとすれば・・・あの、ブロッコリーバイオハザード事件が起きかねないということだ。

 

「セーラ「荷物まとめてくる」」

 

俺が言い終わる前に、瞬時にいなくなるセーラ。・・・腹をくくるか。

 

「さて、手始めにどこに行こうかな~」

 

現実逃避気味に、これからの行動を考え始めた。

 

 

 

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